2019年以降、PayPayやLINE Payなどによる大規模なポイント還元キャンペーンによって電子決済、スマート決済の普及に拍車がかかっています。 PayPayやLINE Payは、どちらもスマホを使ったQRコードによる決済の話題が目立っていますが、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを使った非接触型の決済システムも徐々に普及し始めています。最近ではコンビニや駅の改札などで、スマートウォッチを利用する人を見かける機会も増えてきました。 今回は、今後注目される勢力の一つになりつつあるウェアラブル決済についてお話していきます。
●腕時計タイプの端末が多い理由とは
ウェアラブル端末には、眼鏡や衣類などもありますが、ウェアラブル決済はその性質上、腕時計タイプの端末が多いです。その大きな理由の一つにウェアラブル決済は、「後述する至近距離の無線通信によって電子決済を行うため」、「腕時計タイプのデバイスと相性が良いから」、という事があげられます。ある程度離れたところからの無線通信も可能はありますが、離れたところで作動してしまうと、意図せず決済されてしまう可能性が出てきます。そのため、無線通信といっても軽く触れる程度の距離で決済ができる時計タイプのウェアラブル端末が多く誕生しています。
●FeliCaとNFC
日本のウェアラブル決済で多く使われている非接触型通信には、Suicaで採用されている「FeliCa(フェリカ)」と呼ばれるICカード技術が利用されています。 FeliCaは、Suicaの他に楽天Edy、nanaco、iDなどの電子決済で多く利用されており、カードだけでなく、スマホの電子決済(おサイフケータイ)にも対応しています。 FeliCaは「NFC」と呼ばれる通信方式の一つであり、NFCにはFeliCaの他に、「NFC Pay」(NFC TypeA/B)と呼ばれるICカード技術もあります。 日本国内ではSuicaを始めとするFeliCaが主流ですが、海外ではNFC Payを利用したクレジットカードのコンタクトレスタッチ(非接触決済)の普及が進んでいます。日本でもまだ一部ですが、セブンイレブンやローソン、イオンなどクレジットカードをかざすだけで決済ができる場所もあります。
●日本で利用されているウェアラブル決済
ここまでウェアラブル決済の概要について説明してきました。ここからは日本で利用されているウェアラブル決済について、具体例を挙げながら解説します。 上述した通り、日本のウェアラブル決済は現在、非接触型のFeliCaが主流です。そのFeliCaのうち、モバイル決済に対応しているSuica(モバイルSuica)と、おサイフケータイに対応している楽天Edy、iDなどの決済サービスが利用されています。これら以外のサービスは、あまり利用されていないのが現状です。
Apple WatchとSuica、QUICPay
ウェアラブル端末のうち最も身近で、街中でもよく見かけるのがApple Watchです。Apple WatchはiPhoneと同じくApple Payに対応しており、Suica、iD、QUICPayが利用できます。 QUICPay はJCBとイオングループ企業が共同開発した決済サービスです。全国展開するコンビニや飲食チェーン店、スーパー、家電量販店など、Suicaと同様に幅広く対応していて、かなり身近なサービスとなりました。
「Garmin(ガーミン)」とSuica
時計や自動車機器、スポーツ機器などのメーカーである「Garmin」は腕時計タイプのウェアラブル端末で、Suicaに対応しています。デザインはスタイリッシュで、スーツなどにも合わせやすい印象を受けます。
セイコー「BRIGHTZ(ブライツ)」×「wena wrist(ウェナリスト)」
腕時計のバンド部分にスマートウォッチの機能を搭載した「wena wrist」と、時計メーカー「セイコー」のコラボレーション製品です。スマートウォッチ機能はバンド部分に集約されているため、外見は普通の腕時計にしか見えません。対応している電子決済は楽天Edy、ID、QUICPay となっており、Suicaには未対応です。
スターバックス タッチ ドリップ
腕時計だけでなく、キーホルダーをかたどったウェアラブル端末もあります。 コーヒーチェーンの「スターバックス」とアパレルブランドの「BEAMS」がコラボした「スターバックス タッチ ドリップ」にはFeliCaのICチップが内蔵されており、Suicaのようにかざすだけで決済ができます。
●海外のウェアラブル決済にはどんなものがある?
海外ではNFC Payと呼ばれる決済システムが普及しています。NFC PayはVisa、Mastercard、JCB、アメックス、ダイナースクラブなどのクレジットカードが対応しているため、海外では、クレジットカードのコンタクトレスタッチが多く利用されています。
香港発「Tappy(タッピー)」
香港の企業である「Tappy Technologies」が提供するウェアラブル端末「Tappy」には指紋認証が組み込まれており、決済時に認証が必要です。 Tappy Technologiesの最高経営責任者(CEO)であるウェーン・リョン氏は、世界のモバイル関連企業が参加するイベント「Mobile World Congress」にて講演し、「消費者が時計を購入したくなる要素は2つあり、1つは一流のデザイン、もう1つは機能だ」と説明していることから、デザイン面にも力を入れていることが分かります。
リングタイプ「McLEAR(マクレア)」
愛知県名古屋市に本社がある「株式会社MTG」が、イギリスの「McLEAR Ltd.」をグループ会社とし、スタートさせたのが「McLEAR」です。こちらは指環(リング)タイプのウェアラブル端末となっており、防水かつ充電は不要となっています。日本でも2020年をめどに提供開始予定です。
中国発「Nubia α(ヌビア アルファ)」とQRコード決済
中国のスマホメーカー「Nudia(ヌビア)」の最新モデル「Nubia α」はまさに腕時計タイプのスマートフォンとも呼べる形状をしており、大きなディスプレイが搭載されていることが特徴的です。 日本国内では未対応の「eSIM機能」が搭載されており、海外ではNubia α一つで電話やメッセージの送受信も可能です。写真撮影機能も搭載されています。 Nubia αは、Alipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ)などのスマホ決済(QRコード決済)に対応しています。
●まとめ
ここまでウェアラブル決済の基本的な仕組みと国内外の事例を紹介してきました。 日本でも、徐々にですがスマートウォッチなどで決済する人を見かけるようになりましたね。 海外ではクレジットカードのコンタクトレスタッチ決済が主流で、ウェアラブル端末もそれに合わせた仕様になっており、NFC Payがあまり普及していない日本では機能が十分に発揮できない状況となっています。 今後日本でもNFC Payが普及すれば、上述したMcLEARやTappyなどが活躍できるので、ウェアラブル端末の利用幅は更に広がることが予想されます。 NFC Payは現在、日本国内でも徐々に利用できるところは増えており、今後に期待したいところです。