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CFTとは?金融犯罪におけるCFTの重要性や取り組み事例について解説

金融・決済サービス事業者にとってCFT(テロ資金供与対策)は、ブランド価値や社会的信用を守るうえで欠かせない取り組みです。
適切にCFTを進めていくには、国際的な基準の策定動向や、国内の具体的な取り組み事例を把握することが重要です。
本ページでは、CFTの重要性や具体的な取り組み事例について詳しく解説します。

1 CFTとは?

CFTとは「Countering the Financing of Terrorism:テロ資金供与対策」の略で、テロ活動に関与する資金がテロリストに渡るのを防ぐための対策を指します。
現在、暗号資産などを利用した国境を越えた資金移動が増加しており、世界的にCFTの強化が求められています。日本国内で金融・決済サービスを提供する企業にとっても、国際的なCFTの取り組みを推進し、資金の流れを適切に管理することが不可欠です。
まずはCFTの概要を把握するために、その役割やテロ資金供与の仕組みについて確認しましょう。

1-1 金融犯罪対策におけるCFTの役割

金融犯罪対策においてCFTは、AML(Anti-Money Laundering:アンチ・マネーローンダリング)と並んで重要な取り組みの1つです。AMLとCFTの違いについては、 CFTと他の関連用語の違いにて解説します。
国際的な金融システムの健全性を維持するためには、AML/CFTといった取り組みを行い、資金の出所や用途を健全に保つことが不可欠です。
AML/CFTを推進する国際組織FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)では、国際基準の制定や各国への勧告を行い、金融犯罪への対策を強化しています。このような国際的な枠組みに対応するかたちで、日本国内でも多くの企業がCFTに取り組んでいます。

1-2 テロ資金供与の仕組み

テロ資金供与は、マネーローンダリングの手法と密接に関係しています。
マネーローンダリングとは「資金洗浄」のことで、犯罪によって得た資金の出所を隠し、合法的な資金であるかのように見せかける行為を指します。
テロ資金供与では、マネーローンダリングの手口が利用されることがあります。例えば、国境を越えたマネーローンダリングの手段として利用されることの多い暗号資産は、テロ資金供与にも悪用される可能性があります。
実際、次の図のような、日本国内で集めた資金を暗号資産に換え、暗号資産交換業者を通じて本国に送金するという手口のマネーローンダリング事件が発生しています。

出典:警察庁『犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和5年)』P47【事例10】

CFTを推進するには、このようなマネーローンダリングの防止も不可欠です。

2 CFTの取り組み事例

金融機関ではCFTのためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。代表的な施策として以下の4つが挙げられます。

  • 取引内容・目的に関する追加確認の実施
  • 利用者情報の再確認
  • 疑わしい取引の届出(STR)
  • モニタリングシステム・サービスの導入

それでは、それぞれの取り組みについて詳しく見ていきましょう。

2-1 取引内容・目的に関する追加確認の実施

多くの金融機関では、取引金額が高額な場合やテロ資金供与のリスクが高いと判断される取引に対し、通常の確認事項に加えて営業実態の確認などの追加措置を講じています。
こうした追加確認は、金融庁が発表した「マネーローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(通称マネロンガイドライン)に掲載されている「対応が求められる事項」の一つです。多くの金融機関がこのガイドラインに沿って追加確認を実施しています。

2-2 利用者情報の再確認

銀行などの金融機関では、口座を開設している利用者に対し、「お客さま情報ご提供のお願い」や「お取引目的等確認書」などの郵便物を送付することで、定期的に利用者情報の再確認を行っています。
CFTを推進するには、口座開設時に確認した「住所・生年月日・職業・取引の目的」などの情報を、常に最新の状態を保つことが重要です。その一環として、郵便物を活用した定期的な確認が実施されています。

参考: 金融機関からの「お客さま情報」や「お取引目的」の確認にご協力ください! | 政府広報オンライン

2-3 疑わしい取引の届出

マネーローンダリングやテロ資金供与の可能性がある「疑わしい取引」を届け出る取り組みも行われています。
この届け出は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」によって義務付けられており、マネーローンダリングの可能性がある取引情報を行政機関に提出することが求められます。
疑わしい取引を漏れなく検出するためには、マニュアル整備、従業員教育、社内システムの強化の必要があり、多くの企業が対応を進めています。

2-4 モニタリングシステム・サービスの導入

CFTを徹底するには、取引内容を監視する「モニタリング」が不可欠ですが、すべてを人力で行うことは現実的ではありません。そのため、疑わしい取引を自動的に検知するITシステムやサービスの導入が、多くの企業で進められています。
TISではCFT関連のサービス「AML/CFT統合サービス」を提供しています。
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3 CFTと他の関連用語の違い

CFTについて理解を深めるために、関連用語である「AML」「KYC」との違いを確認しておきましょう。

用語 意味・目的
AML(Anti-Money Laundering:アンチ・マネーローンダリング) 犯罪によって得た収益の出所を分からなくして、正当な手段で得た資金であるかのように見せかける行為(マネーローンダリング)を防止すること。
KYC(Know Your Customer:顧客確認) 本人確認手続きのこと。不正利用の防止・与信審査・転売防止など、さまざまな目的で実施される。
CFT(Countering the Financing of Terrorism:テロ資金供与対策) テロ活動に関与する資金がテロリストに渡るのを防ぐ対策のこと。

「AML」「KYC」はそれぞれ異なる概念ですが、いずれもCFTと密接に関係しています。前述の通り、マネーローンダリングはテロ資金供与の手段としても利用されることがあり、対策の観点からも、AMLとCFTは密接に関連しています。またAMLやCFTを適切に実施するためには、KYCを徹底し、確実な本人確認を行うことが不可欠です。
金融システムの健全性を維持するためには、「AML/CFT/KYC」の3つ全てを徹底することが重要です。
AMLについて、詳しくは以下のページでも解説しています。

[マネーローンダリングの事例8選!概要や具体的な事例・規制について解説]

4 CFTの重要性と影響

企業はなぜCFTに取り組む必要があるのでしょうか。また、CFTの取り組みが国際社会にどのような影響を与えるのでしょうか。CFTに取り組む重要性とメリットについて、以下の2点を確認しておきましょう。

  • 国際的な規制強化の流れ
  • 企業価値への影響

4-1 国際的な規制強化の流れ

CFTの取り組みが重要とされる理由の一つに、国際的な規制強化の流れが加速していることが挙げられます。近年、暗号資産など国境を越えた送金手段が増加し、CFTやマネーローンダリング対策の必要性が世界的に高まっています。
例えば、FATFは2018年に基準を改定し、仮想通貨(暗号資産)交換業者などに対する規定を追加し、CFTの取り組みを強化しました。(※1)
このように国際的に規制が強化される中で、自社のCFT対応が遅れると、テロ組織が利用する「逃げ場」として悪用される可能性があります。そのため、日本国内においても、すべての企業がCFT強化の国際的な流れに対応することが求められています。
日本はCFT対応の面で課題がある「重点フォローアップ国」(※2)としてFATFに指定されており、対応の遅れを指摘されています。そのため、従来の対策にとどまらず、さらなる強化が必要です。

※1 参考: 金融庁 2018年11月12日 参考資料 資料3

※2 2021年の第4次審査の結果

4-2 企業価値への影響

企業価値を守るためにも、CFTの取り組みを強化することは重要です。
CFTの対策に問題があり、万が一にもテロの資金確保の手段として自社が利用されることになれば、社会的信用を大きく失うことにもなりかねません。
築き上げてきた自社のブランド価値や取引先企業との信頼関係などを守るためにも、CFTに取り組むことは重要といえます。

5 TISのCFTサービス

TISでは、AML/CFT統合サービスを提供しています。「本人確認」「取引のフィルタリング・モニタリング」「継続的顧客管理」など、AML/CFTに必要なソリューションを総合的に提供するサービスです。
これは、犯罪収益移転法などの各種ガイドラインに準拠し、法令改正に対応しながら、常に最新の基準に沿ったサービスを提供するものです。また、必要な機能を選択できるため、事業内容に応じた柔軟な導入が可能です。
さらに、業務のコンサルティングや運用代行にも対応しており、AML/CFTに関する課題解決をトータルでサポートします。サービスの詳細は、以下のページをご確認ください。

AML/CFT統合サービス | PAYCIERGE(ペイシェルジュ)

6 まとめ

CFTは、国際的な規制強化の流れに沿って、企業が取り組むべき重要な課題です。特に、金融・決済などテロ資金供与に利用される可能性のある事業を行う企業は、社会的信用やブランド価値を守るためにも、AMLやKYCと併せてCFTの取り組みを推進することが求められています。
CFTの進め方や社内体制の整備についてお悩みの際には、AML/CFT統合サービスを提供するTISにご相談ください。

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