コロナ禍でさまざまな業界が影響を受ける中、注目を集めているのが”キャッシュレス”です。もともと日本はキャッシュレス化が世界各国と比べ遅れていましたが、コロナの影響によりキャッシュレス化が急速に進んでいます。 ここではコロナでキャッシュレスがどれだけ進んだのか、国内外の現状を紹介するとともに、今後のキャッシュレス動向についても予測していきます。
1.コロナの影響でキャッシュレス化が進んでいる
コロナは世界のあらゆる産業にインパクトを与えています。決済方法もコロナの影響により大きく変化しています。
日本国内では、キャッシュレスに関する人々の意識が急激に高まっているようです。株式会社マネーフォワードの「コロナ禍の個人の家計実態調査」によると、「新型コロナウイルスの影響でキャッシュレス決済を以前より利用するようになった」と回答した人は全体の40%に上っています。
キャッシュレス決済を利用するようになった人のうち、44%は「レジでの支払いを素早く済ませるため(接触時間を短縮させるため)」、27%が「現金に触れることによる新型コロナウイルス感染を防ぐため」と回答しています。合計71%の方が、“感染防止”を理由に以前よりもキャッシュレス決済を利用しているのです。
新型コロナウイルスの経済対策として、キャッシュレスを活用する自治体も出てきました。岡山県倉敷市では、スマートフォンのキャッシュレス決済でポイントを還元する事業の第2弾を2021年1月中旬から開始。25%という高い還元率で消費を促す狙いです。
一度キャッシュレスの便利さを知ってしまえばキャッシュレスから現金に戻る人の割合は低いとされています。よって今後も更にキャッシュレスのサービスを利用していく人は増えていく事が予想されます。
キャッシュレスの推進は、各種電子決済サービス会社にも大きな影響を与えています。 たとえば、フィリピン最大の電子決済サービス「GCash」は、2020年5月の取引量が前年同月比で8倍になったと発表しています。
参考リンク:https://techwireasia.com/2020/07/digital-payments-are-finally-soaring-in-the-philippines/
また、オンライン決済大手のPayPalも、2020年第2四半期の取扱高が前年同期比30%増、売上高も25%増と大幅な伸びを見せています。参考リンク
海外でも現金の利用額は減少傾向にあります。
ロンドンではロックダウンの影響もあり、ATMの利用額が大きく減少しました。3月には欧州銀行監督機構(EBA)が決済サービス事業者に対して非接触型決済の利用促進を求めた動きもみられています。
参考リンク:https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200613/mcb2006130800001-n1.htm
2.今、キャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済は「利用者」と「事業者」の双方にメリットがある決済方式です。まず、利用者にとっては下記のようなメリットがあります。
・現金を持ち歩かなくて良い
・現金と違ってキャッシュレス決済はパスワードで守られている
・不正利用に対するケアがあったりとセキュリティ面で安心
・現金を数えるなどの手間がなく支払いが楽
・ポイントが貯まり、各種キャンペーンが開催されていてお得
・家計簿アプリ等との連携でいくら使ったのかが記録できるため家計簿として利用可能
一方、事業者側にとっては次のようなメリットがあります。
・会計のスピードを上げることでレジ業務の効率化
・キャッシュレス決済を希望する顧客の獲得
・現金を管理する手間
・コストの削減、またそれによる人手不足解消効果
・お釣りの間違いが発生しないためレジ締めで誤差が出にくい
・購買履歴データを取得しデータ活用につなげられる
また、金融機関等に限定されたメリットとしては、ATMの管理費を削減できることも挙げられます。
このように多くの人にとってさまざまなメリットがあるキャッシュレスですが、コロナ禍においてはもう一つの特徴が注目されているのです。
それは現金のやりとりをなくすことによる「感染症予防」です。
新型コロナウイルスはくしゃみや会話による飛沫感染、人の指で操作するタッチパネル・ボタンを通した接触感染により感染します。お札や硬貨は人から人へと手渡されるものであり、紙幣をATMから引き落とす際にもパネルの接触が発生します。店員との会計時の接触や、レジを待つ客との距離間も感染の危険性があるのです。
一方キャッシュレスであれば、現金やATMを触らずに決済可能です。会計も早く済むため、レジを待つ行列を防ぎ、店内での混雑“密”の解消にもつながります。
こうした点を気にする人がコロナ禍で急増したことが、キャッシュレス化を加速する要因の一つになっています。
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・キャッシュレス化した店舗のメリットとは?最新動向を含め徹底解説!(前編)
・キャッシュレス化した店舗のメリットとは?最新動向を含め徹底解説!(後編)
3.一番早く導入できるキャッシュレス決済は何?
キャッシュレス決済と一口にいっても多くの種類があります。古くから使われているクレジットカード決済や、交通系ICカード等による非接触型のタッチ決済、近年盛り上がりを見せているQRコード決済などです。
事業者にとってどの決済手段を導入すべきなのか難しい選択ではありますが、最短・低コストでの導入という観点から考えるとQRコード決済がお勧めです。QRコード決済には、事業者がQRコードを提示して消費者がスマートフォンのカメラ等で読み取り決済する方式(MPM)と、消費者がQRコードを提示して事業者がリーダーで読み取り決済する方式(CPM)の2種類があります。後者の場合は読み取り機の導入が必要になりますが、前者の場合は専用端末が不要です。
また、入金サイクルについても、翌日入金が可能だったり月の入金回数を選べたりと、他のキャッシュレス決済に比べてフレキシブルに対応できるのがQRコード決済の魅力となっています。手数料に関しても、その他のキャッシュレス決済より比較的安価です。
このように、QRコード決済には多くのメリットがあります。キャッシュレス決済の導入を進める場合、まずはQRコード決済を検討してみてはいかがでしょうか。
4.今後のキャッシュレス決済はどうなっていく?
最後に今後のキャッシュレス決済市場の変化について予測したいと思います。 冒頭で記載した通りきっかけはコロナ禍だったとしても、キャッシュレス決済の便利さ、手軽さを知った利用者の多くはその後もキャッシュレス決済を使い続けます。
一方で、キャッシュレス決済事業者にとっては、ここからが正念場です。キャッシュレス決済はサービスの数もかなり増えていて乱立状態にあります。その中でユーザーに選んでもらうためには、単に決済ができるというだけでなく、”+α”の付加価値をつけたサービスを提供することが必要になります。
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◎乱立するQRコード決済。仕組みを理解し迅速に導入する方法とは?
また、ユーザー一人ひとりに合ったきめ細やかなサービスを提供する「One to One マーケティング」の視点も重要になります。たとえば、顧客全員に対して同じDMを送ったり同じWeb広告を見せたりするのではなく、購買履歴やサイトの閲覧データなどをもとに趣味嗜好や興味の対象を分析し、最適な方法とタイミングでアプローチを変えていくというものです。
このOne to One マーケティングを実践するためには、顧客のデータを活用しなければなりません。オンライン上の情報だけではなく、オフラインの情報も取得・分析・融合する事で顧客に最適なサービスを提供する事が可能になります。(OMOに関する記事:OMOとは? 背景やO2Oとの違いを事例と共に解説します!) そのためにも、現金払いからキャッシュレス決済を導入する事はOne to Oneマーケティングへの最初の一歩と言えるのだと思います。
今後はテクノロジーの進化、スマートフォンの普及により、社会はますます便利になっていきます。「決済」という手段はサービスを利用する上で一部の機能です。TISが得意とする決済領域の分野を最大限活かしながら、今後どのようなサービスを生み出し、社会・生活を便利にしていくのか注目して下さい。
※QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。
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