キャッシュレス後進国といわれていた日本ですが、近年では、クレジットカード、QRコード、電子マネーなどによる決済が急速に普及しています。特に飲食業では導入率が高く、競争力を高めるためには、キャッシュレス決済の対応が欠かせません。この記事は、飲食店の経営者やマネジメント層に向けて、キャッシュレス決済の手段や導入率、キャッシュレス決済を利用するメリット・デメリット、飲食店におすすめの決済方法などを解説します。
1 キャッシュレス決済とは?
1-1 飲食店で導入されるキャッシュレス決済の種類
1-2 飲食店のキャッシュレス率は?
2 飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリット
2-1 会計業務を効率化できる
2-2 売り上げ向上を図れる
2-3 防犯効果がある
2-4 リアルタイムで資金管理できる
2-5 外国人観光客や若年層などの集客が見込める
3 飲食店がキャッシュレス決済を導入するデメリット
3-1 初期コストがかかる
3-2 決済手数料が発生する
3-3 キャッシュフローに影響が出る場合がある
4 おすすめの決済方法
5 まとめ
1 キャッシュレス決済とは?
キャッシュレス決済は、現金を使わない決済方法全般を指します。具体的には、クレジットカード、コード決済(QRコード・バーコード)、電子マネー、デビットカードなどを活用した決済です。キャッシュレス決済を活用することで、店舗側は決済業務や会計業務の効率化が見込めます。また、顧客側は現金を持ち運ぶことなく、スムーズに決済できて便利です。経済産業省の調査によると、キャッシュレス決済の比率と金額は年々上昇しており、2023年は39.3%(126.7兆円)に達しました(※)。内訳は、クレジットカードが83.5%(105.7兆円)、コード決済が8.6%(10.9兆円)、電子マネーが5.1%(6.4兆円)、デビットカードが2.9%(3.7兆円)となっています。このうち、2020年頃からコード決済(紫色)の割合が増えている点にも注意が必要です。
※参考:経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
政府は、2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度にすることを目指していますが、既に目標をほぼ達成しています。今後は世界最高水準の8割を政府は目標としており、今後も政府主導で様々なキャッシュレス決済の普及政策が行われると考えられます。
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1-1 飲食店で導入されるキャッシュレス決済の種類
ここでは、飲食店で特によく利用されているQRコード決済、電子マネー決済、クレジットカード決済について概要や特徴を解説します。
1-1-1. QRコード決済
QRコード決済は、スマートフォンの専用アプリを利用して、QRコードを読み取り、支払いを完了するキャッシュレス決済です。利用者が店舗のQRコードをスキャンする方法と、店舗が利用者のQRコードをスキャンする方法の2つがあります。QRコード決済は、アプリを介したプロモーションや割引キャンペーンを実施しやすく、特に若年層を中心にした集客や単価アップが期待できます。また、専用の決済端末が不要で、導入コストが低いため、個人店や小規模店舗におすすめの決済方法です。
1-1-2. 電子マネー決済
電子マネー決済は、事前にチャージされたICカードやスマートフォンアプリを使って支払いを行う前払い式のキャッシュレス決済です。Suica、PASMOなどの交通系や、WAON、楽天Edyといった流通系の電子マネーが広く利用されています。電子マネー決済は、カードやスマートフォンを端末にかざすだけで、スピーディーに決済が完了する点がメリットです。例えば、ランチタイムに混雑する飲食店が、決済業務を効率化し、顧客の回転率を高めたい場合に適しています。
1-1-3. クレジットカード決済
クレジットカード決済は、キャッシュレス決済の中で最も普及している手段です。カードを決済端末に差し込む方法や、非接触でかざす方法など複数の方式があります。国際ブランドのクレジットカードに対応すると、外国人観光客に対しても利便性を提供でき、店舗の売り上げ拡大が期待できます。特にインバウンド需要の高い地域では、導入が欠かせません。また、ポイントやマイルなどを目当てに、クレジット決済を好む顧客層の集客効果も期待できるでしょう。
1-2 飲食店のキャッシュレス率は?
経済産業省がまとめた「キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果」(調査実施期間:2021年1月27日~2021年3月31日)によると、キャッシュレス決済を導入している飲食店の割合は85.4%に上りました。飲食業は小売業、観光業と共に、キャッシュレスの導入比率が高い傾向があります(※)。また、同資料によると、全体の導入率の傾向として以下が挙げられます。
- 地域別の導入率に大きな偏差はない
- 中規模事業者の導入率が高い
- 1,000円~1万円の客単価帯の事業者で導入率が高い
これらの傾向は、飲食業にもあてはまると考えられます。
※参考:経済産業省「キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果」
2 飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済を導入すると、顧客の利便性だけでなく、店舗側にも多くのメリットをもたらします。
2-1 会計業務を効率化できる
キャッシュレス決済では、現金の受け渡しや釣り銭の準備が不要となり、会計業務が大幅に効率化されます。現金の取り扱いミスや釣り銭の間違いがなくなり、正確な会計が可能です。また、キャッシュレス決済により、顧客の会計時間を短縮できれば、レジ前の混雑を防ぐことができます。結果として、顧客満足度や回転率の向上につなげられます。
2-2 売り上げ向上を図れる
キャッシュレス決済を導入することで、売り上げ向上を期待できます。キャッシュレス決済を導入することで、顧客は手持ちの現金を気にせずに注文できるため、クロスセルやアップセルの施策が成功しやすくなるからです。例えば、デザートやドリンクなどの追加注文や、高価格帯のメニューの注文が増えるなどです。また、キャッシュレス決済にはポイント還元やマイル積算があることから、これらを目的とした顧客がリピーターになりやすくなります。顧客の来店頻度が増えることで、売り上げ向上が期待できます。
2-3 防犯効果がある
キャッシュレス決済を導入することで、現金の取り扱いが減少し、窃盗や強盗のリスクが軽減されます。特に売上金が多い飲食店や、夜間営業を行う飲食店では、このメリットが大きいといえるでしょう。また、内部統制の観点からもキャッシュレス決済は有効です。従業員による現金の不正流用や横領といった不正行為のリスクが低減されます。さらに、キャッシュレス決済は全て電子的に記録されるため、取引データの透明性が高まり、不正会計や虚偽の報告が発生しにくくなります。
2-4 リアルタイムで資金管理できる
キャッシュレス決済を導入することで、売り上げデータは自動的にデジタル化され、リアルタイムで資金の流れを管理できます。これにより、経営状況を分析しやすくなり、意思決定のスピードを高めることが可能です。例えば、手作業でのレジ締めや売り上げ確認の手間が減り、売り上げ情報を迅速にシステムに反映できます。店舗の売り上げ傾向や顧客の動向をリアルタイムで把握できれば、マーケティング戦略の立案や経営改善に役立つでしょう。
2-5 外国人観光客や若年層などの集客が見込める
キャッシュレス決済を使えるようにすることで、現金以外の支払いを好む顧客層を効果的に集客できます。外国人観光客は、クレジットカードや自国で普及しているキャッシュレス決済を使いたがる傾向があります。VISAやMasterCardのクレジットカードやApple PayやGoogle Pay、Alipay(アリペイ)といった国際的なキャッシュレス決済に対応すれば、機会損失を防げるでしょう。また、近年は現金を持ち歩かない若年層も増えてきました。こうした若年層に対して、キャッシュレス決済対応は来店を促す効果があります。
3 飲食店がキャッシュレス決済を導入するデメリット
キャッシュレス決済を導入するにあたっては、デメリット面も把握しておく必要があります。
3-1 初期コストがかかる
キャッシュレス決済を導入する際には、決済端末の購入費用やレンタル費用が発生します。特に、複数の決済手段に対応する場合や多数の端末が必要な場合、初期費用が高額になりがちです。また、従業員の教育コストも欠かせません。新しい決済システムに対応するため、従業員にはシステムの操作方法やエラー発生時の対応方法を学んでもらう必要があります。
3-2 決済手数料が発生する
キャッシュレス決済を導入する際には、決済ごとに手数料が発生します。QRコードや電子マネーは、一般的に2〜5%程度と安めです。しかし、クレジットカード決済では、手数料が3〜6%程度ですので、利益に影響が出やすくなるでしょう。キャッシュレス決済の手数料は、利益に直接的に影響するため、導入時には自店舗の決済利用状況をよく分析し、負担の少ないサービスを選定することが重要です。
3-3 キャッシュフローに影響が出る場合がある
キャッシュレス決済では、現金決済とは異なり、入金サイクルが長くなる場合があります。クレジットカードや一部の電子マネー決済では、入金が翌月になることが多く、現金決済に比べて現金の流れが遅いのです。QRコード決済の場合、翌日から1週間以内の入金サイクルが一般的ですが、決済代行業者や契約内容によっては、1ヶ月後に入金される場合もあります。資金繰りに影響が出ないよう、利用する決済サービスの入金サイクルを事前に確認しておくことが重要です。
4 おすすめの決済方法
飲食店におすすめのキャッシュレス決済の方法は、QRコード決済です。大きな理由としては、導入コストの低さと、インバウンドへの集客力が挙げられます。クレジットカードや電子マネー決済では専用端末が必要ですが、QRコード決済はスマートフォンやタブレットを活用するだけで対応できるため、初期費用が抑えられます。クレジットカード決済では数万円のリーダー端末を購入する必要がありますが、QRコード決済では専用機器は必要ありません。また、QRコード決済は、インバウンドへの集客にも効果的です。特に中国人の9割近くは本国で「Alipay(アリペイ)」や「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」などを日常的に使っており、日本でも同じように利用したいと考えています。中国からの観光客を呼び込みたいなら、これらに対応することで、機会損失を防ぐことが可能です。QRコード決済はシンプルなやりとりが可能で、外国語での複雑なやりとりを減らせるため、中国人観光客だけでなく、他国の観光客にも使いやすい決済手段として飲食店に向いています。
関連記事:乱立するQRコード決済。仕組みを理解し迅速に導入する方法とは?
5 まとめ
キャッシュレス決済は顧客の利便性向上のみならず、会計業務の効率化や集客など、多くのメリットをもたらします。特に、QRコード決済は導入コストが低く、幅広い顧客層を引きつける手段として有効です。TISは、クレジットカード決済やQRコード決済など、様々なキャッシュレス決済に関するソリューションを提供しています。キャッシュレス決済に課題をお持ちの際は、お気軽にご相談下さい。
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