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スーパーアプリ、ミニアプリとは何か? 仕組みやメリット、国内外の事例を紹介

アプリ

中国や東南アジアを中心にスーパーアプリが幅広く利用され、ようやく日本でも注目を集め始めています。
今回はこのスーパーアプリとミニアプリについて説明するとともに、注目されている理由や実際の事例についても紹介していきます。

1.スーパーアプリ、ミニアプリとは何か?

言葉

まず、アプリは「アプリケーションソフトウェア」の略で、さまざまなサービスをすぐに使える便利なソフトウェアを指します。スマートフォンやタブレットには、電話アプリやブラウザアプリ、写真アプリなどがあらかじめ入っています。また、ゲームアプリや買い物アプリ、銀行アプリなどは、アプリストアからダウンロードすればすぐにスマートフォンやタブレットで利用できます。

1-1.スーパーアプリ

スマートフォン時代特有の新たな市場が形成されているなかで、今注目を集めているのが「スーパーアプリ」と呼ばれる新たな形のアプリです。スーパーアプリは、多様なサービスや機能が使えるプラットフォームのような役割を担うアプリのことを指します。例えば決済サービスのアプリの中で、配車や公共料金の支払い、資産運用、美容室の予約などもできるような形です。
 
日本ではLINEやPayPayが、海外では中国のWeChatやシンガポールのGrabがスーパーアプリに該当します。LINEは、スマートフォンやタブレットさえあれば無料でだれとでも通話やチャットができるアプリで、2022年時点で月間ユーザー数は9,400万人を超えており、人々の生活に欠かせない存在となっています。

1-2.ミニアプリ

あらゆるサービスがひとつのスーパーアプリに集約できるようになった背景として、ミニアプリがあります。ミニアプリとは 、スーパーアプリの中で機能する軽量のアプリのことで、スーパーアプリが「親」ならミニアプリは「子」の位置づけです。

ミニアプリとスーパーアプリはユーザー情報がリンクしているため、大元であるスーパーアプリのダウンロードと登録をするだけで、さまざまなミニアプリを利用できるようにななり、何度も個人情報を登録する手間が省けます。

2.スーパーアプリ・ミニアプリの需要が高まっている背景

ミニアプリ

スーパーアプリ・ミニアプリの需要が高まっている背景は、さまざまです。まず、ユーザー側はアプリのダウンロードや管理の手間が省けるほか、スマートフォンの容量をアプリで圧迫せずに済むなど、多くのメリットがあることがニーズの高まりの要因となっています。
一方でスーパーアプリの事業者側は、多くのサービスをミニアプリとして内包することで、ユーザーの囲い込みや自社サービスの利用増加、満足度向上を期待できます。
また、ミニアプリの事業者側は、これまでアプリを開発しても想定した集客効果を得られない課題を抱えていました。しかし、スーパーアプリというすでにユーザーから信頼を得ているアプリの中でサービスを展開することで、会員登録なしの優れたUXで多くの会員へアプローチすることが可能になりました。
つまり、スーパーアプリとミニアプリの双方の事業者にとって、ユーザー獲得の勝機となっていることが需要の高まりを後押ししています。

3.事業者側のスーパーアプリ・ミニアプリのメリット

需要の背景を踏まえて、事業者のメリットは主に以下の3つがあります。

①ミニアプリはダウンロード不要なためユーザー使用率が上がる

スーパーアプリの多くは、すでに多数のユーザーが使っている定番のアプリです。「いつものアプリ」を開くと、そのなかにミニアプリの機能が入っているので、ユーザーにアプリをダウンロードしてもらう必要がありません。また、多数の個別のアプリを管理する必要もなくなります。

こうした手間が省けるため、ミニアプリ事業者はアプリストアでリリースするよりもユーザーに使ってもらえる可能性が高くなります。また、スーパーアプリ事業者も自社にない魅力的なサービスをミニアプリとして追加することができ、スーパーアプリの利用促進につながります。

②開発コストを大きく抑えられる

アプリにもよりますが、ミニアプリは親となるスーパーアプリのフレームワークを活用して開発されます。そのため、iOSやAndroid OSでの開発に比べて開発コストを抑えられるケースが多いと言えます。

また、前述のように定番アプリ上でリリースできるので、一から宣伝しないといけない一般的なアプリに比べて宣伝の面でも有利です。

③集客やサービス展開がしやすい

スーパーアプリは、同じプラットフォームでミニアプリを通して様々なサービスを展開する仕組みです。スーパーアプリが持つ基盤を利用できるため、ミニアプリはリリースや集客がしやすいという利点があります。

また、スーパーアプリとミニアプリのそれぞれで取得した顧客情報や行動データを相互に活用すれば、他の事業者との新しいビジネスモデルの創出など、さらなるサービス展開や向上に役立てることができます。

4.ユーザー側のスーパーアプリ・ミニアプリのメリット

スーパーアプリの多くはユーザーの使いやすさを優先して作りこまれていてUXとして優れており、利用者が使いたい、または必要だと思うミニアプリがすでに組み込まれています。

ユーザーが利用する機能が1つのアプリに集約されているため、わざわざアプリを切り替える必要がありません。ミニアプリはホーム画面にアイコンが追加されることもないので、画面をすっきりと整理したいユーザーにも最適です。

さらに、スーパーアプリ上で一度ID認証を行えば、たいていの場合は都度個人情報を登録する必要がなくなります。アプリをインストールするたびに発生していた登録作業がなくなるため、セキュリティの面も含めて利便性が高いと言えます。

加えて、ミニアプリの多くはスーパーアプリ内のブラウザ上でプログラムが動作するため、スマートフォンのストレージ容量を消費しないのも魅力です。一般的なアプリでは、場合によって1GBを超えるものもあり、ミニアプリを使うメリットは大きいでしょう。

5.スーパーアプリ・ミニアプリの国内事例

日本国内における、企業の事例をいくつかご紹介します。

【事例1】LINE

日本最大のコミュニケーションアプリであるLINEは、LINE上でギフトが贈れる「LINE GIFT」や多様な店舗でクーポンが利用できる「LINEクーポン」など、様々なミニアプリをリリースしています。

また、LINE独自で開発しているミニアプリの他に、乗り換え案内サービス「ジョルダン」や美容サロンの予約サービス「リザービア」など、他企業と連携したミニアプリも提供しています。

もともとLINEは企業向けにLINE公式アカウントというサービスを提供していました。LINEユーザーに「友だち」として追加してもらうことで、企業からのお知らせなどを配信できるサービスです。

それに加えて実際のサービスもミニアプリとしてLINEの中で提供できれば、ユーザーはLINEアプリを閉じることなくサービスの利用まで行えます。サービスの宣伝から提供までスムーズに行えるのは、LINEならではの特性です。

【事例2】PayPay

キャッシュレス決済サービスのPayPayもミニアプリを提供しています。第一弾としてリリースしたのは、PayPayのアプリ上でタクシーの配車から決済まで完結できる、タクシー配車サービスの「DiDi」です。

さらに「日用品モール」や「PayPayフリマ」などもミニアプリとして登場しました。決済を行うアプリやサービスと好相性で、UXなども優れており、多くのユーザーが利用しています。

6.スーパーアプリ・ミニアプリの海外事例

 

API接続

海外では、スーパーアプリがすでに多くのユーザーに利用されています。どのようなスーパーアプリ・ミニアプリが注目されているのか、海外の事例を紹介します。

【事例1】WeChat

スーパーアプリの代表例が、冒頭でも触れた中国発のコミュニケーションアプリ「WeChat」です。月間ユーザー数が12億人超えという規模は、もはやアプリという域を超えた巨大インフラにまで成長していると言えます。

WeChatはミニアプリという概念を世に送り出した存在で、2017年より機能提供を開始しています。700万以上のミニアプリの種類は様々で、飲食店の予約、タクシーの予約、映画チケットの購入、電車の乗車券の購入、病院の予約などができ、生活のあらゆる場面で活用されています。

【事例2】Alipay

「Alipay」は中国でもっともメジャーなキャッシュレス決済サービスです。2018年にミニアプリの仕組みを提供しており、WeChatを猛追しています。Alipayの特徴はベースが決済アプリということです。多くの中国人は飲食店やECサイトでの支払い、クーポンなどの利用にAlipayを利用するので、事業者にとってAlipayの中でミニアプリをリリースするのはメリットが大きいと言えます。

また、Alipayは世界最大級のECサイトを運営するアリババグループでもあり、アリババと強力に連携できるのも強みです。

【事例3】Grab

「Grab」は東南アジアでもっとも活用されている配車アプリです。現在ではキャッシュレス決済サービスやデリバリーサービスなどにもビジネスを展開しており、破竹の勢いでユーザー数を増やしています。

Grabもスーパーアプリとしてミニアプリの機能を提供しており、飲食店やホテルの予約・支払いなどをGrabの中で行うことができます。Grabが展開するビジネスとも好相性で、今後もスーパーアプリとして成長していくことが予想されています。

【事例4】Gojek

「Gojek」は、インドネシアを中心に配車をはじめとした、様々なサービスを提供しているスーパーアプリです。

ミニアプリの機能も多数あり、飲食店の予約や電子マネー決済、映画・イベントのチケットの予約、ポイントプログラム、美容サロンの予約などにも対応しています。
また、支払いは「GoPay」アプリを通じて行うことができるため、利用者にとっては利便性が高いと言えます。Gojekは、今後もミニアプリの提供に力を入れていくことが予想できるでしょう。

【事例5】PhonePe

インドでもさまざまなスーパーアプリが立ち上がりつつあります。「PhonePe」は決済機能を中心として、親和性の高い金融サービスや小売りに関連するミニアプリを取り込んで成長したスーパーアプリです。

「PhonePe」はインド政府が推進している決済基盤に接続しており、国の後押しもあって成長してきました。

【事例6】PayPal

「PayPal」も主軸になっている機能は決済機能です。この数年は決済機能に加えショッピングツールや暗号資産関連のミニアプリにも対応してきました。また、請求書作成や顧客管理、販売管理などにも対応しています。

「PayPal」は決済で利用するユーザーがよりロイヤリティを感じられるミニアプリを拡充することで、ユーザーの囲い込みを目的に展開していると考えられます。

7.まとめ

スーパーアプリ・ミニアプリは事業者、ユーザー共にメリットが大きく、今後ますます市場が拡大していくと見られています。 ただ、1つ注意が必要なのは海外で人気のスーパーアプリの仕組みが必ずしも100%日本市場で通用するわけではないということです。

それぞれの国柄、国民性、生活様式にあった仕組みが構築できれば、これからサービスを提供する、あるいはすでに提供している事業者にとってはビジネスを伸ばすチャンスと言えます。独自のアプリに加えて、ミニアプリの提供を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

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