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スーパーアプリ最新動向~多様化するサービス連携とそのねらい~

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2022年7月6日(水)、TISインテックグループは『TIS INTEC Group BUSINESS SUMMIT 2022 ITで、社会の願い叶えよう。』をオンラインで開催し、「持続可能なデジタル社会」の実現に向け、TISインテックグループの先進技術・ノウハウを駆使したサービスや取り組みをご紹介しました。

本コラムでは4回にわたり、4つのセッションをレポートとしてまとめていきます。
1.「スーパーアプリ最新動向~多様化するサービス連携とそのねらい~」
2.「MaaSからスマートシティ化への取り組み~札幌型観光MaaSのレコメンドとデータ利活用~」
3.「Fintech時代を勝ち抜くBaaS×AI~すべての会社はFintech企業になる~」
4.「デジタル口座で実現する金融包摂への対応~急速に広がるBNPL(後払い決済)と決済のトレンド~」

今回は1.「スーパーアプリ最新動向~多様化するサービス連携とそのねらい~」についてです。

国内外で注目されるスーパーアプリの最新動向をTISの岩崎が解説します。
事例を交えながら多様化するサービス連携とそのねらいを紐解き、スーパーアプリ事業者とミニアプリ(Widget)事業者の連携を加速させる「Widget配信プラットフォーム」についてもご紹介します。

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講演者プロフィール

TIS株式会社
DXビジネスユニット ペイメントサービスユニット
モビリティサービス部 エキスパート 岩崎 貴司
詳細はコチラ
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1. スーパーアプリ、ミニアプリ(Widget)とは

「スーパーアプリ」は、日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なスマホアプリ

スーパーアプリとは日常生活のありとあらゆる場面で活用できる統合的なアプリケーションだと定義しています。
スマホで利用されるさまざまなサービスが、1つのアプリケーションで一貫したユーザー体験のもとに統合されていることがポイントです。

これまでもアプリ上からのWebリンクを利用したサービス連携は存在していましたが、リンク先のサイトに飛んだ後、個別のIDやパスワードを入れる必要があります。
スーパーアプリではミニアプリとして連携することで、IDやパスワードをその都度入力することなくシームレスに使えることができ、サービス間の断絶のない一貫したユーザー体験が得られます。

スーパーアプリでできること図

「ミニアプリ」はスーパーアプリに呼び出される個々の機能

ミニアプリとは、スーパーアプリに内包されるWebViewを用いた単機能の軽量なアプリケーションです。
アプリを新たにインストールすることなく、スーパーアプリから様々なサービスを利用できる点が特徴となっています。

ミニアプリでできること図

2. 海外事例から見るスーパーアプリの状況

スーパーアプリの起源は中国の2大アプリ

スーパーアプリ、ミニアプリというワードの起源となったスーパーアプリをご存知でしょうか。
中国のコミュニケーションアプリの「WeChat」と、決済アプリの「Alipay」です。この2つのスーパーアプリが多くのミニアプリを取り込んでいったことで、「スーパーアプリ」、「ミニアプリ」が広がり始めました。

これらはもともと単独のアプリとして存在していましたが、多くのサービスをミニアプリとして連携していくことで、アプリ自体の利用時間を大きく延ばしはじめました。そうして「WeChat」「Alipay」は、使い勝手のいいミニアプリの獲得競争の中で劇的に成長し、巨大なスーパーアプリが生まれたのです。これらのアプリは中国では生活の一部として使われており、スーパーアプリから自然とミニアプリを使うことが習慣となっています。

各国の状況や背景に合わせて、さまざまなスーパーアプリが台頭

では、中国以外の国ではどうでしょうか。今回は3つの地域をピックアップしてご紹介します。

■海外のスーパーアプリ1 東南アジア「Grab」「Go Pay(GOJEK)」
この2つのスーパーアプリは、配車サービスを中核として、そこに関連性や親和性の高いサービスをミニアプリとして取り込みながら台頭してきました。このスーパーアプリが成功した理由は2つあると考えられます。

① ローカル事情を考慮したサービス展開
中核となる配車サービスでは、現地で利用されている3輪タクシーを取り込むことで、利用者の日常に寄り添ったサービス展開となっています。

②国内のインフラ事情
この地域で利用されているスマートフォンの端末はハイエンドではないものが多く、重いアプリケーションを使うよりWebViewで閲覧できる軽量なアプリケーションがユーザーに支持されて普及が進みました。

他にも、コロナに合わせて患者の送迎サービスなどをミニアプリとして組み込むなど、すぐに新しいサービスを立ち上げ、スーパーアプリの中で使えるようにするなど、ユーザーのニーズに素早く応えています。こうした国内状況に合わせたスピーディーなニーズへの対応も、スーパーアプリ・ミニアプリという形態だからこそできたといえます。

■海外のスーパーアプリ2 インド「PhonePe」
インドでもさまざまなスーパーアプリが立ち上がりつつあります。「PhonePe」は決済機能を中心として、親和性の高そうな金融サービスや小売りに関連するミニアプリを取り込んで成長したスーパーアプリです。このスーパーアプリはインド政府が推進している決済基盤に接続しており、国の後押しもあって台頭してきました。

■海外のスーパーアプリ3 米国「PayPal」
「PayPal」も主軸になっている機能は決済機能です。この数年は決済機能に加えショッピングツールや暗号資産関連のミニアプリにも順次対応してきました。「PayPal」は決済で利用するユーザーがよりロイヤリティを感じられるミニアプリを拡充することで、決済を利用するユーザーの囲い込みを目的に展開していると考えられます。

スーパーアプリはどのようなミニアプリと連携すべきか?

各国のスーパーアプリの例にも見られましたが、スーパーアプリはその国の状況や背景に合わせて立ち上がっています。政府の投資や国内インフラの状況など、各国の情勢に合わせ、どのようなスーパーアプリが台頭してくるかが変わります。
各国の例を見ると、中国のスーパーアプリのように必ずしも日常に関わるあらゆるサービスがミニアプリとして入っているわけでありません。やはり中核となる機能と親和性が高いミニアプリとの連携が多いのが大きなポイントです。そして、その経済圏を見たときに足りない機能やサービスをミニアプリで補っていくという構図が共通しています。

3. 国内事例から見る日本のスーパーアプリの状況

日本のスーパーアプリの2つのパターン

続いて国内事例から日本のスーパーアプリの状況を見ていきたいと思います。国内でもスーパーアプリとしてミニアプリを取り込むアプリが増えています。その中で代表的な事例を中心にご紹介します。
まず国内のスーパーアプリの目的は、大きく2つのパターンに分けられます。1つは経済圏の集約と拡大を目的としてミニアプリとの連携を進めるスーパーアプリです。PayPay、d払い、au PAYなどがこれにあたります。もう1つはアプリ自体をできるだけ多く利用してもらうために、利用者にとって利便性の高いミニアプリが用意されたスーパーアプリです。LINEなどが代表的なアプリと言えるでしょう。

■経済圏の集約、拡大を目的とした、スーパーアプリの特徴
⑴経済圏集約の考えから決済機能を持ったアプリがスーパーアプリになりやすい
⑵ミニアプリ事業者は、スーパーアプリをメディアの一つと考えている
⑶スーパーアプリを開くユーザーのニーズに合わせてミニアプリを展開している
⑷決済アプリが乱立する日本では、一つのスーパーアプリが覇権を握ることはおそらくない

スーパーアプリとミニアプリの関係図その1

■アプリの利用促進を目的としたスーパーアプリの特徴
⑴アプリの起動促進、離脱防止が主目的になるため、決済機能を持つ必要はない
⑵アプリのインストール率など、スーパーアプリの特性を生かした展開を考える必要がある

スーパーアプリとミニアプリの関係図その2

どちらを目的にしたスーパーアプリの場合も、スーパーアプリ事業者からは「自社サービスをスーパーアプリに集約したい」という声が多く聞かれます。また、たくさんのミニアプリを最初から抱えるのではなく、1〜2社と連携を始めるケースもあります。ユーザー目線では「スーパーアプリの方が単純なWebリンクよりもUXが良い」と評価されるスーパーアプリは、「経済圏の集約、拡大」「アプリの利用促進」において有効な戦略といえるでしょう。

4. 「スーパーアプリ」「ミニアプリ」のメリット

UXに優れ、離脱ポイントが少ないスーパーアプリとミニアプリの連携

スーパーアプリとミニアプリの連携は、単純なWebリンクや個別のネイティブアプリ連携に比べ、エンドユーザーに優れたUXでサービス提供ができます。例えば、「商品の決済」や「サービス予約」、「コンテンツのダウンロード」などを複数のサービスにまたがって行う時に、IDやパスワードの再入力や個人情報の登録が必要だとそれがサービス間の断絶となり、人によってはそこで離脱してしまうかもしれません。
しかしミニアプリならスーパーアプリを起点にそれらの情報が紐付いているため、さまざまなサービスをシームレスに利用できます。これはエンドユーザーの増加やアプリの利用率向上に繋がります。

ユーザーのスーパーアプリの使い方図

5. スーパーアプリ事業者とミニアプリ事業者の課題

利用者の認識とスーパーアプリ・ミニアプリの仕様の違い

スーパーアプリ事業者とミニアプリ事業者が抱える課題は、大きく4つあります。

①エンドユーザーがスーパーアプリを正しく理解していない
日本ではスーパーアプリから便利なミニアプリを使えることがあまり認識されていません。スーパーアプリ事業者は、エンドユーザーへの導線をうまく作り、ミニアプリの便利さを広めていく必要があるでしょう。

②スーパーアプリ/ミニアプリの連携UXがまだまだ統一されていない
例えばスーパーアプリ上でいろいろなミニアプリを使う時に、ミニアプリごとに画面の見え方や表示が違っていたりします。このようにスーパーアプリとミニアプリの連携UXが違うと複数のミニアプリを使う利用者は混乱してしまいますが、スーパーアプリ/ミニアプリの連携UXは、今はまだほとんど統一されていません。
同じUXで統一するのが理想的ですが、実際には各社の仕様もあるので難しい状況です。

③スーパーアプリ事業者の仕様が各社で違う
スーパーアプリ事業者からすると、都度ミニアプリ事業者に自社の仕様を説明しなければなりません。ミニアプリ事業者からすると、複数のスーパーアプリにつなぐ場合はそれぞれの仕様に合わせ、スーパーアプリごとにミニアプリを管理する必要があります。

④スーパーアプリとミニアプリはどう組み合わせれば効果的か
この点についてはスーパーアプリ事業者、ミニアプリ事業者ともにまだまだ手探りの状態です。自社アプリのユーザーに便利だと感じてもらえるのはどんなミニアプリなのか、自社のミニアプリの利用が促進されやすいのはどんなスーパーアプリなのか。スーパーアプリ事業者、ミニアプリ事業者の担当者が頭を悩ませているところです。

上記のような課題はありますが、これを解決できるのがTISの「Widget配信プラットフォーム」です。

6. TISのWidget(ミニアプリ)配信プラットフォーム

スーパーアプリと多種多様なミニアプリ(Widget)をつなぐプラットフォーム

ここまでで国内外のスーパーアプリとミニアプリの事例や課題をご説明してきました。TISの提供するWidget配信プラットフォームは、こうしたスーパーアプリと多種多様なミニアプリをつなげ、両者のビジネスコラボレーションを実現することで、スーパーアプリ事業者の経済圏の価値を向上させるプラットフォームです

PAYCIERGEのWidgetサービスの全体図

●ミニアプリ事業者は、ミニアプリをプラットフォームにつなぐだけでスーパーアプリに接続
●スーパーアプリとミニアプリの仕様の違いは、プラットフォーム側で吸収
●プラットフォーム上のミニアプリは、スーパーアプリ事業者がすぐ接続して使える
●ミニアプリ事業者は、ミニアプリを複数のスーパーアプリへ提供できる。

最後に
TISの「Widget配信プラットフォーム」について、詳しい資料をご用意しています
TISはWidget配信プラットフォームを展開してきて、スーパーアプリ事業者様、ミニアプリ事業者様の両方からさまざまなご相談を受けてきました。どうやってスーパーアプリ作っていけばいいのか… スーパーアプリの仕様の違いにどう対応すればいいのか…。

私たちTISはそうした事業者の皆様と、ぜひ一緒にスーパーアプリを作り上げたいと思っています。スーパーアプリ、ミニアプリに興味を持っていただけましたらぜひお問い合わせください。

※講演資料
WidgetDL資料

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