2024年8月15日、株式会社フィナンシェとTISによる共催イベント「web3 Wave 企業成長の新潮流」をオフラインで開催しました。本レポートではイベントの様子を前後編の2回に分けてお届けします。イベントを共催するTISとフィナンシェ社は、パートナーシップを通じて共創し、事業を推進しています。前編では、両社の事業への取り組み、web3パートナーとの共創による戦略やビジョンについてご紹介します。
1.TIS株式会社 事業への取り組みと戦略、ビジョン
1-1.TISインテックグループのビジョン
1-2.金融分野における主力事業
1-3.web3ビジネスへの取り組み
1-4.フィナンシェ社との共創
2.株式会社フィナンシェ 事業への取り組みと戦略、ビジョン
2-1.暗号資産市場の現状
2-2.フィナンシェの役割と強み
2-3.トークン発行の新たな価値
2-4.地方創生やエンタメ分野での活用
2-5.フィナンシェの今後の展望
1.TIS株式会社 事業への取り組みと戦略、ビジョン
<講演者>
TIS株式会社
Web3ビジネス企画部 部長
林 靖彦
1-1.TISインテックグループのビジョン
TISインテックグループは、「社会の願いを叶えよう」というテーマのもと、すべての人に金融サービスを提供する金融包摂や、スマートシティを含めた都市の集中・衰退への解決、低炭素化、そして健康問題といったSDGsの4つの社会課題に対して、ITサービスを提供し、より良い社会の実現を目指しています。
1-2.金融分野における主力事業
TISの事業領域は金融分野が主力であり、特にクレジットカードのバックエンドのプロセッシングシステムでは国内シェアは約50%になります。決済サービスにおいてはペイシェルジュというブランドでプロセッシングサービスを中心に提供していましたが、現在は幅広い決済サービスを活用し、前述した社会課題の解決に向けて、新たにweb3の技術にも積極的に取り組んでいます。また、そうした新しい分野に挑戦する中で、フィナンシェ社との共創も生まれました。
■Web3ビジネス企画部の活動モデル
Web3ビジネス企画部では、スタートアップ企業と連携しながら、市場の成長を通じて社会に貢献することを目指しています。web3市場の成長を促進し、その成長から生まれる収益を活用して地域経済の活性化を図る活動を展開しています。
1-3.web3ビジネスへの取り組み
TISは2016年からブロックチェーンに関わり、ブロックチェーン推進室としてエンタープライズ向けのブロックチェーン技術に取り組んできましたが、それが現在のweb3ビジネスへと発展しています。2023年4月に立ち上げたWebビジネス企画部は、webビジネス市場の成長を通じて社会貢献を目指しており、2023年7月にフィナンシェ社との協業を開始しました。
現在、Web3ビジネス企画部は4つの領域で活動しています。「ヒト」の分野では、トークンインセンティブ、DAO、コミュニティの取り組みがあり、リアルワールドアセットやサプライチェーンによる「モノ」に関連する活動も進んでいます。また、暗号資産、ステーブルコイン、CBDC※1といった価値の移転に関する「カネ」の取り組みもあります。そして、これらには「情報」というレイヤーも必要で、セキュリティ社会における情報証明に関わる活動も進んでおり、そこにはDID/VC※2、NFT※3、ウォレットなどが含まれます。
※1 CBDC(Central Bank Digital Currency):中央銀行が発行するデジタル通貨
※2 DID/VC(Decentralized Identifier/Verifiable Credential):分散型識別子/検証可能な資格情報
※3 NFT(Non-Fungible Token):特定のデジタル資産を表すためにブロックチェーン技術を利用した非代替性トークン
■Web3が実現するトークン経済圏で新たなビジネスモデルを創出
TISのweb3に関する詳しい取り組みはこちらをクリック
1-4.フィナンシェ社との共創
TISは2023年11月、フィナンシェ社と共同でIEO※4支援サービスを立ち上げました。IEOを含む企業の戦略策定やコミュニティ形成は「ヒト」の分野であるDAOの延長線上にあります。「モノ」に関しては、リアルワールドアセットの概念に基づき、予約引換トークンをファントークンに切り替え、ファンコミュニティを形成する流れを構築しています。「カネ」に関しては、新しい通貨の価値移転を支えるプロセッシングサービスをライセンサーとの共創による包括的なサービスとして提供していきます。
TISのこうした取り組みは、決済手段を含むWeb2.0のインフラの延長線上にあり、私たちはこれまでの業務経験を通じて新たなweb3サービスを提供していきたいと考えています。
※4 IEO(Initial Exchange Offering):資金調達を目的に暗号資産(仮想通貨)を新規発行し、特定の暗号資産取引所がトークンを販売する方式
2.株式会社フィナンシェ 事業への取り組みと戦略、ビジョン
<講演者>
株式会社フィナンシェ
代表取締役CEO
國光 宏尚氏
2-1.暗号資産市場の現状
初めに、現在の暗号資産市場がどのような状況にあるのかを説明させていただきます。暗号資産の市場は、価格変動を繰り返しつつも、長期的なトレンドとしては成長している業界と言えます。2022年11月に、世界第2位の暗号資産取引所であったFTXが破綻し、その結果ビットコインの価格は800万円から300万円程度まで急落しました。その後、SEC(米国証券取引委員会)を含む世界中の規制当局が様々な規制やルールを整備し、その後の1年半でビットコインの価格は900万円程度まで回復しました。
結果として、SECがビットコインに連動するETF※5を承認した後、世界の年金機構や資産運用会社が次々とビットコインなどの暗号資産を取り扱い始め、価格も過去最高水準にまで回復しました。こうした流れから、これまでのクリプト業界やweb3業界はルールのない「ワイルドウェスト」的な市場でしたが、様々な規制当局が介入し、ルールが整備されたことにより、マーケットは新たな成長フェーズに入っていると言えるでしょう。ビットコイン自体も、金と並ぶ資産クラスとして世界的に認められるまでに成長しています。実は、日本はこの領域で先行しており、約5年前に起きたコインチェックのハッキング事件を経て、IEOなどの規制に則した新しい仕組みの導入が進み、現在ではビットコインETFの導入や大手企業のweb3事業参入といった動きが見られています。このように、業界の成熟スピードは予想以上に加速しており、日本は暗号資産のルール整備において先進国であると言えるでしょう。
2-2.フィナンシェの役割と強み
こうした背景から、現在多くの大企業がweb3に参入し始めています。web3の領域では、日本は規制や企業の参入という点で世界の最先端に位置していると思われます。ただし、web3は新しい分野であり、国内で合法的に事業を展開するためには、サービス設計や技術だけでなく、財務、会計、税務といった複雑な問題に対応する必要があります。フィナンシェは2023年1月にコインチェック※6でIEOを実施し、その過程で蓄積されたノウハウは大きな強みとなっています。フィナンシェは、プラットフォームを通じてNFTやIEOの支援を行い、お客様のニーズに応じた独自の仮想通貨を提供しています。このプラットフォームでは、仮想通貨ではないトークンを発行して資金調達ができ、トークンは独自の流通マーケットで売買され、そこにコミュニティが形成されます。現在、フィナンシェのコミュニティ数は300近くあり、メンバー数は13万人を超え、総流通額はすでに50億円に達しています。
※5 IEO(Exchange-Traded Fund):上場投資信託
※6 コインチェック:日本の暗号資産取引所の一つで、ビットコインやアルトコインの取引が行えるプラットフォーム
■web3時代のトークンプラットフォーム 「FiNANCiE」
■「FiNANCiE」の実績
2-3.トークン発行の新たな価値
フィナンシェでは、トークン発行を「次世代型クラウドファンディング」と位置づけています。従来のクラウドファンディングは商品を提供して資金を調達しますが、フィナンシェでは商品にトークンを付けて資金を調達し、そのトークンは市場で売買され、価格が変動します。これまでのクラウドファンディングは支援のみで終わることが多かったですが、フィナンシェではプロジェクトの人気が上がればトークンの価値も上昇するため、支援者にも利益が還元される可能性があり、そこに新しい価値が生まれています。実際に、1億円を超える資金調達プロジェクトも多数存在します。
2-4.地方創生やエンタメ分野での活用
フィナンシェの転機となった最初の大きな成功事例は、4年前に湘南ベルマーレがスポーツチームとして初めてファントークンを発行したことです。それ以来、スポーツ分野でのトークン発行が拡大し、現在では120のスポーツチームがファントークンを発行しています。
また、地方創生やエンタメ分野でもNFTを活用したプロジェクトが増加しています。一例として、地元の生産者や役所が中心となって考えていた従来の方法では資金調達のアイデアに限界がありましたが、ファントークンを活用することで支援者がアイデアやネットワークを提供し、商品の価値を高めることが可能になっています。これはまさに共創のイメージであり、実際に成果も出てきています。
もう一つ興味深い事例として、リアルワールドアセットがあります。これは、ウイスキーの購入券やホテルの宿泊権のように、リアルな資産に紐づいたトークンであり、仮想通貨のように価値の裏付けが曖昧なものとは異なります。今後は、このようなリアルな資産と結びついたトークンが、より注目されていくのではないでしょうか。
2-5.フィナンシェの今後の展望
現在、フィナンシェ上のトークンは仮想通貨ではないため、用途が制限されています。しかし、一定以上のコミュニティが形成され、プロジェクトが成長すれば、IEOを通じて独自の仮想通貨を発行することも可能です。その際にはTISさんと協力して、新たな展開を目指していきたいと考えています。
これまで多くの日本のスモールビジネスは、銀行融資以外の資金調達手段が限られていました。しかし、銀行は利益の出ていない事業や新規に立ち上げられた企業に対して厳しく、思うような融資を受けられないケースが多く存在します。フィナンシェのトークンを活用した資金調達は、そうした事業や企業、スモールビジネスにとって非常に大きなニーズがあると考えます。
私たちフィナンシェは、スポーツ、エンタメ、地方創生、Webプロジェクトなど、仮想通貨ではないトークンの発行やNFTを通じて、総合的な支援を提供しています。
後編では、国内のweb3ビジネス専門家が集まったトークセッションの内容を詳しくお届けし、web3および暗号資産、Crypto市場の最新動向についてご紹介いたします。
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