クレジットカード事業は、決済市場の拡大に関わるため多くの企業が注目するビジネス領域です。この市場への参入に興味を持つ企業が理解しておくべき重要なキーワードに「イシュア」と「アクワイアラ」があります。これらは、クレジットカードの仕組みを支える重要なプレイヤーであり、それぞれ異なる役割を担っています。
この記事では、イシュアとアクワイアラの定義を明確にし、クレジットカード決済の流れや収益構造について詳しく解説します。
1 イシュアとアクワイアラの基礎知識
1-1 イシュアとは?
1-2 アクワイアラとは?
2 イシュアとアクワイアラの関係性と決済プロセス
2-1 イシュアとアクワイアラの関係性
2-2 クレジットカード決済のプロセス
3 イシュアの収益構造
4 イシュア事業を始めるためのステップ
4-1 クレジットカードの発行方法を選択
4-2 プロセッシングサービスの役割と特典
4-3 プロセッシングサービスを利用したクレジットカード発行の業務フロー
5 まとめ
1 イシュアとアクワイアラの基礎知識
クレジットカードでは「イシュア」と「アクワイアラ」が重要な役割を担っています。それぞれの違いや役割を理解することで、クレジットカードの仕組みをより深く理解することができます。
1-1 イシュアとは?
イシュア(issuer)とは、消費者にVISAやMaster、JCBといった国際ブランドのクレジットカードを発行する企業のことです。イシュアの主な役割は以下の通りです。
イシュアの主な収入源は、カードの利用手数料や年会費、リボ払いなどの利息、加盟店(アクワイアラ)からの「インターチェンジフィー」です。
1-1-1 日本国内の代表的なイシュア一覧
日本国内の代表的なイシュア企業は以下の通りです。
1-2 アクワイアラとは?
アクワイアラ(Acquirer)は、加盟店と契約を結び、クレジットカードの決済処理を行う企業のことです。アクワイアラの主な役割は以下の通りです。
アクワイアラの主な収入源は、加盟店が支払う決済手数料の一部と、加盟店に提供する端末の設置や運用サポートなどのサービス料(契約管理費)です。
1-2-1 日本国内の主なアクワイアラ一覧
日本国内の代表的なアクワイアラ企業は以下の通りです。
2 イシュアとアクワイアラの関係性と決済プロセス
イシュアはクレジットカードの発行を、アクワイアラは加盟店との契約を主な業務としています。ここでは、両者の関係性とクレジットカード決済のプロセスについて詳しく解説します。
2-1 イシュアとアクワイアラの関係性
日本ではイシュアがアクワイアラ業務を兼ねている企業も多くあります。唯一の国際ブランドであるJCBの場合「国際ブランド」でありながら、「イシュア」と「アクワイアラ」の業務も兼任しています。
この場合、JCBが決済処理から顧客管理、加盟店管理までのすべての業務を一括して担っていることになります。
2-2 クレジットカード決済のプロセス
クレジットカードの決済は、以下のプロセスで進みます。
- カード利用者が店舗で決済を行う
- 店員が決済端末で決済処理を行う
- クレジットカード加盟店からクレジットカード会社へ取引内容を送信する
- クレジットカード会社から加盟店へ取引の承認をする
- 取引が承認されると、カード利用者と店舗の決済が完了する
- 後日、加盟店からクレジットカード会社へ売上データ(承認された取引データの明細)を送信し、取引が確定する(※)
- クレジットカード会社が売上データで確定した取引を1ヶ月毎にまとめて、カード利用者へ請求する
- クレジットカード会社が利用者の銀行口座から請求額を引き落とす
- カード利用者と加盟店の決済完了後、クレジットカード会社は加盟店への支払金額を集計し、契約時に定めた加盟店手数料を差し引いた金額を加盟店の銀行口座へ振り込みをする
※加盟店とクレジットカード会社の契約によっては取引承認時に売り上げが確定するケースもあります。
3 イシュアの収益構造
イシュアの収益源は主に以下のものに分類されます。
インターチェンジフィーは、クレジットカード決済が発生した際にアクワイアラからイシュアへ支払う手数料です。この手数料は決済手数料の70〜90%を占めると言われており、イシュアにとって主要な収益源です。なお、このインターチェンジフィーは国際ブランドが決定しますが、経済産業省の調査によると、日本における平均料率は約1.6%となっています。
クレジットカードの種類やランクに応じて、カード会員から徴収する年会費も収益の一つです。特にゴールドカードやプラチナカードのような高付加価値のカードは年会費が高めに設定されています。また、一部のカードでは一定の利用額を達成することで年会費が無料になる特典も提供されており、クレジットカードの利用促進につながっています。
リボ払い(リボルビング払い)やキャッシングサービスから得られる利息も、イシュアにとって重要な収益源です。特にリボ払いは利用頻度が高く、分割払いに比べて高い利息を設定できるため、収益性が高いことが特徴です。
これらの収益に加えて、提携企業からの広告収入や付帯保険サービスの提供による収益も挙げられます。イシュアはクレジットカードや関連サービスの利用を促進するキャンペーンを打ち出すなどの戦略で収益向上を図っています。
これらの多様な収益により、継続的な利益を確保しながら事業運営を支えています。
4 イシュア事業を始めるためのステップ
クレジットカード事業を始めるには、発行方法の選択やライセンス取得などの手続きを適切に進める必要があります。本章では、イシュア事業を立ち上げるための具体的な手順について解説します。
4-1 クレジットカードの発行方法を選択
まずはクレジットカードの発行方法を選びます。発行方法は、主に以下の3つです。
システムをゼロから構築する方法です。キャッシュバックやポイント付与など、自由度の高い商品設計が可能ですが、初期コストが高く、専門知識が必要となります。
自社発行のカードでありながら、基幹システム部分はプロセッシングサービスの提供会社に委託する方法です。これにより、コスト削減と迅速な導入が可能となります。
他の企業や団体と提携してカードを発行する方法です。提携元のカード会社のシステムを活用できるため、導入・運用コストを抑えられます。ただし、提携元への手数料が発生するため、収益性は低くなる傾向があります。
この中で特におすすめなのがプロセッシングサービスの活用です。
4-2 プロセッシングサービスの役割と特典
プロセッシングサービスは、システム構築やセキュリティ対応が不要となり、リスクを抑えた運営が可能です。以下のようにクレジットカード事業を運営するための基盤を提供しています。
プロセッシングサービスがカード発行や決済基盤を提供するため、自社でのシステム構築が不要となり、初期投資を大幅に削減できます。
PCIDSSなどの国際基準に準拠したセキュリティ機能が含まれており、不正利用や情報漏えいのリスクを軽減できます。
不正利用の防止やリスク管理、取引モニタリングのプロセスが自動化され、運用コストやリソースを削減できます。
プロセッシングサービスを導入することで、スムーズかつ安全なクレジットカード事業の運営が実現できるでしょう。
4-3 プロセッシングサービスを利用したクレジットカード発行の業務フロー
プロセッシングサービスを利用してクレジットカードを発行する際の主要ステップは、以下の通りです。
金融庁への事業登録や必要な申請を行います。
国内および国際ブランド(Visa、Mastercardなど)のライセンスを取得します。このプロセスを経ることで、クレジットカードの発行や利用が許可されます。
サービスプロバイダーとの契約を締結し、必要な審査を受けながら運用準備を進めます。
発行準備が整い次第、クレジットカードの発行および配布を開始します。
これらのステップにより、スピーディかつ効率的なカード発行が可能です。
5 まとめ
クレジットカード事業を開始するためには、イシュアとアクワイアラの基本的な役割を理解し、決済プロセスや収益構造を把握することが重要です。自社でクレジットカードを発行する場合、プロセッシングサービスを活用することで、初期投資を抑えながら、安全かつ効率的に事業を始められるでしょう。
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