コラム Column

日本のキャッシュレス社会が目指すものとは

はじめまして。TISの畑と申します。
今後、本PAYCIERGEブログから皆様に決済に関する情報など、発信していきます。
不定期登場になりますが、よろしくお願いします。

『キャッシュレス=QR』? 進むキャッシュレス化とキャッシュレスに対する誤認

長年、決済事業に携わるものとして、国策・政府の取組み大方針に「決済」がインバウンド対応に向けて掲げられるようになったときは「やっと決済の重要性を国が理解した」と喜んでおりました。

今や経済産業省、金融庁以外の総務省、国土交通省、農林水産省までが「キャッシュレス推進」を合言葉に、「キャッシュレス」が「人手不足解消」や「データ利活用」等に貢献すると期待をこめて各省庁での取り組みも始まっています。

消費増税時にキャッシュレス決済すればポイントを2%還元、5%還元だ!など、毎日キャッシュレス関連情報がメディア含め情報が溢れ、話題がつきません。

キャッシュレスにすると何が消費者にとってメリットがあるのでしょうか?国として行政として何が一番したいのでしょうか?

これらを各事業者や行政担当者の方々と話をしても、なかなか明快な回答や方針を聞くことが出来ません。

一番残念なのは、キャッシュレス=QR決済と語る人が多く、QRに固執することは大変なリスクだと思っています。QR決済はあくまで決済ツールのひとつであり、決済に必要なID番号をQR化しているいわば“ID認証ツール”にしかすぎないのです。

日本でキャッシュレス化が進まない理由は?決済ビジネスにおける3か条とは

決済ビジネスをすすめるうえで、必ず考慮しなければならない、大切なことが3つあります。決済業界では、この3つが揃わないと選択されない(生き残れない)と言われています。

安心安全

言うまでもなく悪用されたり個人情報などが盗まれない等、安心に決済サービスを提供することです。キャッシュレス化に対する多くのアンケートでは、非現金決済に対する情報漏えいや不正利用に対する不安が、キャッシュレス化が進まない大きな要因の一つとして挙げられています。仮想通貨の流出問題発生後、価値がピーク時の4分の1程度まで縮小したのが記憶に新しいですが、安心安全に使えないサービスを、なかなか使おうとは思えないですよね。

利便性

こちらも想像がつくかと思いますが、現在利用されている支払方法と比較していかに便利にできるかがカギとなります。お財布を出さずにスマホで決済ができることや、わざわざ券売機に並んで切符を買わなくても非接触式ICカード等で鉄道やバスなどに乗車出来ることなど、利便性を追求することも重要です。

ここまでの2つは多くの企業で技術的に実現が可能ですが、最後の1つを見出すことが難しく、キャッシュレス化が進まない要因の一つと考えています。

利得性(お得感)

最後の利得性が一番重要で、残念ながら日本のキャッシュレスサービスにおける評価や支持がなかなか得られていない点であり、いわゆる「生活アプリ」的な日常使いのポジションを勝ち取ることが出来ていないのが現状だと思います。

現行のプラスチックカードからスマホQR決済に切り替える、現金からシフトさせることの利得性を消費者に持続可能なサービス(一過性のキックバック等ではなく)として提供する必要があります。

2019年は更にペイメント業界が変革し、サービス事業者の乱立と淘汰がより一層激化する年になることでしょう。