PAYCIERGE(ペイシェルジュ)ソリューション お客さまの声
先進銀行らが採用する「次世代金融基盤」開発秘話、APIの諸問題を解決できたワケ
Kipp Financial Technologies 株式会社様
決済や与信などの金融機能をサービスとして提供する「BaaS(Banking as a Service)」への注目が高まっている。こうした動きを先取る形で必要なサービスを開発・提供しているのがKipp Financial Technologiesだ。しかし、限られたリソースと時間で必要な機能を実装することは難しく、特に国際ブランドプリペイドカードの発行サービスの開発では、予想以上のリソースが割かれることが予想された。同社が直面した課題と解決策を聞いた。
PAYCIERGE(ペイシェルジュ)のソリューション
ブランドプリペイドプロセッシングサービス
ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、ブランドプリペイドカードの発行・運営に必要なサービスをワンストップで提供するサービスです。ブランド付きのプリペイドカードに対する需要が高まっている背景には、法改正によるクレジットマーケットの冷え込みや海外渡航者の増加があります。また、ネット通販やオンラインゲームでの使い過ぎ防止、カード情報漏えいのリスクヘッジなどを目的に、ネット限定のバーチャルプリペイドカードに対するニーズも増加しています。本サービスを利用すれば、カード会員に多様な選択肢を提供できるようになります。
Kipp Financial Technologies 株式会社
事業内容:金融サービスの企画・開発
設立 :2018年3月20日
代表 :中島拓也(代表取締役)
https://kipp-corp.com/
プラットフォームでさまざまなAPIを提供するBaaSが直面した課題
2017年5月に成立した改正銀行法では、銀行に対し外部事業者と安全にデータを連携できる「オープンAPI」を公開することが努力義務として課せられた。このこともあり、「BaaS」が注目されている。このBaaSを事業の軸にするKipp Financial Technologiesは、2018年創業ながら累計5億円の資金調達を実施する有力なフィンテック企業である。 同社が提供するBaaS「kipp BaaS Platform」を活用すれば、金融サービス開発にかかる時間やコストを削減し、新機能を素早く追加したり外部サービスとAPI連携したりすることが可能になる。kipp BaaS Platformはセブン銀行グループの海外送金サービスや福岡銀行とKippが協業して運用するVisaプリペイドカードアプリ、アイフルグループの後払いサービスなどで活用されており、次々と顧客を獲得している状態だ。 Kipp Financial Technologies 代表取締役 CEO 共同創業者 中島 拓也 氏は「APIを使って金融サービスを開発するには、金融の知識や高い技術力が必要となります。そこで『kipp BaaS Platform』では、開発に求められるさまざまなAPIを1つのプラットフォームに集約して提供し、シームレスに組み合わせることでユーザーさまの開発のハードルを下げることを目指しています」と説明する。 一方、API連携のための基盤やAPIそのものの開発は容易ではない。特にVisaやMastercardなどの国際ブランドのクレジットカードの決済処理(プロセッシング)、カード発行(イシュイング)などのAPIを開発するには、ライセンスの取得、レギュレーションへの準拠、PCI DSS(国際ペイメントブランド5社が策定したグローバルセキュリティ基準)への対応など、多大な工数・手間がかかる。 このため同社はその開発にリソースを割くと、他のAPI開発が滞り「kipp BaaS Platform」の特長である”1つのプラットフォームで多くのAPIを提供する”ことが難しくなるという課題に直面した。同社はどのようにこの難局を乗り切り、有力フィンテック企業に成長できたのだろうか?
プロセッシングサービスを利用するという選択
もともとKipp Financial Technologiesには、金融系サービスの開発経験を持つメンバーがそろっていた。このため当初は、プロセッシングやイシュイングの仕組みを自分達で開発することを検討したという。 「しかし、いざ調べてみると開発に必要なドキュメントがそろっていないことや予想以上に手間がかかることが分かってきたのです。そこで、外部のリソースを活用する方針に切り替え、クラウドで提供されているプロセッシングサービスを探したところ、TISの『ブランドプリペイドプロセッシングサービス』を見つけました」(中島氏) TISの「ブランドプリペイドプロセッシングサービス」は、VisaやMastercard、JCBなどの国際ブランドプリペイドカードの発行など、ブランドプリペイド発行に伴う必要な機能をワンストップで提供するプラットフォームサービスである。このプラットフォームサービスを使うことで、ブランドプリペイドを使ってスピーディーに金融サービスを始めたり、自社サービスに決済を組み込んだりすることができる。 「もともとTISが決済分野で高いシェアと豊富な実績を持っていることは知っていました。また、ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、VisaだけでなくMastercard、JCB、さらにはQUICPayにも対応するなど、機能が常に拡張されていることも、重要なポイントでした」(中島氏) さらに、TIS側が同社のさまざまな疑問・質問に丁寧に対応したことも、同サービスを選択する後押しとなった。 「TISとの打ち合わせでは、システム全体のアーキテクチャが書かれた大きい紙を広げて、『これはどういう意味か』『ここはどうなっているのか』と1つひとつ質問して、それに回答してもらえました。その結果、全体像をクリアに理解することができました」(中島氏) こうして同社は「ブランドプリペイドプロセッシングサービス」の導入を決断し、開発をスタート。約1年をかけてVisaのイシュイング用APIを開発し、「kipp BaaS Platform」に実装することに成功したのである。
国際ブランドカードの運用に必要なさまざまな業務から解放
同社がブランドプリペイドプロセッシングサービスを利用した最大の成果は、Visaのネットワークに直接接続することで必要になるさまざまな作業から解放されたことにある。 国際ブランドのクレジットカードネットワークに接続すると、VisaやMastercardから送られてきたデータを直接処理しなければならない。そこには、もちろん生のカード情報も含まれているため、厳格なセキュリティ対策が必要になる。 しかし、ブランドプリペイドプロセッシングサービスを使うと、VisaやMastercardのデータがTISのフォーマットに変換されて送られてくる。しかも、カード番号はTIS側で別のIDに置き換えられて送られてくるので、Kipp Financial Technologies側はカード番号を扱わなくてすむ。 「弊社としては、TISから送られてくるデータ処理だけに注力すればよいのです。これは、今後、Visa以外のカードに対応する際にも重要なポイントです。もしもこうした仕組みを自社だけで開発したら、ここに貴重なリソースを費やし、さらに1年はかかったと思います」(中島氏) また、ブランド会社との接続に定期的に必要となる機能強化(エンハンスメント)にもTISが対応する。エンハンスメントが実施されると、そのたびにシステムの検証・テストが必要になる。数年に一度実施される大型エンハンスメントになると、その対応も大がかりになるが、Kipp Financial Technologies側は、それを意識する必要はない。さらに、PCI DSSの監査も大幅に簡略化できる。 「弊社側では、カード番号を扱うことはほぼありません。また、物理空間でカード情報を扱うシーンもほぼないので、PCI DSSの監査にかかる負担もそれほど大きくないのです」(中島氏) なお、kipp BaaS Platformは、リアルのカード発行にも対応しているため、印刷会社にカード番号を渡す必要がある。このためカード番号をまったく扱わないわけではない。そこで、安全にカード番号をやりとりする専用の仕組みを新たに構築する必要があったが、そこでもTISの技術力や柔軟な対応が役立ったという。
既存金融機関へのサービスを拡充し、事業会社のエンベデッドファイナンスも支援
現在、kipp BaaS Platformが対応している国際ブランドはVisaのみだ。まずはその種類をTISの協力を得ながら増やすことを1年以内に実現する見込みである。 対応する国際ブランドを増やすことは、さまざまな機能拡充の1つに過ぎず、中長期的には、kipp BaaS Platformの最大の特徴である「1プラットフォームで多くの使いやすいAPIを提供していく」ことが重要なテーマとなる。 「現在はカード発行だけでなく、後払いや与信などのAPIを充実させています。さらにkipp BaaS Platformは、取引以外のAPIが充実しているのも特長です。たとえば、残高チャージしたらスマートフォンに通知が届く仕組みを実現するには、通常はサーバ側の開発が必要になります。しかしkipp BaaS Platformであれば、こうした機能も含めてAPIで提供しているため、サーバ開発を最小限に抑えることができます。今後は、こうしたAPIをさらに充実させていきます」(中島氏) kipp BaaS Platformを活用してサービスを開発・提供しているのは、現在のところセブン銀行や福岡銀行、アイフルなどの金融機関が多い。今後も既存の金融機関へのサービス提供は拡充するが、金融以外の企業にも積極的に展開していく計画だ。 小売などの非金融系企業が自社サービスに決済などの金融機能を組み込む「エンベデッドファイナンス」のニーズが、今後、さらに高まることは間違いない。それだけに、必要なAPIを1つのプラットフォームで提供し、金融サービス開発のハードルを下げるkipp BaaS Platformへの期待は高い。今後の同サービスの進化に、ぜひ注目したい。
取材日/
PAYCIERGE(ペイシェルジュ)のソリューション
ブランドプリペイドプロセッシングサービス
ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、ブランドプリペイドカードの発行・運営に必要なサービスをワンストップで提供するサービスです。ブランド付きのプリペイドカードに対する需要が高まっている背景には、法改正によるクレジットマーケットの冷え込みや海外渡航者の増加があります。また、ネット通販やオンラインゲームでの使い過ぎ防止、カード情報漏えいのリスクヘッジなどを目的に、ネット限定のバーチャルプリペイドカードに対するニーズも増加しています。本サービスを利用すれば、カード会員に多様な選択肢を提供できるようになります。