コラム Column

FinTech時代の新潮流 デジタルバンクについて

●デジタルバンクの特徴とポイント

FinTechのサービスは多岐にわたり、今後さらなる市場拡大も予想される中で、デジタルバンクはどのようなサービスを担っていくのでしょうか。デジタルバンクの特徴とポイントを紹介します。

データの収集と活用

デジタルバンクの役割として、まずはオンライン上でのサービス展開が挙げられます。デジタルバンクを通じて顧客情報(例:決済データ)などのデータ取得を推進し、収集したデータを活用することで、データビジネスの展開が可能になります。こうした顧客情報を活用したデジタルバンクのひとつが「情報銀行」です。自社サービスを利用している個々人の購買データや行動データを収集・保管し、本人同意の下、活用したい第三者事業者に提供します。そこで生まれるビジネスモデルは2つ。

1つは、提供したデータをもとにした、第三者事業者による個人へ直接的なサービス提供。情報銀行の役割はサービス仲介となり、収益源は仲介料となります。
2つめは、提供したデータをもとにした、第三者事業者による新商品の開発・サービス展開です。情報銀行はデータを販売したことになり、収益源は販売手数料となります。

どちらのビジネスモデルも、情報銀行は企業と個人をつなぐ立場に位置付けられます。何れにせよ、情報銀行には膨大な情報の収集と蓄積が求められるのです。

顧客起点のサービス展開

従来、銀行は全国の支店を通した銀行起点でのサービス展開をしていましたが、FinTech企業の台頭を背景に、顧客は銀行以外の他事業者も比較しながら選択することが可能になりました。そのため、今後銀行は顧客ニーズを先読みした顧客起点のサービス展開が必須の課題となるでしょう。データの収集・蓄積・活用による、コンサルティングやビジネスマッチングといったサービスがデジタルバンクに求められる要件といえます。

チャネルの拡大

上記で説明した2つのポイントに関連する部分ではありますが、顧客情報の収集とニーズの把握には、これまでよりも多くの顧客と接点を持つためのチャネルの拡大が欠かせません。中でもオンライン上で完結するサービスやアプリの活用は、顧客の利便性向上につながります。チャネル拡大の必要性については、銀行への収益につながる顧客属性からも伺えます。1990年代後半〜2000年初頭に生まれた「Z世代」は、今後の日本経済を担う消費者グループです。彼らはSNSやスマートフォンを使いこなす「ソーシャルネイティブ」とも呼ばれています。生まれながらデジタルとの距離が近い彼らへのデジタルバンクを通したアプローチ(チャネル展開)は、銀行のさらなる顧客拡大につながるでしょう。

●デジタルバンクの事例

デジタルバンク

ここまで銀行とFinTechの関係、デジタルバンクのポイントを紹介してきましたが、具体的にはどのようなサービス、取り組みが始まっているのでしょうか。世界と日本のデジタルバンク事例を紹介します。

■世界のデジタルバンク

ここまで銀行とFinTechの関係、デジタルバンクのポイントを紹介してきましたが、具体的にはどのようなサービス、取り組みが始まっているのでしょうか。世界と日本のデジタルバンク事例を紹介します。

■世界のデジタルバンク

銀行のデジタル化は、世界の事例が先行しています。ここでは、デジタルバンクにおいて世界トップを走るシンガポールのDBSと、急成長中のイギリスを例に挙げ紹介します。

世界一のDBS銀行(シンガポール)

シンガポールの3大銀行の一つであるDBS銀行。2016年に金融専門誌「ユーロマネー」で「最高のデジタルバンク」に選ばれ、2019年には二度目の受賞を果たしました。これまでの取り組みには、申し込みから口座開設までをモバイルで完結するサービスの展開、クレジットカードの即時承認、決済システム・会計ソフトの開発、ネットバンキング・プラットフォームの提供が挙げられます。積極的なデジタルサービスの展開や、異業種とのAPI連携が、世界一のデジタルバンクを実現したのです。

急成長中、イギリスのデジタルバンク

イギリスの銀行はテクノロジー導入が遅れているため、スマートフォンなどの利用が一般的となっている若年層にとっては、使いづらいサービスとなっていました。しかし近年では銀行のデジタル化が進み、爆発的な普及と成長を遂げています。そこで先行するイギリスの事例から、イギリス初のデジタルバンク「Atom Bank」を紹介します。Atom Bankは口座開設からクレジットカード・デビットカードの発行手続き、住宅ローン、融資まで全てのサービスをモバイルアプリで完結できる環境を構築しました。顔認証や音声認証といった生体認証技術を最初に導入した銀行としても大変注目を浴びています。

■日本のデジタルバンク

最後に、日本における銀行のデジタル化への取り組みをご紹介します。

三菱UFJ銀行

三菱東京UFJでは2015年に「MUFGデジタルアクセラレータ」を設立し、スタートアップアクセラレータ・プログラムを実施しています。同プログラムはでは、金融サービスに変革をもたらす起業家・ベンチャー企業とともに、AIやブロックチェーンなどのデジタル技術を用いて革新的なビジネスの立ち上げを目指しています。異業種との事業プランのブラッシュアップやプロトタイプの構築支援を繰り返した、オープンイノベーションによる銀行・金融のデジタル化に日々取り組んでいます。

参考記事:MUFG Digitalアクセラレータ

みずほ銀行

みずほ銀行では、2016年にソフトバンクとともにFinTech企業「株式会社J.Score」を共同設立しています。また、2017年にはAIを活用した個人向け融資サービス「AIスコア・レンディング」を開始。みずほ銀行の審査ノウハウとソフトバンクのAI技術、そして両者が保有するビッグデータの活用といった、強みの融合によって生まれたサービスといえます。24時間、場所を選ばずにスマホやパソコンから自身の信用力をスコア化でき、個別化された適正な条件を確認できるのです。顧客が自身の情報を提供すればするほど、より最適な信頼性や可能性をスコアとてAIが提示します。企業にとっては貴重な顧客情報を収集できるため、顧客起点の新たなサービスに活用できるのです。

参考記事:株式会社J.Score

三井住友銀行

三井住友銀行では、最新テクノロジーを活用したデジタライゼーション(デジタル化・デジタル革命)を中期経営計画としています。具体的にはキャッシュレスの推進・関連サービスの提供や、上述した「情報銀行」を目指したデータ活用によるビジネスモデルの変革です。そのため、ベンチャー企業を含むパートナー企業の持つ技術やデータ、蓄積されたノウハウを融合させたオープンイノベーションを推進しています。2018年には、データ分析・マーケティング事業、開発支援を行う「ブレインセル株式会社」をYahoo! JAPANと共に新設。AIの活用や次世代決済プラットフォームの構築など、新領域へのチャレンジを加速させています。

参考記事:デジタルで切り拓く金融の未来

●まとめ

昨今、各企業にて起きているデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、金融業界に FinTechという形で影響を与えています。中でも、今回紹介したデジタルバンクは、今後の金融業界のあり方を大きく変える可能性があります。世界のデジタルバンクでは、銀行自らが新たなイノベーションの開発に勤しんでいることがわかりますが、日本のデジタルバンクの取り組みとしては、他企業との連携が目立ちます。すでに多くの支店や従業員を抱える日本のメガバンクが、システム構造や組織構造を刷新するには困難を極める事は想像に難くありません。しかし各行のオープンイノベーションへの姿勢からも、今後のデジタル時代を勝ち抜くためには、デジタル技術の活用や新規ビジネスモデルの確立が求められます。

キャッシュレス決済の普及やオープンAPIによる他企業との連携など、情報収集を意識したデジタルマーケティングの推進は、今後金融業界に限定しない異業種との連携につながります。もはやデジタル化は必須の課題となり、今後は他企業といかに新たなビジネスモデルを創出できるかが、DX時代を勝ち抜く鍵になるかもしれません。