「割販法(割賦販売法)」は、商品の分割払い購入やクレジットカードについて適用される法律です。クレジット会社やカード会社だけでなく、クレジットカード払いや分割払い購入を導入する事業者も、割販法の内容を理解しておく必要があります。
割販法の内容は複雑で、法改正もたびたび行われています。本記事を参考にして、割販法の全体像や最新情報の理解を深めましょう。
本記事では、割販法について分かりやすく解説します。基本的な情報や事業者の義務、違反時のリスク、対応の在り方などを幅広く解説するので、参考にしてください。
1 割販法(割賦販売法)の基本的な情報
1-1 割販法の読み方と正式名称
1-2 割販法の目的と背景
1-3 対象となる取引とは?個別・包括信用購入あっせんの違いも解説
1-4 どんな商品やサービスが対象になるのか?指定商品・指定権利・指定役務とは
1-5 割販法の適用除外となるケース
2 割賦販売を行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
2-1 割賦販売条件の表示
2-2 契約書面の交付
2-3 前払式割賦販売業の許可等
3 ローン提携販売を行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
3-1 ローン提携販売条件の表示
3-2 契約書面の交付
4 信用購入あっせんを行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
4-1 信用購入あっせん業者の登録
4-2 顧客の与信審査と信用判断
4-3 取引条件に関する情報の提供(包括信用購入あっせん)
4-4 取引条件の表示・契約書面の交付(個別信用購入あっせん)
4-4-1 交付すべき書面の種類とタイミング
4-4-2 書面の電子化は可能?
4-5 クーリングオフに関する説明・対応(個別信用購入あっせん)
4-6 加盟店に対する調査・管理(クレジットカード番号等取扱契約締結事業者)
4-6-1 調査すべき事項
4-6-2 定期的なモニタリング・調査義務
5 2021年4月施行・割販法改正について|法令対応で押さえるべき最新動向
5-1 包括信用購入あっせんに関する契約情報の電子提供が拡大
5-2 後払いサービス事業者向けの新規制を整備(登録少額包括信用購入あっせん業者)
5-3 その他改正ポイント
6 自社は割販法の対象?対応が必要な企業のチェックポイント
6-1 割販法の適用有無に関する判断のポイント・該当するサービスの例
6-2 対応すべき義務のチェックリスト
7 割販法に違反した場合の罰則・リスク
7-1 行政処分|業務改善命令・業務停止命令・登録の取消し
7-2 刑事罰|拘禁刑・罰金
7-3 民事上のリスク|契約の取消しや解除、返金など
7-4 信用失墜によるビジネスへの影響
8 割販法への対応を効率化する方法
8-1 業務フローの標準化と体制構築でミスと属人化を防ぐ
8-2 電子化・自動化による対応精度と業務効率の向上
8-3 信頼できる外部ソリューションを活用し、コストとリスクを最小化
9 割販法対応は体制整備とシステム化が重要
1 割販法(割賦販売法)の基本的な情報
まずは、割販法に関する基礎知識を解説します。割販法の目的や対象取引、適用されないケースなどを確認しましょう。
1-1 割販法の読み方と正式名称
「割販法(かっぱんほう)」とは、商品やサービスを分割払いで購入する取引、クレジットカードで商品やサービスを購入する取引などに適用される法律です。
正式名称は「割賦販売法(かっぷはんばいほう)」といいます。
1-2 割販法の目的と背景
割販法の主な目的は、商品やサービスを分割払いまたはクレジットカードで購入する取引について、購入者が損害を被る事態や、クレジットカード番号等の重要な情報が漏洩する事態を防ぐことです。
分割払いやクレジットカードを用いた購入の際には、購入者にとって不利益な条件を事業者側が一方的に設定したり、クレジットカード番号等が漏洩して第三者に悪用されたりするおそれがあります。このようなリスクから購入者を守るため、割賦販売法では事業者側が遵守すべきさまざまな規制を定めています。
1-3 対象となる取引とは?個別・包括信用購入あっせんの違いも解説
割販法は、以下の取引に適用されます。
① 割賦販売(自社割賦)
販売業者が購入者に対して、代金分割払いで商品やサービスを販売する取引です。支払期間が2カ月以上にわたり、かつ支払回数が3回以上の場合に割販法が適用されます。
② ローン提携販売
販売業者が購入者に商品やサービスを販売する際、購入者が金融機関から代金を借り入れて支払い、その借り入れを販売業者が保証する取引です。返済期間が2カ月以上にわたり、かつ返済回数が3回以上の場合に割販法が適用されます。
③ 信用購入あっせん
クレジット会社が商品やサービスの販売代金を立て替えて支払い、後日購入者がクレジット会社に立替金を支払う取引です。支払期間が2カ月以上にわたる場合に割販法が適用されます。
信用購入あっせんは、さらに「個別信用購入あっせん」と「包括信用購入あっせん」の2種類に分かれます。
「個別信用購入あっせん」は、商品やサービスの購入1回ごとに、購入者とクレジット会社が契約を締結します。「個別クレジット」と呼ばれることもあります。
「包括信用購入あっせん」では、クレジットカードなどが発行されます。利用限度額の範囲内であれば、クレジット会社と新たな契約を締結することなく、商品やサービスを購入することができます。
1-4 どんな商品やサービスが対象になるのか?指定商品・指定権利・指定役務とは
割販法は、法令によって指定された商品や役務(サービス)、権利の購入取引に対して適用されます(包括信用あっせんについては、商品と役務の種類は限定されていません)。
取引の種類 | 適用対象となるもの |
---|---|
割賦販売 | 指定商品・指定権利・指定役務 |
ローン提携販売 | 指定商品・指定権利・指定役務 |
信用購入あっせん | 商品・指定権利・役務 |
指定商品・指定権利・指定役務に当たるものは、それぞれ割賦販売法施行令の別表第一・第一の二・第一の三に列挙されています。たとえば、以下のものが挙げられます。
指定商品 | 真珠、書籍、発電装置、時計、浄水器、自動車、自転車、パソコン、化粧品、楽器など |
指定権利 | エステティック、美容医療、施設利用、語学教室、学習塾、パソコン教室、結婚相談所 |
指定役務 | エステティック、美容医療、施設利用、家屋の修繕・改良、語学教室、学習塾、パソコン教室、結婚相談所、有害動物や有害植物の防除、技芸・知識の教授 |
1-5 割販法の適用除外となるケース
割賦販売および信用購入あっせんのうち、以下のいずれかに当たる取引には割販法が適用されません。
- 購入者が営業のために、または営業として契約を締結するもの
(連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引の一部を除く) - 購入者が外国にいるもの
- 販売者が国または地方公共団体であるもの
- 労働組合等が、直接または間接の構成員に対して販売するもの
- 事業者が、その従業者に対して販売するもの
- 無尽に該当するもの(割賦販売のみ)
- 不動産を販売するもの(信用購入あっせんのみ)
2 割賦販売を行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
割賦販売(=自社の商品やサービスを、支払期間2カ月以上かつ支払回数3回以上の分割払いで販売すること)を行う事業者は、割販法による以下の義務を遵守する必要があります。
2-1 割賦販売条件の表示
事業者が割賦販売を行う際には、その条件について、購入者に対して割販法所定の事項を明示しなければなりません(割販法3条)。
一般的な割賦販売については、以下の事項の明示が義務付けられています。
- 一括払いの場合の価格
- 割賦販売の場合の価格(総額)
- 支払期間、支払回数
- (前払式割賦販売以外の場合)割賦販売の手数料の料率
- (前払式割賦販売の場合)商品の引渡し時期
2-2 契約書面の交付
事業者が割賦販売の方法による販売契約を締結したときは、購入者に対して、契約内容を明らかにする書面を交付しなければなりません(割販法4条)。
一般的な割賦販売については、以下の事項を記載した契約書面の交付が義務付けられています。
- 価格(総額)
- 各回の支払額
- 支払時期、支払方法
- 商品の引渡し時期、権利の移転時期、サービスの提供時期
- 契約の解除に関する事項
- 所有権の移転に関する定めがある場合は、その内容
- その他、割賦販売法施行規則で定める事項
2-3 前払式割賦販売業の許可等
指定商品を引き渡す前に、2回以上にわたって購入者から代金の前払いを受ける割賦販売を「前払式割賦販売」といいます。
前払式割賦販売を業として営む場合は、あらかじめ経済産業大臣の許可を受けなければなりません(割販法11条)。そのほか、営業保証金の供託や前受金保全措置など、購入者を保護するための義務を遵守する必要があります。
3 ローン提携販売を行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
ローン提携販売(=購入者が支払う代金を金融機関から借り入れる際、販売業者がその借り入れを保証すること)を行う事業者は、割販法による以下の義務を遵守する必要があります。
3-1 ローン提携販売条件の表示
事業者がローン提携販売を行う際には、その条件について、購入者に対して割販法所定の事項を明示しなければなりません(割販法29条の2)。
一般的なローン提携販売については、以下の事項の明示が義務付けられています。
- 借入金の返済期間、返済回数
- 借入金の利息その他の手数料の料率
- その他、割賦販売法施行規則で定める事項
3-2 契約書面の交付
事業者がローン提携販売の方法による販売契約を締結したときは、購入者に対して、契約内容を明らかにする書面を交付しなければなりません(割販法29条の3)。
一般的なローン提携販売については、以下の事項を記載した契約書面の交付が義務付けられています。
- 支払総額
- 各回の借入金の返済額
- 返済時期、返済方法
- 商品の引渡し時期、権利の移転時期、サービスの提供時期
- 契約の解除に関する事項
- 所有権の移転に関する定めがある場合は、その内容
- その他、割賦販売法施行規則で定める事項
4 信用購入あっせんを行う事業者が守るべき割販法上の義務とは?
信用購入あっせん(商品やサービスの代金を立て替え、2カ月以上にわたって立替金の返還を受けること)を行う事業者(クレジット会社やカード会社など)は、購入者保護を目的とする割販法のさまざまな規制を遵守する必要があります。
多岐にわたる信用購入あっせんに関する規制の中で、主なものを紹介します。
4-1 信用購入あっせん業者の登録
包括信用購入あっせんまたは個別信用購入あっせんを業として営むことができるのは、経済産業省の登録簿に登録を受けた法人のみです(割販法31条、35条の3の23)。該当する営業を開始する前に、経済産業大臣に対して申請書を提出し、登録を完了しなければなりません。
4-2 顧客の与信審査と信用判断
事業者が包括信用購入あっせんまたは個別信用購入あっせんを行う際には、購入者との間でその契約を締結する際、購入者に対して与信審査を行わなければなりません(割販法30条の2、35条の3の3)。
与信審査は、顧客の年収や他社に対して負っている債務の残高などから、どの程度の支払い能力があるかを判断するものです。支払い能力に見合わない高額の買い物をしてしまうような事態を防ぐため、信用購入あっせん業者に与信審査が義務付けられています。
ただし包括信用購入あっせんの場合、極度額が30万円以下のカード等を交付しようとするときは、与信審査の義務が免除されます。
与信審査の基準は各事業者が自主的に設定すべきものですが、消費者金融などの貸金業者に課されている「総量規制(=年収の3分の1までしか貸付けができない)」などが参考になります。
与信審査の記録は、以下の日まで保存しなければなりません。
包括信用購入あっせん | 以下のうちいずれか遅い日
① カードの有効期間の満了日 |
個別信用購入あっせん | 購入した商品の代金の最終支払期日
※期限前弁済等によって代金債務が消滅したときは、その消滅した日 |
4-3 取引条件に関する情報の提供(包括信用購入あっせん)
事業者が購入者との間で包括信用購入あっせんに関する契約を締結する際には、購入者等に対して取引条件に関する情報を提供しなければなりません(割販法30条、30条の2の3)。
購入者に対する情報の提供は、カード等の交付時と商品やサービスの購入時にそれぞれ義務付けられています。
2021年4月から施行された割販法改正により、包括信用購入あっせんに関する情報提供は、電子的に行うことが幅広く認められるようになりました。
ただし、スマートフォン・パソコン完結型のサービス以外のサービスについては、購入者の求めがあれば書面を交付しなければなりません。
4-4 取引条件の表示・契約書面の交付(個別信用購入あっせん)
事業者が購入者との間で個別信用購入あっせんに関する契約を締結する際には、購入者に対してあらかじめ取引条件を表示し、契約に関する事項を記載した書面を交付しなければなりません(割販法35条の3の2、35条の3の9)。
4-4-1 交付すべき書面の種類とタイミング
個別信用購入あっせんに関する契約書面の交付は、契約の締結前と締結時の2回において義務付けられています(契約締結前書面・契約締結時書面)。
契約締結前書面は、購入者から申込みを受けたときに遅滞なく交付します。契約締結時書面は、契約締結が完了したときに遅滞なく交付します。
契約締結前書面・契約締結時書面のいずれも、割販法および関連法令所定の事項を記載しなければなりません。書面の交付に不備があると、クーリングオフ期間が進行しないなどのトラブルに見舞われるおそれがあるので注意が必要です。
4-4-2 書面の電子化は可能?
個別信用購入あっせんに関する契約書面の交付は、購入者の承諾を得た場合に限り、電磁的方法による情報提供で代用できるものとされています(割販法35条の3の22)。
包括信用購入あっせんとは異なり、購入者の事前承諾が必要とされている点にご注意ください。
4-5 クーリングオフに関する説明・対応(個別信用購入あっせん)
個別信用購入あっせんの購入者は、事業者から契約書面の交付を受けた日から起算して8日間、その契約をクーリングオフによって解除することができます(割販法35条の3の10)。クーリングオフとは、消費者が事業者との契約をペナルティなしで解除できる制度です。
個別信用購入あっせんを行う事業者は、購入者に対して交付するクーリングオフ書面の中に、クーリングオフに関する事項を明記しなければなりません。契約書面にクーリングオフに関する事項の記載がない場合は、クーリングオフ期間が進行しないので注意が必要です。
購入者によってクーリングオフが行われた場合、事業者は購入者に対して支払い済みの代金を返金しなければなりません。また、クーリングオフによって事業者が損害を被ったとしても、購入者に対して損害賠償や違約金を請求することはできません。
4-6 加盟店に対する調査・管理(クレジットカード番号等取扱契約締結事業者)
クレジットカードを発行する事業者(=クレジットカード番号等取扱契約締結事業者。カード会社など)は、クレジットカード決済を行う販売業者等(=加盟店)と契約を締結する際、クレジットカード番号等の適切な管理や不正利用の防止に支障を及ぼすおそれの有無について調査を行わなければなりません(割販法35条の17の8)。
4-6-1 調査すべき事項
加盟店との契約締結時において、カード会社などが加盟店に関して調査すべき事項は、以下のとおりです。
- 加盟店に関する基本的な事項
- クレジットカード決済により販売しようとする商品、権利または役務
- クレジットカード番号等の適切な管理や不正利用の防止のために、加盟店等が講じる措置
- 加盟店による、過去の特定商取引法または消費者契約法に違反する行為の有無、内容
- 特定商取引法または消費者契約法に違反する行為を防止するために必要な体制の整備の状況
- 購入者等の利益の保護に欠ける行為に係る苦情の発生状況
- 購入者等の利益の保護に欠ける行為を防止するために必要な体制、および苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備の状況
- 上記のほか、クレジットカード番号等の適切な管理等を図るために必要かつ適切な事項
契約締結時に調査を行った事項については、書面または電磁的方法によって記録を作成し、初回の定期調査に関する記録を作成するまで(その前に契約が終了したときは、契約終了日から5年間)保存しなければなりません。
4-6-2 定期的なモニタリング・調査義務
カード会社などは、加盟店と契約を締結した後も、適切な頻度・方法によって定期的に、契約時に調査した事項を改めて調査しなければなりません。実務上は、1年に1回以上の定期調査が行われています。
定期調査の記録は、次回の定期調査に関する記録を作成するまで(その前に契約が終了したときは、契約終了日から5年間)保存しなければなりません。
5 2021年4月施行・割販法改正について|法令対応で押さえるべき最新動向
割販法については、2021年4月に施行された改正法によって大規模な変更が行われました。同改正による主な変更点を解説します。
5-1 包括信用購入あっせんに関する契約情報の電子提供が拡大
従来は、包括信用購入あっせん(クレジットカードなど)に関する契約情報の提供は、原則として書面によるものとされており、購入者が承諾した場合に限って電子的に提供することが認められていました。
電子デバイスの普及状況や、事業者・購入者双方の利便性の観点から、2021年4月より包括信用購入あっせんに関する契約情報の電子提供がさらに幅広く認められるようになりました。
スマートフォン・パソコン完結型のサービスについては、事業者は購入者に対する書面交付義務を負わず、契約情報を電子的に提供すれば足ります。
その他のサービスについても、事業者は購入者の承諾を得ることなく、契約情報を電子的に提供することができます。ただし、購入者から求められた場合は書面を交付しなければなりません。
5-2 後払いサービス事業者向けの新規制を整備(登録少額包括信用購入あっせん業者)
従来は、事業規模・極度額・リスクの大小にかかわらず、後払いサービスを提供する包括信用購入あっせん業者に対して一律の規制が行われていました。
しかし近年では、さまざまな事業者によって「BNPL(Buy Now, Pay Later)」と呼ばれる少額の後払いサービスが展開されるようになりました。これらの事業者に対して実態に即した規制を行うため、2021年4月より「登録少額包括信用購入あっせん業者」というカテゴリーが新たに設けられました。
極度額が10万円以下の分割後払いサービスを提供する事業者は、登録少額包括信用購入あっせん業者の登録を受けることができます。通常の包括信用購入あっせん業者に比べると、登録少額包括信用購入あっせん業者の登録要件や行為規制は緩和されています。
5-3 その他改正ポイント
上記のほか、2021年4月より施行された割販法改正では、以下の変更などが行われました。
- ビッグデータやAI等を用いた新たな与信審査手法の認定制度の創設(認定包括信用購入あっせん業者)
- 決済代行業者やQRコード決済業者を対象とするセキュリティ対策の強化
- 業務停止命令の新設、罰則の追加
など
6 自社は割販法の対象?対応が必要な企業のチェックポイント
割販法が適用される事業者は、同法に定められる規制を遵守する必要があります。新しいサービスを展開しようとする際には、割販法の適用対象となるかどうかを必ず確認しましょう。
6-1 その他改正ポイント
割販法の適用有無に関する判断のポイント・該当するサービスの例
割販法が適用されるのは、主に「割賦販売」「ローン提携販売」「(個別・包括)信用購入あっせん」のいずれかを行う事業者です。それぞれ、以下のポイントを踏まえて割販法が適用されるかどうかを判断しましょう。
取引の種類 | 判断のポイント | 該当するサービスの例 |
---|---|---|
割賦販売 | ① 指定商品、指定権利または指定役務を自ら販売する
② 代金の支払方法は分割払いである ③ 支払期間が2カ月以上、かつ支払回数が3回以上である |
分割払いによる通信販売
分割払いによる高額商品の販売 |
ローン提携販売 | ① 指定商品、指定権利または指定役務を自ら販売する
② 購入者が代金を金融機関から借り入れ、その借り入れを自社が保証する ③ 返済期間が2カ月以上、かつ返済回数が3回以上である |
金融機関のローンと提携して行う高額商品の販売 |
個別信用購入あっせん | ① 他社が販売する商品、指定権利または役務の代金を、自社が立替払いする
② 支払期間が2カ月以上である ③ 返購入1回ごとに購入者と契約を締結する |
クレジット会社(信販会社)の立替サービス |
包括信用購入あっせん | ① 他社が販売する商品、指定権利または役務の代金を、自社が立替払いする
② 支払期間が2カ月以上である ③ カード等を発行し、利用限度額の範囲内で購入者が自由に利用できる |
カード会社によるクレジットカードの発行 |
6-2 対応すべき義務のチェックリスト
本記事で紹介した、割販法が適用される事業者に適用される主な義務をまとめました。そのほかにも細かい義務が定められているので、必要に応じて顧問弁護士のアドバイスを受けつつ、漏れなく規制を遵守してください。
取引の種類 | 主な義務の内容 |
---|---|
割賦販売 |
|
ローン提携販売 |
|
個別信用購入あっせん |
|
包括信用購入あっせん |
|
7 割販法に違反した場合の罰則・リスク
事業者が割販法に違反すると、行政処分・刑事罰・民事上のリスク・信用失墜のリスクを負うことになります。
7-1 行政処分|業務改善命令・業務停止命令・登録の取消し
包括信用購入あっせん業者または個別信用購入あっせん業者が割販法の規定に違反した場合には、経済産業大臣による業務改善命令を受けることがあります(割販法30条の5の3、35条の3の21など)。
業務改善命令に違反した場合には、1年以内の業務停止命令を受けることがあります。また、悪質な違反行為をした場合は、包括信用購入あっせん業者または個別信用購入あっせん業者としての登録を取り消されるおそれがあります(同法34条の2、35条の3の32など)。
また、上記の行政処分に至らずとも、経済産業大臣から勧告などの行政指導を受けることがあります。行政指導には法的拘束力がありませんが、従わないと行政処分に発展する可能性が高いのでご注意ください。
7-2 刑事罰|拘禁刑・罰金
割販法に違反する一部の行為は、拘禁刑(=刑務所への収監)や罰金の対象とされています。
刑事罰の対象となる主な行為は、以下のとおりです。
違反行為の内容 | 罰則 |
---|---|
包括信用購入あっせんの無登録営業 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 ※併科あり |
業務停止命令違反 | 2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 ※併科あり |
改善命令違反 | 100万円以下の罰金 |
信用購入あっせんに関する与信審査記録の作成・保存義務違反
取引条件の表示義務違反 契約書面の交付義務違反 |
50万円以下の罰金 |
違反した行為者だけでなく、法人も罰金刑の対象になります。
7-3 民事上のリスク|契約の取消しや解除、返金など
個別信用購入あっせんの場合は、契約書面の交付を怠るとクーリングオフ期間が進行せず、クーリングオフができる状態がずっと続きます。購入者にクーリングオフをされたら、受け取った代金を返金しなければなりません。
またその他の類型の取引についても、取引条件の表示などを適切に行わないと、錯誤(勘違い)や詐欺(騙す行為)、消費者契約法違反(不適切な勧誘など)を理由として、購入者に契約を取り消される可能性があります。この場合も、事業者は購入者に対して返金しなければなりません。
返金を拒否すると、顧客から訴訟を提起される可能性があります。訴訟対応には多くの時間的・経済的コストを要するのでご注意ください。
7-4 信用失墜によるビジネスへの影響
割販法違反によって行政処分や刑事罰を受けた場合、その事実が大々的に報道されて自社の信用が損なわれるおそれがあります。
事業上の信用が損なわれると、既存の顧客から契約を打ち切られたり、新たな顧客を集めるのに苦労したりするかもしれません。また、従業員の採用や出資の勧誘を行う際にも、割販法違反による悪いイメージが災いして難航する可能性があります。
8 割販法への対応を効率化する方法
割販法に関する対応を効率化するためには、業務フローの標準化やチェック体制の構築、業務の電子化や自動化などが効果的です。外部ソリューションの活用も有力な選択肢となります。
8-1 業務フローの標準化と体制構築でミスと属人化を防ぐ
割販法に関する対応業務は多岐にわたります。担当者の個人的な知見に依存したり、その都度必要な対応を調べたりしていては、ミスや対応漏れのリスクが避けられません。
たとえば以下のような取り組みを行い、業務フローの標準化とチェック体制の構築を進めれば、適切な割販法対応が可能となります。担当者が変更されても、スムーズに業務を引き継ぐことができます。
- 契約書面の交付などの業務フローをマニュアルやチェックリストにまとめる
- 関係部門を営業、審査、法務などに分け、業務分担を明確化する
- 法改正に対応できるよう、情報収集や改善に関する助言を行う担当者を常設する
8-2 電子化・自動化による対応精度と業務効率の向上
紙ベースや手作業による運用に終始すると、業務に時間がかかり、ミスも減りにくいのが難点です。業務に関する記録の管理も、紙ベースではコストや抜け漏れのリスクが大きくなってしまいます。
たとえば以下のような取り組みによって、できるところから電子化・自動化を進め、業務の効率化と精度の向上を図りましょう。
- 契約書面を電子的に交付、保存する
- 加盟店調査のスケジューリングとアラートを自動化する
- 販売実績やクレーム情報を定期的に可視化して、調査精度を向上させる
8-3 信頼できる外部ソリューションを活用し、コストとリスクを最小化
割販法を含む法令改正によって業務が複雑化すると、自社だけで対応するのは限界があります。
専門的な外部サービスを活用すれば、最新の法改正にもスピーディに対応できるようになります。担当者の知見に依存することなく、外部サービスに集積された知見を活用してコンプライアンスの強化を図ることが可能となります。
9 割販法対応は体制整備とシステム化が重要
割販法が適用される事業者は、社会的信頼を維持しながら安定的に事業を運営するため、割販法の規制を遵守する必要があります。
複雑な法令対応を適切に行うためには、業務の属人化や対応の抜け漏れを防止することがポイントです。また、時間とコストを軽減するため、できる限り業務の効率化を図ることも大切です。
クレジットカード事業を始める際の割販法対応にお困りの事業者は、ぜひ一度ご相談ください。
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