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【2026年最新】実態調査から紐解くAML/CFT対応の実態と課題
-「第5次対日相互審査」を見据えた対応のヒント

「第5次対日相互審査」を見据えた対応のヒント

近年、金融機関においてマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)の重要性は一層高まっています。国際的な規制強化や金融犯罪の高度化を背景に、金融機関にはリスクベース・アプローチに基づく継続的な体制構築や高度化が求められています。

その一方で、運用負荷の増大や対応体制の整備など、実務面での課題が顕在化しているケースも少なくありません。

そこでTISでは、「金融機関におけるAML/CFT対応の現状や課題の把握」を目的として、金融業界関係者を対象にアンケート調査を実施しました。AML/CFT業務の体制、運用の負荷、ツール活用の状況などについて調査を行い、金融機関が直面している課題の実態について、幅広い回答を得ることができました。

本記事では、アンケート結果をもとに、金融機関におけるAML/CFT対応の現状と課題を整理し、今後の対応高度化に向けたポイントをご紹介します。

  • 実施期間:2026年1月8日~1月15日
  • 調査方法:インターネット調査(Fastask)
  • 年齢:制限なし
  • 職業:会社員(事務系/技術系/その他)、経営者・役員
  • 勤務先業種の設定:金融業、保険業

目次
1 【回答者属性】金融機関での業務経験者が多数
2 【体制】「方針やシステムはグループで統一」が約半数。一方で、同じ方針のグループ内でも別システムを使うケースが約3割
3 【課題】第5次対日相互審査に向け、顧客管理と取引モニタリングが目下の課題
4 【ツールの導入状況】特定の方式に依存せず、各金融機関の体制や既存システムに合わせたツールが選ばれている
5 【ツール・運用の課題】システム導入が進む一方、運用面での課題も
6 【ツール見直しの理由】属人化や手作業の多さが深刻な課題
7 まとめ|体制整備やツール導入は進展する一方、運用負荷の軽減と業務高度化が今後の重要なテーマとなる

1 【回答者属性】金融機関での業務経験者が多数

金融機関での業務経験者が多数
本調査では、AML/CFT業務に携わったことのある方を対象に、金融業界の幅広い業種から回答を得ました。「AML/CFT業務に携わったご経験のある業界を全てご選択ください」の質問では「銀行」と答えた割合が53.8%と過半数となり、特に銀行での経験が多くなっています。銀行を中心に保険会社、証券会社、クレジットカード会社など、金融機関に経験が集中している傾向が見られました。

2 【体制】「方針やシステムはグループで統一」が約半数。一方で、同じ方針のグループ内でも別システムを使うケースが約3割

「方針やシステムはグループで統一」が約半数
「AML/CFTに関するグループ内の方針・システム状況」についての質問では「方針・システムともにグループで統一されている」と回答した方が48.4%となりました。グループ全体でAML/CFTに関する方針およびシステムを統一している企業が約半数を占めている、と読み取ることができます。
その一方で、「方針は統一されているものの、システムは各社で異なる」など、運用形態には一定のばらつきが見られました。

3 【課題】第5次対日相互審査に向け、顧客管理と取引モニタリングが目下の課題

顧客管理と取引モニタリングが目下の課題
「FATF第5次対日相互審査」とは、2028年8月に実施予定の国際的なAML/CFTの審査です。このFATF第5次対日相互審査に向けて「課題と感じる点」について、「顧客管理(CDD、EDD、KYC、UBO特定)」および「取引モニタリングと検知」を挙げる企業が最も多い結果となりました(いずれも39.4%)。次いで、「企業全体のリスク評価、業務設計、人員配置、投資計画への反映(36.6%)」や「疑わしい取引の届出(33.2%)」なども一定の割合で挙げられています。

ここで挙げられた項目は、顧客管理や取引モニタリングなど、「AML/CFT対応の中核業務」に集中しています。運用負荷や対応体制の整備が依然として大きなテーマであることがうかがえる結果となりました。

こうした結果を踏まえると、今後AML/CFT対応のさらなる高度化に向けて重要となるのは「業務の効率化・高度化を支援する『仕組み』を整備すること」と考えられます。特に「顧客管理」や「取引モニタリング」を中心とした領域に注力していく必要があるでしょう。

4 【ツールの導入状況】特定の方式に依存せず、各金融機関の体制や既存システムに合わせたツールが選ばれている

各金融機関の体制や既存システムに合わせたツールが選ばれている
「仕組み化」が求められている中、AML/CFT関連ツールはその一助となる解決方法です。では、実際に使っている企業は、どのような形態のツールを利用しているのでしょうか。

「現在利用しているAML/CFT関連ツール」を問う質問では、「自社開発(クラウド環境)」が31.2%、「外部ベンダー製品(オンプレミス)」が30.0%、「外部ベンダー製品(クラウド/SaaS)」が29.0%となりました。自社開発と外部ベンダー製品の双方が広く利用されており、AML/CFTツールの導入形態は多様化しています。この要因として、特定の形態に偏るのではなく、「各金融機関の体制やシステムに応じた選択」が行われてきた結果であると読み取れます。

加えて、クラウド・SaaS型ツールの活用も一定程度進んでいることがわかりました。AML/CFTシステムの導入環境は、オンプレミス中心から多様化しつつあります。

これらの結果から、AML/CFT対応の高度化や運用効率化を進めるにあたり、重要となるのは「各社の業務特性や既存システム環境に適したツール導入を検討すること」と言えます。今後の新規導入や入れ替えの際には、自社開発・外部ベンダー製品・クラウドサービスなど複数の選択肢を踏まえたうえで、自社に適した形態を選択することが重要だと考えられます。

5 【ツール・運用の課題】システム導入が進む一方、運用面での課題も

システム導入が進む一方、運用面での課題も
では、AML/CFT体制やツール・システムを運用するにあたり、どのような点が課題となっているのでしょうか。
この設問で最も多く回答されたのは「人材不足(36.4%)」。次いで「手作業や担当者依存による業務負荷」が35.9%という結果でした。「誤検知の多さ」と「有効性検証や運用根拠の整理不足」が29.2%で続きます。

ツールの導入が進んでいる一方で、アラート対応や検知結果の確認などの業務では、人手による対応が多いのが現状です。ツールではカバーしきれない業務が残り、担当者への依存や業務負荷が大きくなっている状況が読み取れます。

AML/CFT対応の高度化を進めるためには、ツール導入だけではなく、誤検知の削減やアラート対応の効率化など、運用負荷を軽減する「仕組みの整備」が重要だということが言えるでしょう。

6 【ツール見直しの理由】属人化や手作業の多さが深刻な課題

属人化や手作業の多さが深刻な課題
現在すでにAML/CFTツールを使っている企業の中で、「AML/CFTツールの変更・統合」を検討する方も一定数います。その理由として、どのような点が挙げられるのでしょうか。

この質問の回答としては「運用負荷の高さ(属人化・手作業)」が54.8%で最多。これに次いで、「システム統合・接続負荷」が39.9%、「有効性検証の説明根拠不足」が35.1%、「現行ツールの機能不足」が34.6%、「誤検知の多さ」が33.0%など、挙げられました。

AML/CFTツールの変更や統合が検討される背景には、実運用における負荷や管理の複雑化が影響していると考えられます。特に、手作業や担当者依存といった属人化の課題は、AML/CFT業務の継続的な運用において大きな負担となっている可能性があります。

つまり、「AML/CFT対応の高度化を進めるためには、単なるツール導入ではなく、運用効率化や業務プロセスの標準化を含めた『システム設計』が重要になる」と言うことができるのです。

7 まとめ|体制整備やツール導入は進展する一方、運用負荷の軽減と業務高度化が今後の重要なテーマとなる

本調査によって、金融機関におけるAML/CFT対応は、専任体制の整備やシステム導入が進み、一定の運用基盤が構築されていることが確認できました。一方で、AML/CFT業務の現場では、人材不足や属人化した運用、手作業による業務負荷などの課題が依然として残っていることも明らかとなりました。

このような課題を解消するために、過半数の企業がAML/CFTツールの変更や統合を検討しており、既存システムの見直しや運用改善の動きが広がっていることもわかりました。
今後のAML/CFT対応の高度化のために必要なことは、「単なるツール導入」だけにとどまりません。「運用効率の向上」や「業務プロセスの最適化」を含めた、取り組み・仕組みづくりが重要となってきます。

具体的には、以下のような取り組みが検討テーマになるでしょう。

  • AML/CFT業務プロセスの効率化・標準化
  • 複数ツールの統合・システム連携の最適化
  • 手作業や属人業務の削減に向けた自動化の推進
  • データ活用や有効性検証の高度化

これらの取り組みを通じて、AML/CFT対応の実効性を確保しながら、継続的な業務負荷の軽減とAML/CFT運用の高度化を実現していくことが重要なのです。AML/CFT対応の高度化を検討する際には、この調査結果を参考データとしてぜひご活用ください。