クレジットカード決済において欠かせない「オーソリゼーション(以降、オーソリ)」は、支払い時の承認プロセスを意味します。スムーズな取引を支える一方で、オーソリNG(承認エラー)が発生すると決済ができなくなることもあるため、注意が必要です。
本コラムでは、オーソリの仕組みやNGの原因と対処法、不正利用を防ぐための対策までを分かりやすく解説します。安心・安全にクレジットカード決済を行うために、チェックしておきましょう。
1 クレジットカードのオーソリとは?まずは意味と役割をチェック
1-1 オーソリゼーション(authorization)の定義と役割
1-2 与信とオーソリの違い
1-3 オーソリの流れ
2 オーソリNGとは?発生する原因と対処法
2-1 オーソリNG(承認エラー)とは?
2-2 代表的なオーソリNGの原因一覧
2-2-1 利用限度額の超過
2-2-2 有効期限切れ
2-2-3 カード番号・暗証番号の誤入力
2-2-4 カード停止・無効カードの使用
2-2-5 システム障害・通信トラブル
2-2-6 その他の原因
2-3 オーソリNG時の対応とユーザーサポートのポイント
3 オーソリの種類とは?
3-1 自動オーソリ
3-2 手動オーソリ
4 オーソリの限界と不正利用とは?
4-1 オーソリだけでは不正利用を防げない理由
4-2 よくある不正利用のケースと仕組み
4-2-1 スキミングやフィッシングによるカード情報の盗難
4-2-2 1円オーソリの悪用
5 不正利用防止のためにカード事業者が導入すべきセキュリティ対策
5-1 3Dセキュア(本人認証サービス)
5-2 不正検知システム(FDS)
5-3 カード利用通知・利用制限機能
5-4 EMV準拠カード(ICチップカード)の完全普及
5-5 カード再発行・補償体制の整備
5-6 オーソリ試行回数の制限
6 安全なクレジットカード決済を実現するために店舗でできる取り組み
6-1 セキュリティに強い決済代行会社を選ぶ
6-2 PCI DSSなど業界基準への対応状況の確認
6-3 店舗が見直すべき運用ルール
6-3-1 従業員向けの不正対策教育
6-3-2 顧客への注意喚起・FAQ設置
7 まとめ
1 クレジットカードのオーソリとは?まずは意味と役割をチェック
クレジットカード決済において、「オーソリ」はよく耳にする言葉です。まずはその意味や仕組み、与信との違いについて正しく理解しておきましょう。
1-1 オーソリゼーション(authorization)の定義と役割
オーソリゼーション(authorization)とは、「認可」「承認」「権限の付与」などを意味する言葉で、クレジットカード決済では「利用可否の確認」や「信用照会」として重要な役割を果たします。
通称「オーソリ」として広く使われており、カード決済時には、「カードが有効か」「利用限度額を超えていないか」などを確認するために、カード会社が即座に承認審査を行います。この承認によって、決済が許可されるかどうかが判断され、取引の成立可否が決まります。つまり、オーソリは不正利用や過剰な利用を未然に防ぐための防衛線として機能しているのです。
例えば、盗難や紛失によって停止されたカード、あるいは利用限度を超えたカードが使用された場合、オーソリの段階で取引拒否され、不正利用や過剰利用の被害拡大を未然に防ぐことができます。オーソリは、安全でスムーズなクレジットカード取引を実現するために欠かせない仕組みの一つです。
1-2 与信とオーソリの違い
与信(Credit)とオーソリ(Authorization)は、どちらもクレジットカードの信用に関わる重要な概念ですが、その役割は異なります。
まず「与信」とは、クレジットカード会社が契約者の収入や信用履歴をもとに審査を行い、「利用限度額(与信枠)」を設定する仕組みです。この限度額は、契約時にあらかじめ決められ、利用者がカードで使える最大の金額として管理されます。
一方の「オーソリ」は、クレジットカード会社が実際の決済時に「このカードが今、使えるか」を確認する手続きです。カードが有効期限内か利用限度額を超過していないか、不正な利用の兆候がないかを即時に審査し、承認または拒否が判断されます。オーソリが承認されると、その金額分の利用枠が一時的に確保され、後の請求処理(売上処理)まで保持されます。
このように、与信はあらかじめ設定された信用枠であり、オーソリはその枠を使う際の都度確認という違いがあります。
1-3 オーソリの流れ
オーソリの流れは、クレジットカード決済が行われるたびにリアルタイムで自動処理され、わずか数秒以内に完了します。
顧客が店舗やECサイトでカード情報を入力・提示すると、その情報はまず加盟店から決済代行会社(またはアクワイアラー)に送信されます。決済代行会社は複数のカードネットワーク(Visa、Mastercard など)やカード会社と接続しており、該当するカードブランドのネットワークを通じて、カード発行会社(イシュア)へ情報を中継します。
カード会社は「カードの有効性」「限度額」「不正検知ルール」などの複数の観点で取引を即座にチェックし、承認(OK)または拒否(NG)を返却。その結果は加盟店に戻され、決済が成立するか否かが即時に通知されます。
この一連の処理が秒単位で行われており、顧客にとっては一瞬のうちに完了しているように見えますが、実際には複数の事業者間で高度な連携がなされています。
2 オーソリNGとは?発生する原因と対処法
オーソリNG(承認エラー)は、クレジットカード決済時にカード会社が取引を承認せず、決済が成立しない状態を指します。ここでは主な原因や対処法、顧客対応のポイントを解説します。
2-1 オーソリNG(承認エラー)とは?
オーソリNG(承認エラー)は、クレジットカード決済時にカード会社によって取引を承認拒否されたことにより、購入処理が完了しない現象です。
店舗で「このカードは使えません」と案内されたり、ECサイトで「エラーが発生しました」などと表示された場合、多くはこのオーソリNGが原因と考えられます。オーソリNGが発生すると、決済は完了せず、購入手続きも中断されます。理由はさまざまで、利用限度額の超過やカードの有効期限切れ、不正利用の疑いなどが含まれます。
利用者自身が原因を特定するには、カードの利用明細を確認するか、直接カード会社に問い合わせることが有効です。原因を解消すれば、再度の決済で利用可能となるケースも少なくありません。
2-2 代表的なオーソリNGの原因一覧
クレジットカードがオーソリNGとなる原因はいくつもありますが、ここでは代表的な原因について紹介します。
2-2-1 利用限度額の超過
クレジットカードには、利用者ごとに「利用限度額」が設定されています。この限度額を超過すると、カード会社が承認せず、オーソリNGが発生します。
特にリボ払いや分割払いを併用していると、未払い残高も限度額に含まれるため、思ったより早く上限に達するケースがあります。
さらに、支払い遅延があると信用情報に影響し、一時的に利用限度額が引き下げられることも。
このような状態が重なると、限度額を超えていないと思っていてもオーソリNGになる可能性があるため、利用状況の定期的な確認と、余裕ある使い方が大切です。
2-2-2 有効期限切れ
全てのクレジットカードには有効期限が設定されており、この期限が過ぎると自動的に無効になります。有効期限切れのカードで決済を行おうとすると、カード会社は承認を拒否し、オーソリNGとなります。
通常、カード会社は有効期限が近づくと新しいカードを自動的に発行して利用者に送付しますが、住所変更の届け出忘れや紛失によって手元に届かないケースもあります。更新されたカードが届かない場合は、早めにカード会社に連絡を取り、再送手続きを行うことが必要です。
2-2-3 カード番号・暗証番号の誤入力
オンラインでのクレジットカード決済時に、カード番号や有効期限、名義人の名前、セキュリティコード(CVV)などを誤って入力すると、システムが情報の不一致を検出し、オーソリNGが発生します。
特にセキュリティコードは、カードの裏面に記載された3桁の番号で、セキュリティの観点からも重要です。また、店舗などで暗証番号を入力する場合に何度も間違えると、セキュリティ上の措置としてカードが一時的にロックされてしまうことがあります。これを解除するには、カード会社への問い合わせが必要となるため、注意が必要です。
2-2-4 カード停止・無効カードの使用
クレジットカードが盗難や紛失により停止処理されている場合、または解約・有効期限切れなどで無効とされているカードを使用しようとすると、オーソリは自動的に拒否されます。
これは、不正利用を防ぐためのセキュリティ対策としてカード会社が設定している処理で、カードが利用できないことにより、犯罪被害の拡大を防ぐためです。そのため、カードを紛失した場合は速やかにカード会社へ連絡し、利用停止と再発行手続きを行いましょう。
手元のカードが使用不可となった場合には、新しいカードが届くまで他の支払手段を準備しておくと安心です。
2-2-5 システム障害・通信トラブル
クレジットカードのオーソリは、決済の度にインターネットや専用回線を通じてリアルタイムで行われます。そのため、通信環境に問題がある場合や、カード会社または決済代行会社側のシステムに障害が発生している場合には、カード自体に問題がなくてもオーソリNGになることがあります。
特にオンラインショッピングや非接触決済が普及した現在では、通信トラブルによる影響も無視できません。一時的なエラーである可能性も高いため、時間を置いて再試行するか、他のカード・決済手段を利用するのが有効です。
2-2-6 その他の原因
ここまで挙げた原因の他に、以下の場合にもオーソリNGとなることがあります。
- 家族カードに対する利用制限(親カードが利用制限されている場合)
- 登録情報との不一致(住所・電話番号など)ワンタイムロックなど本人による利用制限設定
- 高額決済や海外ECサイトでの自動拒否(不正対策の一環)
これらのケースでは、利用者自身の設定やカード会社への問い合わせによって問題を解決できることが多くあります。
2-3 オーソリNG時の対応とユーザーサポートのポイント
店舗側は、顧客がクレジットカードのオーソリNGに直面した際に、焦らず冷静に対応することが大切です。まず、入力ミスなどが原因の場合もあるため、カード情報の再入力を案内しましょう。特にオンライン決済では、カード番号や有効期限、セキュリティコードの打ち間違いがよくあるため、「再確認をお願いします」と一声かけるだけで、問題が解消するケースも多くあります。
また、利用限度額超過やカード停止などが疑われる場合は、別のカードの利用を提案するのも有効な手段です。顧客にとっては「支払いが完了できない」状況がストレスとなるため、スムーズに代替案を提示することで安心感を与えられます。
さらに、スタッフ向けに、よくあるエラー原因とその対処法を記載したマニュアルやトークスクリプトを用意しておくと、顧客対応の質が安定するでしょう。顧客が不快な思いをしないように、原因を丁寧かつ簡潔に説明し、必要であればカード会社への問い合わせを促すのも効果的な対応です。
3 オーソリの種類とは?
クレジットカードのオーソリには「自動オーソリ」と「手動オーソリ」の2種類があります。それぞれ実行されるタイミングや目的が異なるため、取引の性質や店舗の運用方法に応じて適切に使い分けることが重要です。
3-1 自動オーソリ
自動オーソリとは、注文確定時にシステムが自動的にカード会社へ承認リクエストを送信する方式です。あらかじめ設定された条件に従って、店舗が操作を行わなくても即座にオーソリが実行されるため、オペレーションの効率化が可能です。特に在庫が豊富な商品や定期購入・サブスクリプション型のサービスでは、手間が少なくスムーズに取引を進めることができます。
ただし、システム上の処理が即座に進むため、在庫切れ商品の注文に対してもオーソリが通ってしまうリスクがあるため、在庫管理が不十分な状態では注意が必要です。利便性とトラブル回避のバランスを取る工夫が求められます。
3-2 手動オーソリ
手動オーソリは、店舗側の任意のタイミングでオーソリ処理を行う方式です。例えば、注文受付後に在庫状況を確認したいケースや、複数の注文をまとめて出荷したい場合などに有効です。自動オーソリとは異なり、在庫確認・出荷管理・顧客対応の柔軟性が高く、特注品や受注生産品、高額商品の取り扱いにも適しています。
また、誤注文やキャンセルへの対応を丁寧に行いたい店舗にも適した方式です。ただし、処理に手間がかかるため、正確な運用フローの整備が不可欠です。
自社の業態や運用体制に応じて、自動と手動を使い分けることがポイントとなります。
4 オーソリの限界と不正利用とは?
オーソリは取引の安全性を高めるための重要な仕組みですが、全ての不正利用を防げるわけではありません。ここではオーソリの限界と、実際に起こり得る不正利用のケースについて解説します。
4-1 オーソリだけでは不正利用を防げない理由
オーソリは、カード決済時に「そのカードが利用可能かどうか」を確認する仕組みであり、カードの有効性や利用限度額の範囲内かどうかをチェックするものです。しかし、オーソリは「カードの利用可否」をチェックするだけで、「使用者が正規の持ち主かどうか」は確認できません。例えば、盗まれたカード番号や有効期限などが正しく入力された場合、第三者による利用であっても、オーソリは正常に通ってしまう可能性があります。
つまり、オーソリは取引の安全性を最低限確保する仕組みに過ぎず、単独では不正利用を完全に防ぐことはできません。そのため、現在では3Dセキュアなどの本人認証サービスや、不正検知システムによる行動分析など、複数のセキュリティ対策を組み合わせることが不可欠です。
4-2 よくある不正利用のケースと仕組み
クレジットカードの不正利用は巧妙化しており、オーソリをすり抜ける手口も存在します。ここでは、代表的な2つの不正利用のケースとその仕組みを紹介します。
4-2-1 スキミングやフィッシングによるカード情報の盗難
クレジットカードの不正利用で代表的な手口が、スキミングとフィッシングによる情報の盗難です。スキミングは、ATMや店舗のPOS端末に不正な読み取り機器を設置してカード情報を盗み取る手口です。
盗まれたデータをもとに偽造カードを作成し、不正に使用されるケースがあります。
一方、フィッシングは、実在する企業や配送業者を装った偽のメールやサイトに誘導し、カード情報を入力させる詐欺です。
例えば、「セールのご案内」や「再配達のご連絡」などの名目で偽サイトに誘導し、入力された情報を盗んで悪用するケースが後を絶ちません。
これらの手口では、正しいカード情報が使われるため、オーソリは問題なく通過してしまいます。
したがって、利用者自身の注意と、カード会社・加盟店の対策強化が重要です。
4-2-2 1円オーソリの悪用
「1円オーソリ」とは、カードが有効かどうかを確認するために少額で試験的な承認処理を行う仕組みです。通常は請求が発生せず、すぐにキャンセルされます。
しかしこの仕組みは、不正利用の下準備として悪用されるケースもあります。
例えば、盗まれた大量のカード情報に対して1円オーソリを繰り返し実行し、「今使えるカードか」を犯罪者が判別するのです。有効なカードを判別した後に、高額商品の購入や転売が行われるといった被害が報告されています。
また、中には1円ではなく、100円や300円といった少額の請求が継続的に行われるケースもあり、利用者が気付きにくい被害も発生しています。怪しい利用履歴には常に注意し、早期発見・通報できるよう日頃から意識しておきましょう。
5 不正利用防止のためにカード事業者が導入すべきセキュリティ対策
クレジットカードの不正利用を防ぐには、カード発行会社や決済関連事業者による高度なセキュリティ対策が不可欠です。ここでは、導入すべき主な対策を紹介します。
5-1 3Dセキュア(本人認証サービス)
3Dセキュアとは、オンライン決済時に追加の本人認証を行うためのセキュリティ機能です。カード番号や有効期限に加えて、デバイス情報やワンタイムパスワード(OTP)などを使って認証を行います。これにより、第三者がカード情報を盗んでも、本人確認をクリアできなければ決済できない仕組みとなり、不正利用リスクが大幅に軽減されます。
従来の方法では、パスワード入力など煩雑な操作が原因で離脱が多いという課題がありましたが、近年は「EMV 3Dセキュア(3Dセキュア2.0)」と呼ばれる新しい仕様が普及し、UX(ユーザー体験)に配慮したスムーズな認証が可能になっています。3Dセキュアは、セキュリティ強化と顧客満足度の両立を目指す上で、導入すべき重要な技術です。
5-2 不正検知システム(FDS)
不正検知システム(Fraud Detection System:FDS)は、クレジットカードの利用履歴や取引内容をAIがリアルタイムで分析し、不審な取引を即時に検出する仕組みです。
例えば、突発的な高額決済、普段と異なる地域からのアクセス、深夜の取引など、行動パターンに異常が見られる場合にアラートが発動されます。このような取引は一時的に保留され、カード会社の管理画面上で人が確認し、承認または拒否を判断します。
FDSの導入により、正規ユーザーに過度な負担をかけずに、不正利用の早期発見と対応が可能となり、信頼性の高い運用が実現できます。
5-3 カード利用通知・利用制限機能
カード利用通知は、カードが使われた瞬間にSMSやアプリ通知を通じて利用者に知らせる仕組みです。
一方、利用制限機能では、「海外での利用を制限する」「高額決済だけをブロックする」「特定ジャンルの店舗だけ利用不可にする」など、あらかじめ設定した条件でカードの使用をコントロールできます。
この2つを組み合わせることで、不正利用の早期発見・未然防止の両方を実現できる優れた対策です。
5-4 EMV準拠カード(ICチップカード)の完全普及
EMV準拠カードとは、ICチップを搭載したクレジットカードです。従来の磁気ストライプカードよりも安全性が高く、スキミングなどによる偽造が困難な点が特長です。
ICチップは、取引ごとに暗号化された一意のデータを生成するため、情報のコピーが事実上できません。
世界中でEMVカードの導入が進む中、日本でもIC対応端末の普及とともに「完全IC化」が求められています。
カード会社だけでなく、店舗側もIC対応端末の導入を徹底することで、決済のセキュリティレベルを引き上げられます。
5-5 カード再発行・補償体制の整備
万が一不正利用が発生した場合、迅速で的確な対応が、顧客からの信頼を左右します。
カード会社は、被害を受けた顧客に対してすみやかにカードを再発行し、代替手段を提示する対応力が必要です。
また、補償制度の内容や、返金までの手続き・対応フローを事前に公開しておくことで、安心感の提供につながります。
スピード感と透明性のある対応を行うことで、ブランドの信頼維持と顧客満足度の向上を両立できます。
5-6 オーソリ試行回数の制限
不正利用者は、盗んだカード情報を使って何度もオーソリを試み、使えるカードを特定しようとします。そのため、短時間での連続オーソリを制限することが効果的です。
例えば、「1アカウント当たりオーソリ試行は3回まで」「連続試行があれば10分間のロック」などの制限を設けることが有効です。
また、bot(自動プログラム)による機械的な攻撃に対しては、画像認証(CAPTCHA)などの併用が推奨されます。
このような対策を講じることで、システム全体の健全性と安全性を高く保つことが可能です。
6 安全なクレジットカード決済を実現するために店舗でできる取り組み
クレジットカード決済を安全に運用するためには、カード会社だけでなく、店舗側にもセキュリティ対策が求められます。ここでは、店舗で実践できる具体的な取り組みについて紹介します。
6-1 セキュリティに強い決済代行会社を選ぶ
決済代行会社を利用する場合は、料金の安さだけでなく「セキュリティ対応の強さ」を軸に選定することが重要です。
具体的には以下の観点がチェックポイントとなります。
- 3Dセキュアや不正検知システム(FDS)の導入実績
- チャージバック対応方針
- 障害発生時のサポート体制
- PCI DSSなど国際基準への準拠状況
さらに、決済データの暗号化や保存ポリシーが明確に整備されているかも確認しましょう。
契約前に「どこまでを代行会社が担い、どこからが店舗責任か」を明示してもらうことで、役割の混同によるトラブルを防げます。
6-2 PCI DSSなど業界基準への対応状況の確認
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は、国際的に定められたカード情報の取り扱いに関するセキュリティ基準です。
カード情報を扱う企業や店舗は、この基準に準拠することで、安全な決済環境を維持することができます。
主な要件は以下の通りです。
- ファイアウォールの設置
- カード情報の暗号化と保存制限
- アクセス権限の制御
- 定期的な脆弱性診断の実施
多くの店舗は決済代行会社に業務を委託していますが、それでも「どこまでが店舗側の責任か」を明確に理解し、最低限のセキュリティ対策を自社でも実施する意識が必要です。
セキュリティは「任せっきり」ではなく、「共に守る」という姿勢が求められます。
なお、PCI DSSについて、詳しくは以下の記事で解説しているので参考にして下さい。
【今さら聞けない】誰でもわかる PCI DSSの要件と対応方法
6-3 店舗が見直すべき運用ルール
安全なクレジットカード決済を維持するには、従業員の対応や運用ルールの見直しも必要です。ここでは、店舗が今すぐ取り組める実践的な対策を紹介します。
6-3-1 従業員向けの不正対策教育
店舗スタッフやカスタマーサポート担当者が、不正利用の兆候に気付けるよう教育・研修を行うことが重要です。
ECサイトであれば、例えば以下のような兆候に注意を払う必要があります。
- 短時間に大量の注文
- 配送先と購入者情報が一致しない
- 同一IPから複数の決済が連続で行われている
加えて、チャージバック(不正利用による返金要求)への対応フローや、個人情報の取り扱いルールなども、全スタッフに周知徹底しておきましょう。
定期的な研修と、実践的なマニュアルの整備が、被害の最小化に直結します。
6-3-2 顧客への注意喚起・FAQ設置
顧客側への情報提供も、オーソリNGや入力ミスによる決済離脱を防ぐ有効な手段です。具体的には、「なぜカードが使えないのか?」に答えるFAQページを設けることで、顧客の疑問や不安をその場で解消できます。
また、決済画面には「カード情報の入力ミスにご注意下さい」といった注意喚起を表示することも有効です。さらに、オーソリNGが発生した際に表示されるエラーコードの意味や、対処方法を明示しておくと、顧客は安心して別の手段を試せます。こうした配慮は、離脱率の低減と顧客満足度の向上に直結します。
実店舗の場合はカード決済や端末エラーが出た際のマニュアルを用意しておき、マニュアルの存在をスタッフ全員に周知しておくと良いでしょう。
7 まとめ
クレジットカード決済を安全かつ円滑に運用するためには、オーソリの仕組みを正しく理解し、適切に対応することが極めて重要です。オーソリは不正利用の第一関門であり、信頼性の高いカード取引の基盤とも言えます。とはいえ、自社でオーソリシステムを運用・管理するには高度な専門知識とコストが求められるのも事実です。
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決済システムやレジ業務の効率化に課題を感じている場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。
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