コラム Column

BPSPとは?導入メリットや請求書支払い代行サービスの仕組みを解説

BPSP

BPSP(Business Payment Solution Provider)は、企業間の決済を効率化するサービスです。具体的にどのような仕組みでサービスが提供され、どのようなメリットがあるのでしょうか。
本コラムでは、BPSPのサービスの仕組みとメリット、利用時の決済の流れなどを詳しく解説します。

1 BPSPとは

BPSP(Business Payment Solution Provider)は、VISAなどのクレジットカード国際ブランドが提供する企業間の請求書払いを代行するスキームのことです。BPSPを利用することで、クレジットカードによる決済の仕組みがなく、請求書払いのみで取引を行っている企業間でも、クレジットカードによる決済が可能になります。近年、このBPSPの仕組みを利用した「請求書支払い代行サービス」を提供する事業者が増えています。
なお、BPSPは元々、VISAのサービス名称です。例えばJCBはBBPS(BtoB Payment Service)、MastercardはBPAP(Business Payment Aggregator Program)など、異なる名称を使用しています。現在ではVISAに限らず、クレジットカード国際ブランドが提供する請求書支払い代行の仕組み全般を指して「BPSP」と呼ぶことがあります。

2 BPSPの仕組み

BPSPを利用した決済では、下図のように請求書支払い代行サービス事業者が企業間の取引を仲介し、決済業務を代行します。BPSPを利用することで、請求書支払い代行サービス事業者が売り手企業への支払いを立替えるため、買い手企業は売り手企業に直接支払う必要がなくなります。
買い手企業の支払いは、請求書支払い代行サービス事業者に対してクレジットカード決済で行われます。そのため、売り手企業がクレジットカードの加盟店ではない場合でも、請求書支払い代行サービス事業者が「疑似加盟店」として、売り手企業に代わってクレジットカード決済を受け付けることができます。

3 BPSPを利用した支払いの流れ

BPSPを利用した支払いは、以下の手順で行われます。

  1. 売り手企業から請求書を受け取る
  2. 請求書の情報を請求書支払い代行サービス事業者に共有し、立替払いの申請を行う
  3. BPSPによる請求金額の立替払いが実行される
  4. 請求金額(+手数料)が、買い手企業のクレジットカード利用金額として請求される

BPSPを利用する買い手企業は、売り手企業から受け取った請求書を請求書支払い代行サービス事業者に共有します。請求書支払い代行サービス事業者は、BPSPの仕組みを利用して、売り手企業に対して請求金額の立替払いを実行します。
その後、請求書支払い代行サービス事業者が立て替えた請求金額に決済手数料を上乗せした金額が、事前に登録されたクレジットカードの利用額として請求され、通常の支払日に引き落とされるという流れです。

4 BPSPの魅力・特徴

BPSPの主な特徴として、以下の2点が挙げられます。

  • 取引先に知られずに導入できる
  • 簡単な手続きで導入できる

それぞれ詳しく解説します。

4-1 取引先に知られずに導入できる

「BPSPを利用して決済している」ということを取引先(売り手企業)に知られることなく導入できます。
BPSPによる請求書の立替払いは、通常の決済と同じように、買い手企業の名義で支払いが行われます。そのため、取引先はこれまでと変わらないフローでの決済処理が可能であり、事前に取引先へ連絡する必要はありません。

「取引先に悪い印象を持たれないか」「資金繰りに困っていると思われないか」などの懸念から、BPSPの導入を知られたくないケースもあるでしょう。その点、BPSPは取引先に知られることなく安心して導入することが可能です。

4-2 簡単な手続きで導入できる

BPSPの導入手続きはシンプルです。専用の設備を導入したり、取引先と調整したりする必要はなく、請求書支払い代行サービス事業者のWebサイトから会員登録を行うだけで利用を開始できます。新たなクレジットカードを作成する必要もなく、手持ちのクレジットカードを使って支払いを行うことができます。

5 BPSPを導入するメリット

BPSPを導入する代表的なメリットは以下の4つです。

  • 支払い業務を効率化できる
  • 支払い方法の選択肢が増える
  • キャッシュフローの改善が図れる
  • クレジットカードのポイントが貯まる

それぞれ詳しく解説していきます。

5-1 支払い業務を効率化できる

BPSPを導入することで、支払い業務の効率化が可能になります。企業が複数の仕入れ先・取引先と取引を行っている場合、それぞれ異なる支払い締切日や振込先を管理する必要があり、支払い業務の負担が大きくなります。
BPSPを利用することで、支払い先を請求書支払い代行サービス事業者に一本化できるため、業務を簡素化が図れます。これにより、担当者の負担が軽減されるだけでなく、支払い期限の管理が容易になり、支払い遅延などのトラブル防止にもつながります。

5-2 支払い方法の選択肢が増える

企業間取引において、支払い方法の選択肢が広がることもBPSPの大きなメリットです。企業間の取引では取引額が大きく、決済手数料の負担を懸念し、クレジットカード決済を受け付けないケースも多くあります。
BPSPを利用することで、これまで請求書払いしか選択できなかった取引先に対しても、クレジットカード決済を利用できるようになります。また、クレジットカード決済を選択できることで、以下のようなメリットも得られます。

  • キャッシュフローの改善
  • ペーパーレス化の促進
  • ポイント還元の活用

5-3 キャッシュフローの改善が図れる

BPSPの導入は、キャッシュフローの面でもメリットがあります。クレジットカード決済を利用することで、支払いタイミングを遅らせることができるためです。クレジットカード決済が利用できない企業との取引では、支払い期限までに資金を用意できない場合、金融機関からの融資を検討するケースもあるでしょう。
BPSPを利用すれば、クレジットカードの支払いサイクルを活用することで支払いを後ろ倒しにでき、一時的な資金繰りの負担を軽減できます。その結果、キャッシュフローの改善が期待できます。

5-4 クレジットカードのポイントが貯まる

BPSPを利用することで、請求書払いだった決済をクレジットカード決済に置き換えることができ、クレジットカードのポイントが貯まるというメリットがあります。企業間取引では取引額が大きくなるため、貯まるポイントの量も増加します。BPSPの利用には決済手数料が発生しますが、獲得したポイントを活用することで、一部コストを相殺することも可能です。

6 BPSPを導入するデメリット

BPSPの導入には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。

  • クレジットカードの利用限度額以上の決済はできない
  • 手数料が発生する

それぞれ詳しく解説します。

6-1 クレジットカードの利用限度額以上の決済はできない

BPSPを利用する際、支払い方法としてクレジットカードを利用する場合、クレジットカードの「利用限度額」以上の決済はできません。そのため、高額な取引では利用限度額を超えないよう注意が必要です。

6-2 手数料が発生する

BPSPの導入により、売り手企業(請求側)に費用負担は発生しませんが、買い手企業(支払い側)に決済金額の3%前後の手数料が発生します。銀行振込であれば、振込手数料のみの負担で済みますが、BPSPは「決済金額に応じた手数料」が発生するため、取引額が大きいほど手数料負担が大きくなるのが一般的です。
ただし、クレジットカードのポイントが貯まることや、資金繰りの改善によって融資の利子負担を軽減できる可能性があるため、BPSPにはコスト削減につながる側面もあります。そのため、手数料負担とBPSPのメリットを比較し、実質的なコストを計算したうえで利用を検討することが重要です。

7 BPSPの導入方法

BPSPの導入はシンプルで、以下の手順で開始できます。

  1. 請求書支払い代行サービス事業者のサイトにアクセス
  2. アカウントを作成
  3. 決済に使用するクレジットカードを登録

BPSPそのものはクレジットカード国際ブランドが提供する仕組みですが、実際にサービスを提供するのは請求書支払い代行サービス事業者です。まずはサービス提供者のサイトにアクセスし、自社(買い手企業)のアカウントを作成します。アカウント作成時に、決済に使用するクレジットカードを登録します。多くのサービスは複数の国際ブランドに対応しており、デビットカードやプリペイドカードが利用可能な場合もあります。
これで利用登録は完了です。あとは「BPSPを利用した支払いの流れ」で解説した手順に沿って申請を行えば、請求書の支払いを代行してもらうことができます。

8 BPSPの活用はデジタル化の促進につながる

BPSPの導入は、企業の支払い業務をデジタル化し、業務の効率化・ペーパーレス化を促進します。デジタル化のニーズが高まる中、BPSPのような企業間取引を支援するサービスは、今後ますますニーズが高まることが予想されます。
このような状況の中、TISでは企業間取引を伴うサービスを提供している企業向けに、調達/決済サービスのシステム統合と請求・支払業務の組み込みを支援し、中小企業の買い手企業の利便性向上をサポートするサービスを提供しています。本サービスは、銀行振込以外の決済手段の提供や、後払い対応、資金調達手段の確保といったニーズに対応することができます。

TISでは、3,000社以上のお客様のビジネスパートナーとして決済ソリューションを提供してきたノウハウがあり、決済にまつわるビジネス上の課題解決に向けた柔軟なご提案が可能です。請求書支払いサービスによるデジタル化のニーズが高まる中、自社の決済事業をどのように進めるべきかご検討の際には、ぜひTISにご相談下さい。

PAYCIERGEへのお問い合わせ

【企業間取引 関連記事はこちら】
●中小企業に求められるデジタル化。中小企業を支援するサービス検討に向けたヒントとは?