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TISが見据える「キャッシュレス」の新時代

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SI事業からサービス事業へと、大きな事業転換に取り組むTIS。その先駆けとしてTIS内で4年前から取り組んだデビットカードサービスにおいて業界におけるNo1シェアを達成した。今年はQRコードやNFC(非接触通信)を使った新決済サービスのローンチにより、「キャッシュレス社会の実現」に向けた基盤固めを加速する。私たちの生活から現金という概念が消えると、社会がどう変わるのか。TISが見据えるキャッシュレス時代について、サービス事業統括本部 ペイメントサービス事業部 副事業部長の音喜多功氏に聞いた。 (本記事は、NewsPicksに掲載した記事の引用となります。掲載元:NewsPicks インタビュー・文:松田政紀[アート・サプライ]、写真:小島マサヒロ)

業界シェアNo1のデビットカード

TISでは現在、「ブランドデビットサービス・ブランドプリペイドサービスのASPサービス」のバックオフィス決済サービスを展開しています。(「クレジットカードのASPサービス」は現在開発中)決済を取り巻く環境は、モバイルデバイスの登場によって多様化が加速しました。接触型カード、非接触型カード、そしてモバイルアプリケーションへと広がっています。
その中で最も勢いがあるのは、ブランドデビットサービスです。国内のメガバンクや地方銀行などデビットサービスを採用している金融機関の大多数で弊社のプロセッシングサービスをご利用頂いています。スタートは2013年ですが、この短期間で高いシェアを達成できたのは、我々が持っていた決済に関する深く幅広い知見と、導入が比較的容易なASP型での提供形態が影響しています。

TISデビットサービスは銀行の勘定系システム・口座情報と24時間365日で直結しており、勘定系システムのゲートウェイ的な役割を果たす事ができます。つまり、「口座情報の参照・更新」をしたい事業者は、今年度リリース予定のデビットサービスAPIへ接続頂ければ、銀行勘定系システムへアクセスする事無く、口座情報の参照・更新が実現できます。実はこれ、フィンテック企業にとっては非常に価値のある機能だと思っています。 「つなげる、つながる」というコンセプトで投資・開発された決済ソリューション「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)2.0」の強みの一つは、金融機関とフィンテック企業が安心安全に、かつ簡単につながることです。 今年は「フィンテック新法(仮称)」の制定が急がれていますが、銀行など強固なセキュリティに守られた勘定システムに外部から接続しようとすれば、安全性を担保するためのシステム開発・運用には膨大な予算が必要です。加えて、開発機能にもよりますが、長い期間を要するでしょう。これはフィンテック企業には負担となり、かつそれ程の期間を待つ事はできないと思います。 この課題を解決したのがPAYCIERGEでした。TISデビットサービスのAPIを公開することで、フィンテック企業はサービスやアプリケーション開発に注力できます。まさに銀行とフィンテック企業をつなぐハブの役割を果たし、彼らが生み出す魅力的なサービスを銀行やその先のお客様に届けることに貢献できるようになります。

昨年は協業も視野に入れたフィンテック企業からの問い合わせも多かったため、今年中にTISデビットサービスに必要なAPIを含む「(仮称)DBP(デジタルバンキングプラットフォーム)」というコンセプトのサービスを立ち上げます。これによって銀行・ベンチャー・お客様それぞれの利便性を加速させることができるでしょう。 もう1つ大きな利点があります。それは、銀行とお客様のニーズを的確にとらえたことです。TISデビットサービスは「代行処理」というサービスで、「24時間365日」銀行勘定系との更新処理を実現しています。
TISデビットサービスは銀行の営業時間外でも、本来銀行が処理するデータを一時的に保持し、更新します。これによりお客様やフィンテック企業は、リアルタイムで口座情報を更新する機能を手に入れる事になり、より充実したサービスやアプリケーションを開発する事を可能にした、画期的なサービスだったといえます。

世界を見据えたQRコード決済システム

音喜多写真 新たなミッションに取り組むため組織の再編をしています。その背景は、既存のSI事業に危機感を持ったことが非常に大きく、率直に言えば、昨今良く言われていますが、人月ビジネスモデルの終焉が来るという危機感です。 4年前に金融部門の一部としてビジネスをしていた決済ソリューション事業部を拡大し、先行投資型のサービス企画・開発の領域を拡大。更に、今年4月新たな経営判断により、社内に点在していたサービス事業にかかわる人材や部門を統括する組織を作り、サービス事業統括本部を立ち上げました。これによりSIからサービス事業への転換を加速する体勢を整えました。 その新組織において、先ほどお話しした「QRコード」と「NFC」に関するビジネスに取り組むべく、新サービスをローンチして行きます。

国内でQRコードというと、「URLなどの情報を読み取るだけ」という認識も多いと思いますが、海外の決済ブランド「Alipay(アリペイ)」や「WeChat(ウィーチャット)」などの決済は、QRコードを使用しています。漠然としたイメージでくくると、ブランドビジネスが展開されている先進国はNFC、新興国だとQRコードともいわれています。2020年のオリンピックでは、各国からのインバウンドが見込まれています。その方々が、自国で使っている決済サービスをそのまま使えれば、どれだけ便利なことか。世界を見据えたとき、今後QRコードが持つ可能性は計り知れません。 ただし、現時点でNFC、QRどちらがデファクトスタンダードになるのか見極めるのは非常に難しい状況です。アジア圏は特殊で日本・韓国・台湾では、NFC・QRサービスともに普及し始めていますが、弊社としても、2本(QR/NFC)の決済サービスを引き続き追い求め、主軸事業として展開していくことで今後数十年の変化に対応できると考えています。

キャッシュレスが実現する未来の生活

決済サービスを展開する上で大切にしたいのは、「キャッシュレス社会の実現による社会貢献」です。 たとえば店舗が少ないような地方では、時間をかけて銀行へ行き、現金をATMで引き出して買い物をする。もしくは地域・店舗専用のプリペイドカードにチャージして買い物をするなど、現金が動いています。地方はパチンコユーザーが多く、意外にもプリペイドカードにチャージする文化が根付いています。地方でキャッシュレス化が進めば、銀行側では窓口業務の縮小、ATM設置・管理コストの削減、お客様側は移動時間や手間を削減できます。
ほかにもクレジットカードの導入コストや手数料問題、NFCの対応店舗数問題も、既存のデビットカードが主流になると一部解決できると考えています。クレジットカードのように与信管理コストもありません。キャッシュカード一体型のデビットカードも登場し、ますます利便性も高まっています。

プリペイドサービスは、金融庁による規制緩和が実現すれば、フィリピンなどで行われている給与振込や、仮想通貨などの仮想口座として対応可能になります。今後の展開しだいで社会を変える力を十分もっていると思います。 さらに決済領域において「IoT決済」と「スマートシティ構想」が、これからのキーワードになると考えています。近い未来のキャッシュレス社会を実現するためのサービスを開発するという点で、ペイメントサービス事業部はTISの未来を担っている部門といっても過言ではありません。 決済で社会を変えるようなサービスを企画・開発するには、柔軟な発想とスキルを持った人たちが必要です。わくわくするような新規事業を創造する人、事業化する人、そしてサービスとして展開する人、3つの役割が重要。そんな人たちと一緒に描く未来を実現したい。
「キャッシュレス社会の実現」により、決済サービスは文化になるかもしれません。若者、年配者、男女、生活圏などによって選ぶ決済サービスは変わりますが、ユーザーニーズを的確に捉え、ユーザーエクスペリエンスを構築していけばいい。我々の決済サービスで、すべての人に貢献できる未来をつくりたいと思っています。 (インタビュー・文:松田政紀[アート・サプライ]、写真:小島マサヒロ 2018年04月06日)

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