2019年10月の消費税増税後、日本に広く知れ渡るようになったキャッシュレス決済。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、キャッシュレス決済は非接触で決済を行えるため、衛生面でも非常に注目されています。
しかし、日本におけるキャッシュレス決済の普及率は、未だ世界各国の中では低いとされています。政府も進めるキャッシュレス化、コロナの影響によって、世の中はどのように変わっていくのでしょうか。
今回は、拡大しているキャッシュレス化の背景から現在の動向、具体的なキャッシュレス決済の種類を紹介します。また、キャッシュレスを導入した際に、店舗が得られるメリットから注意したい点まで、徹底解説します。
●キャッシュレスの普及率。世界と日本を比較!
●キャッシュレス化の目的とは
●キャッシュレス決済の種類
●キャッシュレス決済を店舗に導入するメリット
●キャッシュレス決済を店舗に導入する際の注意点
●キャッシュレス決済の導入方法
●キャッシュレスの最新動向
●まとめ
●キャッシュレスの普及率。世界と日本を比較!
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220601002/20220601002.html)
経済産業省が2022年6月に発表したキャッシュレス支払額及び決済比率の推移になります。2021年のキャッシュレス決済比率は30%を超え32.5%となっています。中でもクレジットカードでの決済は大半を占め、コロナ禍での「巣篭もり消費」によるECサイト利用による需要拡大が続いており、全体数値を押し上げた要因と考えられます日本では、徐々にキャッシュレス決済への注目が高まってきてはいますが、世界規模ではどうでしょうか。
参考:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2019」をもとにグラフを作図
一般社団法人キャッシュレス推進協議会が発表した「キャッシュレス・ロードマップ 2019」によると、世界各国のキャッシュレス決済比率は、韓国が96.4%、イギリスが68.6%、中国が65.8%と、進展している国は40~60%に達していることがわかります。それに対し、日本の決済比率は19.9%と下位に位置しています。では、なぜ他国に比べ日本のキャッシュレスは普及していないのでしょうか。そこには現金を好む国民性の「社会情勢」と、キャッシュレスを実際に導入する「店舗の懸念」があげられます。
キャッシュレスが普及しにくい社会情勢
最初にあげられる社会情勢は日本の「治安の良さ」です。世界の決済比率で2位に位置する中国では、現金の安全性(偽札問題)、透明性(脱税問題)、コスト(印刷・流通コスト)の解決策として、急速なキャッシュレス決済の普及が実現しました。一方我が国に目を向けると、他国と比較した盗難の低さや、お財布を落としても届け出れば返ってくると言われる程の治安の良さ・国民性があります。偽札の流通も少なく、「現金への信頼度」も非常に高いです。また、ATMの設置台数が多くどこに行ってもすぐに現金を入手できる環境が整っていることも、キャッシュレスの推進を妨げる要因となっています。
キャッシュレスが普及しにくい店舗の懸念
キャッシュレスが普及しにくい要因は、利用するユーザーだけでなく、導入する店舗側にもあります。それは「導入コスト」と「運用・維持」への懸念です。キャッシュレスを店舗に導入する場合、専用端末の設置の初期コストや維持・運営コストをはじめ、現金支払いでは発生しない手数料がかかります。また、日本では多くのキャッシュレス決済手段が混在しているという背景もあります。多様なキャッシュレス決済全てに対応をするとなると、コストはもちろん、従業員へのオペレーション負担も拡大してしまうのです。
キャッシュレスが普及しにくい背景にはユーザー側と店舗側の両方に理由があります。このような現状にかかわらず、政府がキャッシュレスを進める目的はなんなのでしょうか。その目的を紹介します。
消費者動向。コロナ禍でキャッシュレスを利用している理由
出典:MMD研究所×Visa「コロナ禍での支払いやお金の管理に関する調査」
MMD研究所とビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社は「コロナ禍での支払いやお金の管理に関する調査」(2021年8月17日~8月19日)を実施しました。新型コロナウイルス感染拡大後にキャッシュレス決済を利用している理由を質問したところ、最も多かった理由はクレジットカード利用者(n=35,149)とQRコード決済利用者(n=25,224)では「ポイント還元率が良いから」、デビットカード利用者(n=7,337)プリペイドカード利用者(n=6,590)カード型電子マネー利用者(n=22,901)タッチ式スマートフォン決済利用者(n=12,486)では「素早く会計したいから」となりました。
現金への信頼度が高い日本においては、消費者がキャッシュレスをメリットに感じる「ポイント還元」を切り口とした事業会社・企業・店舗からのアプローチが必要になりそうです。また「素早く会計したいから」を求めるように、キャッシュレス化が購買における体験価値や顧客満足度を高める要因になることが伺えます。
●キャッシュレス化の目的とは
経済産業省は「キャシュレス・ビジョン」の中で、2025年にキャッシュレス決済比率40%を目標に掲げることを宣言しました。将来的には世界でも高水準の80%を目指すと発表するなど政府もキャッシュレス決済に注力していると言えます。政府がキャッシュレス化を進める背景には以下のような目的があります。
人手不足といった社会課題の解決
少子高齢化を背景に、各業界で労働人口の減少が大きな課題となっています。限られた人数で生産性を維持するには、業務の効率化は欠かせません。そのひとつが現金の扱いです。売上金の集金業務や管理、お釣りの手配など、キャッシュレス化によってこれまで負担となっていた現金の扱いに関する業務の効率化が可能になります。キャッシュレス化による新たなオペレーションの構築など、従業員の負担拡大が懸念されますが、一度導入してしまえば、長期的に業務効率化につながる施策であることに間違いはありません。
新たなイノベーションの創出
昨今、金融とテクノロジーを掛け合わせた「Fintech」分野が急速に拡大しています。キャッシュレスもそのひとつ。これまではクレジットカード決済が主流だったキャッシュレスも、現在はQRコードやバーコード決済といった、クラウドサービスが登場しています。Fintechが広く普及した社会では、お金が電子情報となり、ネットワーク内を瞬時に移動し、計算され記録される「数字」として扱われるようになります。あらゆる経済活動・ビジネスが生じる瞬間に「数字としてのお金」が使われるようになり、これまで想像していなかったサービスやイノベーションの創出が期待されています。
インバウンド対策
現在、コロナの影響で外国からの入国は厳しく規制されていますが、2021年に控えた東京オリンピックに向け、今後訪日外国人の増加が予想されます。訪日外国人は、世界各国のキャッシュレス決済比率からもわかる通り、すでにキャッシュレス決済に慣れていることが考えられます。日本での買い物・食事等の決済時に「キャッシュレスに対応していない」を理由に、機会損失が発生してしまう恐れがあります。キャッシュレス化はインバウンド対策のひとつとしても重視されているのです。
●キャッシュレス決済の種類
日本のキャッシュレス事情は理解していただけたかと思いますが、ここからは店舗目線でのキャッシュレスについて解説していきます。キャッシュレス決済とは、現金を使わずにお金を払う手段ですが、まずはどんなキャッシュレス決済の方法があるのか、紹介します。
カード決済
クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなどで支払うのが、カードを使ったキャッシュレス決済です。以前から多くの人に使われている決済方法で、キャッシュレス決済だと意識をせずに利用している方も多いかもしれません。別途アプリなどは必要なく、カード1枚で支払いが完了します。
交通系カード決済
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードは、電車に乗るだけではなく、日常の買い物にも利用できます。現金をカードにチャージするだけで使えるので、老若男女問わず、多くの人が利用しやすいキャッシュレス決済手段といえます。
QRコード・バーコード決済
スマートフォンにインストールしたアプリを使って支払いをするのが、QRコード・バーコード決済です。よくCMなどで見かけるPayPay、LINEを運営する会社が運営するLINE Pay、楽天が運営する楽天ペイなど、種類もどんどん増えています。
アプリをインストール後、スマートフォンのカメラを使ってQRコードを読み取って支払いを済ませるパターンと、店舗側がバーコードをスキャンすることで支払いが完了する2つのパターンがあります。どちらのパターンでも、スマートフォン一つでスムーズに支払いをすることが可能です。
■QRコード決済の詳細についてはこちら!↓↓↓
さて、前編ではキャッシュレス決済の現状や目的、その種類をおさらいしました。
次回、「キャッシュレス化した店舗のメリット・普及状況は?最新動向を含め徹底解説!(後編)」では今回から更に踏み込んで、キャッシュレス決済を導入した際の具体的な店舗のメリットや導入方法についてお話しします。
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