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デジタル給与の解禁からもうすぐ1年!仕組みやメリット、導入手順を厚生労働省などの情報を基に解説

デジタル給与の解禁からもうすぐ1年!仕組みやメリット、導入手順を厚生労働省などの情報を基に解説

キャッシュレス決済のニーズは年々高まりを見せ、日本国内の2022年におけるキャッシュレス決済比率は36.0%と過去最高を記録。こうした状況に合わせて、2023年4月、厚生労働省は企業の「デジタル給与(給与デジタル払い)」を解禁しました。約1年が経とうとしている現在、デジタル給与の普及状況はどうなっているのでしょうか。今回は、自社での導入を検討している企業のご担当者向けに、厚生労働省などの情報をもとにデジタル給与の仕組みやメリット、導入方法、課題について解説します。

▼参考資料
経済産業省『2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました』

1.デジタル給与(給与デジタル払い)とは

まずは、デジタル給与の基本的な仕組みから見ていきましょう。

デジタル給与の仕組み

「デジタル給与(給与デジタル払い)」とは、従業員の給与をスマホ決済アプリやプリペイドカード、電子マネーなどのデジタルマネーで支払う仕組みです。
キャッシュレス決済のニーズ上昇に伴い、2022年11月に「給与デジタル払いに関する労働基準法の改正省令」が厚生労働省から公布、2023年4月に施行され、解禁に至りました。

デジタル給与の仕組み

出典:TIS『ついに日本でも解禁!給与デジタルマネー払いとは?』


デジタルマネー払いゲートウェイサービスページ

「資金移動業者」とは

デジタル給与を導入した場合、給与計算は既存の制度と同様ですが、主に「資金移動業者」を介して給与を支払うことになります。
「資金移動業者」とは、銀行などの金融機関以外で為替取引を業として営む者を指します。具体的には、「〇〇ペイ」と呼ばれるキャッシュレス決済サービスの事業者などです。 資金移動業者の一覧はこちらで確認できます。
資金移動業者として事業を行うためには、「資金決済に関する法律」に基づいて申請を行い、金融庁への登録を受ける必要があります。 無登録で資金移動業(為替取引)を行うと、銀行法第4条1項違反として罰則を受けます。
さらに資金移動業者がデジタル給与への対応を希望する場合には、厚生労働省に指定登録の申請を行います。

▼参考資料
厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払について』
金融庁『資金移動業者登録一覧』
厚生労働省『賃金のデジタル払いが可能になります!』

2.デジタル給与解禁の経緯と状況

デジタル給与解禁の経緯と状況

では、デジタル給与が解禁された経緯について説明します。

デジタル給与を推進する厚生労働省の狙いとは

厚生労働省がデジタル給与を推進する理由の一つとして、「キャッシュレス化」が政府の成長戦略の一つにあることが挙げられます。経済産業省は、キャッシュレスの推進は、消費者に利便性をもたらし、事業者の生産性向上(データ活用など)につながるとしています。

▼参考資料
首相官邸『成長戦略フォローアップ』
経済産業省『キャッシュレスに関する説明資料等』

厚生労働省による省令改正

これまで労働者の賃金は「通貨(紙幣および貨幣)」による支払いが原則(労働基準法第24条)であり、銀行口座などで受け取れるのは例外的な措置でした(労働基準法施行規則第7条の2)。
2023年4月施行の「給与デジタル払いに関する労働基準法の改正省令」で給与デジタル払いが法律上可能になり、対応を希望する資金移動業者からの指定申請も受付開始となっています。
以降、厚生労働大臣から指定された指定資金移動業者が取り扱うデジタルマネーで給与受取ができるようになっています。

▼関連記事
デジタル給与の対応に、人事給与システムが備えるべきこととは?

デジタル給与の開始時期は未定 ※2024年1月現在

デジタル給与の制度は2023年4月に解禁されました。しかし、2024年1月現在では導入された事例はありません。PayPayなどの資金移動業者は、厚生労働省に対して2023年4月に指定申請を行っていますが、厚生労働省から指定登録が認められた資金移動業者がまだなく、具体的な開始時期は明確にはなっていません。
しかし、審査が進んでいる段階ですので、利用開始のニュースが近い将来聞けるのではないでしょうか。

デジタル給与の今後の展望

デジタル給与払いは、多様な働き方が増えている中、今後徐々に広がっていくものと考えられます。 キャッシュレス決済サービスの需要増や、若年層が選好していること、政府のキャッシュレス化を推進する動きもあり、少しずつ導入する企業は増えていくでしょう。 また大和総研の考察では、今後は資金移動業者によって、デジタル給与に比較的好意的である若年層の囲い込みが進むのではないかとされています。

▼参考資料
大和総研『デジタル給与解禁後の展望と金融ビジネスへの示唆』

3.デジタル給与払いを導入するメリット

デジタル給与払いを導入するメリット

次に、企業側がデジタル給与を導入するメリットについて解説します。

送金手数料が安い

デジタルマネーの送金手数料は銀行振り込みと比べ、安価です。その特性を活かして、月に複数回の給与支払いが行いやすくなるなど、柔軟な給与支払いが検討できるでしょう。

従業員の希望に沿った給与支払いが可能になる

従業員の希望に合わせた、より柔軟な給与の支払いが可能になります。たとえば、手取り給与40万円のうち、20万円を銀行口座へ振り込み、残りの20万円をデジタル給与として受け取ることも可能です。また、普段使いしているデジタルマネーへ支払うことで、従業員が都度チャージを行う手間を省けます。

企業のイメージアップにつながる

早期にデジタル給与を導入することで、「働き方改革や従業員満足に前向きに取り組んでいる企業」というイメージを社内外に示せます。

▼関連記事
【基本解説】「給与のデジタル払い」解禁、早期対応が企業のイメージアップになるワケ

4.デジタル給与を利用する従業員側のメリット

続いて、デジタル給与導入による従業員側のメリットについても見てみましょう。

利便性向上につながる

デジタル給与が導入されれば、従業員は給与のうち指定した金額をデジタルマネー口座で直接受け取れます。ATMに足を運んだり、銀行口座からデジタルマネーにお金をチャージしたりする手間が省け、利便性が格段に上がります。

ポイント還元など特典を受けられる

連携できるデジタルマネーの中には、ポイント還元やキャッシュバックなどの特典がつくものもあり、銀行振り込みよりお得になる可能性があります。

ライフスタイルに合わせた給与受取ができる

デジタル給与は、銀行口座振込と併用できます。給与の一部をデジタルマネーで受け取ることで、お金の管理がしやすくなる等、ライフスタイルに合わせて活用できるでしょう。

▼関連記事
デジタル給与に対応するメリットと必要な準備について解説

5.デジタル給与の課題

デジタル給与の課題

デジタル給与には、メリットが多い反面、課題も存在します。事前に知っておきたい課題や懸念点、デメリットについて見ていきましょう。

企業側の課題

■法令要件への対応が必要

企業がデジタル給与を導入する際には、労使協定の締結、従業員への説明と同意取得が、法令要件とされています。

■人事給与システムの改修が必要

デジタル給与での支払いを導入するために、システムの見直しなどの対応も必須です。通常、人事給与システムの改修対応が必要になり、コストがかかります。

■セキュリティ対策

資金移動業者と社員の個人情報を連携する必要があり、個人情報の管理やハッキング対策が求められます。 また従業員と従業員のデジタルマネーのアカウント情報の紐づけを確実に行い、正当性を担保することが課題となります。TISの「デジタルマネー払いゲートウェイサービス」のように、既存のシステムへの影響を最小限に留めて導入できるシステムもあるので、まずは情報収集からはじめてみることをおすすめします。

企業の必要な準備については、関連記事『デジタル給与に対応するメリットと必要な準備について解説』で詳しく解説しています。

従業員側の課題

■希望の資金移動業者が利用できないことがある

勤務先企業がデジタル給与を導入し、希望する資金移動業者を選定していないと、デジタル給与を希望しても利用できません。

■トラブルに注意する必要がある

給与をデジタルマネーで受け取ることで、キャッシュレス決済を利用する頻度は増えると考えられます。そのため、詐欺や不正出金などの被害に遭わないよう注意しましょう。

■口座の上限額は100万円以下に設定と決まっている

デジタル給与では、口座の上限額が100万円までと定められています。上限額を上回った場合は、あらかじめ指定した銀行口座に自動的に出金されます。

▼参考資料
資金移動業者の口座への賃金支払について


6.デジタル給与を導入する手順

企業でデジタル給与を導入する場合、どのような要件を満たす対応が必要になるのでしょうか。4つの手順に分けて見ていきます。

(1)資金移動業者の選定・システム導入

指定登録を受けた資金移動業者の中から、自社に合った業者を選定します。 そのうえでデジタル給与を行うためのシステムの見直しが必要です。もちろん、十分なセキュリティ対策も検討しましょう。

(2)労使協定を締結する

銀行口座への振り込みと同じく、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは過半数の労働者を代表する者との労使協定を締結します。

(3)就業規則の改定

賃金に関わる部分の就業規則の改定も必要です。給与規程(賃金規程)がある場合は、そちらも内容を見直しましょう。

(4)従業員への説明と同意を得ること

労働基準法において給与支払いは原則現金とされているため、デジタル給与の留意事項や対応について、企業から従業員に対して周知する必要があります。説明等を通して従業員から理解を得て、給与デジタルマネー払いを希望する従業員から同意書(電磁的記録も可)を提出してもらうなど従業員からの同意取得を行います。

▼デジタル給与の対応に必要な準備については、こちらの記事でも解説しています。
デジタル給与に対応するメリットと必要な準備について解説

▼参考資料
厚生労働省『資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について』
厚生労働省『賃金のデジタル払いが可能になります!』

7.導入時は既存システムとの連携を重視して検討を

本記事では、デジタル給与の基本的な仕組みやメリット・デメリット、導入の手順について解説しました。導入時には、資金移動業者の選定のみならず、システムの見直しやそれに伴う費用、法的な要件を満たすための社内調整が発生します。 なるべくかかる工数を削減するためには、TISのデジタルマネー払いゲートウェイサービスのような既存システムへの影響を極力抑え、複数のキャッシュレス決済に対応したサービスを採用している指定資金移動業者でデジタル給与を行うのがおすすめです。

デジタルマネー払いゲートウェイサービス

デジタルマネー払いゲートウェイサービスは、20以上の人事システムに対応しており、既存のシステムのまま導入することが可能です。

▼対応している人事給与システム一覧はコチラ
デジタルマネー払いゲートウェイサービス

チャージ可能なキャッシュレス決済サービスへの送金であれば、銀行振込と同じ手順で振込データを専用画面にアップロードできるため操作も簡単です。
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デジタルマネー払いゲートウェイサービスページ

また、デジタル給与に関する資料を以下よりダウンロードいただけます。


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