前回のまとめ
就活のため、初めて合同企業説明会に参加したキャッシー。
企業説明会のゲストとして招かれていた決済博士と会い、
話題の「給与デジタル払い」について話を聞いた。
その後、博士と旧知の仲であるTISの高島さんと合流し、昼食へと向かった。
第12回_給与デジタル払い 1/4(新しい給与支払手段)
三人は企業説明会の会場近くの洒落たレストランへ…
すごい素敵なお店!
いい店だろう? さぁ、好きなものを注文していいぞ
やった!
あっ、でもこうして座ると、コロナ対策のアクリル板がなんだか壁みたい。
せっかくの雰囲気がちょっと残念だね
ここにも「壁」かぁ…
え?
木山さん、実は「給与デジタル払い」の導入にも「壁」があって、今まであまり進んでこなかったんですよ
(う、強引に自分の話に持っていくところは博士と似てるかも…)
高島さん、さっき彼女から「なぜ今まで給与デジタル払いが進んでなかったのか」を聞かれていたところだったんだ
そうでしたか! では、まず「法令の壁」について話をしましょう
あ、ありがとうございます。法令が関係あるんですか?
実は企業の給与の支払い方については、きちんとルールがあるんですよ
へぇ
①通貨で、②直接、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定期日に支払う。これが「賃金支払いの5原則」として労働基準法に定められているんです
そうなんだ。でも、銀行振り込みだと①とか②は微妙な気がするんですけど…?
いい質問ですね! たしかにその通りで、現在のルールでは「企業と労働者間の同意があれば銀行振り込みでもOK」となっていて、例外扱いなんです
そう考えると「〇〇ペイ」などを提供する資金移動業者でも、合意があれば銀行のように給与の支払いを扱えると思うかもしれませんが、これまでは安全性などに懸念があり認められてこなかったんです
ただ、昨今はデジタル化やキャッシュレスなどを推進する国の意向もあって「資金移動業者でも認めよう」と話が進んできたんですよ
資金移動業者って何ですか?
銀行以外で送金サービスを提供する登録制の事業者のことで、先ほどお話しした「〇〇ペイ」をやっているような会社と考えればわかりやすいですよ。法令の見直しの根底には、今まで国や銀行が独占していた決済システムの一部を民間企業に開放しようという目的があるんです
なるほど~
付け加えると、多様なニーズに応えるために、資金移動業は3種類に分類されています。例えば、送金可能な上限金額が、第一種ではなし、第二種では1回あたり100万円未満、第三種では数万円程度となっているんです
へぇ~。じゃあこれからは資金移動業者が銀行みたいになっていく感じなんですか?
銀行業務において給与振込はごく一部なので実際はそうではないけど、給与を受け取る側のニュアンスとしてはそんなイメージですね、資金移動者は優れた決済アプリを持っているところも多く、「給与デジタル払い」との相性もいい
また「給与デジタル払い」で銀行口座がなくても給与を支払えるようになれば、新規口座開設が難しかった外国人労働者を、よりスムーズに雇うことができる可能性もあります
最近外国人の店員さんを見ることが多いし、わかる気がする…!
2019年の時点で、民間事業者の支払い給与総額は年間231兆6046億円、給与所得者数は5990万人とされているので、「給与デジタル払い」の解禁は社会全体に大きなインパクトを与えると考えられているんです
ハーイ! 数字のケタが大きすぎて…お腹が減りました!(笑)
そういえば、まだ注文してなかったですね。
実はもう1つの「壁」の話があるのですが、食べながらにしましょうか
おっと、私も真剣に聞きすぎてしまったよ。
さぁ、何でも好きなものを頼んで
“オマール海老のパスタ”で!
私は“霜降り和牛ステーキ”を!
じゃ、じゃあ私は“本日のサービスセット”で…
ここにも上限金額という「壁」を設けるべきだったな(笑)
登場人物紹介
与那嶺 淳(あだ名:決済博士)
大学では長年にわたり商学部の教授を務め、
昨今話題のDX技術や新しい決済の仕組みをずいぶん早くから講義の中で解説しており
学生には”決済博士”として慕われていたが昨年退職。
悠々自適な生活を送りつつも隣に住むキャッシーを気にかけている。
木山 祥子 (あだ名:キャッシー )
サークルやバイトに毎日忙しい元気印の大学生。
レジのアルバイトでいろいろな支払い方法があることを知り、
最近お金や決済に興味を持ち始めた。
高島 玲
給与デジタル払いのプロフェッショナル。
【 デジタル給与払い 関連記事はこちら】
●新しい給与支払手段 (給与デジタル払い1/4)‐決済博士の気になるコラム-第12回
●第2の壁=技術とコストの壁 (給与デジタル払い3/4)‐決済博士の気になるコラム-第14回
●給与デジタル払いのこれから (給与デジタル払い4/4)‐決済博士の気になるコラム-第15回
●デジタル給与に対応するメリットと必要な準備について解説
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