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【API連携で広がるビジネスへ】ビジネス成功の秘訣、API連携を利用すべき事業者とは?

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APIを戦略的に利用することで、事業者に先進的なアプローチを提供し市場での競争力向上につなげることが可能です。本コラムでは、専門的な知識を持つTISの二出川氏と小林氏の2名がAPIの基本概念から現在の市場動向、API基盤サービスの選定基準までを包括的に解説しています。彼らが語るAPI連携の魅力に迫ります。

ペイメントプラットフォームサービス部(2023年2月時点)

TIS二出川

エキスパート
二出川 弘 (にでがわ ひろし)

10年にわたり大手クレジットカード会社のさまざまなシステム基盤を担当。現在、PAYCIERGEのクラウド領域に関する技術統括を担当。

   

 
 
TIS小林

セクションチーフ
小林 翔 (こばやし しょう)

クレジットカード会社や通販事業者のシステム基盤開発~保守を担当。現在、PAYCIERGEのクラウド領域開発でチームリーダーを担当。

   

 
 

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1.API、API連携とは

APIとAPI連携

APIは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(Application Programing Interface)の略で、その⾔葉が示す通り、ある特定の機能や⽬的のために作られたソフトウェア(アプリケーション)を、必要とされる場所につなぐ技術(インターフェース)を表します。簡単に言えば、あるソフトウェアの機能を別のソフトウェア上から呼び出すための仕組みです。APIで公開されているサービスは、ユーザーの利⽤に対して対応するソフトウェアが応答することで、ユーザーが必要とする機能や情報を提供します。ユーザーは複数のアプリを切り替えることなくシームレスにサービスを利⽤することができます。また、ユーザーにアプリを提供する事業者側もAPIで公開されている機能やデータを利⽤することで、新しいサービスをゼロから開発することなく自社のアプリで提供できるようになります。これを「API連携」と呼びます。

API連携で実現するオープンイノベーション

事業を通じて得たさまざまなデータを持つA社が、新しいビジネスとして集めたデータを提供するサービスを開始したいと考えたとします。今まではA社のサービスを利用したい事業者(B社、C社)が、異なるフォーマットやインターフェースに合わせるためのシステム開発をそれぞれ行う必要がありました。これはA社のサービスを自社アプリに連携してアプリの価値を高めたいと考えるB社、C社にとっては、サービスを導入しづらくするものでした。それに対してAPIで公開されるサービスは定型的なフォーマットが採用されているため、アプリ上で扱いやすく、利用の促進にもつながっています。
例えば、ECサイトの運営に参入する事業者が「クレジットカード決済機能」を使いたい場合、APIで公開されている決済機能を使えば、自社で決済機能を開発する必要はありません。クレジットカード運営会社が公開するAPIにカード番号や氏名などの情報を送信するだけで、決済の可否が返ってきます。ECサイト側でカード情報を管理する必要も、情報漏洩を防ぐセキュリティを構築する必要もなく、EC事業への参入ハードルが大きく下がります。ユーザーはさまざまなECサイトで手軽に買い物を楽しめるようになり、クレジットカード運営会社もカード利用チャネルが拡大されます。このように、API連携はオープンイノベーション促進のカギとなっています。

■API連携の仕組み

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2.API連携の現状

API連携の市場規模

世界のAPI管理市場の規模は、2022年-2027年に25%を超える年間平均成長率(CAGR)で成長し、137億米ドルに達すると予測されています。(参照元:https://www.dreamnews.jp/press/0000263633/)
その背景にあるのは、変化する顧客ニーズに迅速に対応したい企業の積極的なAPI導入です。AWS、SAP SE、Microsoft、Oracle、GoogleなどAPIマネジメントの主要メーカーが北米の企業のAPI導入を牽引することで、世界のAPI管理市場を成長させてきました。今後はモバイルユーザーの増加でECの発展が見込まれるアジアでも、市場が大きく伸びると考えられています。日本の金融庁のようなところが「必要な金融情報を公開する」と決め、政府主導でAPI連携を進める国もあり、グローバルな視点では企業のAPI導入は今後も進むと考えられます。日本でも大手金融機関を中心にAPI化が進んでいるものの、公開はあくまで努力目標にとどまり、金融サービスをAPI連携ありきで進められる状況にはありません。APIを利用したビジネス事例もまだ少なく、企業の積極的なAPI導入はこれからといえます。

API連携のメリット

APIを利用する事業者の多くは、自社のアプリやシステムをすでに持っているため、API提供されているサービスへ”決められた通信”を行えば、自社やアプリに必要な「結果」を受け取ることができます。例えば金融サービスなら、受け取る「結果」にはユーザーの口座情報なども含まれます。このような自社では用意できない「価値を生み出す情報」も簡単に得ることができるのが、API連携の大きなメリットです。

3.API連携を利用すべき事業者

API連携を利用すべき事業者とは

API連携に関わる事業者は大きく二つに分けられます。自社の機能やサービス、データをAPIで公開したいと考えている事業者と、APIで公開された機能やサービス、データを利用したい事業者です。
自社の機能やデータをAPIで公開する場合、さまざまな業種が必要とするデータを持っている事業者であれば、新しいビジネスとして成功する可能性も高くなります。API公開により新しいビジネスを始める時、そこには”データ”が必要で、価値の高いデータを持つ事業者はそれだけでビジネスを優位に進められます。これは金融サービスに限らず、どの領域のサービスにおいても共通して言えることだと思います。
API公開されたサービスやデータを利用したい事業者には、例えば、自社アプリに新しいサービスを追加してアプリの価値を高めたい事業者などが考えられます。APIを利用すれば、実績のある機能やサービス、管理の難しい金融データを自社アプリで簡単に扱えるようになります。これを自社で開発しようとすれば、多くの時間とコストが必要になるでしょう。

なぜ自社のデータをAPIで公開するのか

API提供者側が自社のデータをAPIで公開する理由として、「既存ビジネスの拡大」と「サービス開発の効率化」といった側面があります。データを公開することでオープンイノベーションが進めば、今まで想定していなかった顧客の獲得や、収益の拡大に期待が持てます。一方で、API公開は文字通り自社のデータを外部に公開することになるので、サーバーへの負荷やセキュリティに配慮して、自社のデータのどの部分をどう公開するのかを事業者側が適切に定める必要があります。

■API基盤サービスを利用したユースケース

①交通系事業者:運行情報等の自社データを他業種の複数のお客さまに対して共通のAPIで提供
api-交通系企業図

②金融系事業者:取引先と閉域網で繋いだAPI基盤により重要度の高いデータをセキュアに連携
api-金融機関系図

4.API基盤サービス

API基盤サービスの役割

公開されたAPIから自社ビジネスに「必要な結果」を得るためには、”決められた通信”が必要です。裏を返せばAPI基盤サービスを介さなくても、直接通信を行えば必要な結果を得ることができます。ただし、その場合は自社システムとAPI提供側のシステムの仕様を正しく理解し、専用回線を通じて直接情報をやり取りして、セキュリティ構築も自分たちで行う必要があります。この技術的な問題をすべてクリアした上で、ようやく必要な結果を得ることができます。高度なセキュリティが求められる金融サービスであれば、そのハードルはさらに高くなります。これを自社で行うのはかなり大変で、手間もかかります。その作業コストはサービスコストに上乗せされ、結果として価格競争力に響いてきます。しかしAPI利用者とAPI提供者の間にゲートウェイのようなAPI基盤があり、両者がシンプルなインターフェースでつながることができれば、APIを利用する事業者は複雑な通信を考えずに「必要な情報」だけ得ることができます。その結果、価格競争力を回避できるだけでなく、サービス導入期間も大幅に短縮されます。また、自社のサービスや機能をAPIで公開する事業者も、自社のサービスや機能をより多くのアプリで利用してもらえるようになります。

TISの「高セキュリティAPI基盤サービス」の特徴

TISの高セキュリティAPI基盤サービスは、APIを安全に公開するためにセキュリティを強化したクラウド型のAPIマネジメント基盤サービスです。APIを公開するにあたって必要な各種管理機能を備えており、業種・業界によらずさまざまな事業者のオープンAPI化の支援が可能です。このAPI基盤はTISの決済ソリューションブランドPAYCIERGE(ペイシェルジュ)がAPI提供するさまざまな決済サービスに利用されており、そこで培われた金融レベルのセキュリティと高可用性を安価でご利用いただける、信頼性の高いAPI基盤サービスです。

■サービス概要

api-高セキュリティapi基盤図

また、TISのAPI基盤サービスは、お客さまが立ち上げるAPIサービスをどのように活用して、どう使ってもらうべきか運用面でもサポートします。これは決済領域で培ってきたTISの経験とノウハウがなければできない、目に見えづらいけれどもビジネスの成功につながる価値だと感じています。そしてTISのAPI基盤サービスを利用する場合、ITやシステムの知識よりも「APIでどんなサービスを提供したいのか」が重要になります。お客さまとビジョンを共有しながら、それを実現する接続やセキュリティは私たちTISが責任を持って支援します。
TISのAPI基盤サービスは金融系の事業者様に多くご利用頂いていますが、その理由として、標準でPCI DSSに対応していることも大きいと思います。金融サービスの提供には、クレジットカードを取り扱うためのPCI DSS認証※が避けられません。一般の事業者がこれに対応するのは非常にコストがかかるだけでなく、そもそもノウハウがなく対応できない事業者も多いのではないでしょうか。TISのAPI基盤サービスであれば、事業者側で対応しなければいけないことが非常に少なくて済みます。これは金融サービスのAPI公開を考えているお客さまにとって、大きなメリットだと言えます。

※PCI DSS:加盟店やサービスプロバイダにおいて、クレジットカード会員データを安全に取り扱う事を目的として策定された、クレジットカード業界のセキュリティ基準。

5.API基盤サービスは何を基準に選ぶべきか

では、APIを公開する事業者は、何を基準にAPI基盤サービスを選ぶべきでしょうか。公開するサービスや機能が金融に関わるものであれば、セキュリティを重視すべきだと思います。やはり情報流出はインパクトが大きく、事業に与える影響も甚大です。データ漏洩も含めて、そこを最重要視して選ぶべきでしょう。もちろん他のベンダーが提供しているAPI基盤サービスもそこを軽視することはないので、最低限のセキュリティは担保されていると思います。
しかしTISには他社に比べさまざまな金融系システムや金融サービスに携わってきた経験があり、これはどのベンダーにもある強みではありません。標準でPCI DSSに対応している、カードブランドとの交渉の窓口になるなど、目に見える機能やサポートがあることも、API基盤サービスを選ぶポイントになると思います。API連携だけをご利用いただきあとはご自由にどうぞ、ではなく、お客さまがフィンテック企業として成功するために必要なことをフォローできるかどうかは、ビジネスの成功においてとても重要です。TISの高セキュリティAPI基盤サービスは、そこまで提供できるサービスだと自負しています。

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