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安全に「決済基盤」を構築するには? 最新インフラ基盤の実力を探る

「フィンテック」という言葉を持ち出すまでもなく、金融はデシタルテクノロジーによって大きく変革しつづけている分野だ。多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む現在、その変革のスピードはさらに加速し、多くの企業が新しい金融サービスの開発にしのぎを削っている。だからこそ重要になるのが、それを支えるインフラ基盤だ。ここでは、止まることの許されない金融サービスの開発・運用支える高セキュリティ・高可用性、そして低コストで利用できるインフラ基盤について解説する。

止まることの許されないインフラ基盤の実力

激化する金融サービス開発競争、それを支えるITインフラに求められる要件は?

2022年、預金取扱金融機関に限定されていた全銀システムへの接続が資金移動業者にも開放され、銀行間の少額移動を無料で実現するサービス「ことら」がスタートした。また、従来は現金と金融機関口座だけに認められていた給与の受取が資金移動業者にも認められるなど、社会のデジタル化、キャッシュレス化はますます加速している。

 それに伴って既存の金融機関、新しく金融サービスに参入する企業、さらに自社事業に金融サービスを組み込みたい事業会社などによるサービス開発競争が激化している。現在は、これらの企業が、他社より少しでも早く、できるだけ低コストで新しい金融サービスを市場に投入しようとしのぎを削っている状態だ。

 ただし、金融サービスである以上、厳格なセキュリティ対策、高い耐障害性、高可用性が求められるのはいうまでもない。もちろん、さまざまな規制への対応も必要となる。

 こうした相反するニーズを満たすために、サービスの開発・提供インフラとして注目されているのがクラウドだ。もちろん、クラウドだけですべてのニーズを満たせるわけではないが、既存のオンプレミスのシステムとクラウドを組み合わせるハイブリッドクラウド、複数のクラウドを適材適所で組み合わせるマルチクラウド環境でなければ、現在の複雑な状況に対応できないのも事実だろう。

 もちろん、金融サービスを提供する以上、それを支えるインフラに求められる要件は厳しい。停止することは許されず、PCI DSSなどのさまざまな金融関連の規制に対応できて、しかも低コストで利用できることが求められる。さらに運用・保守の手間が少なく、企業が持てるリソースを可能な限りサービス開発に注力できるクラウドでなければ、厳しい競争を勝ち抜くことは困難だろう。

 では、企業はそうしたクラウドをどうやって手に入れればよいのだろうか。

金融に強いTISが提供するユニークなPaaSサービス

 金融サービス、中でも決済関連のサービス開発・運用に必要となるさまざまな仕組みをパッケージ化し、PaaSを含むプラットフォームとして提供しているのがTISの「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」だ。同社のペイメントプラットフォームサービス部/セクションチーフ 土本 政彦 氏は、その概要を次のように説明する。

TIS土本の顔写真

TIS DXビジネスユニット ペイメントサービスユニット
ペイメントプラットフォームサービス部/セクションチーフ 土本 政彦 氏

「たとえば、自社独自のクレジットカードやデビットカード、プリペイドカードなどを発行したい場合、カードの発行・運営に必要なサービスをワンストップで提供します。その他にも、QR決済やスマートフォンによるタッチ決済、デジタルマネー払い、各種チケットのデジタル化など、長年、さまざまな金融サービスを開発・運用してきた当社の仕組み・ノウハウを、PaaSを含むプラットフォームサービスとして提供しています」(土本氏)

 PAYCIERGEの特長の1つが、こうした決済サービスを支えるインフラそのものも提供していることだ。

「PAYCIERGEの発展と共に、そのミッションクリティカルな業務を支える基盤サービスを提供しています。ラインナップはバイモーダルITの考え方に基づき、システムの特性に合わせて基盤を使い分け/共存できるような品揃えをしています。安定性重視のSoR(モード1)基盤、柔軟性重視のSoE(モード2)基盤。これに加えて日本では当社しか提供していない堅牢性重視の高可用性基盤(NonStop Server基盤)。これら特性の異なる3つの基盤でトータルに提案、お客様の課題を解決するのがTISの基盤サービスのコンセプトです」

基盤ラインナップ

基盤ラインナップについて

その代表が「NonStop Server基盤サービス」である。これは、ハードウェア、OS(NonStop OS)、データベース(NonStop SQL)をすべて一体化した独自設計のNonStop Serverを、運用管理を含めた従量制のPaaSとして提供するサービスだ。同社 ペイメントプラットフォームサービス部/エキスパート 武藤 勝 氏は次のように説明する。

TIS武藤の顔写真

TIS DXビジネスユニット ペイメントサービスユニット 
ペイメントプラットフォームサービス部/エキスパート 武藤 勝 氏

「NonStop ServerはHPEが開発・提供しているサーバで、FT(注1)アーキテクチャというHPEサーバの中で最も可用性の高いサーバです。当社では、1983年にTANDEM(現NonStop Server)をクレジットカードのオーソリ領域でオンプレミスとして導入しました」(武藤氏)

 ここで得られた知見・ノウハウを生かして1990年より共用利用プラットフォームでの運用を開始し、現在はサービス型に発展させた『NonStop Server基盤サービス』として提供しているのだ。  武藤氏はNonStop Server基盤サービスについて「データセンターのファシリティからPCI DSS対応を含むインフラ保守運用や資産管理などをまとめて、NonStop Serverを従量制でご利用いただける日本で唯一のサービス」と胸を張る。

注1:Fault Tolerance。ハードウェア障害が発生しても代替モジュールに自動で切り替わってサービス全体を止めない可用性の仕組み。

 なお、NonStop Serverは世界のATMトランザクションの70%、クレジットカードトランザクションの2/3を処理しているといわれるほど実績のあるサーバである。

 PAYCIERGEにおいても、クレジットカードやデビッドカード、プリペイドカードのプロセッシングサービスは「NonStop Server基盤サービス」を利用して提供されている。

NonStop Serverについて

NonStop Serverについて

高可用性サーバ「NonStop Server」を従量制で利用できるメリットは?

金融分野では圧倒的な信頼性と実績を持つNonStop Serverだが、オンプレミスで導入するとそれなりのコストがかかる。また、独自の仕様のため導入・運用のハードルも高い。そのハードルを大幅に下げるのが「NonStop Server基盤サービス」だ。

「弊社にはNonStop Serverの運用経験が30年以上あります。その知見・ノウハウを生かしながら、お客さまが資産を持つことなくNonStop Serverを活用できます」(武藤氏)

 大きいメリットがコストだ。同社 ペイメントプラットフォームサービス部/エキスパート 二出川 弘 氏は、大きく2つのコストメリットがあると次のように説明する。

TIS二出川の顔写真

TIS DXビジネスユニット ペイメントサービスユニット
ペイメントプラットフォームサービス部/エキスパート 二出川 弘 氏

「オンプレミスの場合、10年ごとに数億という費用がかかります。一方、『NonStop Server基盤サービス』は、毎年、一定の費用が階段上に積み重なるだけなので予算を立てやすいメリットがあります。さらにトータルコストも抑えられます。NonStop Serverは特殊なOSで、その運用・管理には専門のエンジニアが必要です。それにかかるコストも考慮すると、NonStop Server基盤サービスは非常に割安だと考えています」(二出川氏)

 さらに、CAFISやCARDNET(注2)、Visa、Mastercardなどの決済ネットワークとの通信制御の仕組みが提供されているのも大きいメリットだ。土本氏は、その意義を次のように説明する。

「新たに決済サービスを導入したい企業は、決済ネットワークとの接続部分を開発する必要はなく、よりビジネスに近いアプリケーションの開発に注力できます。また、たとえば海外企業が日本に進出して決済サービスを提供する場合も、日本独自の決済基盤をすぐに活用することが可能です」(土本氏)

注2:「CAFIS」はNTTデータが提供する日本最大級のキャッシュレス決済総合プラットフォーム。「CARDNET」はJCBグループの日本カードネットワークが運営するクレジットカード会社と加盟店を結ぶクレジット決済ネットワーク。

サーバーのユースケース

「NonStop Server基盤サービス」を利用して構築されたデビッド/プリペイドプロセッシングシステムの例。
CAFISやCARDNET、Visaなどのカード決済ネットワークとの接続の仕組みも提供されている

 さらに、PAYCIERGEが提供する基盤サービストータルの視点で、同社 ペイメントプラットフォームサービス部/エキスパート 二出川 弘 氏は、次のように説明する。

「AWSトップエンジニア(注3)として多くのクラウド関連の案件に携わる中で、AWSのみでシステム全ての機能を完結させるのではなく、オンプレミスとのハイブリッド構成も多く使われています。それは、お客様のデータ保持のポリシーに起因することもありますし、オンプレミスからの安全な移行を重視した結果ということもあります。そういった環境の中で、SoE機能としてのAWS、SoR機能としてのオンプレミスに加えて、NonStop Serverというフォールトトレラントな機能も選択肢として持ち得ることは、非常に魅力的なのではないかとTISとしては考えています」(二出川氏)

注3:Japan AWS Top Engineers

インフラの運用・管理は任せ、サービス開発・運用にリソースを注力

 TISはもともと金融サービスに強いベンダーとして知られる。特にデビッドカード市場においては80%、クレジットカード市場においては50%のシェアを持ち(注4)、土本氏は「国内のデビッドカードやクレジットカード市場を支えているのは当社であるという自負があります」と述べる。

注4:クレジットカードの基幹システム開発では国内市場シェア:50%
ブランドデビットカードのサービス提供/システム開発では国内市場シェア:80%

 そして、その市場を支えているインフラが「NonStop Server基盤サービス」だ(基幹システムはSoR基盤、オーソリシステムはNonStop Server基盤で構成)。それが、従量制のPaaSサービスとして提供されている意義は大きい。

 ただし、基盤サービスはあくまでインフラであり、それだけでさまざまなニーズを満たすことは難しい。そこで活用したいのが、PAYCIEGEで提供されているさまざまなサービスである。

「『NonStop Server基盤サービス』の最大の特長は堅牢性です。市場を止めない、混乱させない、守るという意味で『NonStop Server基盤サービス』を活用し、それとPAYCIEGEのさまざまなサービスを掛け合わせることで、お客さまのさまざまなご要望に応えることができると考えています」(武藤氏)

「『NonStop Server基盤サービス』だけでなく、当社が得意とするシステムインテグレーション、PAYCIEGEの各種サービスを組み合わせて、お客さまに対してトータルで最適な基盤サービスをご提供したいと考えています」(二出川氏)

 冒頭に述べたように、新旧企業による金融サービスの開発競争はますます激しくなっている。ユーザーが求めるサービスを、いかに適切なタイミングで市場に投入するかが、こうした企業の最大の関心事だろう。つまり、サービスを開発・運用するインフラには、できるだけリソースを割きたくないのが本音であるはずだ。

 TISのPAYCIEGEと3つの基盤サービス(SoR基盤、SoE基盤、NonStop Server基盤)は、まさにこうした企業の本音にこたえられるサービスだ。少しでも関心を持ったら、ぜひ問い合わせてもらいたい。

※本コラムは2023年5月8日にFinTech Jornalで掲載された内容を転載しています。

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