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キャッシュレス化で現場は楽になった?
商業施設スタッフ500人の調査から見えるレジオペレーションの最新動向と課題とは

レジオペレーションの最新動向と課題とは

商業施設におけるキャッシュレス決済(以降キャッシュレス)や独自アプリの導入など、レジオペレーションの効率化や顧客の利便性向上を目的としたデジタル化が進んでいます。一方でキャッシュレスの多様化により現場のオペレーションが複雑化し、顧客対応の負担が一部増加するケースも見られます。キャッシュレス化によって現場スタッフが感じる恩恵や課題、運用実態などは、今後キャッシュレスを推進する企業にとって非常に重要なポイントと言えるでしょう。
本記事では、2025年11月~12月に実施された「商業施設スタッフの意識と現場運営のリアル調査 2025」の結果に基づき、キャッシュレスの導入状況や、スタッフが実務を通して実感している具体的なメリットおよび実務上の課題を紹介します。
調査データからは、キャッシュレスによって会計業務が円滑化している一方で、会員アプリの運用やトラブル発生時の対応において、新たなオペレーション上の課題が生じていることも明らかになりました。本調査結果が、今後の商業施設運営におけるレジオペレーション改善の方向性や、現場の円滑な運用を支える支援のあり方を検討する際の参考になれば幸いです。

本調査は、全国の商業施設で働くスタッフ(会社員、経営者、役員を含む)を対象に、店舗でのキャッシュレス導入状況や、それに伴う実務上の課題、希望する改善点などを定量的に把握することを目的に実施しました。

  • 調査期間:2025年11月26日~12月3日
  • 調査方法:インターネット調査(Fastaskを使用)
  • 調査対象:全国18歳~65歳の男女(商業施設で働くスタッフ)529名

目次
1 キャッシュレス導入状況には店舗規模・業態による「差」が存在
  1-1 大手チェーンと単独店から見えるキャッシュレス導入率の「差」
  1-2 業態が変わると決済も変わる:キャッシュレス普及の温度差
  1-3 決済手段に地域差は見られないが、「未導入率」は共通課題
2 スタッフの53.9%が実感する「効率化」の裏に隠れたレジオペレーションの新たな負荷
  2-1 キャッシュレスで会計がスムーズに
  2-2 オペレーションの効率化に伴う新たな実務負担
3 会員アプリが最大の障壁に?38.5%が感じる会計遅延の真因
  3-1 アプリやポイント施策で起こる会計遅延
  3-2 ユーザー利便性の低さが現場の負担に直結
4 働きやすさを左右する「支援の形」――「孤立」させる運営、「並走」する運営
  4-1 「道具」を渡すだけでは支援とは言えない
5 調査データが示す今後の運営改善の方向性
  5-1 現場の「実務負荷」を可視化する指標の導入
  5-2 デジタル化に伴う対応を「ついで作業」ではなく、「スキル」として評価する
  5-3 「エラーをゼロに」よりも「起きた後にすぐ復旧できる」を目指す
6 【まとめ】キャッシュレス化の真の成功に向けた現場との共創

1 キャッシュレス導入状況には店舗規模・業態による「差」が存在

キャッシュレス導入状況には店舗規模・業態による「差」が存在
まず、商業施設のデジタル化の土台となる「キャッシュレス」の導入状況を見ていきましょう。調査結果によれば、クレジットカード、QRコード決済、電子マネーといった主要なキャッシュレスは、全体として5割前後の店舗で導入されています。しかし、その内訳を詳しく分析すると、店舗の規模や業態によって差があることがわかりました。

1-1 大手チェーンと単独店から見えるキャッシュレス導入率の「差」

大手チェーンと単独店から見えるキャッシュレス導入率の「差」
キャッシュレスの導入率において、運営母体の規模による差が見られます。100店舗以上を展開する大手チェーンではキャッシュレス未導入率はわずか1.2%にとどまり、ほぼ全ての店舗で何らかの決済手段が導入されていることがわかります。また、クレジットカード・電子マネー・QR決済など複数の決済手段の導入が進んでおり、顧客の支払いニーズに合わせた選択肢の整備が進んでいることがうかがえます。
一方単独店では未導入率が26.3%と高く、店舗規模が小さいほど導入・運用のハードルが相対的に高くなり、店舗規模によって導入状況に大きな差が生じていることがわかります。

1-2 業態が変わると決済も変わる:キャッシュレス普及の温度差

業態が変わると決済も変わる:キャッシュレス普及の温度差
流通業ではQR決済(26.5%)や独自決済(9.7%)の導入率が他業態より高く、顧客ニーズに合わせて多様化が進んでいることがわかります。一方サービス業では「取り扱っていない」が22.5%、エンタメ・レジャー業では33.3%と高く、業態によってキャッシュレス対応に差が生じていることがわかります。

1-3 決済手段に地域差は見られないが、「未導入率」は共通課題

決済手段に地域差は見られないが、「未導入率」は共通課題
主要3つのキャッシュレス(クレジットカード・電子マネー・QR決済)の合計シェアでは地域差は大きくなく、全国的にキャッシュレス普及の標準化が進んでいると言えます。一方で「取り扱っていない」や「わからない」という回答はどの地域でも一定割合存在し、未導入の解消は地域を問わず共通の課題となっています。

2 スタッフの53.9%が実感する「効率化」の裏に隠れたレジオペレーションの新たな負荷

2-1 キャッシュレスで会計がスムーズに

キャッシュレスで会計がスムーズに
本調査の結果、キャッシュレスの導入は現場スタッフにとって「会計業務の円滑化」という観点で大きな恩恵をもたらしていることがうかがえます。 スタッフの53.9%が、導入によって「レジ業務がスムーズになった」と回答しています。

キャッシュレス導入における具体的な利点として、以下の項目が上位に挙がりました。

  • 会計がスムーズになった:53.9%
  • 現金の受け渡しトラブルが減った:31.2%
  • 支払い方法の選択肢が増えて対応しやすくなった:28.1%
  • 現金管理やレジ締めの手間が減った:25.8%

これらのデータから、レジオペレーションの作業時間短縮に加え、現金の授受に伴うトラブルや管理業務の負荷も軽減される傾向が見られます。

2-2 オペレーションの効率化に伴う新たな実務負担

今後のキャッシュレス対応で改善してほしい点
キャッシュレス決済について、分かりにくいと言われやすい場面
キャッシュレス導入による会計の円滑化が進む一方で、現場が直面する課題の内容も変化していることがうかがえます。スタッフが今後の改善点として最も強く求めていることは「決済エラーやトラブル発生時の対応簡素化(34.4%)」でした。顧客から「分かりにくい」と指摘されやすい場面や、スタッフが対応に苦慮していると見られる項目は以下の通りです。

  • 支払い方法や会員証・ポイントの併用ルールの複雑さ:27.3%
  • スマホの操作ミスや通信トラブルによる決済不良:27.3%
  • ポイント利用や割引の併用可否に関する説明:20.3%
  • 決済アプリやQRコードの操作方法の説明:18.8%

このように、キャッシュレスの普及はレジオペレーションを効率化させる一方で、多様化する決済手段への正確な対応や、顧客に対する操作方法の説明、機器トラブル時の対応など、新たな実務的・心理的負荷を生み出している側面があると考えられます。これらの調査結果から、現場スタッフ・顧客双方にとって操作負担を軽減するUX(ユーザー体験)の最適化が求められていることがわかります。

3 会員アプリが最大の障壁に?38.5%が感じる会計遅延の真因

3-1 アプリやポイント施策で起こる会計遅延

アプリやポイント施策で起こる会計遅延
独自アプリやポイント施策に関して、スタッフの38.5%が「アプリ等の提示によって会計に遅延が生じている」と回答しています。キャッシュレス自体はレジオペレーションの円滑化に寄与する一方で、企業・店舗が独自に導入しているアプリの操作や提示がレジオペレーションのタイムロスを生む要因となっている実態がうかがえます。

3-2 ユーザー利便性の低さが現場の負担に直結

ユーザー利便性の低さが現場の負担に直結
特に課題として挙げられるのは、アプリのUX(ユーザー体験)に対する評価の低さです。「今後の会員証・ポイント施策で、改善してほしい点はどれですか?」という問いに対し、最も多かった回答は「お客様がより使いやすく感じるようにしてほしい(17.3%)」でした。
レジ対応における困りごとの中、「提示に時間がかかる」「ポイントについての説明が難しい」といった項目も多く挙げられており、レジ業務における円滑なオペレーションの確立には、UXの改善が重要であると考えられます。

4 働きやすさを左右する「支援の形」――「孤立」させる運営、「並走」する運営

4-1 「道具」を渡すだけでは支援とは言えない

「道具」を渡すだけでは支援とは言えない
本調査では、本部や施設運営側による支援の有無が、キャッシュレスの導入率に大きく影響している傾向が見られました。例えば、キャッシュレス利用率が80%を超える店舗では、「決済手数料の一部負担・還元支援(27.3%)」や「施設統一端末の提供(22.7%)」などの具体的な支援が行われている割合が高い傾向にあります。
一方で、導入率が低い店舗では、これらの手数料補助や導入費用の補助を受けている割合が低く、導入支援が十分に提供されていない可能性がうかがえます。この結果から、現場スタッフの意欲だけでなく、運営側による物理的・経済的な「並走型」の支援が、キャッシュレスなどデジタル化の定着において重要な役割を果たしていると考えられます。

5 調査データが示す今後の運営改善の方向性

本調査の結果から、商業施設におけるキャッシュレスをはじめとしたデジタル化はレジオペレーションの円滑化に寄与している一方で、多種多様なキャッシュレス運用による複雑化や顧客への操作説明、機材のトラブル対応など、新たな課題も顕在化していることが分かりました。これらの調査結果を踏まえ、今後の店舗運営における改善の方向性を以下の3つの視点で整理しました。

5-1 現場の「実務負荷」を可視化する指標の導入

運営側では売上やアプリ登録数といった目に見える成果が注目されがちですが、その陰で起きているレジオペレーションの遅延といった現場の課題を無視することはできません。
調査によると、スタッフの38.5%がアプリ提示による会計遅延を実感しており、精算開始後にアプリを提示するケースや、提示そのものに時間がかかる事象も発生しています。こうした現場の滞留時間やエラーの発生率といった「マイナス指標」を把握し、改善につなげていくことで、スムーズな店舗運営と販促施策の両立が可能になると考えられます。

5-2 デジタル化に伴う対応を「ついで作業」ではなく、「スキル」として評価する

多機能化するキャッシュレスなどのデジタルツールにより、スタッフが習得すべき実務知識も増加しています。実際に、支払い方法やポイント併用ルールの複雑さに苦労しているスタッフは27.3%、操作説明という接客以外の役割を担っているスタッフは18.8%に上ります。
こうした高度なデジタル化により煩雑化した実務を、店舗運営企業が単なる補助的な業務と捉えるのではなく、店舗運営を支える重要な技術として位置づけて再定義していく必要があります。研修制度の充実や評価への反映を通じて、スタッフのスキル習得を組織的にサポートすることで、人材の中長期的な定着にもつながる可能性があります。

5-3 「エラーをゼロに」よりも「起きた後にすぐ復旧できる」を目指す

キャッシュレスでは、通信環境や端末トラブルを完全に排除することは難しく、トラブル発生後の迅速な対応が重要となります。現場からの改善要望で最も多かった「トラブル対応の簡略化(34.4%)」は、現在の対応手順がスタッフにとって大きな負担となっている現状を示しています。
端末エラーなどが発生した際に、現場で迅速に判断・対応できる仕組みや、対応手順の簡略化は、接客の質の維持とスタッフの心理的な負担を軽減する上で非常に有効であると考えられます。

6 【まとめ】キャッシュレス化の真の成功に向けた現場との共創

「商業施設スタッフの意識と現場運営のリアル調査 2025」を通じて明らかになったのは、キャッシュレスをはじめとするデジタル化によって「効率化」が進む一方、「実務の複雑化」という課題も同時に生じていることです。
現場スタッフの53.9%が会計の円滑化を実感しているのは大きな成果ですが、会員アプリのUXへの肯定的評価はわずか7.7%に留まり、トラブル対応の簡素化を求めるニーズも強いことから今後の改善余地は大きいといえます。運営側に求められるのは、ツールの導入を目的(ゴール)とするのではなく、そのツールが現場でどのように運用されているか、どのような課題が生じているかを継続的に観察し、現場とのギャップを着実に埋めていく姿勢であると考えられます。

今後さらなる労働力不足が予測される中、商業施設の持続的な運営のためには、データに基づき現場の実態を把握し、スタッフが本来の業務(接客等)に専念できる環境を整えることが、施設全体の価値向上に直結する戦略になると考えられます。
キャッシュレス導入を検討する際には、この調査結果を参考データとしてぜひご活用ください。


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