現在、企業間取引には業務効率化のためのデジタル化が求められており、特に近年は決済のデジタル化が急速に進んでいます。 企業間取引における決済の市場規模は年間1000兆円を超えるとされている中、アナログ業務と呼ばれている部分がまだ600兆円以上あると考えられており、これに対するデジタル化、FinTech活用の潜在的需要は非常に高いと言えるでしょう。この記事では企業間取引とは何か、企業間取引の領域で企業が抱える課題はどこにあるのか、そしてデジタル化への対応について解説します。
1.企業間取引とは
企業間取引とは、メーカーと卸売り、卸売りと小売り、元請けと下請け間など、企業間で行われる商取引のことです。「Business to Business」の略で「BtoB(B2B)」とも呼ばれます。
一般消費者向けの商品やサービスの販売に当たる「BtoC(Business to Consumer)」と比較すると、企業間取引のフローは複雑で多岐にわたります。基本的な流れは下記の通りです。
- 見込み顧客のリード獲得
- 顧客のニーズのヒアリング、ナーチャリング
- 与信申請、与信管理
- 提案書の作成、商談、受注活動、見積書の発行
- 契約内容のすり合わせ、契約書・注文書・注文請書の発行
- 商品やサービスの提供、納品書・検収書の発行
- 請求書の発行
- 決済処理
このように企業間取引は工程が多く、申請・承認のフローを伴う書類発行が必要になるなど、多くのタスクが発生します。ここからは、企業間取引の特徴や課題、デジタル化への対応について見ていきましょう。
2.企業間取引の特徴
企業間取引「BtoB」で扱う商品・サービスは、一般消費者向け取引「BtoC」に比べて一取引あたりの価格が高く、契約内容も複雑です。提案や契約などの取引を進める上での交渉・承認、決済など、プロセスが多岐にわたり、多く人が関与するため、時間と手間がかかります。
このように取引の開始から完了までのフローが長く、複雑であることが企業間取引の特徴です。
さらに、長期にわたって信頼関係を築き、継続して取引を行うケースが多いことも特徴です。取引相手の事情に合わせてスムーズな取引ができる環境を整え、信用を得ることが求められます。
3.企業間取引のデジタル化とは
ここまで説明した通り、企業間取引は取引のフローが長く、工程ごとに適切かつ複雑な手順を踏む必要があり、業務効率化にはデジタル化が欠かせません。本章では、デジタル化の現状やメリットを解説します。
企業間取引に欠かせないデジタル化
現代の日本企業においては、FAXや郵送など紙のドキュメントを前提とした業務や現金での支払いが未だ行われており、企業間取引の効率化を妨げています。電子帳簿保存法の改正により、ドキュメントはデジタル上で適切に保管することが求められているため、バックオフィスのデジタル化は避けて通れません。
さらにインボイス制度や賃金デジタル払いが開始したことで、経費精算などの会計業務はこれまで以上に複雑になっています。従来のアナログ管理のままでは煩雑な業務となってしまい、不正やミスが起こりやすくなってしまいます。
デジタル化の現状
取引において、約半数の企業がリモート商談や電子受発注に対応しています。その理由としては「業務効率化」や「感染症対策」などが大半です。また電子受発注はコロナ禍前から対応していた企業も多くあります。
しかし、従業員規模が小さくなるにつれて、デジタル化に対応している企業の割合は低くなります。中小企業など規模の小さい企業ではデジタル化への対応が遅れており、特に決済手段として現金を使用している割合は、依然として高い状況です。
▼参考資料
「企業間取引のデジタル化状況に関する調査」の調査結果について(2023年9月19日)
企業間取引のデジタル化のメリット
企業間取引をデジタル化するメリットとして大きいのは、生産性の向上による業務効率化です。また、工数の削減による人手不足の解消にも効果が見られています。
さらには、これまで紙ベースで行っていた請求書業務を一括で管理できるシステムを導入することで、業務の定型化による人為的ミスの減少も期待されます。
オンライン上で取引を進行できるため、遠方との交渉も可能です。これまで対面では難しかった地域との取引が可能になったり、現地に足を運ぶ手間を削減できたりします。交通費や郵便料金の削減ができるのもメリットです。
▼参考資料
中小企業庁「第3章 第1節 取引適正化と企業間取引」
中小企業庁「令和3年度取引条件改善状況調査 結果概要」
4.企業間取引における課題
ここまで、企業間取引のデジタル化はメリットも多く欠かせないものであることを説明してきましたが、中小企業などでは未だ進んでいない現状があります。
では、現代の日本企業には他にどのような課題があるのか、見ていきましょう。
資金繰り改善への対応
企業間取引では、円滑な資金管理が必須となっています。資金繰りが上手くいかないと、取引先への支払いや給与の支払いなどに影響を及ぼし、最悪の場合は会社の存続に関わります。急な支払いの発生に対応する資金の不足など、特に中小企業にとってはリスクが大きい状況に陥りやすいでしょう。
帳簿上で利益が出ていたとしても、実際に現金が入ってくるまでにタイムラグがあるため、その間に支払いができなくなってしまうと黒字倒産となります。そのような最悪の事態を防ぐためにも資金繰りとキャッシュフローの改善が多くの中小企業において課題となっています。
国際化への対応
経済のグローバル化に伴い、企業間取引のグローバル化も加速しています。貿易だけでなく、業務の一部アウトソーシングなど、様々な形で外国との取引が行われています。
取引のためには日本だけでなく、外国の制度に留意し、適切な業務フローを構築する必要があります。
ITインフラの整備とセキュリティ対策
企業間取引では、機密性の高い情報が含まれます。WEB上で情報を扱う場合、セキュリティ対策は欠かせません。さらにはデジタル決済や法人カードでの支払いをする際には決済情報の入力において高いセキュリティが必要となります。
それらのソリューションツールの整備や情報管理、サイバー攻撃への対策などは企業間取引をデジタル化する際に必ず取り組みましょう。また、自社のセキュリティだけでなく、情報を中継するプラットフォームのセキュリティの確認も忘れずに行うことが重要です。
5.企業間取引における新たなビジネス機会
中小企業では、様々な業務対応に迫られてリソースやコストをかける余裕がないことも多いでしょう。デジタル化の必要性を認識していても、なかなか踏み出せていないのが実情です。
例えばそのような中小企業に対し、キャッシュレスなどと合わせて課題を解決するサービスを提供できれば、市場での大きなシェアの獲得が見込めます。
また、BtoB決済の市場から見ると、デジタル決済を推進するフィンテックやベンチャー企業にタッチポイントを持っていない中小企業が大半だと見込まれます。
特に「伝統的な中小企業」の多くは、情報に触れる機会も少ないでしょう。これは企業間取引に関連するビジネスへの参入を考える事業者にとって、潜在的な市場がまだ多く残されているということです。
こうした中小企業にどうアプローチしていくか、ビジネスを検討していく上で非常に重要なポイントとなります。
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