コラム Column

地域の価値を高める「スーパーシティ×決済」 DXと地域の未来 〜持続的な地域社会をつくる〜

2021年11月10日(水)、 TISは『TIS 決済DX Conference』をオンラインで開催し、さまざまなサービス×決済が実現する、デジタルトランスフォーメーションと新たなユーザー体験についての取り組みを紹介しました。
本セッションでは「スーパーシティ×決済」をテーマに、地域の価値を高め、持続的な地域社会を作るためには何を考えるべきかについて、TIS株式会社 DX営業企画ユニット DXR&D部 エキスパートの小林 慶介が解説しています。

小林慶介の写真

<講演者>
TIS株式会社

DX営業企画ユニット DXR&D部 エキスパート
小林 慶介
プロフィール

1.地域の価値を高めるために、何を考えなければいけないか?

地域の現状について

○2019年から2050年の間の福島県の想定人口減少率:46%
○2007年以降全国で廃止されたバス路線キロ数:13,991 km
○全国の商店街での3年間の平均店舗減少率:6%

これらの数字は一例にすぎませんが、こうした地域の問題は徐々に進行していき、問題の広がりになかなか気づくことができません。私が住む福島県には日本酒を始め、おいしい食べ物や素晴らしい景色がたくさんあります。しかしこのまま手を打たずに問題が進行してしまえば、30年後には今とまったく違う姿になってしまうかもしれません。
今回の「スーパーシティ×決済 DXと地域の未来 〜持続的な地域社会をつくる〜」では、会津地域の例を取り上げ、「地域の価値を決めるものは何か」、「地域の魅力を高めるにはどうすればいいか」、事例を交えてお伝えしていきます。

●地域の魅力は単一のものではなく、複数の組み合わせによるシナジーで作られる

(銀座の街並みと会津地域の個性的な日本酒たちの共通点)

銀座と会津地方の日本酒
(複数の組み合わせによるシナジーの例)

上の左写真は銀座の街並み、右写真は会津地域の日本酒です。これらに共通していることは「複数」という言葉です。それぞれが持っている魅力が複数合わさること₍シナジー効果₎によりブランドやエリアの魅力が高まっていきます。

●地域のマーケティングDX

商店街の近くに大手スーパーが出店すれば商店街は衰退してしまうという話をよく聞きますが、この問題に対応していく策はあると思っています。

まずは大手スーパーと商店街の特徴を以下にまとめています。

<大手スーパー>
・POSシステム
・ノウハウと人材
・商品企画や仕入れ力
・プロモーション力

<商店街>
・資金と人材不足
・経験と勘
・店を開ければモノが売れる“成功体験”
・馴染みのお客様

上記は簡単な一例ですが大手スーパーにはPOSシステムがありそれ₍データ₎を活用できる人材や資金などもあります。またお客様のニーズに合わせて新たに商品を仕入れたり商品企画も行います。
一方、商店街のような小規模店舗では資金や人材にも限界がありデータを使ったプロモーションは行わず、長年の経験と勘で運営されている方も多いと思います。商店街ならではの魅力というものももちろんあります。しかし、お客様のニーズの変化に対応できるような取り組みを行わなければ、これからの時代、運営を継続していくことが難しくなるのではないでしょうか。

では、小規模店舗が今後も継続していくためにはどうしたらいいのか。ここでは2つの考え方をご紹介します。

1.EBM(エビデンスベースドマネジメント)

これは言葉の通り、データに基づいて物事を判断する方法です。データを使い、お客様のニーズ、消費の増加減少などのパターンを把握することができれば、小規模店舗でも対応が可能になります。

2.シェア

ひとつの店舗ですべてを担うのではなく、共同の仕入れ、共同の配送などが可能になれば価格面で勝負することができます。また、データを分析する人材やマーケターも複数の事業者でシェアすることでコストを抑えることができます。

上記のようなマーケティングDXをもたらすことができれば、地域の小規模店舗でも十分に発展し商売が継続できると考えています。

●暮らしと事業者をつなぐ「決済(支払い)」

地域のマーケティングDXを考える際、私たちの暮らしと事業者(経済)の間に共通しているものが「決済(支払い)」です。今では決済方法は多岐に渡っており、クレジット決済、プリペイド決済、コード決済などさまざまです。常に私たちの日常には決済が発生しています。しかし、この決済が目的になることはなく、ほしい物があり、その物の価値を繋ぐための手段に他ならないのです。

決済の位置付け

私たちは会津若松に拠点を置き、この地域のDXに挑戦しています。そしてこの決済というものを通じて実現したいと考えており、その取り組みについてご紹介します。

2. TISが会津若松で取り組む「ID決済」

TISが会津若松で目指す「ID決済」は、「人中心の社会の実現」がキーワードになっています。そのために必要なアプローチとして、事業者が共創すること、データを一人一人に還元し、地域に開放するということです。
例えば、私たちも決済をする際、店舗やポイント還元率に合わせて決済手段を変えたりすることがあると思います。どの決済手段で、どのくらい使ったのかを確認するために、それぞれのサービスページで確認したり、アプリ側で確認したりする必要があります。もちろんIDやPWも異なります。これは人が中心のサービスではありません。この例を人を中心に考えると、ひとつのIDやPWでさまざまなサービスを利用できる必要があります。ここで重要になってくるのが「ID」と「データ」になります。

<ID決済による市民中心社会の実現>
ID決済による市民中心社会の実現

会津若松の「ID決済」3つの事例

①SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)

こちらは国が進めている実証実験プログラムで2020年に会津若松市内の総合病院にてID決済の実証実験を行いました。

以下の三つのIDを紐付け、住民の決済動向を作る仕組み作りを実施
❶会津若松の都市OSと呼ばれる共通プラットフォーム上の住民のID
❷決済事業者ごとのID
❸病院の診察券のID

<ID決済による連携>
実証実験

実際、実証実験では病院にて地域ウォレット「会津財布」₍スマートフォンのアプリ)を利用したコード決済を利用していただきました。利用者による決済を契機に上記の①~③のデータを紐づけることで、行政と連動した施策の立案や交通と連動した施策の立案などを検討し、その中で、個人情報をいかにセキュリティ高く管理していけるのか、他の分野と連動するための手段は何かなどを考え課題などに取り組んでいきました。

<SIP ID決済実証実験の概要>
SIP戦略的イノベーション創造プログラム

②電子レシートの取り組み

お店が発行するレシートをデジタル化してスマートフォンのアプリ「会津財布」で受け取る
●レシートのデジタル化によるメリット
●レシート内容に関連したオファー(健康、交通など)
●行政への自動控除申請

<電子レシートの活用例>

電子レシート

利用者にとっては今まで紙で受け取っていたものがデジタル化されるのでお財布の中がスッキリするといったメリットがありますが、それだけではありません。デジタル化されるということはそのデータを利用したクーポンや特典を利用者の利用状況に合わせて配信することもできます。また、セルフメディケーション税制というものがあります。これは薬局などで購入した医薬品を自身の治療に利用したした場合、こうしたセルフメディケーション品のレシートなどの証憑を集めて提出することで税控除が受けられものです。これがレシートのデータと行政の仕組みをつなげることができれば、わざわざ申請を行う必要がなくなるかもしれません。

③地域活性化×デジタルキャッシュ

夜間の飲食店の消費底上施策のデジタル化
●スマートフォンでデジタルクーポン購入
●デジタル化された消費データを分析して参加店舗に還元

<DXを利用した飲食店消費底上げ施策>
会津での事例

会津若松市においては夜間の飲食店の消費を底上げするため、「極上のはしご酒」や「妖怪フード食ベ歩キ」といった施策を打ち出して行ってきました。これらの施策は紙ではなく、すべてデジタル化にし、スマホで購入してスマホで提示するといったスマホ₍デジタル)完結型です。すべてのアクションがデジタル化されることで、利用者の行動動線やクーポンの取得経緯なども把握することができます。また、コロナの感染状況と飲食店の集客の関連性も分析し、レポートといった形で参加店舗にも還元しました。