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イシュアとアクワイアラの違いとは?クレジットカード決済を導入する方法や手順を分かりやすく解説

クレジットカード決済の導入は、店舗やEC事業者にとって売り上げ拡大と顧客満足度向上の重要な手段です。しかし、導入にあたっては「イシュア」や「アクワイアラ」など、専門用語や仕組みへの理解が不可欠です。

本記事では、クレジットカード決済の基本から仕組み、導入の流れまでを分かりやすく解説します。決済方法の拡充やイシュア事業に興味がある企業の担当者様の一助になれば幸いです。

目次
1 イシュアとアクワイアラの基本を理解しよう
  1-1 イシュアの役割や代表的な企業とは?
  1-2 アクワイアラの役割や代表的な企業とは?
2 クレジットカード決済の仕組みと役割
3 イシュアとアクワイアラの違いとは?
  3-1 イシュアとアクワイアラが同一のケースもある
  3-2 国際ブランドの役割はルール提供とビジネス基盤の整備
4 クレジットカード申し込みから利用までの流れ
  4-1 クレジットカードの申し込み
  4-2 クレジットカードの利用
  4-3 決済処理
  4-4 売り上げ確定・代金回収
  4−5 カード会員の支払い
5 クレジットカードの取引フロー
  5-1 オーソリ
  5-2 クリアリング
  5-3 セトルメント
6 イシュア事業を始めるメリット
  6-1 利用手数料・金利収入による安定収益の確保
  6-2 顧客データの獲得によるマーケティング活用・クロスセル展開
  6-3 自社ブランドの強化とロイヤルカスタマーの囲い込み
7 まとめ

1 イシュアとアクワイアラの基本を理解しよう

クレジットカード決済の仕組みを理解する上で欠かせないのが、「イシュア(Issuer)」と「アクワイアラ(Acquirer)」の存在です。

イシュアはカードを発行する企業のことで、利用者への与信や支払い管理を担います。一方、アクワイアラは加盟店と契約を結び、カード決済の受け入れや決済処理を担当します。

両者はそれぞれ異なる立場でカード決済を支えていますが、密接に連携することでスムーズな決済処理が実現されています。

1-1 イシュアの役割や代表的な企業とは?

イシュア(Issuer)とは、クレジットカードの発行を行う金融機関や企業のことを指します。カードの申込受付から審査、発行、利用明細の作成、代金の請求、会員情報の管理、不正利用の監視まで、カード会員に関する全般的な業務を担います。クレジットカードを使う消費者との直接的な関係を持つのがイシュアです。

新規カード会員の獲得活動から始まり、カードの与信審査を行った上でカードを発行します。その後は、カード利用者の利用状況を管理し、毎月の利用明細を発行して代金を請求する他、不正利用がないか監視し、トラブルが発生した際には対応も行います。こうした業務を通じて、イシュアは利用者に安全で快適なクレジットカード利用の体験を提供しています。

代表的なイシュア企業は以下の通りです。

  • 株式会社オリエントコーポレーション(オリコ)
  • 株式会社クレディセゾン
  • 株式会社ジェーシービー(JCB)
  • 株式会社ビューカード
  • 三井住友カード株式会社
  • 三菱UFJニコス株式会社
  • 楽天カード株式会社

これらの企業は、日本国内におけるクレジットカード市場を支える主要なイシュアとして、多くの会員を抱えています。

イシュアについて、詳しくは以下の記事で解説しているので参考にして下さい。
クレジットカードのイシュアとは?意味や役割、アクワイアラの違いを分かりやすく解説

1-2 アクワイアラの役割や代表的な企業とは?

アクワイアラ(Acquirer)は、クレジットカード決済を受け付ける店舗(加盟店)と契約を結び、カード決済の導入と運用を支援する企業です。アクワイアラは、加盟店がクレジットカードによる支払いを受けられるようにするためのインフラやサービスを提供し、店舗とカード発行会社(イシュア)をつなぐ重要な役割を担っています。

まず、アクワイアラは加盟店と契約を結び、審査を行います。これは、不正利用やリスクを防ぐために必要なプロセスです。審査を通過した店舗には、カード決済端末の設置やオンライン決済システムなど、決済環境を提供します。そして、実際にカード決済が行われるとその取引情報を収集し、イシュアに送信して承認(オーソリ)を取得します。その後、売り上げ金の確定や決済金の回収・入金処理までを担当します。

つまり、アクワイアラは店舗にとって「決済の窓口」となる存在であり、スムーズで安全な取引を実現するために、技術・サービス・リスク管理など幅広いサポートを提供しています。

代表的なアクワイアラ企業は以下の通りです。

  • イオンクレジットサービス株式会社
  • 株式会社クレディセゾン
  • 株式会社ジャックス
  • 株式会社ジェーシービー(JCB)
  • 三井住友カード株式会社
  • 三菱UFJニコス株式会社
  • りそなカード株式会社

これらの企業は、国内外の多くの加盟店と契約し、クレジットカード決済の普及と信頼性の向上に貢献しています。

2 クレジットカード決済の仕組みと役割

クレジットカード決済は、一見シンプルに見えますが、「カード会員(消費者)」「加盟店(店舗)」「イシュア(発行会社)」「アクワイアラ(加盟店契約会社)」「国際ブランド」の5つのプレイヤーが密接に関わり合って成り立っています。

まず、カード会員はイシュアから発行されたクレジットカードを使用して、加盟店で商品やサービスを購入します。加盟店はアクワイアラと契約を結び、クレジットカード決済の受け入れ環境を整備しています。

カード決済時には、加盟店からアクワイアラを経由して取引情報を送信します。アクワイアラは、その情報を国際ブランドのネットワークを介してイシュアへと送ります。イシュアは、カード会員の残高や利用状況を確認して承認可否を判断し、応答することで即座に決済が完了します。

決済成立後、アクワイアラが売り上げ金を加盟店に支払い、カード会員にはイシュアから利用明細と請求が届きます。カード会員が支払った金額の一部は、手数料としてアクワイアラやイシュア、国際ブランドに分配される仕組みになっています。

このように、各プレイヤーがそれぞれの役割を果たすことで、スピーディかつ安全なクレジットカード取引が実現しています。

3 イシュアとアクワイアラの違いとは?

イシュアとアクワイアラは、クレジットカード決済においてそれぞれ異なる立場で機能しています。

イシュア(Issuer)はカードを発行し、カード会員(消費者)に向けてサービスを提供する企業です。主にクレジットカードの発行や利用履歴の管理、請求業務、不正利用の監視などを担います。

一方、アクワイアラ(Acquirer)は、店舗(加盟店)と契約を結び、カード決済を受け付けるためのインフラやシステムを提供する企業です。主に加盟店審査や決済代行、代金の回収などを行い、取引の安全性とスムーズな運用を支えます。

また、VisaやMastercardといった国際ブランドは、イシュアとアクワイアラの間をつなぐネットワーク運営者として、共通ルールを提供し、グローバルな決済インフラを支えています。両者がそれに基づいて提携することで、国内外で一貫した決済が可能となります。

このように、イシュアとアクワイアラは異なる顧客を相手にしながら、国際ブランドを介して連携し、カード決済の仕組みを成立させているのです。

3-1 イシュアとアクワイアラが同一のケースもある

通常、イシュアとアクワイアラは別々の会社によって運営されていますが、アメリカン・エキスプレス(アメックス)やダイナースクラブ、JCBなどでは、両方の役割を兼ねるケースも存在します。

このような場合、カードの発行と加盟店との契約・決済処理までを一社で完結させることができるため、より柔軟な対応や迅速な処理が可能です。イシュアとアクワイアラが同一会社の場合の取引は「オンアス取引(On-Us Transaction)」と呼ばれ、決済の承認から売り上げ確定までが社内で完結するため、処理スピードや不正検知の精度が高まるメリットがあります。

3-2 国際ブランドの役割はルール提供とビジネス基盤の整備

国際ブランドは、世界中でクレジットカード決済が可能となるよう、決済ルールの整備やネットワークの提供を担う存在です。イシュアとアクワイアラは、この国際ブランドと提携し、共通のルールやシステムを使って決済を実現しています。

国際ブランドは、カードのデザインだけでなく、セキュリティ基準・手数料モデル・ネットワーク信頼性など全体の基盤を支える重要な存在です。

代表的な国際ブランドと特徴は、以下の通りです。

国際ブランド 特徴
VISA 世界最大のブランドで、加盟店数・利用可能地域は圧倒的なシェアを誇ります。
Mastercard VISAと並ぶグローバルブランドで、多様なサービスと高いセキュリティを提供しています。
JCB 日本発の唯一の国際ブランドで、国内外に広がる独自ネットワークを持っています。
American Express
(アメックス)
富裕層向けのサービスが充実し、ポイント還元や特典が豊富です。
Diners Club
(ダイナースクラブ)
高所得者層を中心に根強い人気があり、老舗ブランドとして知られています。
銀聯(UnionPay) 中国発のブランドで、近年アジア圏を中心に急速にシェアを拡大しています。

4 クレジットカード申し込みから利用までの流れ

クレジットカードは、申込みから利用、そして代金の支払いまでに一連のステップがあります。以下にその流れを分かりやすく解説します。

4-1 クレジットカードの申し込み

クレジットカードの利用は、消費者がイシュア(カード発行会社)に申し込むことから始まります。申し込み時に、イシュアは年収や信用情報などを基に信用審査を行い、承認後にカードを発行します。

発行されたカードには、Visa、Mastercard、JCBなどの国際ブランドのロゴが表示されており、それにより国内外の加盟店での利用が可能となります。

4-2 クレジットカードの利用

カード会員は、VisaやMastercardなどの国際ブランドの加盟店でクレジットカードを利用して商品購入やサービスの支払いを行います。

加盟店は、アクワイアラと契約し、決済システムを導入しています。カード会員は、サインや暗証番号の入力だけで簡単に支払いができ、現金不要でスムーズな買い物が実現します。

4-3 決済処理

加盟店でカード決済が行われると、カード情報と売り上げデータがアクワイアラに送信されます。アクワイアラは、VisaやMastercardなどの国際ブランドのネットワークを通じて、カード発行元であるイシュアに対し「この取引を承認して良いか」というオーソリゼーション(与信照会/通称オーソリ)を実施します。

イシュアはカード会員の利用可能額や支払状況を確認し、「承認」または「否認」を判断します。結果は加盟店にリアルタイムで通知され、決済が完了します。

4-4 売り上げ確定・代金回収

オーソリで承認が得られると、取引は売り上げとして確定します。アクワイアラは、売り上げ金額を立て替えて加盟店に入金します。その後、イシュアはカード会員から支払いを受け、アクワイアラに対して代金を精算します。

この仕組みにより、加盟店は迅速に売り上げを回収でき、カード会員は後払い形式で利便性高くサービスを受けられるのです。

4-5 カード会員の支払い

カード会員がクレジットカードで商品やサービスを利用すると、イシュアは月ごとにその利用内容をまとめたデータを作成し、カード会員が閲覧できるように通知します。

カード会員はその内容を確認し、支払期日までに登録した銀行口座に利用代金を入金しておく必要があります。そして支払期日になると、1ヶ月分のカードの利用代金が自動的に引き落とされ、イシュアによる立て替え分が回収されます。

こうして、カード会員とイシュア間の取引が完了し、クレジットカードの利用サイクルが一巡します。

5 クレジットカードの取引フロー

クレジットカード決済は、実際の支払いが完了するまでに複数の処理ステップがあります。ここでは、オーソリ、クリアリング、セトルメントの取引について解説します。

5-1 オーソリ

オーソリ(オーソリゼーション)は、クレジットカードの決済時に、「利用されたカードが有効か」「利用限度額を超えていないか」などをリアルタイムで確認する手続きです。これは不正利用の防止や未回収リスクを軽減するために欠かせないプロセスであり、決済が行われる全ての取引において実施されます。

具体的な流れとしては、加盟店でカードが利用されると、その取引情報がアクワイアラを経由して国際ブランドに送信され、イシュアに到達します。イシュアはカード会員の利用限度額、支払状況、不正利用の兆候などを確認し、承認(オーソリOK)または否認(オーソリエラー)を即時に判断し、結果を加盟店に返します。

オーソリエラーとなる主な原因には、利用限度額の超過、カードの有効期限切れ、利用停止中、紛失・盗難による利用制限などが挙げられます。オーソリが完了しないと、取引は成立しません。

5-2 クリアリング

クリアリングとは、加盟店が確定した売り上げ情報をアクワイアラ経由でイシュアに送信する手続きです。特にEC取引などで商品の発送と決済のタイミングが異なる場合に重要な工程です。

クリアリングでは、売り上げ金額に加えて手数料、税、取引日時などの詳細情報が含まれており、正確な精算のために重要な役割を果たします。これらのデータは、国際ブランドの決済ネットワークを通じて迅速かつ安全に処理され、次のセトルメントに引き継がれます。

5-3 セトルメント

セトルメントとは、確定した売り上げ情報に基づき実際のお金のやり取り(清算)を行う工程です。イシュアはカード会員に代わって一時的に立て替えた金額を、アクワイアラを経由して加盟店に送金します。同時に、カード会員には利用明細が通知され、後日、指定口座から代金が引き落とされます。

このお金の移動は、VisaやMastercardなどの国際ブランドが提供するネットワークを通じて安全かつ正確に処理されます。また、セトルメント時には、手数料や為替レートの調整が反映されるため、取引金額の最終確定に不可欠なプロセスです。

6 イシュア事業を始めるメリット

クレジットカードのイシュア事業は、クレジットカードの発行にとどまらず、企業にとって多くの収益機会と経営的メリットをもたらします。ここでは、具体的なメリットとその内容について解説します。

6-1 利用手数料・金利収入による安定収益の確保

イシュア事業の大きなメリットの一つは、安定した収益構造です。カード会員がクレジットカードを利用すると、その利用額に応じて加盟店から手数料が発生し、アクワイアラとの取り分を得ることができます。

さらに、リボ払いや分割払いを選択した場合には、手数料や金利収入が発生し、継続的な収益源となります。また、キャッシング機能を通じた現金引き出しでは利息収入も得られ、これら全てがイシュアにとって定常的かつ予測可能な収益を支える要素となっています。

6-2 顧客データの獲得によるマーケティング活用・クロスセル展開

イシュア事業では、カード会員の利用履歴を通じて詳細な顧客データを蓄積できます。加盟店や購入金額、利用時期などから消費傾向や信用スコアを分析することで、個々のニーズに合った金融サービスの提案が可能です。

例えば、銀行口座開設や投資、保険、ローンなどへのクロスセル展開が期待でき、収益機会を広げられるでしょう。また、会員専用アプリやメールマガジンを活用したキャンペーン配信や広告展開により、販促効果や広告収入の獲得にもつながります。

6-3 自社ブランドの強化とロイヤルカスタマーの囲い込み

イシュア事業を展開して自社名義のクレジットカードを発行すれば、ブランド認知の向上や企業イメージの強化につながります。特に、ロゴやデザインを通じて消費者との接点を広げられる点が大きな魅力です。

また、ポイント制度や限定特典などの優待サービスを用意することで、顧客のロイヤリティを高め、長期的な利用を促進できるでしょう。さらに、自社グループのECサイトやリアル店舗での決済誘導によって、グループ内の経済圏を活性化させる効果も期待できます。

7 まとめ

クレジットカード決済の導入や運用には、イシュアやアクワイアラ、国際ブランドといった複数のプレイヤーが関与し、それぞれの役割を果たすことで安全かつ円滑な取引が実現されています。イシュアとアクワイアラの違いを理解することで、決済ビジネス全体の構造が明確になり、自社に最適な導入・運用方法を見極めやすくなります。

TISが提供する決済ソリューションのトータルブランド「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」は、自社ブランドのクレジットカード発行から、加盟店向けのキャッシュレス決済導入支援まで、幅広いニーズに対応可能です。決済サービスの導入や拡充を検討する事業者にとって、心強いパートナーとなることを目指します。

決済について課題を抱えている場合は、お気軽にご相談ください。

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