クレジットカード番号の14~16桁の数字は、「BIN」など複数の要素によって構成されています。
本コラムでは、クレジットカード番号の構成要素について詳しく解説します。また、クレジットカード事業の展開を検討されている企業様向けに、「BINスポンサーシップ」についても解説します。
1 クレジットカードの番号・記載内容の基本
1-1 ①発行者識別番号(BIN):1~8桁目
1-2 ②会員口座番号:9桁目~最後の桁の1つ前
1-3 ③チェックデジット:最後の1桁
1-4 ④有効期限
1-5 ⑤セキュリティコード
2 クレジットカード番号を発行してイシュアになる2つの方法
2-1 国際ブランドとライセンス契約をする
2-2 BINスポンサーのパートナーになる
3 BINスポンサーシップが役立つビジネス例
3-1 インターネット銀行
3-2 ECサイト運営者・小売チェーン
3-3 ウォレット・決済アプリ
3-4 サブスクリプション型ビジネス
3-5 決済代行サービス
4 BINスポンサーシップを利用する方法
5 BINスポンサーシップを利用する際の注意点・ポイント
5-1 AML/CFTへの対応が必要
5-2 不正利用への対策が必要
5-3 契約するBINスポンサーをよく選ぶことが大切
6 クレジットカード番号を管理する際に気を付けたい不正利用とは
6-1 BIN攻撃
6-2 フィッシング詐欺
6-3 スキミング
7 まとめ
1 クレジットカードの番号・記載内容の基本
クレジットカード番号は、以下の要素で構成されています。
①発行者識別番号(BIN):1~8桁目
②会員口座番号:9桁目~最後の桁の1つ前
③チェックデジット:最後の1桁
④有効期限
⑤セキュリティコード
各要素の意味について、以下に詳しく解説します。
1-1 ①発行者識別番号(BIN):1~8桁目
クレジットカード番号の最初の1~8桁目は「発行者識別番号」です。BIN(Bank Identification Number)とも呼ばれます。
クレジットカードを発行する会社(イシュア)を識別するための番号で、「楽天カード」「三井住友カード」など、カード発行会社ごとに異なる番号が割り当てられています。
BINの最初の数字は国際ブランドによって異なるため、同じクレジットカード会社が発行する番号でも、どのブランドのカードを発行するかによりBINが異なる場合があります。
BINは以前、1~6桁目でしたが、2024年4月以降は1~8桁目へ拡張されています。
参照:8桁のBINへの移行準備 よく寄せられる質問|VISA
1-2 ②会員口座番号:9桁目~最後の桁の1つ前
9桁目~最後の桁の1つ前は「会員口座番号」です。カードの保有者を識別するための番号です。この番号はクレジットカード会社が顧客情報を管理するために利用されます。
この部分が外部に漏洩すると、不正利用のリスクに直結するため、厳重な管理が求められます。
1-3 ③チェックデジット:最後の1桁
最後の1桁は「チェックデジット」と呼ばれ、クレジットカード番号が正しく入力されているかどうかをチェックするための数字です。「Luhn アルゴリズム」と呼ばれる独自の計算方法に基づく数字が割り当てられます。
入力ミスがあると、チェックデジットの数字と、他の桁に基づいたLuhn アルゴリズムの計算結果に相違が出るため、入力ミスを検出できるという仕組みです。
1-4 ④有効期限
クレジットカードがいつまで利用できるかを示す数字です。
「/」(スラッシュ)などで区切られた4桁の数字で、「月/年」の順番で記載されます。例えば、2025年7月が有効期限の場合、「07/25」という数字が割り当てられます。
有効期限はネットショッピングなどオンラインでの決済でユーザーに入力を求めることが多く、カードの利用認証にも使われます。
有効期限が近づくと、新たな有効期限の数字が付与された新しいカードをクレジットカード会社が発行します。その際、通常は次に解説する「セキュリティコード」も更新されます。
1-5 ⑤セキュリティコード
セキュリティコードはスキミングなどの不正利用を防止するために設けられた3~4桁の数字です。カード裏面の署名欄付近に記載されており、ICチップや磁気ストライプには記録されていません。そのため、スキミングなどにより、ICチップや磁気データが盗まれても、セキュリティコードが読み取られることはなく、不正使用の抑止に役立ちます。
2 クレジットカード番号を発行してイシュアになる2つの方法
自社ブランドのクレジットカードを発行するには、自社の発行者識別番号(BIN)を取得してイシュア(カード発行会社)としての資格を得る必要があります。
自社の発行者識別番号を取得する方法は、以下の2通りです。
- 国際ブランドとライセンス契約を結ぶ
- BINスポンサーのパートナーになる
それぞれ以下に詳しく解説します。
2-1 国際ブランドとライセンス契約をする
「VISA」「Mastercard」などの国際ブランドとのライセンス契約を結ぶことで、発行者識別番号(BIN)を取得することが可能です。
多くのクレジットカード会社は、このライセンス契約(プリンシパル・ライセンス契約)を結び、自社ブランドのクレジットカードを発行しています。
ただし、このライセンス契約には厳格な審査や条件があり、スタートアップ企業やノンバンク企業にはハードルが高いのが実情です。そのため、ライセンス契約の取得が難しい場合には、次の「BINスポンサー」の仕組みを利用する方法があります。
2-2 BINスポンサーのパートナーになる
「BINスポンサーシップ」の仕組みを活用すれば、国際ブランドとのライセンス契約を直接結ばなくても、発行者識別番号(BIN)を使って自社ブランドのクレジットカードを発行できます。
BINスポンサーとは、すでに国際ブランドとライセンス契約を締結しており、自社が保有するBINを第三者企業に提供できる事業者です。
BINスポンサーと提携することで、ライセンス契約を持たない企業でも、自社名義でクレジットカードの発行や決済サービスの提供が可能になります。
特にスタートアップ企業や新規参入を検討している企業にとって、クレジットカード事業へのスピーディな参入手段として有効な方法といえるでしょう。BINスポンサーシップを活用できるビジネス例について詳しくは、次に解説します。
3 BINスポンサーシップが役立つビジネス例
BINスポンサーシップは、「自社ブランドのクレジットカード発行」が有効な、さまざまなビジネスへの活用が考えられます。代表的な例は以下の5つです。
- 決済代行サービス
- インターネット銀行
- ECサイト・小売チェーン
- ウォレット・決済アプリ
- サブスクリプション型ビジネス
それぞれ以下に詳しく解説します。
3-1 インターネット銀行
インターネット銀行などフィンテック系のスタートアップでもBINスポンサーシップは有効な選択肢です。
インターネット銀行が自社ブランドのクレジットカードを発行することは、口座開設を促進し、顧客ロイヤリティの向上にもつながります。
国際ブランドとのライセンス契約には高いハードルがありますが、BINスポンサーシップを使えば、よりスムーズにカード発行が実現可能です。
3-2 ECサイト運営者・小売チェーン
ECサイト・小売チェーンなどの小売業界においても、BINスポンサーシップによって自社ブランドのクレジットカードを発行できます。
クレジットカード利用時のポイント還元や優待制度を設けることで、購買促進や顧客の囲い込みを図ることができます。
BINスポンサーの支援を受けることで自社のクレジットカードを発行するハードルを下げられます。
3-3 ウォレット・決済アプリ
電子マネー決済などで使用するウォレットアプリや、QRコードなどの決済アプリを展開する企業においても、BINスポンサーシップを活用して自社のクレジットカードを発行することは、事業拡大の大きなチャンスとなります。
ウォレット・決済アプリでは、チャージなどの支払い方法としてクレジットカードを選択できるのが一般的です。BINスポンサーシップを利用して自社のクレジットカードを発行することで、「支払い方法に自社のクレジットカードを使用するとポイント付与率がアップする」などの施策を展開できます。
3-4 サブスクリプション型ビジネス
月額課金型サービスを展開するSaaS企業などでも、BINスポンサーシップの制度を活用してカードを発行することで、ブランド力強化と収益の多角化を図ることができます。
自社ブランドのクレジットカードを使った支払いに特典を付与することで、継続率の向上や顧客満足度の強化が期待できます。
IT・Webサービス企業が金融領域に参入するきっかけとしても有効です。
3-5 決済代行サービス
決済代行サービス事業者にとって、BINスポンサーシップは自社の提供価値を広げる手段となります。
たとえば、EC事業者などの顧客に対して、「自社ブランドのカード発行によるロイヤル顧客の獲得支援」などのソリューションを提供できます。
BINスポンサーと提携し、カード発行スキームを組み込むことで、付加価値の高い支援が可能になります。
4 BINスポンサーシップを利用する方法
BINスポンサーシップを利用するには、国際ブランドのライセンスを持つBINスポンサー企業と契約を結ぶ必要があります。
契約方法は、主に以下の2つです。
BINスポンサー企業に直接申し込む方法
提携する決済代行事業者などを通じて契約する方法
たとえば、プロセッシングや決済代行サービスを提供する企業の中には、BINスポンサー企業と連携してカード発行支援を行っている例もあります。
このようなサービスを活用することで、自社でノウハウやリソースがなくても、スムーズにクレジットカード事業を立ち上げることが可能です。
TISでも、クレジットカード事業への参入をサポートする「クレジットカードプロセッシングサービス」などを提供しています。
5 BINスポンサーシップを利用する際の注意点・ポイント
BINスポンサーシップの利用を検討する際には、以下の点に注意することが大切です。
- AML/CFTへの対応が必要
- 不正利用への対策が必要
- 契約するBINスポンサーを慎重に選ぶことが重要
それぞれ以下に詳しく解説します。
5-1 AML/CFTへの対応が必要
クレジットカードなど決済事業を展開する企業は、マネー・ローンダリングの防止(AML)やテロ資金供与の対策(CFT)について、十分に検討する必要があります。
BINスポンサーシップを利用してクレジットカード事業に参入する場合、AML/CFTの面でBINスポンサーのサポートを受けられることが多いですが、自社で対策を講じなくて良いというわけではありません。
AML/CFTを検知するシステムを導入するなどして、自社でも十分な対策を行う必要があります。
参考:マネー・ローンダリング対策とは?銀行などの金融機関が取り組むべき施策も解説
5-2 不正利用への対策が必要
BINスポンサーシップの利用に際しては、クレジットカードの不正利用を防止する取り組みも必要です。
「フィッシング詐欺」などさまざまな不正利用が増えており、消費者に対する注意喚起がなされています。クレジットカード決済を提供する企業側としても、不正利用を未然に防ぐ対策の強化が求められています。
BINスポンサーシップを利用する場合でも、不正利用検知システムを導入するなどして、不正利用に対する十分な対策を講じることが大切です。
5-3 契約するBINスポンサーをよく選ぶことが大切
上記のAML/CFTや不正利用防止などの対策を適切に行うには、高度なITノウハウが求められます。
提携するBINスポンサーやプロセッシングサービス事業者など、クレジットカード事業で協力する企業を慎重に選ぶことで、適切な対策がしやすくなります。
将来的なビジネス拡大のためにも、IT・プロセッシング分野での実績・ノウハウが十分にある企業と連携するようにしましょう。
6 クレジットカード番号を管理する際に気を付けたい不正利用とは
クレジットカードを発行してカード番号や個人情報を管理する企業は、以下のような不正利用への対策を講じる必要があります。
- BIN攻撃
- フィッシング詐欺
- スキミング
以下に詳しく解説します。
6-1 BIN攻撃
BIN攻撃とは、BINを入手し、残りの桁や有効期限を自動的に大量生成することによって行われる不正利用です。「クレジットマスター攻撃」とも呼ばれます。
BINによって、実際のカードを盗んだり情報を読み取ったりしなくてもBIN攻撃を行うことは可能です。また、BINは事業者ごとに共通の番号が使用されるため、BINが流出しないようにすることは困難といえます。
そのため不正利用を検知する高度なセキュリティシステムを導入するなど、決済を行う段階での防止策を十分に講じる必要があります。
6-2 フィッシング詐欺
フィッシング詐欺は、ユーザーを騙してクレジットカード情報などを得る詐欺行為です。
例えば詐欺メールを送り、実際に存在する企業・ブランドの偽サイトへ誘導することで、ユーザーに「クレジットカード情報を入力させる」手口がよく使われます。
フィッシング詐欺を防止するためには、自社の公式サイトを騙る偽サイトが作られないよう、常に監視するなどの対策が必要です。インターネット上を自動監視するシステムを導入するなどして、十分な対策を講じる必要があります。
6-3 スキミング
スキミングとは、クレジットカードの磁気ストライプなどに記録された情報を読み取ることで、クレジットカード情報を不正に入手することです。
例えばATMにスキミングのための機器(スキマー)を取り付けたり、小型のカメラでクレジットカードの番号を撮影したりといった方法で行われます。
スキミングの防止は、基本的にクレジットカード保有者の管理に委ねられます。一方で、企業としても、スキミングされたクレジットカード情報が不正に利用されることを防ぐために、自動検知するシステムを導入するなどの対策が求められます。
7 まとめ
クレジットカードの14~16桁の数字は「BIN」「会員口座番号」「チェックデジット」という3つの要素で構成されています。自社ブランドのクレジットカードを発行し、イシュアとして事業を行うには「BIN」の取得が必要です。
「BINスポンサーシップ」を利用することによって、国際ブランドと直接ライセンス契約を結ぶことなくBINを利用し、クレジットカードを発行することが可能です。
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