2021年11月10日(水)、TISは『TIS 決済DX Conference』をオンラインで開催し、
「サービス×決済」が実現するさまざまなデジタルトランスフォーメーションと新たなユーザー体験についての取り組みを紹介しました。
本セッションでは、「ユニファイドコマース×決済」をテーマに、「いつでもどこでも心地よいお買い物ができる」ためには何が必要なのかについて、TIS株式会社DXペイメントコンサルティング部 エキスパート 古井戸 一郎が解説しています。/p>
TIS株式会社
DXペイメントコンサルティング部 エキスパート
古井戸 一郎
2021年7月入社。ユニファイドコマースの事業化推進、社内外の啓蒙活動に取り組む。前職の大手スポーツメーカーではEC事業構築の変革を推進。前々職の黒物家電メーカーの情報システム子会社所属の時代にはオウンドメディアの構築・運営、スマホアプリを活用したプロモーション施策、WebサイトのUX/UI改善などに従事。
1.EC市場の現状とこれから
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査2021年度版」によると、2020年の物販系EC市場の成長率は、2019年に比べて21%増加しました。また、EC市場全体に対する物販系EC市場の割合も、2019年の6.7%に対して、2020年は8.08%と大きく成長しています。
こうしたEC市場の成長の背景には、新型コロナウイルスの影響で消費者が実店舗になかなか行くことができなかったことが大きな理由としてあげられます。
では、今後リアル店舗は縮退していくだけなのでしょうか。ある記事では、「アパレルにおけるリアル店舗の役割が変わる」といわれています。記事によると、ECサイトで服を買うハードルは下がり、売上は伸びていますが、だからといって実店舗はなくならないといいます。実店舗は機能性やEC強化にも必要な存在になりうるもので、デジタルを活用した顧客への情報発信や、EC販売の送客などに重要な役割を担っているのです。
また、コロナ禍では、実店舗における顧客体験の重要性も示されました。すべての買い物がECで済ませられるわけではなく、店舗で実際に見る、探すという楽しみもあります。ECの成長によって店舗の役割は変わってきましたが、重要性はむしろ増しているのです。そのような現状の中でこれから求められるのは、実店舗とオンラインとの連携・融合です。
2.ユニファイドコマースとは?
実店舗とオンラインの融合が「ユニファイドコマース」です。TISが考えるユニファイドコマースとは、オンライン・オフラインに関わらず、いつでもどこでもお買い物ができ、お客様一人ひとりの心をつかむ接客や商品によって、心地よいお買い物体験を提供することです。
大きく分けるとポイントは2つあります。
1.“オンライン・オフラインに関わらず、いつでもどこでも”
これは、たとえば店舗で商品を見て迷った結果、その場ではなく自宅に帰ってからECで購入する『店舗 → EC』の場合や、通勤・通学中にスマートフォンでECサイトにアクセスし、商品を見て気に入ったものを自宅最寄り駅の実店舗で購入する『EC → 店舗』の場合など、場所を問わず、いつでもどこからでも買い物体験が可能だということです。
2.“心をつかむ接客で心地よいお買い物体験”
これは実店舗であれば店員からの適切なアドバイスが、ECであれば配送方法や発送までのスピードや決済方法のラインナップ、サイト上のレコメンドなどが挙げられます。キーワードとしてはOne to Oneリコメンドです。「私」が誰なのか、普段どういったものを好んで購買しているのかを店舗側に把握してもらうことで、実店舗でもECでもより良い提案を受けられるのです。
形を変えるリアル店舗と新たな購買チャネル
では、実店舗ではどんな新しい購買体験が登場しているでしょうか。事例を紹介します。
(1).Amazon GO
Amazonが展開するAmazon GO。日本では無人店舗として紹介されましたが、実際のAmazon GOには店員がたくさんいます。彼らは、お客様がどんな商品に興味関心を持っているのか、誰がどんな商品を買っているのかというデータを、実店舗においても取得しようとしています。
(2).フーマフレッシュ(盒馬鮮生)
中国の食品スーパー・フーマフレッシュでは、オンラインで注文して実店舗で受け取ったり、自宅の最寄り店舗にどんな商品があるのかスマートフォンに通知がきて購入手続きが可能です。店舗で商品を見て購入する際も、レジに並ぶのではなくスマートフォンで支払いをしたり、手ぶらで帰って30分後に自宅に商品が届けられたりします。
(3).パルコ(PARCO)
パルコは渋谷にリニューアルオープンした店舗で新しい顧客体験を提案しています。店舗にはサイネージやタッチパネルが設置されており、実店舗ではありながら、オンラインと同じような体験ができます。自分が購入したい商品を選び、どのフロアになるのかなどを事前に確認することができます。
現代では、新しい顧客購買接点が生まれています。テレビやネットニュースで情報を手に入れたら、SNSで情報を調べてから買い物行動がスタートすることも少なくありません。
スマートフォンを中心とした購買活動
ECサイトでの買い物はもともとパソコンを使って行うことが中心でしたが、現在はスマートフォンを使うのが当たり前になっています。スマートフォンが購買体験の起点になっているのです。
スマートフォンのカスタマージャーニーを見てみましょう。たとえば服を買う場合、同じMサイズでもブランドごとにサイズが異なるので試着したい、素材感を確認したいので試着したいといった場合があります。その場合、スマートフォンで商品情報を調べてから店舗を訪れて試着することになります。
あるいは、店舗で服を買うのではなく、一旦自宅に帰ってからスマートフォンで購入することもあります。このように、オンラインとオフラインを行き来しながら購買体験することも一般的になっています。
3.ユニファイドコマースと決済の関係
心地よいお買い物体験を提供する要素の1つが「決済」です。決済とは、お金とモノやサービスの交換のことです。お金を支払う方法として、さまざまな決済手段があります。たとえば、クレジットカードやデビットカード、電子マネー、○○Payに代表されるコード決済などです。また、代金引換や収納代行、決済代行などもあります。
ではユニファイドコマースというお買い物体験の中でどう関係しているのでしょうか。
ECサイトでの決済方法
お客様がIDとパスワードでECサイトにログインし、配送のために名前や住所、電話番号などを入力して購入することになります。この場合、誰が何を買ったのかという購買履歴は明確です。
実店舗での決済方法
一方、実店舗ではお客様が店舗を訪問し、レジで支払いをします。決済方法については前述した通り、現金やクレジットなどさまざまです。また、会員証やポイントカードなどを提示いただければ、お客様の購買履歴はわかりますが、そうでなければ誰が何を買ったのかという購買履歴は不明です。ですから、会員証やポイントカードは重要な役割を担っているわけです。
最近では、会員証やポイントカードはアプリ化する店舗も増えてきました。アプリであれば、会員証カードをお財布に入れる必要がなく、会員証を忘れること少なくなります。しかし、アプリは乱立しているため、せっかくスマートフォンにインストールしても、他の多くのアプリに埋もれ、アンインストールされてしまうこともあるでしょう。
ユニファイドコマースという観点から考えれば、お客様に心地よい購買体験を提供するために誰がどこで何を購入したのかという購買履歴を的確に把握しておく必要があり、会員証の役割は非常に重要です。
決済の観点でオフラインとオンラインを連携・融合
ではどうすれば店舗での購買履歴を、利便性を高めたうえで把握することができるでしょうか。
解決策として、自社アプリに会員証機能だけでなく、支払い機能も提供するという方法が挙げられます。お客様にとっては、1つのアプリを起動するだけで支払いもでき、ポイントも付与されるというメリットがあります。一方で店舗側にとっては、レジ待ちの解消やお客様の情報が取得できるメリットがあります。
この仕組みを実現するためには、店舗側のPOSレジにECサイトなどの情報を、APIを通して決済代行会社や銀行に接続する必要があります。TISでは、この接続部分のサービスを展開しており、オンライン・オフライン問わず、お客様の行動情報を捉え、その情報を活かしたより良い購買体験をお客様に提供しています。
4.まとめ
ユニファイドコマースとは、オンライン・オフラインに関わらず、いつでもどこでもお買い物ができ、お客様一人ひとりの心をつかむ接客や商品によって、心地よいお買い物体験を提供することです。そのためには、オンライン・オフラインを連携・融合し、お客様の情報を把握することが重要になります。
また、決済の役割とは、「お金」と「もの」や「サービス」の交換を行うために、お金を支払う方法を提供することです。支払いに関してお客様の利便性を向上し、オンライン・オフラインを連携・融合することで、お客様の情報を的確に把握する手段になり得るのです。
そして「ユニファイドコマース×決済」とは、ユニファイドコマースと決済を組み合わせ、新たな購買体験や体験価値の創出につなげていくことだと考えています。
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