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キャッシュレス決済のサーチャージって何?

img-サーチャージ

私は仕事の関係で海外の決済関連動向を知るために、よく海外のサイトを眺めています。そのような中、米国の決済関連サイトで「クレジットカードサーチャージとは?それは合法なのか?」という記事を見つけました。(※1)そこで今回、日本人には馴染みが薄いけれども、全く関係がないわけでもないクレジットカードのサーチャージについてお話します。

(※1)https://fortune.com/recommends/credit-cards/what-are-credit-card-surcharges/

1.クレジットカードのサーチャージとは?

キャッシュレス決済においては当たり前ですがクレジットだけではなく、さまざまな手数料が存在します。加盟店がカード会社に支払う加盟店手数料やカード会社が国際ブランドに支払う手数料もあります。今回取り上げるサーチャージとは消費者が加盟店に対して購入金額に上乗せして支払う手数料のことです。

例をあげて説明します。
1万円の商品をお店で購入するとします。現金であれば1万円で購入できますが、キャッシュレスで支払う時に加盟店から1万500円請求されたとします。この加算された500円がサーチャージということになります。これは加盟店の収入となります。つまり加盟店がカード会社に支払う加盟店手数料の一部を消費者に負担してもらうということです。

「そのような手数料を請求されたことはない。」という方がほとんどでしょう。後に詳しく述べますが、日本においてはカード加盟店がサーチャージを取ることをカード会社が原則認めていないためなのです。しかし、海外では一部サーチャージが認められていることから、日本人であっても海外旅行などで知らない間にサーチャージを取られている可能性は十分あります。

2.サーチャージ事情:海外編

img-海外のお金事情

実はクレジットカード会社の各社ホームページを見ると、海外において一部サーチャージが請求される場合があると明記されています。ここではサーチャージについて、米国、オーストラリア、欧州などにおいてどのように定められているか述べたいと思います。

米国は冒頭でふれた記事によると、2013年に加盟店企業がVISAとMastercardを相手取って起こした集団訴訟における和解の結果、加盟店に対してサーチャージ手数料を消費者に転嫁できるようになったということです。

しかし、米国では州によってサーチャージを禁止しているところがあります。コネチカット州、マサチューセッツ州、プエルトリコの法律においては、加盟店がサーチャージを課すことは認められていないそうです。コロラド州も2021年まではサーチャージが認められていませんでしたが、現在は取引金額の2%までサーチャージが認められているそうです。

サーチャージが認められているとはいえ、すべての加盟店がサーチャージを要求しているわけではありません。しかし加盟店や使用するクレジットカードによっては4%もかかる場合があるとのことです。

オーストラリアでもサーチャージが認められています。ACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)のページ(※2)にサーチャージに関する記述があります。それによると、加盟店がサーチャージを適用する場合、その支払方法を事業者が利用するために要するコストを越えてはならないとしています。つまり過度なサーチャージを課してはならないということです。目安としてデビットカードは0.5~1%、クレジットは1~1.5%と記載されています。

欧州については欧州連合(EU)の公式ウェブサイト(※3)によると、「クレジットカードやデビットカードの使用に対して、顧客に追加料金を請求することは認められていないようです。ここでは、EU域内で行われるすべてのカード購入(店舗およびオンライン)に適用されます。」と明確に記載されています。

しかし、日本の一部カード会社のホームページなどによるとイギリス、オランダ、スウエーデン、デンマークにおいてサーチャージが認められているという記載があります。イギリスはEUを離脱しましたが、EUでも一部認められているのかもしれませんね。

(※2)https://www.accc.gov.au/consumers/pricing/card-surcharges
(※3)https://europa.eu/youreurope/business/finance-funding/making-receiving-payments/electronic-cash-payments/index_en.htm

3.サーチャージ事情:日本編

img-日本のお金事情

日本においては、カード会社と加盟店の間における加盟店契約で、「カード払いとそれ以外の決済手段で異なる金額を請求してはいけない」と定められているようです。JCBのホームページ「よくあるご質問」の中に「JCBでは加盟店との契約で、手数料の上乗せ行為を禁止しています。」(※4)と明確に表明されています。他の国内カード会社においても同様だと考えられます。

従って日本の消費者はクレジットやデビットなどキャッシュレス決済を行う時に、現金で支払う金額に追加手数料を加算されるということはほとんど経験していないと思います。もしサーチャージを請求された場合、加盟店契約上違法の可能性があります。

但し国内においてもグレーに感じることはあります。例えば量販店などの買い物でポイント付加率が現金とクレジットで異なるケースがあります。これなどはポイントに名を変えたサーチャージではないかと個人的には感じます。

それから格安航空会社LCCなどで航空券をオンラインで買う時に、キャッシュレス決済の手段で金額は異なりますが、某航空会社では「支払手数料」として1区間約600円、往復ならおよそ1200円請求されます。これなどは明らかにサーチャージのように思えます。(カード会社同意の上で行われているのかもしれませんが)
(※4)https://j-faq.jcb.co.jp/faq/show/391?site_domain=default

4.サーチャージのコラムを通して読者の方に伝えたいこと

日本人には馴染みの薄いサーチャージについてなぜ今回コラムで取り上げたのかを少し書いてみたいと思います。消費者からすればキャッシュレス決済を行う時に追加の手数料が請求されるのは正直困ります。しかし、加盟店にとってキャッシュレス決済手数料が負担になっていることも事実として存在しています。

また今回ネットでいろいろ調べている中で、サーチャージを課すことができない代わりに、キャッシュレス決済コストを加盟店が商品価格に転嫁することがあり、その場合、現金客に不利益が生じ、不公平となるのであればサーチャージもやむを得ないという意見もありました。(最近は現金ハンドリングコストもあがっていますから一概には言えないかもしれません。)

サーチャージを認めている欧米やオーストラリアは、日本よりもキャッシュレス決済比率が高く、日常の支払のほとんどがキャッシュレスという社会でもあります。そのような社会ではカード会社やキャッシュレス事業者が課す加盟店手数料が膨大となり、加盟店手数料削減という動きが活発になっています。そうした中、加盟店手数料削減という動きと同時にキャッシュレスコストを一部消費者に負担してもらおうということも行われているのだろうと想像できます。

キャッシュレス決済は消費者にとって利便性が高く、現金よりも「お得」を感じられる場面が多いと思います。加盟店側も消費者へ支払方法の選択肢を広げることで販売機会の損失を防げます。一方でサーチャージが消費者に転嫁されるのか、加盟店が企業努力で賄うのか、これから日本もさらにキャッシュレス化が進みキャッシュレス比率が高まると、サーチャージが議論になるかもしれません。

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