コラム Column

MaaSとは? 最新の国内・海外事例や市場規模、構成要素を徹底解説!(後編)

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前編ではMaaSの定義と概要についてお話しました。 今回のコラムでは国内外の事例、サービスの構成についてお話ししてきます。

MaaSの国内・海外事例

では、具体的に日本や世界ではどのようなMaaSの取り組みが行われているのでしょうか。いくつか代表的な例を紹介します。

●国内MaaS事例

まずは国内MaaS事例について紹介します。

・トヨタ自動車

2018年、トヨタの豊田社長は「トヨタは自動車を作る会社からモビリティカンパニーへチェンジする」と宣言し大きな注目を集めました。

宣言の前後からトヨタはすでに単なる自動車にとどまらない、さまざまなMaaSサービスを打ち出しています。たとえばソフトバンクと共同出資で設立したMONET Technologiesは、鉄道やバスなどの移動手段に加えて、人やモノ、サービスをつなぐ新しいモビリティを作り出すことを目指しています。

また、トヨタ・レクサスの新車を月額利用料を支払って利用できるサブスクリプションサービス「KINTO」や、スマホから簡単に利用できるカーシェアリングサービス「TOYOTA SHARE」を開始。2020年のCESでは自動運転やAIなどの実証研究を行うための都市「Woven City」構想を打ち出すなど、社を上げてMaaSに取り組む姿勢を見せています。

昨年には西日本鉄道と協力しMaaSアプリ「my route」の運用をスタート。さまざまな交通機関を組み合わせたルート検索が行えるほか、予約や決済もアプリ内で完結できる仕組みを構築しています。

・JR東日本

JR東日本も積極的にMaaSに取り組んでいます。2017年にはオープンイノベーションによりモビリティ変革を創出する場として「モビリティ変革コンソーシアム」を設立。交通事業者、国内外企業、研究機関など多数の組織・団体が参加し、調査や実証実験を進めています。

また、2020年には群馬県の大型観光キャンペーン「群馬デスティネーションキャンペーン」の期間中、MaaSの実証実験を実施。群馬県を中心とした指定の鉄道路線が2日間乗り降り自由となるデジタルフリーパスの発売や、観光スポットを選択するだけで簡単に旅行計画が作成できる旅行プランニングサービスなどの取り組みが注目を集めました。

・小田急電鉄

小田急電鉄は2019年、オープンな共通データ基盤「MaaS Japan」を活用したMaaSアプリ「EMot(エモット)」をサービスインしました。EMotは複合経路検索と電子チケット発行の機能を備えたアプリです。

たとえば鉄道とバス、タクシーなどの交通サービスを組み合わせた経路検索ができるほか、経路検索結果から連携するアプリやサイトへ遷移してモビリティの予約・決済が可能になる機能を備えています。

さらに飲食のサブスクリプションサービスや買い物の特典チケットなどを提供するなど、モビリティのその先まで見据えたアプリとなっています。

・TIS

弊社でも実証実験を含め様々な取り組みをしており、あらゆる交通機関の利用を可能とするサービスの実現にチャレンジしています。更には流通、観光等との連携を行う事でそれら全てのデータ取得、分析、活用リサイクルを回し、MaaSにおけるデータ活用モデルの構築を目指しています。詳細はコチラ(https://service.paycierge.com/maas/)

●海外MaaS事例

続いて海外のMaaS事例を紹介します。

・中国「滴滴出行」

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(画像出典:DiDiモビリティジャパン株式会社 https://didimobility.co.jp/)

中国の配車プラットフォーム「滴滴出行」(DiDi)は、タクシーに乗りたい人と乗せたいタクシーをアプリでマッチングするサービスです。AIを活用した分析・予測テクノロジーを採用しており、タクシー配車を最適化しているのが特徴です。同社は他にもヒッチハイクアプリの「DiDi Hitch」、自転車シェアアプリの「DiDi Bike-Sharing」などさまざまなサービスを手がけており、MaaS分野でも注目を集める企業のひとつです。日本ではソフトバンクと提携し、DiDiモビリティジャパンを設立。2018年からサービスをスタートさせています。

・フィンランド「Whim」

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(画像出典:Whim https://whimapp.com/jp/package/coming-to-japan/)

海外のMaaS事例で代表的なものがフィンランドの「Whim(ウィム)」です。2017年にフィンランドの首都ヘルシンキでスタートしたWhimは、タクシーやシェアサイクルなどの交通サービスをまたいだルートの検索、予約、決済などをすべてアプリ上で行うことができるというもの。いち早くMaaSの思想を実現したアプリであり、現在はフィンランド以外の各国にもサービスを拡大しています。日本への上陸も決定しており、国内MaaS市場の盛り上がりに一役買いそうです。

●MaaSの構成要素

MaaSの国内・海外事例では、利用者の移動手段を最適化するのはもちろん、ひとつのアプリでチケットの予約や決済まで可能にしていました。

MaaSはさまざまなサービスと技術を組み合わせて実現されるものであり、理解するためには個別の要素についても知る必要があります。あらためて、MaaSを構成する要素について、サービスと技術の観点から具体的に見ていきましょう。

サービス面での構成要素

サービス構成

これまでに紹介してきたように、MaaSは鉄道やバス、タクシー、飛行機などの公共交通機関をひとつのアプリ内で統合することが基本となっています。

また、移動方法には公共交通機関以外にも、ライドシェアやカーシェアリング、シェアサイクル、レンタカーといった移動サービスも含まれます。

移動手段だけでなく、移動周辺サービスもMaaSを構成する要素のひとつです。たとえばガソリンスタンドや駐車場情報、代行サービスなどは、交通手段と関連する周辺サービスです。こうした周辺サービスも同様に、ひとつのアプリ内で扱うことができれば、利用者にとっても便利ですし事業者にとっても宣伝効果が生まれます。

さらに、宅配便や飲食のデリバリーなど、物流や輸送サービスなどのビジネスにおける移動も、MaaSを構成する要素の1つになります。

技術面での構成要素

MaaSは各種サービスをまとめるだけではありません。統合したサービスに先端技術を掛け合わせることで、多くのメリットを生み出しています。たとえばAIはMaaSプラットフォームによって得られたデータを分析し、ユーザーの求める情報を適切に提供するために使われます。

データの収集に用いられるのがIoTです。「モノのインターネット」と呼ばれ、あらゆるものがインターネットに接続されることをいいます。

通信に使用するネットワークもMaaSに必須となります。現在、最新のモバイル通信規格となるのが5Gで、超高速で大容量のデータを安定して通信することができます。スマホはもちろん、さまざまなIoTデバイスから5Gでデータを送信し、AIが分析してMaaSサービスに反映させていくといった活用が考えられます。

従来ばらばらだった交通機関をひとつのアプリ内に統合するためには、APIはとても重要です。APIとはソフトウェアの機能を外部から呼び出して使用するための仕様のことです。API連携することで、複数のシステムをつなぐことができるのです。

またMaaSを普及させるのに重要なのが決済手段です。ひとつのアプリ内で交通サービスを完結させるためには、決済システムは必須の技術といえます。しかも、異なる交通機関の決済を一度に行うためには、各交通機関の決済をひとつのシステムで統一しなければなりません。

決済システムとAPI連携が、MaaSの各種サービスを構成する欠かせない技術となるため、現在移動サービスを展開する多くの企業が、ベンダーとの連携を進めています。

●まとめ

MaaSは単なる移動の効率化ではなく、社会そのものを大きく変える注目の概念です。すでにさまざまな取り組みが国内外で始まっており、これから急速に成長していく市場であることは間違いありません。

さまざまな業界と関わり巻き込んでいくMaaSの拡大は、多くの企業にとってのビジネスチャンスでもあります。MaaSに関連するサービスや技術を正しく理解し、自社の事業に生かしていきましょう。