近年、日本におけるキャッシュレス決済の普及は急速に進展し、2024年にはキャッシュレス決済比率が39.3%に達し過去最高を更新しました。QRコード決済や電子マネー、非接触型カード決済など、多様な手段が生活に浸透するなか、事業者が顧客に安全かつスムーズな支払い体験を提供するためには、決済インフラの整備が不可欠です。
その中核を担うのが「ペイメントゲートウェイ」です。取引情報を暗号化し、カード発行会社や決済代行業者へ適切に連携することで、セキュリティを確保しつつ効率的な決済処理を実現します。
本記事では、商品販売やサービス提供に携わる事業者の皆様に向けて、ペイメントゲートウェイの仕組み・機能・導入メリットをわかりやすく解説します。
1 ペイメントゲートウェイ(決済ゲートウェイ)の意味
ペイメントゲートウェイ(決済ゲートウェイ)は、顧客のオンラインや対面でのキャッシュレス決済を、安全かつ効率的に処理するための中継プラットフォームを意味します。顧客が入力した支払い情報を即座に暗号化し、安全な通信経路を通じて決済代行サービスやカード発行会社へ送信します。
この仕組みによって、取引データの安全性が確保されるとともに、不正利用のリスクを低減できます。また、ペイメントゲートウェイは取引で発生したデータを収集・報告し、事業者の分析や管理を支援しています。
さらに、ペイメントゲートウェイは事業者が構築するのではなく、決済代行事業者(PSP:Payment Service Provider)や国際的な決済プラットフォーム提供者が担うのが一般的です。加盟店はこれらの事業者と契約することで、多様な決済手段を一括して導入・運用できる仕組みを得られます。
2 ペイメントゲートウェイの仕組み
ペイメントゲートウェイは、顧客の支払いを安全かつスムーズに処理するための仕組みです。顧客と加盟店(販売やサービス提供を行う企業)、アクワイアラーやカード発行会社といった関係者の間で、以下の流れが発生します。
- 支払い情報の入力
顧客は加盟店のウェブサイトやアプリで購入情報を入力する場合や、実店舗のPOS端末・モバイル決済端末にカードやスマホをかざす場合など、チャネルに応じて支払い方法を選択します。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などの情報が入力・読み取りされることで、決済処理が開始されます。 - データの暗号化
入力・読取された支払い情報は、ペイメントゲートウェイによってTLS(Transport Layer Security)プロトコルを用いて暗号化され、不正アクセスや窃取から保護されます。 - セキュア環境でのデータ管理
暗号化された支払いデータは、ペイメントゲートウェイや決済代行業者のセキュアな環境でPCI DSSに準拠して管理されます。加盟店には取引IDやトークン化された情報が返却されるため、加盟店自身がカード情報を保持する必要はありません。 - 取引明細データの中継
ペイメントゲートウェイは、暗号化された取引明細データを加盟店契約先の決済代行サービスとアクワイアラー(加盟店契約を管理する決済事業者)に中継します。決済代行会社(PSP)を介する場合は、そこから各カードブランドや決済ネットワークに接続され、最終的にカード発行会社へ送られます。 - 取引詳細の確認
アクワイアラーやカード発行会社は、顧客の口座の与信残高、有効期限、支払方法などの有効性を照会し、取引の可否を判断します。 - 承認または拒否
カード発行会社または決済代行業者は審査結果に基づいて取引を承認または拒否し、その結果をアクワイアラー経由でペイメントゲートウェイに返します。 - 取引結果の通知
ペイメントゲートウェイは結果を事業者サイトやアプリに反映し、顧客に承認可否を通知します。承認された場合は商品の発送やサービス提供が行われ、拒否された場合は別の支払い方法の選択が促されます。
3 ペイメントゲートウェイの機能
ペイメントゲートウェイは、オンラインや対面での決済に必要となる、様々な機能を有しています。主な機能は以下の通りです。
- データの暗号化
クレジットカード番号、セキュリティコード、有効期限などの情報を暗号化し、通信経路やサーバー保管時における安全性を確保します。 - 決済代行業者との接続
決済情報の伝達、承認取得、決済処理の完了通知、エラー処理など、決済代行業者との橋渡しを行います。 - 取引の承認
顧客の入力情報を基に、アクワイアラーやカード発行会社に取引承認のリクエストを送り、結果を事業者に返却します。 - データの収集と提供
決済履歴、返金データなどを収集し、事業者に提供します。これにより、事業者は売上分析や不正モニタリング、会計処理の効率化に活用できます。 - 取引データの不正利用防止
不正取引のリスクを最小化するために、不正検出アルゴリズムや住所確認サービス(AVS)※1、カード確認コード(CVV)※2 チェックなどの高度なセキュリティ対策を実装し、不正取引を事前に特定・遮断します。
※1 AVS「住所確認サービス」:請求先住所とカード登録時の住所の一致を確認し、不正取引を防止する仕組み。
※2 CVV「カード確認コード」は第三者による不正利用を防ぐためにクレジットカードやデビットカードに記載されているセキュリティコード。
4 ペイメントゲートウェイの必要性
ペイメントゲートウェイは、安全かつ効率的なキャッシュレス決済のために欠かせない技術基盤です。では、ペイメントゲートウェイを導入するメリットは何でしょうか。その必要性について、7つの理由を解説します。
- 安全性の確保
顧客との取引では、何よりも安全性が求められます。ペイメントゲートウェイの利活用によって、顧客の支払い情報を暗号化し、不正アクセスやデータ漏洩を防げますので、顧客は安心して商品やサービスの購入を行えます。 - 取引の迅速化
ペイメントゲートウェイは、決済のプロセスを自動化し、取引に要する時間の短縮を実現します。 - 不正利用の防止
ペイメントゲートウェイは、不正検出アルゴリズムや様々なセキュリティ対策によって不正取引を防ぎますので、事業者は不正利用による損失を最小限に抑えられます。 - 多様な支払い方法の提供
ペイメントゲートウェイは、クレジットカードや電子マネーなど多様な支払い方法をサポートしていますので、自分に合った支払い方法を自由に選択でき、顧客の利便性が向上します。 - グローバルな取引対応
ペイメントゲートウェイは、異なる通貨や国際的な決済にも対応しており、企業がグローバルにビジネスを展開する際に重要な役割を果たします。 - データの提供と分析
決済処理で発生する様々なデータはペイメントゲートウェイによって収集され、各事業者に提供されます。事業者は提供された取引データの分析や管理によって、マーケティング強化や業務改善に活かせるようになります。 - 各種法規制への対応
ペイメントゲートウェイは、決済に関する国際的なセキュリティ基準であるPCI DSSに準拠しており、各種法規制や基準に対応して、顧客や事業者に対して安全な決済環境を提供しています。
5 まとめ
ここまで、ペイメントゲートウェイとは何か、その仕組みや機能、必要性について解説してきました。政府の積極的な働きかけもあって、日本では急速にキャッシュレス決済化が進み、とりわけQR決済のウェイトが高まっています。オンラインや実店舗を問わず、決済手段が多様化しており、こうした決済環境の変化に迅速に対応することが、商売の成否を左右します。
QR決済の導入を進める際には、ぜひPAYCIERGEの「加盟店向けQR決済ゲートウェイサービス」をご検討ください。
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