コラム Column

モバイル決済のその先へ:Beyond Payment 〜 スマートキー、スマートチケットへの展開 〜

vision

●ニューノーマルにおける非接触なUX

本コラムでもこれまでモバイル決済ウェアラブル決済の紹介をしてきましたが、新型コロナ感染症の拡大に伴い、これまで以上に非接触をベースにしたサービスへのニーズが高まっています。先行している非接触決済の利用はこの数年でかなり一般的になってきました。タッチ決済においては単純に接触シーンが減るだけではなく、「現金を持ち歩く必要が無い」、「決済時間が短縮できる」など、従来型の決済と比べると大きなUXの改善が実感されます。TISでは、この利便性をさらにさまざまなシーンに展開することで、よりフリクションレスで便利な世界観を実現できると考えています。

●モバイル機器活用による4つの実現できること

 モバイル機器を活用したサービスだから実現できることを4つご紹介します。

①本人認証

 今ではひとり1台モバイル端末を持っているのが当たり前になったため、モバイル機器を利用しての利用者本人の認証が容易になりました。加えてパスワードの入力、モバイル保有者の指紋・顔認証などの生体認証による2段階の認証で、より確実な本人認証を実現できます。

②遠隔制御

 モバイル機器が通信可能状態であれば、その有効性を遠隔で制御することができます。サービス開始の際も実際にモバイル機器を操作せずに、サービス提供者がインターネット経由でその機能を配信することができます。サービス停止時も同様です。通信が可能な状態でない場合も、機能を時限的に停止することもできます。

③利便性向上

 モバイル機器を中心に、さまざまなサービスを絡められることができます。タッチ決済と同時にポイント登録ができるサービスも一般的になってきました。さらに後ほどお話しする鍵やチケットなどをモバイル機器に格納することで、ある特定の鍵をあけると同時に決済が実行されたり、新たなクーポン券を配信できるなど、ひとつのアクションがさまざまなサービスのきっかけにできるので、利用者の利便性が大きく向上します。

④データ分析

 サービス提供者にとっては、その利用情報が瞬時に取得でき、その蓄積によるデータ分析などを通して、マーケティング活動に活かすことができます。例えば利用者の傾向を分析し、その人に合った情報やクーポンをタイムリーに提供するなど、自社の顧客をロイヤルカスタマーへシフトする動きも加速しています。

●NFCの強み(選ばれる理由)

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 モバイルによる非接触サービスには、Apple PayやおサイフケータイなどのNFCを活用したサービスに加え、PayPayやLine PayなどのQRコードを活用したもの、Bluetooth技術を使ったものなどがあります。QRはCPMとMPMの異なる決済方法があり、利用の際にアプリを開いて、コードを読み込む必要があります。Bluetoothは事前に相手側の機器とペアリングしなければならないため、利用者側には少し手間がかかります。

 一方で相手側端末にタッチするだけのNFC方式は、シームレスに利用する事ができるため、より優れたUXを実現できます。以前のコラムでも紹介しましたが、世界的に一般的なTypeA/Bに加え、国内ではフェリカネットワークスが展開するTypeFが20年以上も前からサービスを展開していることもあり、タッチすることが日本人にとって馴染みが深いので、利用者が使いやすいのも特徴です。

●スマートキーへの適用

smartkey

 「カバンの中は何故かモノでいっぱい」という人はいませんか?主に男性であればカバンを持つ変わりにポケットの中は大きなお財布と家の鍵でパンパンという人も少なくないと思います。いつもカバンやポケットの中に入っているモノをモバイル機器に集約することでスッキリした状態を作ることができます。モバイル決済が可能になり、ポイントカードなども大分モバイル機器に集約できるようになりました。そのおかげでお財布を持ち歩く人やお財布を持っていてもカバンから取り出す人は少なくなりました。

 免許証や保険証などについても政府主導で近々デジタル化される予定です。そして鍵。こちらについてもモバイル機器に格納できればお財布も鍵も持ち歩く必要が無くなります。鍵をモバイル機器の中に格納する『スマートキー』のニーズは高いと思います。近年ではカードキーの情報を物理的にモバイルに読み込んだり、Bluetoothを使ったモバイルを鍵として使うサービスも増えてきています。これを前述したモバイル機器やNFCの強みを活かして実現することによって、さらに自由度が上がると考えられます。
   
   遠隔から本人認証を行い、鍵を自動的に配信したり、無効にしたりできます。更に鍵を配信されると同時になんの設定もせずにモバイル機器を鍵にタッチするだけで開錠できるようになります。例えば、ホテルなどの宿泊施設で使えば、事前に予約をしておけば、当日ホテルに到着し、モバイル電話などでチェックインするだけで、直接指定された部屋の鍵が開けることができます。密を回避することが求められる中、チェックイン時のフロントでの混雑も解消できますし、ホテル側にとっても深夜などの来客対応のスタッフの削減にもつながるのではないでしょうか。もちろん、時限性も与えることが可能なため、予約期間が過ぎれば鍵は開錠できなくなります。本人認証ができているので、レストランやジムなどのホテル内の施設もフリクションレスな利用が可能となります。
 

 ホテルだけでなく、これからの高齢化社会では訪問介護なども増えてくると思います。訪問介護では担当者が変わることもあり、利用者にとっては「自宅の鍵を預ける」ことに不安を感じている方も多いと思います。スマートキーを活用すれば、訪問をお願いした人に訪問をお願いした時間だけ開錠が可能にでき、担当を変わった際には鍵自体を無効にできれば、安心してサービスが受けることができます。またモバイル機器を活用しているので、その開錠のタイミングで通知を出せるため、遠くに住んでいる家族などにも開錠を知らせることができるので、見守りとしても有効です。  もちろんモバイル機器を活用しているので、カギと決済などを連動させることもできます。開錠と同時に決済が完了し、ポイントも付与できる。無人のカラオケボックスやレンタルオフィスなども実現できるかも知れません。本人認証も実施しているので、事業者にとっても安心です。

●スマートチケットへの適用

 さらにチケットのモバイルNFC対応『スマートチケット』についてもお話します。

 近年チケットの転売が問題になっています(コロナが明けて、早く色々なイベントで盛り上がるといいですね)。スマートチケットであれば、購入時に本人確認が取れたモバイル機器のみで有効なチケットを遠隔で発行できます。そのため、最低1名につき1モバイル機器分しか購入できませんし、転売も難しくなります。モバイル機器自体を転売する猛者が現れる可能性もありますが、利用時にモバイル機器の生体認証を活用することも可能です。現在、多く採用されているモバイルチケットはバーコードを活用したのものがほとんどで、入場の際にアプリを開いたり、機器にコードをかざしたりと、列が停滞する原因にもなっています。NFCであれば、ラッシュ時の改札と同じで大量の人をスムーズに受け付けることが可能です。  

 エンターテイメント施設で各種アトラクションへのチケットやショッピングなどの決済も一つのモバイルアプリで完結することも可能です。また、野外フェスなど大がかりな設備が設置できないところでも読取端末を設置すれば良いので、簡単に受付ができます。食べものフェスなどの投票もモバイル機器でできれば、集計も簡単にできるので便利ではないでしょうか?

●今後の展開

 決済を超えたモバイル機器のNFC活用。決済xポイントx鍵xチケットなどと一つのアプリサービスで提供することで便利なサービスが組み立ていけると考えています。今後も更なるサービス、更なる組み合わせを提供することでよりフリクションレスな社会を実現していきたいと思います。

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