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無人店舗とは? 国内外の事例やメリットを紹介

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こんにちは。米木です。今回は各国で事例が増えている「無人店舗」を例に今後の日本の店舗の在り方(傾向)についてお話したいと思います。

少子化の影響で、レストランやコンビニの店員採用が難しくなっているということをよくニュースなどで見かけます。コンビニの24時間運営の見直し、店舗のキャッシュレス化、IT化などさまざまな試みがなされています。セルフレジなどはスーバーや駅のコンビニなど至る所に設置されていて、使い慣れている利用者も多くいるようです。

まずは無人店舗の基本的な知識を振り返りながら、国内での事例や「Amazon Go」を例にご紹介します。

<目次>
1.無人店舗とは? 注目される背景
┗無人店舗注目の背景は「非接触」? 拡大する市場規模
2.「消費者」「企業」視点からの無人店舗のメリット
┗「消費者」視点からの無人店舗のメリット
┗「企業(店舗)」視点からの無人店舗のメリット
3.無人店舗、国内での事例
4.無人店舗の完成形は「Amazon Go」
┗Amazon Goの難しさ
5.Amazon Goに隠された次の目的とは
6.無人店舗の実現に向けたクリアすべき課題

1.無人店舗とは? 注目される背景

無人店舗とは、最先端のデジタル技術によって無人化した店舗を意味します。無人化を叶えるデジタル技術には消費者の行動を認識するAIを搭載したカメラや、商品の増減を管理する圧力・重力センサー、人的オペレーションを必要としないキャッシュレス決済などがあげられます。
無人店舗への取り組みが活発な中国では、コンビニ・スーパー・カラオケ・レストランなど、すでに多くの企業が参入していますが、日本では主にコンビニ業界の参入が先進的です。

一方「無人化」といっても、完全に無人の店舗展開には課題が多く、バックヤードに最小限の従業員を配置し運営する事例がほとんどです。

無人店舗注目の背景は「非接触」? 拡大する市場規模

世界的なパンデミックを招いた新型コロナウイルス。人々の感染意識が上がる中、「非接触」に対するニーズが拡大しています。同様に、不特定多数の人々が手にする現金からキャッシュレス決済への移行、関連システムの導入も進んでいます。

株式会社グローバルインフォメーションが公表した市場調査レポート「非接触型決済の世界市場:動向、シェア、市場規模、成長、および機会予測(2021年~2026年)」によると、世界の非接触型決済市場は、2020年に105億米ドル規模に。2026年には207億米ドル規模に達すると予測しています。
キャッシュレス推進協議会が公表する2020年のコード決済の利用状況データでは、2020年の決済金額は4兆2003億円で、19年の1兆1205億円から約3.5倍の増加です。また月間でのアクティブユーザー数は19年の1854万人から3636万人へと倍増しています。

無人店舗の実現に欠かせない非接触とキャッシュレス決済の潮流が激しい昨今、消費者のニーズも相まって、無人店舗への注目度や企業の参入はさらなる拡大が予想されるでしょう。

2.「消費者」「企業」視点からの無人店舗のメリット

拡大する無人化へのニーズですが、消費者・企業それぞれにどのようなメリットがあるのか、紹介します。

「消費者」視点からの無人店舗のメリット

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消費者視点での一番のメリットは「シームレスな購買体験」です。有人店舗の場合、レジでの待ち時間が発生しますが、無人店舗の中にはレジを通さずに専用のゲートを通るだけで決済が完了する事例があります。またキャッシュレス決済の場合も、人件費へのコストを設備投資に配分でき、複数台のセルフレジによるレジへの列緩和が期待されます。

また前述の通り、新型コロナウイルス感染拡大を防止する非接触型の購買が可能になることで、消費者と店員との接触がなくなり、会計での不安やストレスの解消が見込めます。

「企業(店舗)」視点からの無人店舗のメリット

企業(店舗)視点での主なメリットは下記になります。

・人件費の削減
・セキュリティ強化(万引き防止)
・データの収集と活用

 

・人件費の削減

少子高齢化による労働力人口の低下は、あらゆる業界で叫ばれている課題です。小売業界でもその課題は深刻であり、人手不足を補う形でデジタル技術の活用が進んでいます。無人店舗では、店舗での従業員雇用を最低限もしくはなしに抑えられるため、人件費の削減が可能です。

・セキュリティの強化(万引き防止)

無人=セキュリティ面に懸念を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、無人店舗では有人店舗よりも店内に多数のカメラを設置し商品を手にする消費者の認証も行う場合があります。今後さらにカメラやセンサーなどの技術が進化することで、セキュリティ面はさらに強化するでしょう。

・データの収集と活用

無人店舗では、さまざまなセンサー・カメラから消費者の行動データを収集できます。
またPOSレジを使用すると購入商品、時間、個数などのデータも抽出可能です。データを活用することで、ターゲットユーザーへのアプローチ方法の拡大や店舗レイアウトの改善につながります。よりパーソナルにマーケティング施策を検討できれば、消費者の購買体験は、より快適なものとなるでしょう。

3.無人店舗、国内での事例

他国の無人店舗への参入を受け、日本でも事例が増えています。

2018年10月から2か月間JR東日本スタートアップ(株)とサインポスト(株)が赤羽駅に無人決済店舗の実証実験を展開しました。2020年3月に山手線の新駅高輪ゲートウェイ駅に実験店舗「TOUCH TO GO」が展開されましたまたコンビニ各社もさまざまな無人店舗、レジの実証実験を行っています。(株)セブン-イレブン・ジャパンと(株)NTTデータはレジ無し店舗の実証実験を2019年12月17日から実施、顔情報による決済システムが導入されており、今後その成果が期待されます。

上記の実証実験を経て、日本で実用化されている実例はいくつか存在しています。(https://ttg.co.jp/)中国でいち早く導入された無人コンビニ店を私は上海で見ましたが、利用客は多いとは言えませんでした。現在も無人店舗は多いとは言えませんが、数年前よりは確実に増えてきています。しかし、無人店舗は商品の品揃え、決済手段の問題・やり方、設備費、人件費などまだまだ課題が多く残っているように感じます。

日本の市場にとって100%無人店舗にできなくとも業務の半分以上をシステムの力で補う事が可能になれば、日本の未来も少しは明るくなるのではないでしょうか。これからの動向にも注目したいと思います。

4.無人店舗の究極は「Amazon Go」

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Amazon Goについては別の記事「スマートストアとこれからの顧客体験」でも少し触れていますが、Amazon Goが初めて登場したのが、2018年1月のことで、1号店は米国Amazonの本社内に開店しました。このニュースは衝撃をもって伝えられたことを今も覚えています。一番のインパクトは、お店の棚にある商品を手に取り、そのままバッグに入れてしまうという動画でした。まるで万引きをしているような映像には誰もが驚いたことでしょう。同時に「Amazon Goでどうやったら万引きが成功するか」を冗談交じりに議論した方もおられるのではないでしょうか。

Amazon Goでは店舗のあらゆる場所にカメラが設置されており、入店時にスマホのQRコードを改札機の様なゲートにかざします。その後、顧客の動向はカメラに監視され、商品を取るたびにシステムがカウントします。出店時に再びスマホをゲートにかざすと、事前に登録されているAmazon IDで決済が行われます。

「レジに並び決済を行う」という今までの流れを覆し、このような方法で決済まで完了してしまう究極の店舗がこのタイミングで世の中に出てきたというのが世界中を注目させた理由の一つだと思うのです。

Amazon Goの難しさ

Amazon Goはとても魅力的な店舗ではありますが、実は100%無人ではありません。買い物時に戸惑う顧客のため、案内役の店員が待機しています。また商品が棚に対して正確に並んでいないと、システムが誤認してしまうため、店員がときどき商品の整頓を行っています。小さな店舗でも最低2人は必要なイメージです。

決済という部分での「無人」は成功ですが、顧客対応、商品陳列、商品追加などまだまだ検討すべき課題は山積みです。個人的には将来100%無人店舗をAmazon Goが実現してくれるのを楽しみにしていますが、もしかしたらAmazonの狙いはそこでは無いのかもしれません。米国では日本の様な人手不足状態になっているわけではないからです。もしかしたら、Amazon Goで確立した技術をAWSと共に他社に横展開するというようなことは狙いとしてあるかもしれませんね。※2020年3月9日にJust work outが世の中に出ましたね!

5.Amazon Goに隠された次の目的とは

私もAmazon Goの店舗に行き、買い物体験をしてきました。実際体験をしましたが、驚きの体験というものはほとんどありませんでした。もちろん入出店時にゲートにスマホをかざすことは新鮮であり、レジに並ぶ必要が無く決済が完了できる点については便利さを感じました。

しかし、棚に並んでいる商品を手に取ることについては、今までと何も変わりません。自分のバックにそのまま商品を入れるという行動に関しては最初違和感がありましたが、お店のカゴが自分のバックに変わったという事だけです。

一店舗を実現する為の店舗設備費、技術費・人件費などを考えると、この実験のメリットはどこにあるのでしょうか。私はAmazonにとってこの実証実験は次のステップに繋がる通り道に過ぎないのではないかと考えています。

Amazon Goの店舗では、顧客がどのような導線で店舗を回るのか、どんな商品を棚から手に取り、購入していくのかなど、今まで入手できなかった顧客一人ひとりの行動情報を入手・分析する事が可能になります。顧客一人ひとりに寄り添った快適な買い物体験を提供できるような、そんな店舗が登場する日も遠くないのかもしれません。

6.無人店舗の実現に向けたクリアすべき課題

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先進的な動きを見せるAmazon Goですが、完全な「無人化」にはクリアすべき課題が多くあります。国内でも実証実験がなされる中、無人店舗の実現に向けたハードルをご紹介します。

まずは初期費用にかかるコストです人件費を削減する代わり、無人化を実現するカメラ・センサーなど多くの設備投資が必要です。中でもキャッシュレス決済は必須となります。現在はキャッシュレス 決済が乱立状態にあるため、各サービスの導入にも時間を要するでしょう。無人店舗を展開するには、短期的な利益ではなく、中長期の事業計画が重要になります。
自社内で全てを用意するのではなく、各種専門ベンダーなどの活用も視野に入れるべきでしょう。

課題を抱えつつも、キャッシュレス化の流れや消費者ニーズを踏まえ、今後無人店舗の拡大や実現はそう遠くないと考えられます。

実は、私の会社のオフィスには無人コンビニが設置されており、店員は1人も立っていません。商品を選び、配置されているセルフレジで清算しています。企業内など利用者が限定された店舗であればいくつかの課題はクリアされるため、こうしたと領域では「無人化」どんどん進んでいくのでしょう。

また全ての場所で必ずしも完全な「無人化」を実現する必要もありません。部分的なレジのセルフ化や自動化など、自社の課題に合わせた業務の効率化を目指してみてはいかがでしょうか。

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