コラム Column

地域の願いを叶えるプラットフォームとは(人中心の社会とは?)

 

 

●人中心の社会とは?

みなさんの財布やスマホの中には何種類の決済手段がありますか?

私はクレジットカードが3枚、スマホ決済は5種類もありました。その他、鉄道の席予約アプリが2つ、テイクアウトや宅配アプリは3つ・・・。私は仕事上多くの決済手段を試す方ですが、皆さんも複数の決済手段を日常的に使われているのではないでしょうか?

クレジットカードやスマホだけで気軽に決済まで完了できるサービスが増え、企業間の競争が激化しサービスの質が良くなることは利用者にとっては嬉しい事です。しかし、それぞれの支払い手段やアプリの管理は個別に行っていて、一つ一つのサービスを使いこなせているとはいい難い状況になってきています。どの決済手段でいくら払ったかもわからなくなるなんていうことも起きていませんか?

これは、個々のサービスが連携されず、分断されることで発生します。なぜ連携されないかというと、企業は自社サービスにユーザーを抱え込むことを目的としてサービスを設計するためです。こうして各企業に蓄積されたデータは、顧客の囲い込みや自社のマーケティングのために使われ、利用者自身が活用できる範囲は限定的です。

しかし、これからも絶えず増えていくであろうサービスが、企業中心のままではユーザーである私たちの負担は増えていくばかりです。そこで今回提言したいのが「人中心」というサービスの在り方です。「人中心」という考え方の下で設計されたサービスの場合、私たちが利用するサービスは相互に連携し、一つのサービスに自分の情報を入力すれば、連携しているサービスへの情報入力は不要になります。どの決済手段で支払っても、何にいくら払ったかは容易に把握することができるのです。また、サービス同士のつながりで、病院の予約時に送迎の希望を申告すればタクシーがしかるべき時間に迎えに来てくれる、という事も可能になります。そしてこれら移動や決済、通院などの情報も、企業が自身のためだけに使うのではなく、利用者自身の合意の下活用でき、例えば「この地域には木曜日に都市部に通院する人が多い」という情報を、ユーザーを通して自治体が把握できれば、バスの本数を増やしたり、送迎バスを検討する、など地域のより良い仕組みづくりのために役立てることもできます。

このような継続的な取り組みにより、利用者が住みやすく、心地よい地域社会を作ることが可能となるのです。
これを実現し、利用者に実感していただくためのツールが「地域ウォレット」です。

 

●地域ウォレット

地域ウォレットは決済手段だけでなく、生活に使えるさまざまなサービスが一つに入ったスマートフォンアプリケーションです。

ウォレットアプリというと支払い機能が統合されているイメージを持たれますが、会津若松市で展開している地域ウォレット「会津財布」には支払い機能だけでなく、コロナワクチン接種記録や電子レシート、フードデリバリーサービスなどが入っています。また、地域の飲食店で特別メニューが食べられる期間限定のデジタルクーポンなどが登場したりもします。私たちが持つ財布もお金が入っている他に、クレジットカードもあれば運転免許証、保険証、診察券、ポイントカード、レシートなどが入っていますよね。地域ウォレットはお財布のように、生活や旅行を便利、安心に、楽しくさせるデジタルツールなのです。

●地域の願いを叶える道具

地域ウォレットは自治体や地域の企業、団体が実現したいことを乗せられるプラットフォームでもあります。例として会津若松地域の地域ウォレットである「会津財布」で、どんなサービスを提供しているか少しご紹介します。会津財布の決済手段の一つ「J-Coin Pay」はみずほ銀行が提供するサービスでみずほ銀行の他、地域の金融機関の口座とつないで決済することができます。 (今後、地域通貨も登場しますが、それは別の機会にお話しします 。)また、レシートをスマートフォンで受取り、管理できる「スマートレシート」(提供:東芝テック社)、新型コロナウィルスワクチン接種記録確認サービス(提供:会津若松でスマートシティを実現する団体(一社)スーパーシティAiCTコンソーシアム)、フードデリバリサービス「届けおみせごはん」(提供:会津若松市と福島大学)といった様々な事業者が提供するサービスが一つの地域ウォレットから利用できるようになっています。

このように、地域で役立つサービスであれば、地域ウォレット上にサービスを乗せることができるため、市民にサービスを届けたい自治体、地域経済を盛り上げたい団体、生活に便利なサービスを提供したい民間企業が、垣根を越えて一つのプラットフォーム上でサービスを提供することができます。

また、「会津財布」のように、地域ウォレットは自治体単位ではなく、文化圏・経済圏で一つのアプリケーションで利用できるコンセプトです。人は行政区に縛られて生活していませんし、自治体ごとにアプリケーションを準備することは自治体のコスト増にもなりかねません。そのため、地域ウォレット内の一つひとつの「ミニアプリ」と呼ばれるサービス単位に、自治体・団体・民間事業者がサービスを載せられる仕組みとすることで、それぞれの主体が低コストでサービス提供を実現することができます。また、官民のサービスが垣根なく一つのウォレット上で提供されることで、利用者にとっては利便性が高くります。

●事業者にも嬉しい仕組み「ID決済プラットフォーム」

前述したように地域ウォレットは自治体や団体など公的主体含め事業者が実現したいサービスを載せられるメリットがあります。
しかし、地域ウォレット導入のメリットはそれだけではありません。地域ウォレット上のサービスやデータは上の図のように「ID決済プラットフォーム」という仕組みが管理しており、地域や人に応じて表示するサービスを変化させることができます。また、利用者にサービスを提供するだけでなく、利用者のデータを個人が特定できない状態にしたうえで、事業者へ利用データを分析してサービスの向上に役立てられるように還元したり、異なるサービス間で利用者本人の意思に基づいてデータを連携することができます。そのため、事業者等がウォレット上で提供したサービスの効果検証結果を事業者自身が受け取ることができるようになり、利用者の状況や行動から必要なサービスをタイムリーに提供できるようにもなります。例えば冒頭で説明した病院予約情報や診断状況をタクシー会社へ連携ができれば冒頭で説明した、「病院の予約時に送迎の希望を申告すればタクシーがしかるべき時間に迎えに来てくれる」といったことも可能になるのです。

これまで会津財布で実際に行った取り組みとしては、「極上のはしご酒」や「届けおみせごはん」といったサービスがあります。
これらの取り組みはコロナ禍で、観光客や飲食店利用者が減少している状況において、利用状況やサービス利用の傾向、利用者の関心や、新型コロナなど外部環境から受ける影響などを可視化してきました。

 分析例:

 

今まで紙媒体などアナログでの施策では「イベント期間お客さんがいつもより少し増えた」ということはわかっても、利用状況等を細かく、タイムリーに補足することができませんでした。
しかし、これらの取り組みのように利用状況や外部状況をデジタル化することで企画の成果や消費者の関心を可視化することが可能になります。さらに、このデータを基にして行政や民間サービスの改善につなげることができるようになるのです。

●まとめ

地域ウォレットは官民が相乗りしてサービスを提供できる地域サービスのプラットフォームになっており、相乗りがシナジーを生み、利用者にとっては「人」中心で、より便利な体験を提供します。また、ID決済プラットフォームが地域ウォレットを地域や人ごとに使いやすくするデータの管理を適切に行い、自治体や企業とシステムやデータをつなぐことで、施策や事業を活性化し、新たなサービスの創出を支援します。これらの仕組みを使って、人・企業・地域が連動し、エコシステムとして地域の持続性、つまりは地域の豊かさを生み出したいと考えています。

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