カテゴリ海外レポート要約
原文タイトルProject Agorá shows how tokenisation can improve wholesale cross-border payments
出典BIS report page
想定読者銀行、決済業務、企業財務、事業企画、金融システム企画の担当者

リード文

BISとIIFが主導するProject Agoráは、ホールセール・クロスボーダー決済において、トークン化とプログラマビリティがどのように既存の非効率を改善し得るかを検証する国際的な官民連携プロジェクトです。2026年5月に公表された成果では、トークン化された中央銀行準備とトークン化された商業銀行預金を共有プラットフォーム上で組み合わせ、多通貨のアトミック決済を実現できる可能性が示されました。

この記事のポイント
  • トークン化は、ホールセール・クロスボーダー決済の非効率を改善する手段として検証されている。
  • 中央銀行準備と商業銀行預金をトークン化し、共有プラットフォーム上で接続する構想が示された。
  • 多通貨・複数法域にまたがるアトミック決済の可能性が示された。
  • 今後は実価値取引を含むテストへ進む予定。

Project Agoráとは何か

Project Agoráは、BISとIIFが主導する官民連携プロジェクトです。中央銀行と民間金融機関が参加し、ホールセール・クロスボーダー決済において、既存の二層通貨システムの信頼性を維持しながら、トークン化とプログラマビリティをどう活用できるかを検証しています。

何が検証されたのか

1. トークン化された中央銀行準備と商業銀行預金の組み合わせ

中央銀行マネーと商業銀行マネーを分けて考えつつ、両者を共有プラットフォーム上で接続する点が特徴です。

2. アトミックな多通貨決済

複数通貨・複数法域にまたがる取引の連鎖を「全て成立するか、全て成立しないか」という形で処理する考え方です。

3. プログラマビリティによる業務ロジックの組み込み

スマートコントラクトを用いることで、決済条件、コンプライアンス確認、支払トリガーなどを取引プロセスに組み込める可能性があります。

銀行・企業財務にとっての意味

  • 銀行にとっては、価値移転と業務ロジックを一体化した決済基盤の方向性を示す。
  • 企業財務にとっては、資金移動の可視性、決済タイミングの予見性、資金管理の柔軟性向上につながる可能性がある。
  • 決済、コンプライアンス、流動性管理を共通基盤上で組み合わせる発想が重要になる。

日本の実務者が読むべきポイント

Project Agoráは、将来のクロスボーダー決済や資金管理の設計思想として読むべきレポートです。特に、トークン化された商業銀行預金、中央銀行マネーとの接続、決済ファイナリティ、データプライバシー、AML/CFT対応は、日本で検討する場合にも重要な論点です。

今後の論点

  • 実価値取引のテストで、技術・運用・法務・リスク管理の課題がどこまで具体化されるか。
  • 参加金融機関が増えた場合、プラットフォームのガバナンスや運用責任をどう設計するか。
  • 既存の預金、中央銀行準備、ステーブルコインとの関係をどう整理するか。

出典・参照

  • BIS, Press release: Project Agorá shows how tokenisation can improve wholesale cross-border payments; work will advance to real-value testing, 27 May 2026.
  • BIS, Project Agorá: a shared programmable platform for wholesale cross-border payments, 27 May 2026.
  • BIS Innovation Hub, Project Agorá: exploring tokenisation of wholesale cross-border payments, updated 27 May 2026.