TISインテックグループは2021年7月8日(木)にオンラインイベント『TIS INTEC Group BUSINESS SUMMIT 2021 ITで、社会の願い叶えよう。』を開催しました。本イベントでは持続可能なデジタル社会の実現に向け、TISインテックグループの先進技術・ノウハウを駆使したサービスや先進的な取り組み事例を紹介しました。
本コラムでは3週にわたり、3つのセッションをレポートとしてまとめて掲載しています。
1.「金融と非金融の融合によるデジタル口座ユースケースの拡がりと展望」
2.「ミニアプリがもたらす新しいUX、サービスの形~エンドユーザーに使われるアプリ構築~」
3.「MaaSで実現する多サービス連携 沖縄MaaSにおける交通と商業/観光等の連携実現」
今週は最後3.「MaaSで実現する多サービス連携:沖縄MaaSにおける交通と商業/観光等の連携実現」についてです。TISが目指すマルチモーダルMaaSの概念と、それを実証した「沖縄MaaS」を紹介し、MaaSにおける多サービス連携の現状、課題を含めてご紹介します。
①浦添市 交通施策連携
②ゼンリン 移動データ活用
③あいおいニッセイ同和損保 MaaS保険
TISの目指すMaaSとは?
TISでは、沖縄中心に展開している既存交通手段をシームレスに連携させるマルチモーダルと、将来的な自動運転などを見据えた新モビリティが融合したMaaS(Mobility as a Service)の実現を通じ社会課題の解決を目指しています。
昨年度、国土交通省補助事業にTISの3テーマ選定
昨年度、TISのMaaS活動の3テーマが国土交通省の補助事業に選ばれました。
補助事業となったのは、「浜松市地域MaaS」、「札幌型観光MaaS」、そして今回のメインテーマである「沖縄県全域における観光型MaaS」です。
まず浜松市、札幌市での取り組みを紹介します。
浜松市地域MaaS「ISOU PROJECT」
浜松市地域MaaSは「ISOU PROJECT」という名称にて展開しています。
「ISOU PROJECT」とは地域のエネルギーマネジメントを軸として、再生可能エネルギーを活用したオンデマンドEV車(EVタクシー)を活用するプロジェクトです。
EVタクシーを再生可能エネルギー、自然エネルギーで走らせてエネルギーマネジメントという軸を作り、地域通貨、仮想通貨を用いて地域循環社会を作っていくことに取り組んでいます。
札幌型観光MaaS「札Navi」
画像元:https://sapporo4mobility.com/
実証期間:2021年2月1日(月)~2月21日(日)の際に利用したイメージ図
札幌型観光MaaS「札Navi」は観光スポットに「トライブ」と呼ばれる観光属性を紐付けし、利活用しています。
具体的に「トライブ」に観光事業者が観光スポットの特色や滞在時間等の紐づけを行い、利用者の属性や旅行スタイルをAIによってマッチングさせ、旅程提案を行うサービスです。
さらに、上記サービスにタクシー配車、施設チケット等々といったサービスをくわえた観光型MaaSを実現しています。
昨年度3週間の実証を行いましたが、今年度引き続き活動すべく、札幌のステークホルダーの皆様と協議を進めています。
沖縄MaaS概要
沖縄MaaSの紹介
沖縄MaaSでは沖縄本島、本島周辺の島々、先島諸島の沖縄全域の交通サービスと交通以外のサービスの連携によって沖縄全域でMaaSを実現し、サービスを展開しています。沖縄MaaSの概要を表現した動画は沖縄MaaSホームページやYouTubeでご覧いただけます。
沖縄MaaSサービス紹介
良質なUI
沖縄MaaSアプリには、利用を促進するためのいくつかの工夫を加えています。まず、利用登録のハードルを下げるため、メールアドレスとパスワードのみで利用できるよう配慮しています。
トップ画面には敢えて「チケットストア」を配置しており、MaaSにとって重要な電子チケット販売を訴求し、拡大していく狙いがあります。
チケット購入の流れとしては直感的に地域と好きなチケットを選べるようにし、そのままシームレスに決済まで完了できる形に設計しています。クーポンは地域の加盟店飲食店で使える「地域クーポン」と「商業クーポン」があり、今後、交通チケットと連携した特別なクーポンの配付を検討しています。
チケット利用
チケットを利用する際、沖縄都市モノレール「ゆいレール」ではQR改札機を採用しており、QR乗車券で認証をしています。QRは偽造防止、不正防止のためワンタイム処理をしています。
ゆいレール以外のチケット利用の場合でも提示されているQRをユーザーがスマートフォンで読み込むことで利用可能となっています。
ルート検索
ルート検索は、MaaSにおいてチケット購入と同様、主要な機能と位置づけています。行き先を自由に選択できるだけでなく、タブを表示して代表的な観光施設やスポットが選べるようにしています。
ルート検索に紐づいたサービスも展開しており、シェアサイクル連携、セットチケット訴求や他サービスリンク等も用意されています。他サービスリンク施策は、検索キーワードから関連サービスを複数表示させることができることからとても重視している機能になります。
このように、沖縄MaaSでは、交通などのチケットを核に、利用者にとって便利で利用しやすい環境を提供しています。
連携施策紹介
沖縄MaaSを推進する上で重要な施策3つをご紹介します。
① 浦添市 交通施策連携/商業観光連携
浦添市は以下、2つの大きな軸があります。
1.交通施策連携
浦添市には公共交通の分担率、利用率を上げていく目標があり、AIオンデマンドバスやシェアサイクルといった交通施策を実施しています。沖縄MaaSとも連携を深め、6月末からオンデマンドバスの1日乗車券の販売を開始しました。
現在、浦添市の都市計画課と新たなモビリティ施策を視野に入れた連携検討を進めています。
2.商業観光連携
浦添市では観光・商業・飲食連携として、浦添市観光協会のサポートのもと沖縄MaaSの地域加盟店として10以上の店舗が参加しています。
今後更なる拡充を目指して協議を進めています。
②ゼンリン 移動データ活用
移動データをゼンリンの保有する地図情報に重ね合わせ、交通課題の可視化、地域に合わせた移動の最適化を目指し、データ利活用分野での協業を実現しています。これにより、さらに高度なデータ利活用体制を構築できるようになっています。
③あいおいニッセイ同和損保 MaaS保険
「MaaS保険」は忘れ物をした際、捜索を届ける際の費用を負担する保険サービスです。
今年6月に実証としてのサービスは終了していますが、最大の成果は、運営者、参画事業者、コールセンターを含めたMaaSでの保険を実現するというスキームを構築できたことにあります。このノウハウを利用して今後は他領域へのサービス展開を考えています。
沖縄MaaSについてのまとめ
沖縄MaaSでは主に3つの成果をあげることができました。
成果① マルチモーダル実現
成果の1つ目はマルチモーダルの実現です。多くの鉄道(1社)、船舶(4社)、バス(11社)、タクシー(8社)事業者に参画いただけたことで、MaaSの取り組みとして有意義な取り組みを実現できました。
成果② 周辺サービス連携
成果の2つ目は周辺サービス連携です。MaaSの肝となる周辺商業施設、観光施設との連携が実現でき、利便性は増しています。今後も共通ポイント連携、データ利活用施策をなど、更なるサービス拡充を目指し、取り組みを進めています。
成果③ サービス継続
成果の3つ目はサービス継続です。昨年度、国土交通省の補助事業に選定いただいた後に実証実験で終わらずに、今年度も新しい機能を追加しながらサービスを継続していることは大きな成果であると評価しています。
これから磨き上げていくMaaSの姿
TISは、沖縄MaaSなどでの経験を踏まえ、MaaSオペレータの知見・経験を持ったMaaSプラットフォーマとしての立ち位置を目指しています。
その上で以下3つをメインテーマとして進めています。
① サービス連携強化
MaaSを拡大していくためには他サービスとの連携が必要不可欠です。またこれを強化するためにデータ利活用はとても重要だと考えています。成長余地のある領域ではあり、今後更に活用を広めていくことで他サービスとの連携を強化していきます。
② 地域課題解決
沖縄においてもさまざまな地域課題(特に交通に関するもの)があります。沖縄MaaSは昨年度から今年度にかけてステップ1として観光客をメインターゲットにした「観光型MaaS」として取り組みました。今後ステップ2として地域住民をターゲットにした「地域住民型MaaS」へとステップを進め、地域課題の解決を視野に入れた環境整備を進めていきます。最終的にステップ3として観光型MaaS+地域住民型MaaSを融合した形でのサービス提供を進めていく予定です。
③ 他地域展開
沖縄で成功した事例を元にMaaSによる地域課題解決モデルを他の地域に合わせてカスタマイズしながら展開していけるよう、きめの細やかなスキームの構築を目指しています。
今後の課題
今後、TISとしてMaaSを推進していくにあたり、まずクリアすべき課題として、以下の2点があげられます。
課題①データ利活用・モデル構築
何度も記載していますが、他のサービスとの連携を深めるため、データ利活用は非常に大きなテーマになっています。データに関しては質の向上、量の拡大、データ利活用の拡充が重要と認識しており、仮説検証に重点を置きながら、さまざまな角度からMaaSのビジネス・サービスモデルの構築と検討を進めています。
課題②新モビリティ連携
これまでの実証実験を通じて、一定程度マルチモーダルは実現できたと考えられます。沖縄MaaSにおいてもモビリティ連携で浦添市のオンデマンドバス連携が実現できていますが、今後さらにオンデマンド、シェアモビリティ、パーソナルモビリティなどといった新モビリティとの連携により、MaaSの価値向上を目指していきます。将来的には自動運転への対応を見据えながら、対応検討している状況です。
最後に
TISは沖縄MaaSをはじめ、浜松市、札幌市でMaaS環境の構築に携わる機会をいただきました。
現在、TISでは、実証実験の結果を基に試行錯誤を繰り返しながらMaaSの実証・検証をしております。今後はデータ利活用、新モビリティとの連携を視野に入れながら、多種多様なサービスとの連携を実現し、MaaSを通じて地域課題の解決を目指していきます。
MaaSの実現に関心のある自治体、事業者の方はぜひ、TISにお問い合わせ下さい。
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