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スマートシティのカギとなるID決済 ~アクションにつながる決済~

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これまでの一般的なキャッシュレス普及施策はポイント還元や、クーポンなど、「お得」をメインに進められてきました。スマートシティの取り組みではこれまでとは少し異なった視点でのキャッシュレス化が進められています。 そのキーワードは「ID決済」と「行動変容」。今回はその取り組みをご紹介します。

●キャッシュレスをどれだけ使っていますか?

いま、テレビCMやネット記事など、至るところで聞こえる「キャッシュレス決済」。みなさんはどれだけ使っていますか?クレジットカードやスマートフォンでのQRコード決済(※1)、交通系ICカードでのタッチ決済など、さまざまな手段があります。特定の決済手段を使う方、利用場所やポイントなどのインセンティブを目的に使い分けたりする方もいるでしょう。一方で、なんとなくやはり現金、という方も実際には多くいます。

国も2025年にはキャッシュレス比率を40%に、将来的には80%を目指すと公表しています。これだけ決済手段が多様化してもなお、なぜ「使わない」のでしょう?ひょっとしたら私たちは、今の“キャッシュレス”に対する考え方を変えなければならないかもしれません。

例えば、スマートシティにおいて取り組む分野には「モビリティ」「エネルギー」「行政」「医療/福祉」「地域活性化」など多岐に渡っています。その中でも共通しているテーマの一つに「決済(支払う)」があります。どの分野においても、支払う、または受け取るといった行為が付随しています。ここに、キャッシュレス普及のカギの一つが隠されています。

私たちは単に「支払う」という行為自体には特別な喜びや、目的を持っているわけではありません。欲しかった服、食べたかった料理、目的の場所へ行くための交通機関、得たいものを受け取った対価として支払いを行っているにすぎないのです。そのため、キャッシュレスを促進するために「支払う」にフォーカスすると、ポイントやキャッシュバックなどの金銭的メリットでどれだけ使ってもらえるか?という話になってしまいます。
(※1)QRコードはデンソーウェーブの登録商標です。

●キャッシュレス化の鍵はここにあった!

「支払う」という行為をポイントやキャッシュバックなどの金銭的メリットだけで考えるのではなく、その前後のアクションをシームレスにつなぎ、そのシームレスな体験を得るためにキャシュレスが必要なのであれば、人はキャッシュレスを選択するのではないでしょうか。欲しいものが見つかり、お店や施設へ行きたくなり、購入や体験と共にさりげなく支払いが完了。その後も、次の移動場所と交通手段がつながり、医療機関などであればその後の手続きが自動で行われたらどうでしょう。便利や楽しさ、安心な体験という気持ちから行動に移す「内発的動機」のインセンティブデザインが人を動かすのではないでしょうか。簡単に言ってしまえば、キャッシュレスの鍵は「人のキモチを動かすこと」なのです。

私たちTISは、スマートシティの取り組みの中で、こうした人のキモチを動かす「ID決済」を展開しています。「ID決済」に重要なのは「支払い」と一緒に流れる“情報”です。この情報を活用して、人の動機づくりを通じて行動や購買を促すナッジ(nudge)手法により行動変容を促します。

●ID決済~「誰が」「何を」が世の中を便利にする~

決済と共に重要になる情報、社会が便利になるために必要な情報、それはID情報とPOS情報です。従来の決済では、後払い式のクレジットカードにおいては審査、与信という形で「支払い能力のある人」かどうかは判断が可能ですが、「どんな人か」は分かりません。また、プリペイド(前払い)式、デビット(即時払い)式であれば、支払うための残高があるかどうかが重要になり、利用シーンにおいてのパーソナリティを知る事はできません。また、決済は“支払いの合計金額”に対して行われるため、何を買ったのかまではわからないという課題があります。そこで、「ID決済」では、その人がどんな人であるかのID情報と、何を買ったのかのPOS情報を活用して決済をおこないます。

 

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 -「誰が」はその人に「嬉しい」をつくる

ID情報には、氏名の他、年齢、性別、住所、健康状態、子供が何人などの情報があり、利用者自身がさまざまなシーンで活用することができます。例えば、妊婦中、高齢で足が悪い、車いすを利用しているなどの情報が事前にID情報として記録されていれば、病院での支払いが自動で行われるだけでなく、乗降しやすいハイルーフタクシーが迎えに来てくれます。また、自宅の住所を運転手に伝える必要がなく、タクシーのナビゲーションシステムに住所が設定され、快適に送り届けてくれます。もちろんタクシーの支払いは自動精算です。

 

 -「何を」は「次へのつながり」をつくる

何を買ったのかの情報についても見てみましょう。過去に購入した履歴から、ティッシュや洗剤などであれば、購入頻度や一般的な消費サイクルから自動補充時期を計算し、買い物リスト候補を適切なタイミングで受け取ることもできます。既に購入した野菜や調味料の内容・量から、料理メニューの提案やレシピを受け取ることもできます。また、地産品を多く購入すると自治体や商業団体などからクーポンや返礼品がもらえるなどのサービスを通し、地域活性化も可能です。また、セルフメディケーション税制というものがあります。これは薬局などで購入した医薬品を自身の治療に利用したした場合、こうしたセルフメディケーション品のレシートなどの証憑を集めて提出することで税控除が受けられものです。これがもしスマートフォンをワンタップするだけで申請が完了したら便利だと思いませんか?

●最新の動き

TISは、2019年に会津若松市に拠点を設け、この「ID決済」に取り組んでいます。2021年3月にはID決済を具現化する地域ウォレット「会津財布」上でスマートレシート(※2)のサービスを開始しています。利用者のレシートを電子化することで、「誰が」、「いつ」、「何を」、「いくつ」買ったかがわかる購買情報を利用者自身が活用できるようになります。会津若松市においては早速、地域の商業団体と共に、この会津財布上のレシート機能を使って、市民が楽しくお店を巡れる企画を進めています。また、スマートシティの都市OSと呼ばれる共通プラットフォームと、私たちのID決済プラットフォームが接続することで、住民IDと決済を連動させる計画が進んでおり、先述した手続きや交通、医療など分野間をシームレスにつないだ社会の実現がすぐそこまで来ています。
(※2)スマートレシートは東芝テック株式会社が開発した電子レシートサービスです

<関連ニュースリリース>
TISと東芝データ、スーパーシティ構想の実現に向け地域ウォレット「会津財布」と「スマートレシート®」を連携

●まとめ:ID決済

真のキャッシュレスの普及には、「支払う」をいかに生活の中に溶け込ませ“決済を意識しない決済”を目指すことです。そしてその前後の行動をデザインすることが重要になります。「誰が」、「何を」が見える決済。決済を次の良いアクションへつなげる仕組みがID決済です。

地域のために、その地域で過ごす人のために、情報をつなぎ、企業も行政もつながることで、一人ひとりの暮らしが良くなります。

一人ひとり、少しずつが重なることで、未来は劇的に変わっていくと信じています。

 

<関連資料はコチラ>
日経ムック「まるわかり!行政のデジタル化デジタル庁からスマートシティ、スーパーシティまで」にTISが寄稿しました。「決済をデジタル化の入り口に楽しく便利な街づくりに貢献したい」をダウンロードいただけます。
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