株式会社甲南チケット様

PAYCIERGE(ペイシェルジュ)ソリューション お客さまの声

「現金依存」から脱却、甲南チケットが挑んだ金券ショップDX

株式会社甲南チケット様

もともと「不況に強い」と言われる金券ショップビジネスだが、コロナ禍とともに急加速したデジタル化の波は、業界のあり方を大きく変容しようとしている。そこでいち早く現金商売への依存から脱却を図り、FinTechによる「金券ショップDX」に着手したのが甲南チケットだ。とはいえ、開発リソースも金融業界のノウハウも十分でなかった同社は、いかにして新たな決済アプリサービスを実現できたのだろうか。

PAYCIERGE(ペイシェルジュ)のソリューション

ブランドプリペイドプロセッシングサービス

ブランドプリペイドプロセッシングサービス

ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、ブランドプリペイドカードの発行・運営に必要なサービスをワンストップで提供するサービスです。ブランド付きのプリペイドカードに対する需要が高まっている背景には、法改正によるクレジットマーケットの冷え込みや海外渡航者の増加があります。また、ネット通販やオンラインゲームでの使い過ぎ防止、カード情報漏えいのリスクヘッジなどを目的に、ネット限定のバーチャルプリペイドカードに対するニーズも増加しています。本サービスを利用すれば、カード会員に多様な選択肢を提供できるようになります。

株式会社甲南チケット

sellpaylogo

事業内容    全国各地に金券ショップ店舗を展開
設立      平成4年10月6日
資本金     3,000万円
代表取締役   藤巻 好仁

デジタル化の加速で取り扱い商材がなくなる危機

甲南チケットは京阪神地区を中心に全国で27の実店舗を構え、チケットや金券、商品券の買い取り・販売ビジネスを展開している。乗り物のチケットやクレジットカード会社が発行するギフトカード、百貨店の商品券、株主優待券などの物理的な金券類を主要商材として取り扱い、年間利用者数は約180万人(2021年)に上る。

 しかし、チケットや商品券の電子化が加速する現在は、金券ショップ業界自体がビジネスモデルの過渡期を迎えているという。甲南チケット 代表取締役の藤巻 好仁氏は、業界が置かれている現状について次のように語る。

「まずネット予約サービスの普及によって、我々のビジネスにおいて収益の柱だった新幹線の回数券が廃止になりました。その他の金券類や株主優待券などもどんどん電子化しており、金券ショップで取り扱いできる商材が年々減ってきています。今後もこの流れは変わらないでしょう」(藤巻氏)

 金券ショップはこうした現状を打破するための新たな打ち手が求められており、金券類の販売と並行してブランド品やお酒などの物品買い取りを始める事業者が増えつつあるという。その中で、甲南チケットが今後の事業成長のために選択した手段が、FinTechの活用だ。

 以前からWebを通じた買い取りや販売も行っていたが、基本的に実店舗での現金商売がメインである。そんな金券ショップの大手である同社が、オンライン決済・キャッシュレス化に舵を切り、ノウハウがない中で“金券ショップDX”を実現させた裏側には、多くの工夫と大胆な戦略があったという。

都市型のワンショットビジネスを全国からの双方向・リピート型に

 基本的に、金券ショップ業界は景気に左右されない業界といわれる。コロナ禍で物理的な外出や移動が減って交通系の金券の取扱量が減少したものの、現在のような物価高騰なら消費者の節約マインドが高まるため、本来であればむしろ追い風となる。

 ところが、それ以上にデジタル化の波とコロナ禍での人々の行動変容が、従来型のビジネスモデルに逆風となってしまった。店舗への来店客も物理的な取り扱い商材も減少し、デジタル空間ではライバルとなるサービスやネットの買取ショップが乱立している。

甲南チケットは全国各地に店舗を展開し、年間554億円以上(2022年3月期)を売り上げる
金券ショップ業界の大手である

 そこで甲南チケットでは金券ショップビジネスのデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手。社長である藤巻氏の主導のもと、2022年11月に打ち手の第一弾としてブランドプリペイドカード(クレジットカード会社の決済システムを使って支払いをするプリペイドカード)とアプリを活用した「SELL&PAY(セルペイ)」をリリースした。このサービスを開始した意図について、藤巻氏は次のように説明する。

「SELL&PAYを開始した理由はいくつかあります。金券ショップのビジネスは、基本的にその場限りのワンショットビジネスです。その中で特色を出しつつ、リピートして利用してもらえるようにするのが、理由の1つ目です。2つ目は商圏の拡大です。従来のお客さまは都市部に集中しているため、それ以外の地域の方々も取り込もうと図りました。これまでも店舗に足を運べないお客さまはネット買い取りで対応してはいましたが、それも基本的にワンショットビジネスなので、お客さまの固定化を目指してFinTechや決済モデルを間に入れたSELL&PAYサービスをローンチしました」

甲南チケット 藤巻氏

甲南チケット 代表取締役 藤巻 好仁氏

このように甲南チケットでは、顧客との双方向の関係を構築するためのプラットフォームとして、SELL&PAYという仕組みにたどり着いた。サービスの基盤や手段は、複数の形を検討した上で、アプリ上でVisaプリペイドカードを提供するスタイルを選択している。

「会員証を発行するだけでは会員登録して終わりになり、リピートがあまり期待できません。対してクレジットカードは審査が必要で発行に時間がかかってしまう上に、そもそもクレジットカードの登録自体に抵抗を感じる人もいます。ブランドプリペイドカードであれば、同じブランドカードであっても入会審査はなく、申し込みも簡単です。チャージした電子マネーを使う際も、Visaブランドなのでほぼどこでも使えます」(藤巻氏)

 

サービス実現に立ちはだかった4つのハードル

 サービスのコンセプトを実現するためには、①ライセンス ②システム構築 ③申請手続き ④サービスの運用という4つのハードルがあり、それら解決していく必要があった。

 Visaなどのブランドプリペイドカードは、申請すればどの企業も認められるというものではない。カード発行のライセンスは特定の金融系企業にしか認められておらず、サービスを開始するにあたってはそれらの企業と契約し、そこからライセンスを借りる必要がある。

 顧客接点となるスマホアプリから決済周りまでのシステム開発も必要である。特に決済周りのシステムは独特で、一般企業が開発するのは困難だ。甲南チケットでも「ノウハウや開発後のランニングコストの面からも、自社で賄うのは難しいと判断しました」と藤巻氏は語る。

 事務作業の面でも、新しいサービスの開始に際して煩雑な申請業務が発生する。資金決済法において前払式支払手段にあたるサービスを始めるには財務局への認可申請や、カード会員のデータを安全に取り扱うためのPCI DSSの認可申請が必要であり、それぞれ対応や事務作業に膨大な手間がかかる。

 そして実際にプリペイドカード事業を行う際には、クレジットカードの業界団体が定めたPCI DSSに準拠した厳しいセキュリティ条件のもとで顧客データを管理しなくてはならない。

TISのAPI型ブランドプリペイドプロセッシングサービスで問題をクリア

 これら多くの課題を解決するために、甲南システムはクレジットカード関連のシステムや決済ソリューションサービスで国内トップクラスの実績を持つTISをパートナーとしてサービスを構築した。

「Visaプリペイドカードを発行するためのライセンスを、以前の親会社であるオリエントコーポレーション(以下オリコ)から借りる形にしました。その際にどのようなシステムを用意すればいいかを業務ノウハウが豊富な同社に相談したところ、システムパートナーであるTISを紹介され、システム構築からサービスイン後の運用までの決済周りをTISに依頼することにしました」(藤巻氏)

 SELL&PAYでは、アプリで登録するとバーチャル上にカードが発行され、ユーザーに16桁のカード番号が付与される。番号付与はオリコと連携して行う必要があり、その際にTISの技術を使っている。また、カード発行業務(プロセッシング)だけでなく、カードへのチャージや利用時のオーソリゼーション(注)、決済業務までをTISが代行する。

注:オーソリゼーション…カード利用時にそのカードが決済できる状態であるかクレジットカードに問い合わせて確認すること


SELL&PAYは審査なしで誰でも簡単に利用できる、プリペイドカード式Visaカードのアプリだ

 システム構築にあたっては、国際ブランドプリペイドカードの発行に必要な機能をワンストップで提供する「API型ブランドプリペイドプロセッシングサービス」を採用した。TISが提供するカード発行システムと、決済ネットワークのシステムを活用し、サービスの基盤を構築している。TISのサービスを利用することでシステム構築面だけでなくさまざまな負荷が削減できた、と藤巻氏は明かす。

「SELL&PAYの裏側ではTISのサービスを活用しているため、PCI DSSの認可申請の際にはTISの準拠証明をそのまま使え、監査会社からも顧客情報を管理しているのがTISなら大丈夫と認めてもらえました。私たちがカード情報の管理にあたり実施しているのは照会端末の管理だけです。TISのサービスを活用せず、オリコからデータをもらって私たちがお客さま情報を管理する形を選んでいたら、認可を取るだけでも大変だったと思います」

 同様に、財務局への申請もスムーズに完了させることができたといい、「顧客情報を含む、さまざまな情報管理をもし自社でやろうとしていたらサービスを開始するまで膨大な労力が必要だったと思います」と藤巻氏は語る。

チャージソースを増やしてサービスの利便性向上を目指す

 SELL&PAYでは今後も随時機能を拡充していく計画だ。「今はあくまで双方通行の仕組みが用意されただけで、サービス内容は本来目指しているところまでは到達していません」と藤巻氏は話す。たとえばアプリへお金をチャージする方法は、現時点だとユーザー自身による入金と甲南チケットが買い取った金券の2種類だけであり、まずチャージの入り口を増やしていこうとしている。

「手元にあるものを段ボールに入れて一括で送っていただき、その買い取り額をアプリに反映させるなど、チャージ方法の追加を目指しています。もちろんそれだけでなく、後払い決済(BNPL)やクレジットチャージ、電子マネーチャージにも対応できるか、今は実現性を検討しているところです。決済基盤のシステムはTISさんの仕組みを使っているためサービス追加が簡単で、弊社はブランド品を査定するためのパートナーシップやマーケティング領域などのコア領域に注力できます。TISには引き続き、パートナーとしてご一緒してもらいたいですね」(藤巻氏)

TIS 井手

TIS DXビジネスユニット DX営業ユニット
ペイメントサービス営業部 井手 優太朗氏

 藤巻氏の言葉を受け、システムを提供する側のTISもSELL&PAYサービスの高度化を後押ししていく構えだ。同社 DXビジネスユニット DX営業ユニット ペイメントサービス営業部 井手 優太朗氏は今後への意気込みをこう示す。

「API型ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、サービスの拡張性が1つのキーポイントになっています。プリペイドカードが発行できるだけでなく、近年ニーズの高いBNPLに対応や、さらには2023年4月の労働基準法の省令が改正されたデジタルマネーによる給与支払いなど、世の中の動向にも随時対応していきます。そのようなサービスの幅広さや拡張性に加えて、何より他社でも導入されている実績がTISの強みです。サービスを通じて、引き続きSELL&PAYの進化を支援していきます」(井手氏)

取材日/

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ブランドプリペイドプロセッシングサービス

ブランドプリペイドプロセッシングサービス

ブランドプリペイドプロセッシングサービスは、ブランドプリペイドカードの発行・運営に必要なサービスをワンストップで提供するサービスです。ブランド付きのプリペイドカードに対する需要が高まっている背景には、法改正によるクレジットマーケットの冷え込みや海外渡航者の増加があります。また、ネット通販やオンラインゲームでの使い過ぎ防止、カード情報漏えいのリスクヘッジなどを目的に、ネット限定のバーチャルプリペイドカードに対するニーズも増加しています。本サービスを利用すれば、カード会員に多様な選択肢を提供できるようになります。