クレジットカード事業に参入するには、高度な業務処理を支える「基幹システム」の存在が欠かせません。会員管理や与信、決済処理などを安全かつ効率的に行う基幹システムは、事業の成功を左右する重要な存在です。
本コラムでは、クレジットカード基幹システムの主要機能や導入メリット、選定のポイントなどについて解説します。
1 クレジットカードの基幹システムの概要を知ろう
1-1 基幹システムとは
1-2 クレジットカード業務における基幹システム
2 クレジットカード業務に必要な基幹システムの主要な機能
2-1 顧客情報・会員管理機能
2-2 与信・決済・請求処理の自動化
2-3 ポイント管理やキャンペーン対応
2-4 セキュリティ対策とコンプライアンス対応
2-5 業務レポートやアナリティクス機能
3 クレジットカード事業で基幹システムを導入するメリット
3-1 業務効率化・人的ミスの削減
3-2 セキュリティ強化と法令対応
3-3 カスタマーエクスペリエンスの向上
4 導入前に確認すべき課題とリスク
4-1 コスト面(初期費用・運用費)の把握
4-2 既存業務システムとの連携性
4-3 障害対応・ベンダーのサポート体制
5 クレジットカード基幹システムの選び方とポイント
5-1 クラウド型かオンプレミス型か
5-2 対応可能な業務規模・業種特化型かどうか
5-3 法制度(PCI DSSなど)に準拠しているか
5-4 導入実績・サポート体制はどうか
6 クレジットカードの基幹システムはTISにお任せ
6-1 クレジットカードプロセッシングサービス
6-2 デジタル基盤オファリングサービス
7 まとめ
1 クレジットカードの基幹システムの概要を知ろう
1-1 基幹システムとは
基幹システムは、企業の主要業務を統合的に管理・処理する中核的な情報システムです。販売管理、在庫管理、人事、会計などを正確かつ効率的に処理し、業務全体の自動化や最適化を実現します。
リアルタイムなデータ共有は、経営判断の迅速化や部門間の連携強化が可能にし、競争力や顧客満足度の向上にも直結します。まさに、企業活動を支える根幹といえる存在です。
1-2 クレジットカード業務における基幹システム
クレジットカード業務では、基幹システムが会員管理、利用履歴の記録、与信、決済承認、請求、回収までの全工程を担います。膨大なトランザクションを正確かつ迅速に処理し、不正利用や過剰与信を防ぐ機能も備えています。
これにより、利用者は正確な明細やスムーズな決済を当たり前のように享受できます。安定稼働と高い信頼性は、カード事業のブランド価値や顧客体験を支える基盤です。
2 クレジットカード業務に必要な基幹システムの主要な機能
クレジットカード業務では、膨大な取引を正確かつ迅速に処理する必要があります。そのため、基幹システムには多機能かつ高性能な仕組みが求められます。ここでは、特に重要な機能を解説します。
2-1 顧客情報・会員管理機能
クレジットカード業務の基盤となるのが、顧客情報・会員管理機能です。この機能では、顧客の氏名、住所、属性などの情報に加え、カードの利用履歴、認証情報などを一元的に管理できるため、顧客の状況に応じたサービス提供や迅速な対応が実現できます。
また、KYC(Know Your Customer:本人確認)手続きの自動化により、法令遵守を確保しながら業務負担を軽減することも可能です。さらに、会員ステータスの自動更新や管理機能を活用することで、顧客のロイヤルティ向上やキャンペーンの最適化にも貢献します。
正確かつ安全な情報管理を行うこの機能は、カード会社の信用と信頼性を支える重要な柱です。
2-2 与信・決済・請求処理の自動化
クレジットカードの基幹システムにおいては、与信・決済・請求業務の自動化は、基幹システムの中でも重要度が高い領域です。まず、即時与信審査ロジックにより、カード利用時に瞬時に顧客の信用状況を判断し、利用可否を自動で判定します。これにより不正利用や過剰与信のリスクを軽減できます。
また、決済データはリアルタイムで処理されるため、取引の透明性と信頼性が向上します。請求処理においても、利用金額の集計から請求金額の算出、通知処理までが自動で行われ、ミスや漏れのない正確な請求業務が可能となります。これらの自動化機能は、業務負担の軽減だけでなく、顧客満足度の向上にも直結する重要な要素です。
2-3 ポイント管理やキャンペーン対応
ポイント管理やキャンペーン対応は、顧客満足度や利用促進に直結する機能です。クレジットカード基幹システムでは、利用額に応じたポイントの加算、商品交換や割引額としての利用、有効期限の自動管理までを一括で行えます。
また、会員を属性や利用履歴ごとにグループ分けし、それぞれに特典やキャンペーンを柔軟に設定することも可能です。これにより、顧客ごとに最適なプロモーションが実施でき、ロイヤリティ向上や離脱防止にもつながります。システムによる自動化は、マーケティング施策の即応性と運用効率を飛躍的に高めるでしょう。
2-4 セキュリティ対策とコンプライアンス対応
クレジットカード基幹システムには、高度なセキュリティ対策と厳格なコンプライアンス対応が求められます。具体的には、国際的なセキュリティ基準である「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)」や、経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」への準拠が必要不可欠です。
また、通信内容や保存データの暗号化により、情報漏えいリスクを最小限に抑えることができます。加えて、アクセス権限の厳格な管理や操作ログの記録・監査により、内部不正や不正アクセスの防止も強化されます。
これらの機能が基幹システムに組み込まれることで、利用者の信頼を確保し、安定したカード事業運営を実現できるでしょう。
2-5 業務レポートやアナリティクス機能
クレジットカード基幹システムには、顧客や取引データを可視化し、意思決定を支援するレポート・アナリティクス機能が備わっています。顧客属性や利用履歴に基づいた詳細な顧客分析、時系列での取引傾向分析などが可能となり、マーケティング施策や商品設計に活用できます。
また、管理者向けにカスタマイズ可能なレポートが自動生成されるため、定期的な業務報告や経営層への説明資料作成の手間も大幅に削減できるでしょう。これにより、迅速で的確な経営判断が可能となり、競争優位の確立に貢献します。
3 クレジットカード事業で基幹システムを導入するメリット
クレジットカード事業で基幹システムを導入することは、業務の最適化や顧客満足度向上に直結する重要な戦略です。この章では、具体的なメリットを解説します。
3-1 業務効率化・人的ミスの削減
クレジットカード業務は、会員情報の管理、与信審査、決済処理、請求業務など多岐にわたります。これらを手作業で行うと時間がかかる上に、入力ミスや確認漏れなどのヒューマンエラーが発生しやすくなるでしょう。
基幹システムを導入すれば、各業務プロセスの自動化が可能となり、省力化とスピードアップを同時に実現できます。例えば、請求金額の自動計算や与信審査の即時判断などにより、業務品質の大幅な向上を目指せるでしょう。
結果として、従業員の負担が軽減されるだけでなく、顧客への対応も迅速・正確になり、事業全体の信頼性が高まります。
3-2 セキュリティ強化と法令対応
クレジットカード基幹システムの導入により、セキュリティ対策と法令遵守のレベルを大幅に向上させることができます。
例えば、「PCI DSS」や「クレジットカード・セキュリティガイドライン」、金融業界であれば「FISCガイドライン」など、国際・国内のセキュリティ基準に準拠した設計により、情報漏えいや不正アクセスのリスクを最小限に抑えられます。
また、個人情報保護法や金融庁の監督指針に沿った対応も容易になるため、監査や法改正にも柔軟に対応可能です。こうした取り組みは、顧客や取引先からの信頼性向上にもつながり、事業継続性の確保という観点でも大きなメリットをもたらします。
安全性と法令対応の両立は、カード事業を展開する上で不可欠な要素です。
3-3 カスタマーエクスペリエンスの向上
基幹システムの導入は、カスタマーエクスペリエンスの向上にも大きく貢献します。例えば、ポイントの加算・利用履歴・有効期限などをユーザー自身がリアルタイムで確認できる「見える化」することで利便性が向上し、サービスへの満足度が高まります。
また、顧客情報や利用履歴がシステム上で一元管理されていることで、カスタマーサポート側の対応も迅速かつ的確に行えるようになるでしょう。これにより、問い合わせ対応の待ち時間短縮やクレームの削減にもつながります。
4 導入前に確認すべき課題とリスク
クレジットカード基幹システムの導入には多くのメリットがある一方で、事前に把握しておくべき課題やリスクも存在します。導入後に後悔しないためにも、これらをチェックしておきましょう。
4-1 コスト面(初期費用・運用費)の把握
基幹システム導入では、初期費用・運用費ともに投資額が大きく、提供形態によってコスト構造が大きく異なります。主な形態は次の4つです。
- パッケージ型(オンプレミス)
標準化された機能を自社サーバーに導入する方式です。比較的安価かつ短期間で導入可能ですが、仕様が固定されやすく、大規模なカスタマイズは費用がかさみます。 - フルスクラッチ型
ゼロから自社仕様で開発する方式です。業務に完全適合させられますが、開発期間・費用が大きく、保守・アップデートも自社負担です。 - クラウド型(SaaS)
ベンダーが提供するクラウド環境を利用する方式です。初期費用が抑えられ、短期導入が可能で、最新機能やセキュリティ更新も自動反映されます。ただし、仕様変更の自由度は限定されます。 - ハイブリッド型
コア部分はパッケージやSaaSを利用し、一部機能を自社開発で拡張する方式です。コスト・柔軟性・導入期間のバランスが取りやすい反面、複数環境の統合管理が必要です。
いずれの方式でも、初期費用だけでなく、保守・運用・ライセンス料、機能追加、セキュリティ対策などのランニングコストを含めた中長期的な総コストを試算することが重要です。事業計画に合わせ、投資効果が最大化できる方式を選びましょう。
4-2 既存業務システムとの連携性
基幹システムを導入する前には、既存の業務システムとの連携性を十分に確認することが重要です。例えば、会計ソフト、CRM(顧客管理システム)、ECサイトなどとスムーズにAPI連携できるかどうかが、業務全体の効率性に直結します。
また、データ連携の信頼性や処理速度、障害時の復旧体制など、運用面での安定性も大切なポイントです。さらに、将来的にQRコード決済や電子マネー、プリペイドカード、BNPL(後払い)など新しい決済手段を追加し、クレジットカード会員情報や与信枠と統合して運用する場合に、柔軟に拡張できるかも重要な検討ポイントです。
既存の業務システムとの連携性を事前に確認することで、無駄な開発コストや運用トラブルを回避できます。
4-3 障害対応・ベンダーのサポート体制
クレジットカードの基幹システムは24時間365日の安定稼働が求められ、わずかな停止でも事業や顧客に大きな影響を与えます。そのため、障害発生時に迅速かつ的確に対応できるベンダーのサポート体制と自社の運用体制の両方が不可欠です。
ベンダー側では、夜間・休日を含む24時間対応の可否、専任窓口の有無、エスカレーションルートなどを確認します。一方、自社側では、システム監視の方法、障害発生時の社内エスカレーション手順、カスタマーサポート部門との連携フローを明確にしておく必要があります。
さらに、データバックアップの頻度や保存方法、冗長構成・フェイルオーバーの可否など、インフラ面の備えも重要です。大規模障害や災害に備えたBCP(事業継続計画)やDR(災害復旧計画)を策定し、定期的に訓練や検証を行うことで、万一の際の影響を最小限に抑えられます。
5 クレジットカード基幹システムの選び方とポイント
クレジットカード基幹システムの選定は、事業の根幹に直結する重要な判断です。方式は大きく分けて、自社でゼロから構築する「内製」と、外部ベンダーが提供するシステムを導入する「外部調達」の2つがあります。
内製は、自社業務に完全に合わせた設計や独自機能の実装が可能で、競争優位性を高めやすい一方、開発コストや人材確保、セキュリティ・法令対応を自社で維持する負担が大きくなります。
外部調達は、短期間での導入や最新技術・業界標準への対応に優れていますが、ベンダー選定や契約条件の吟味、カスタマイズ範囲の見極めが重要です。
実務上は、スピード・コスト・安全性の観点から外部調達を選ぶケースが多いとされています。以下では、外部ベンダー導入時の選定ポイントを中心に解説します。
5-1 クラウド型かオンプレミス型か
基幹システムの導入形態は大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」に分かれます。クラウド型は、インターネット経由で外部のクラウドサーバーを利用する方式で、初期費用を抑えつつ短期間で導入できるのが特徴です。一方のオンプレミス型は、自社のサーバー環境にシステムを構築・管理する方式で、カスタマイズ管理の自由度が高い反面、初期投資や保守運用の負担が大きくなります。
クラウド型はスモールスタートや柔軟な拡張を重視する企業に、オンプレミス型は高い安定性や法令対応を求める企業に適しています。事業規模、運用体制、セキュリティ要件などを踏まえて、自社に最適な方式を選定することが重要です。
5-2 対応可能な業務規模・業種特化型かどうか
基幹システムを選定する際には、自社のトランザクション量や業務規模に見合っているかを確認することが重要です。クレジットカード事業では、日々膨大なトランザクションが発生するため、システムには高い処理能力と安定稼働が求められます。処理能力が不足していると、取引遅延やエラーの原因となり、顧客満足度の低下にもつながります。
また、業種によって必要とされる機能や運用フローが異なるため、金融業や小売業など、事業の特性に合った業種特化型のシステムを選ぶことも大切です。導入前には、対応可能な業務規模と機能性をしっかりと見極め、自社の成長に耐えうるシステムかどうかを判断しましょう。
5-3 法制度(PCI DSSなど)に準拠しているか
クレジットカード基幹システムを導入する際は、関連する法制度や業界基準への準拠状況を必ず確認しましょう。特に重要なのが、クレジットカード業界の国際的なセキュリティ基準である「PCI DSS」や、国内のクレジットカードに関わる事業者が行うべきセキュリティ対策を定めた「クレジットカード・セキュリティガイドライン」、国内の金融機関向けガイドラインである「FISCガイドライン」などです。
これらに準拠しているシステムであれば、情報漏えいや不正利用のリスクを大幅に軽減できます。また、法令やガイドラインは定期的に改定されるため、システム側で更新対応や監査への備えが整っているかも重要な確認ポイントです。法制度対応が万全なシステムを選ぶことで、安心して長期運用できるだけでなく、顧客や取引先からの信頼獲得にもつながります。
5-4 導入実績・サポート体制はどうか
基幹システムの導入においては、信頼性の高いベンダーを選ぶことが成功の鍵となります。ベンダーの判断材料として重要なのが、同業他社での導入実績です。
自社と同じ業種・業態への導入事例が豊富であれば、自社特有の業務にも柔軟に対応できる可能性が高まります。また、導入前にシステムの操作性・機能性を確認できるトライアルやテスト環境の有無も重要なポイントです。実際に使いながら課題を洗い出すことで、導入後のミスマッチやトラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、導入後のサポート体制が整っているかどうかも併せて確認し、長期的に安心して利用できるシステムか、信頼できるベンダーかを見極めましょう。
6 クレジットカードの基幹システムはTISにお任せ
クレジットカード事業に必要な基幹システムの構築を検討している場合は、国内トップクラスの実績を誇るTISにお問い合わせください。
中でも、導入時にかかる費用を抑制しながら必要な機能・サービスを利用できる「クレジットカードプロセッシングサービス」、24時間365日対応の運用保守・サポート体制が整っている「デジタル基盤オファリングサービス」について紹介します。
6-1 クレジットカードプロセッシングサービス
TISが提供する「クレジットカードプロセッシングサービス」は、業界でも高いシェアを持つ実績豊富なソリューションです。TISは、クレジットカード基幹システムの受託開発において国内シェアの約5割を占めており、多くの企業の課題・要望に応えてきました。
導入企業は、必要な機能だけを選んで利用できるため、初期費用や運用コストを抑えつつ、最適なシステムを導入することが可能です。機能面では、必要最低限に絞った「ライト版」と、自由度が高く将来的な拡張にも対応できる「フル版」から選択でき、事業フェーズに応じて柔軟に選べます。
さらに、最短6ヶ月でのスピード導入が可能な点も大きな魅力です。初めてのカード事業にも、既存システムの見直しにも最適な選択肢と言えるでしょう。
6-2 デジタル基盤オファリングサービス
TISの「デジタル基盤オファリングサービス」は、金融業界に特化した豊富な構築実績をもとに、クレジットカード事業に必要な高可用性・高信頼性・高セキュリティを兼ね備えたIT基盤を提供するサービスです。
あらかじめ検証済みのテンプレートを活用する「オファリングモデル」により、短期間・低リスクでの導入が可能なほか、24時間365日の運用保守・サポート体制も整っており、サービス稼働後も安心して任せられます。デジタル基盤オファリングサービスは、インフラ基盤の構築から保守・運用、コンサルティングまで一貫して依頼できるのも大きな特徴です。
7 まとめ
クレジットカード事業を成功させるには、高性能で信頼性の高い基幹システムの導入が不可欠です。自社の事業や規模に合わせて適切な基幹システムを導入することで、業務効率化やセキュリティ対策、顧客満足度の向上など、多くのメリットが期待できるでしょう。
TISが提供するデジタル決済プラットフォームPAYCIERGE(ペイシェルジュ)では、クレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済にまつわる幅広いソリューションを提供しています。決済にまつわるソリューションをお探しの際には、TISまでお問合せください。
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