スモールビジネスの経営者を強力にサポートし、まったく新しい金融体験を提供する「BlueBank」。同サービスを提供するScheemeだが、実はサービスの開発前は、クレジットカード発行の実業務を理解している人材が在籍していなかったという。そのような中で、なぜ同社は画期的なサービスを素早くリリースできたのだろうか。
FinTechを活用し「不可能を可能にする金融サービス」を開発
2022年末、持続的な成長を求めるスモールビジネスの経営者を対象とした、まったく新しい金融体験を実現するサービス「BlueBank」がリリースされた。FinTechを活用して生まれたBlueBankを用いることで、経営者は財務不安やストレスから解放される。
BlueBankを開発、提供するScheemeにてプロダクトマネージャーを務める長谷川 宙氏によれば、事前登録の段階で500を超える企業から申し込みがあったという。
「当社は、会計事務所にて中小企業の財務支援に長年従事してきた代表の杉守をはじめ、地方銀行にて融資業務に10年以上携わったメンバーを中心に、2016年に設立されたスタートアップ企業です。『挑戦を讃え、支え続ける社会を創る。』をミッションに掲げ、従来型の金融サービスとは大きく異なる、経営者から愛される新しい金融サービスの創造を目指しています」(長谷川氏)
そこで生み出されたのが、従来の金融サービスでは不可能と考えられていることを実現する、まさに「不可能を可能にする金融サービス」BlueBankだ。
しかし、BlueBankの開発はプロジェクト立ち上げ当初からスムーズに進んだわけではない。システムの開発を自社で賄う体制や、金融業界に詳しいメンバーは揃っているものの、「クレジットカード発行業務の知識を有する人材がいない」という壁がScheemeに立ちはだかったという。
財務状況のリアルタイム共有で「ユーザーとともに経営管理」
そもそも、具体的にBlueBankはどのようなサービスなのか。実際に同サービスが提供する価値は、大きく分けて4つあるという。
1つ目は、情報を一元管理することによって、経営者の意思決定をサポートすることだ。BlueBankを利用すれば、スマートフォンにインストールしたアプリで、銀行口座の日々の入出金収支やBlueBank法人カードの経費利用状況などをまとめて管理することができ、わかりやすい口座管理が実現されている。
2つ目は、支出を管理して経営者の資金繰りを改善できることだ。支払いをしたい請求書をアプリから撮影しアップロードすると、アプリから後払いや分割払いの処理を実行できる。このメリットを享受するためには限度額最大1,000万円の経営者専用ビジネスカードをアプリから申し込む必要があるものの、最短5分、登記簿謄本不要で発行できるため、比較的ユーザーへの負担は少ないだろう。
3つ目は、財務状況を把握した専門家による適切な資金調達方法の提案が受けられる点だ。ユーザーはビジネスを成功させ資産を増やすために、財務や会計、税務に関する幅広いアドバイスを受けることができる。銀行の融資や補助金など、会社の実情に即して資金調達もサポートしてもらえる。
4つ目は、ユーザーが楽しみながら経営管理を行えることだ。ゲーム感覚で、BlueBank内の独自のポイントにあたる「コイン」を貯めたり、貯めたコインを使って獲得できる「ゴールド」を景品と交換できたりすることで、ユーザーの経営管理に関するモチベーションを維持できるように支援する。
「ユーザーと一緒に、日々の財務状況と向きあうことを大切にしています。そのためにBlueBankでは、日々の口座残高の入金や出金といった財務状況をリアルタイムで共有します。たとえば日々の財務状況によって与信限度額を柔軟に増やしたり、請求書後払いサービスの利用およびビジネスカードの発行による資金繰りの改善や、融資や補助金の活用を勧めたりするなど、財務情報を共有するからこそ可能となる内容の提案を行えます」(長谷川氏)
プロダクトマネージャー
長谷川 宙氏
スタートアップ企業や小規模な組織では、チャレンジがしやすいということから、スモールビジネスへ乗り出すケースが多く見られる。たしかにスモールビジネスの立ち上げには多額の投資をする必要はないものの、支出の管理や資金繰りなど財務関連の問題の不安やストレス、悩みが経営者に付きまとうものだ。
そうした課題を抱えているときに、経営管理をともに行ってくれるビジネスパートナーが存在することは、同サービスのユーザーにとって非常に魅力的なポイントとなるだろう。
また、スモールビジネスの立ち上げ後は、経営者も現場の担当者も多忙を極める。限られた時間で経営判断を的確かつ迅速に下すためにも、BlueBankは価値を発揮する。
「BlueBankでは支出管理業務の効率化だけでなく、経営者がコア業務に集中して正確な判断を下すことができるような関連サービスを多数展開しています。スモールビジネスの成功をサポートするために開発しました」(長谷川氏)
しかし、実は開発を進めていく中で「大きな壁」にぶつかっていたと長谷川氏は明かす。
サービス提供の壁は「カード発行の実業務を理解している人材がいない」こと
従来のクレジットカードでは同社がターゲットとするスモールビジネスの経営者にとって、与信枠が十分でないなど、課題が多かった。そこで同社はブランドプリペイドを活用し、顧客の財務状況等から独自の与信を行い、クレジット機能付きのビジネスカードとして展開することとした。しかし、Scheemeにはアプリの開発経験が豊富なエンジニアは在籍していたものの、実際にカードを発行した経験のある人材は在籍していなかった。
そもそもカードを発行するには金融機関や国際ブランドとのやり取りのほかに、印刷会社とのデータ連携やアプリに搭載する決済周りのシステム開発など、さまざまな業務が発生する。「知見が不足していることもありますが、リリースまでの期間にすべての業務を自社のリソースで対応することは難しいと判断しました」と長谷川氏は振り返る。
また、BlueBankの開発では、PVCカードと金属製のメタルカードの2種類を提供することが必須だった。すなわち、ユーザーからのカード変更へのニーズにも対応できるよう、体制を整えなければならない。この観点からも、経験の豊富なパートナーが求められた。
「API型ブランドプリペイドプロセッシングサービス」が課題解決のカギ
当初目標としていた期間でオリジナル性の高い商品を提供すべく、同社はTISの「API型ブランドプリペイドプロセッシングサービス」の活用に踏み切る。その特徴について、TISのペイメントサービスユニット 笠木 隆史氏は次のように語る。
DXビジネスユニット ペイメントサービスユニット
ペイメントサービス第1部
笠木 隆史氏
「『API型ブランドプリペイドプロセッシングサービス』は、カード発行や会員管理、残高管理機能など、プリペイドカードの発行に必要な各種機能をサービスとして提供するものです。決済のコア機能はAPIで提供されるため、さまざまな機能と組み合わせたり、企業の自社システムやアプリと連携させたりすることが可能となっています」(笠木氏)
上記の特長も魅力ではあるものの、ScheemeがTISのAPI型ブランドプリペイドプロセッシングサービスを選定した理由はほかにも存在すると長谷川氏は語る。
「TISさんは、決済ソリューション『PAYCIERGE(ペイシェルジュ)』を展開しており、カード業界でも先進的な技術と豊富な決済ノウハウを持っています。金融機関への支援実績も豊富にあることから、安心してイシュイング(プリペイドカード発行業務)のサポートを依頼できると考えました」(長谷川氏)
また、ユーザーとの接点となるアプリやWebの画面はScheeme側が開発したものの、セキュアにデータをやり取りする「鍵」の仕組みの理解が思うように進まず、TISのサポートを頼る場面もあったと長谷川氏は明かす。
「リリース直前は毎日のように問い合わせしましたが、担当者の方がすぐに回答してくれたため、開発が滞ることを防ぐことができました。知見の豊富さに驚かされると同時に、非常に頼りになると思いました」(長谷川氏)
さらなるサービスの拡充で経営者をストレスから解放する
TISのサービスを利用し、Scheemeは予定どおりにBlueBankを提供開始。現在は不正対策をさらに強化するために、決済データの分析に取り組んでいる。分析をさらに効果的に進めるために、TISには決済サービスを利活用するための機能やデータ提供を期待するという。
また、Scheemeはユーザーを全国各地で開催する「クローズドVIPイベント」へ招待したり、銀行定期預金よりも高年利で資産運用を可能にする「BlueFund VIP」を用意したりするなど、さらなるサービスの拡充によってスモールビジネスに着手する経営者を支援していく構えだ。
「これからも、TISを始めとするビジネスパートナーと協業することによって、経営者を財務に関する不安やストレスから解放します。当社全体でさまざまなお客さまの事業継続・成長に貢献できるソリューションを提供できるよう、一層励んでいきます」(長谷川氏)
サービスについての詳細はこちら
https://service.paycierge.com/branded-prepaid-processing-service-api-edition/
※本コラムは2024年2月19日にFinTech Journalで掲載された内容を転載しています。
※この記事が参考になった!面白かった! と思った方は是非「シェア」ボタンを押してください。