コラム Column

「BaaS×AI」で収益拡大を目指す FinTech時代、金融機関の成長戦略

TISは2022年3月18日開催の日経FinTech主催「FinTech Impact Tokyo 2022 金融デジタル戦略会議」へ 「Fintech時代を勝ち抜くBaaS×AI」をテーマに、セカンドサイトアナリティカとともに登壇しました。 本コラムは日経FinTechによる講演内容のReviewです。
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デジタル技術の進展により、これまで金融サービスとは縁がなかった事業会社も、決済などの機能を持ったサービスを開発・提供できるようになった。金融機関は、このような動きを見逃さず、積極的な企業間連携によって一層の成長を図りたいところだ。BaaS基盤とAI技術を組み合わせることで、新たな収益機会を生み出せるようになる。

■講演者■

TIS舘

TIS株式会社
DXビジネスユニット DX営業企画ユニット
エグゼクティブフェロー
舘 康二

 

SX深谷氏

セカンドサイトアナリティカ株式会社
取締役副社長 兼 テクノロジー本部長
深谷 直紀 氏

 

1.あらゆる業種の事業会社がFinTech企業へと進化する

 産業と金融のデジタル化が進んだことで、両者のサービスをAPIで容易に連携できるようになった。これにより、金融機能を組み込んだ新たな自社サービスを展開する企業は一段と増加している。 「金融機能を自社のバリューチェーンに組み込むことで、事業会社は『顧客体験の強化』『顧客との関係強化』『収益の多角化』などの効果を狙えます。例えば民泊業者が宿泊者向けの家財保険サービスを提供したり、賃貸物件の運営会社が住人に対して住宅購入資金の積み立て口座を用意したりするのがその一例です」とTISの舘 康二氏は紹介する。  事業会社が自社サービスに金融機能を組み込むには、「バンキング機能」と「ライセンス」の2つの要素が必要になる。自前で用意する方法もあるが、大がかりな取り組みとなるためハードルは高い。そこで、バンキング機能をクラウド型で提供する「BaaS(Banking as a Service)」が注目されている。金融機関にとっては、BtoBtoC商品としてBaaSを提供することが、新たなビジネスチャンスとなっているわけだ。  「既存の勘定系システムのフロントにBaaSを配置し、このフロントシステムを各企業に提供するイメージです。TISでは、小売業などに決済機能を提供する『決済型BaaS』、電気・ガス、住宅、金融業向けに口座起点のサービスを提供する『口座型BaaS』に対応したコンポーネント群を用意しています」と舘氏は説明する。 BaaSコンポーネント群

2.金融機関のBaaS提供を支援する多彩なコンポーネント群を提供

 前者の決済型BaaSは、いわゆる「○○ペイ」のような自社ブランドの決済サービスを実現するものだ。事業会社は、自社の顧客に対してシームレスで心地よい購買体験を提供できるようになる。後者の口座型BaaSは、毎月必ず行われる振込や引き落としといった金融サービスを実現するものである。預金口座連携やマネーロンダリング対策、デジタル口座、デビットカード、振込・振替、ATM出金といった機能群が提供できる。  「システムの構築や金融機関側との接続はもちろん、事業会社側のアセットを含めた統合的な運用サービスも提供します。各種法規制にも標準で対応しているほか、お客様の要望やビジネス戦略に応じてコンポーネントを選択導入することもできます」と舘氏。このような環境を活用することで、BaaSを用いた新たなサービスやビジネスをスピーディーに展開できるようになる。

3.BaaSとAIの組み合わせでサービス高度化と運用自動化を実現

 ただ、金融機関がBaaS提供を考える上では注意すべき点もある。1つは運用コストの低減だ。事業会社ごと、時には数千、数万人にもなる会員を管理するのは相当な負担となる。業務の自動化を推し進め、運用に掛かる工数はなるべく減らしたい。もう1つはデータの利活用である。せっかく貴重な顧客データが得られるのだから、これを新たな収益機会につなげる仕組みを考えておくべきだ。 「このような場面で力を発揮するのがAIです。AIを活用することで、BaaS基盤上で実行される様々な業務を大きく自動化することが可能です」とセカンドサイトアナリティカの深谷 直紀氏は語る。 同社が開発・提供しているのが、AIモデルの統合実行基盤「REDエンジン」である。 REDエンジン  既に多くの金融機関で採用されており、与信枠の判断や各種の不正検知、顔認証、リボルビングの案内などの幅広い用途で活用されている。多種多様な機械学習アルゴリズムに対応できるほか、複数のモデルを組み合わせることも可能。作成したモデルを本番環境に反 映させる前に、精度・性能を検証する機能も備えている。これを活用することで、BaaS基盤の自動化を着実に進められるようになる。  「例えばAIを用いた与信モデルをBaaSで提供すれば、事業会社が金融機関並みの与信判断を行えるようになります。同様に、不正検知に利用すれば、多くの人手や時間をかけずに、不審なユーザー行動を検出できるようになるでしょう」と深谷氏は説明する。  また、新たな収益機会の創出に向けては、データの分析と一元管理の基盤である「アナリティクスプラットフォーム」を提供。ここに金融機関と事業会社のデータをつなげて蓄積することで、多くの新たな価値を生み出せるという。  「金融機関のデータからは顧客の現在資産や将来資産が推計できます。一方、事業会社のデータからは、顧客の生活スタイルや購買指向、ライフイベント、返済能力などの情報が得られるでしょう。これらを分析して意思決定につなげれば、“個客”に最適化した提案を、継続的に行えるようになり、ライフタイム・バリューを最大化できます」と深谷氏は強調する。  同社は、ほかにも金融統計情報やオープンデータを網羅したデータセット「SXスコア」、AIモデル構築の自動化を支援する「SkyFox」などのAIプロダクトを展開している。これらの提供を通じて、高付加価値サービスの実現を後押しする構えだ。  TISとセカンドサイトアナリティカが提案する「BaaS×AI」は、FinTech時代に金融機関が成長し続けるために、ぜひ検討すべきものといえるだろう。

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