コラム Column

改訂日

ミニアプリが注目される理由とは?参入するメリットや利便性を紹介

たくさんのサービスがスマホに

多種多様なサービスを統合し、1つのアプリでカバーする「スーパーアプリ」。1つのID認証で複数のサービス(ミニアプリ)が利用でき、決済までできる簡便さがユーザーの支持を得て、アジア圏を中心に大いに盛り上がりを見せています。最も先行している中国ではアリババグループのAlipay、テンセントのWeChatといったスーパーアプリがヒットして定着。また、シンガポールではGrab、インドネシアではGoJekが拡大しています。

この波は日本にも押し寄せており、多くの企業がスーパーアプリ構想を発表したり、参入を表明し、急速な伸びが期待される“黎明期”に入っています。チャンス拡大期とも言える今、スーパーアプリの特徴や企業がスーパーアプリ市場へミニアプリで参画するメリットについてご紹介します。

●なぜミニアプリ戦略が注目されているのか

スマホを持つ女性

すでに飽和状態のアプリ市場が要因

アプリは顧客とのコミュニケーションを深めていくためのツールとして重宝されています。特に既存顧客に対する自社商品や理念についての育成の面で強みを発揮します。アプリをインストールしてもらえれば、プッシュ通知機能を利用して積極的に顧客へアプローチでき、見てほしいコンテンツを直接届けられるからです。
顧客とのコミュニケーションを増やすことでファン化につながり、信頼関係がより強くなります。スマホを当たり前に使うようになった現代において、アプリを通した顧客とのコミュニケーションは欠かせません。
ただし、App Storeには約200万種類のアプリ、Google Playには約300万種類のアプリが存在しており、アプリ市場はすでに飽和状態です。数が多過ぎることで、アプリをインストールしてもらえてもコミュニケーションをとる前にアンインストールされてしまう課題に直面しています。
世界の50%以上のアプリが30日以内にアンインストールされている、というデータもあります(※1)。それでもこれだけスマートフォンが浸透している中で、企業はアプリでのコミュニケーションを放棄するわけにはいきません。そこで新たな勝機として期待されているのがスーパーアプリ・ミニアプリです。

(※1)出典:AppsFlyer Japan株式会社 2020年版アプリ業界におけるアンインストール率のベンチマーク調査

躍進を続けるスーパーアプリの利便性がポイントに

スーパーアプリとは、多種多様なサービスを内包し、一つのID認証ですべてが利用でき、決済までできる便利なアプリのことです。ユーザーは何度も個別にアプリを立ち上げたり、設定したりする必要がなく、スムーズで便利なUX(ユーザー体験)を得ることができます。

スーパーアプリは躍進を続けており、日本でも複数の企業が参入を発表しています。

コミュニケーションアプリLINEは2019年6月にLINE Mini app構想を発表しました。LINEは自社アプリだけでなくジョルダンの乗換案内など、他社のミニアプリをリリースし注目を集めてきました。

キャッシュレス決済サービスPayPayも、2019年11月からタクシー配車サービスDiDiなどを手始めに、ミニアプリの提供をスタート。飲食・レストランや資産運用・投資、各種ユーティリティなどのサービスを展開する企業が続々とミニアプリ市場に参画し、スーパーアプリ経済圏が形成され、利便性の高さから話題となりました。

これらの動きが意味しているのは、企業がビジネス展開をしたり、新規ユーザーを獲得したりする場が従来のWebサイトやネイティブアプリだけではなく、スーパーアプリ・ミニアプリへと広がりを見せていることです。

ビジネスチャンスが広がるミニアプリとは

日本でも、次々に企業が参画しているミニアプリとは、スーパーアプリ上で新たな機能の一つとして提供される、WebViewベースで動作する軽量なアプリケーションのことです。

スーパーアプリの構成

スーパーアプリの構成(例)

ユーザーはスーパーアプリを所有していれば、個人情報や決済情報を新たに登録することなく、または登録を簡易化して、シームレスに利便性の高いサービスをミニアプリを通していくつも利用できます。企業側には、ユーザーにこれまでにない価値や情報、UXを提供できるメリットがあります。つまり、ユーザーとミニアプリの提供企業、スーパーアプリとで「Win-Win-Win」となる関係を築くことができるのです。

▼スーパーアプリ・ミニアプリについて、詳しくはこちら。
スーパーアプリ、ミニアプリとは何か? 仕組みやメリット、国内外の事例を紹介

●日本でのスーパーアプリ・ミニアプリの状況

スマホの上に様々なサービス

現在、黎明期といえる日本では、スーパーアプリ構想を展開する企業が、通信キャリアや電子決済系など大手を中心に複数社あらわれています。これらの動きに加えて、日本では複数のポイントカードやクレジットカードを使い分ける文化が根付いていることもあり、スーパーアプリも多極化が予想されています。

スーパーアプリ戦略を公表している事業者

このような背景もあり、ユーザー数の多いLINEやQR決済で人気のPayPayの今後の動きが注目されています。ポイントとなるのは、例えば、コミュニケーションツールであるLINEでも、自社で決済機能を有していることです。

スーパーアプリ・ミニアプリの大きなメリットの一つがこの決済機能です。そのため、今後は、銀行など金融関係の参入が増えていくと予測されています。このように、日本国内ではスーパーアプリに参入する事業者が増え、多極化が進んでいくでしょう。

●ミニアプリとWebからの流入の違い

AIDAでみるスーパーアプリ

企業は、Webサイトでユーザーに自社のサービスを利用してもらうために、多額の費用を投じてSEO対策やWeb広告を実施し、サービスの認知施策を進める必要がありました。また、ユーザーは会員登録や決済情報の登録が都度必要であり、これが利用開始前の大きなハードルになっていたのです。

ところが、ミニアプリでスーパーアプリ市場に参入することで、企業はすでに会員登録などを終えているスーパーアプリのユーザーに直接アプローチできるようになりました。ユーザーは面倒な事前登録をすることなく、スムーズに新たなサービスを利用することができ、双方にメリットが生じました。

その結果、ユーザーはやりたいことをWeb検索ではなく、スーパーアプリ内の検索で探すことが増え、マーケティングの導線がネットサーフィンからスーパーアプリ内のアクションへと変化を始めているのです。スーパーアプリで登録を済ませているユーザー層は、事前にセグメントされている状況のため、ミニアプリ事業者はより積極的にマーケティング活動ができるようになりました。

●ネイティブアプリ市場のデメリットとは

PCとスマホ

ユーザーとの接点を作る導線として、App StoreやGoogle Playでアプリを開発し、リリースすることは現時点でも有力な手法の一つです。しかし、現在はアプリ間の競争が激化しています。加えて、ユーザーは日常生活で使用するアプリを一通り揃えると、新しいアプリを探さなくなることがわかっており、認知獲得が大きな壁になっています。

つまり、多額の開発費を投入して開発したアプリをApp StoreやGoogle Playで公開し、ユーザーの認知を得て、同種カテゴリのアプリとの競争を勝ち抜くには、プロモーションの費用や大きな労力が必要になるのです。

OSのバージョンアップに伴うメンテナンスや更新、運用にもコストがかかります。他に存在しないオンリーワンのサービスを展開するうえではネイティブアプリ戦略は魅力的ですが、Webビジネス展開の一つとして、ミニアプリでの展開も検討すると良いでしょう。

●ミニアプリがもたらすメリット

スマホにいろいろなサービス

スーパーアプリ上で動作するミニアプリはWebViewベースで動作する軽量なアプリケーションです。開発方法によっては、導入コストを抑えられるのがメリットの一つです。

ネイティブアプリに比べて参入障壁が低いのもメリットだと言えるでしょう。今が黎明期の日本では、スーパーアプリの提供企業側から見ると、ミニアプリによって新機能やサービスが増えることはポジティブなポイントであることから、プロモーションの波に乗りやすい状況となっているためです。

また、スーパーアプリでは、ユーザーは事前登録をすでに済ませているため、利用状況などから優先的にレコメンドし、マッチングすることができます。ストアからネイティブアプリをリリースするよりも、効率よく自社サービスに合うユーザーにアプローチできることも見逃せません。

ユーザー側からすると、自分に必要なサービスを1つのアプリ内ですぐに見つけられるため、スーパーアプリは双方にとって「利」のある場になっていると言えます。

アカウント登録の簡略化や不要化ができる

スーパーアプリのユーザーは、事前にセキュリティレベルの高い認証を済ませています。そのため、新たにミニアプリを提供しても、ユーザーの利用開始までの時間を大幅に短縮することができます。ケースによっては、登録不要にすることも可能です。

ミニアプリ事業者は、ユーザーが利用を開始した時点で紐づいた情報が利用できるため、決済を前提にしたサービスを展開できます。

集客やサービス展開がしやすい

スーパーアプリは、同じプラットフォームでミニアプリを通して様々なサービスを展開する仕組みです。スーパーアプリが持つ基盤を利用できるため、リリースや集客がしやすいという利点があります。

また、スーパーアプリとミニアプリのそれぞれで取得した顧客情報や行動データを相互に活用すれば、他の事業者との新しいビジネスモデルの創出など、さらなるサービス展開や向上に役立てることができます。

決済と相性が良い

ミニアプリ化によって、スーパーアプリの決済機能が利用できるようになります。これは現在、決済機能がないWebサイト・Webアプリを持つ事業者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

例えば、これまでは予約までだったサービスをミニアプリによって決済までワンストップ化することで利便性が増します。それにより、サービスの競争力が向上し、利用の増加が見込めるでしょう。

ユーザーの購買意欲へ繋げやすい

ユーザーは、すでにスーパーアプリとの信頼関係ができているため、新たに登場したミニアプリを受け入れやすい状態になっています。登録不要の気軽さもあって、ミニアプリでの購買行動のハードルが下がるメリットがあります。

登録済みのスーパーアプリ上ではボタンを押すだけで決済できるため、ユーザーの利便性が高いです。この利便性はミニアプリ事業者にとって、より多くの購買へつなげられるチャンスとなるでしょう。

サポート体制の強化ができる

スーパーアプリによって状況は異なりますが、ミニアプリならWebサービスでは基本的に利用できないPush通知機能やチャット機能を利用してユーザーときめ細やかなコミュニケーションを取ることができるようになります。サポート体制を強化したい事業者にとってはうれしい機能です。

スマホの容量を圧迫しない

ミニアプリは新たにアプリをインストールして使うわけではないため、スマホの容量を圧迫せず、ユーザーのストレスになりません。ネイティブアプリの場合、スマホの容量を圧迫するだけでなく、データ量が多いと通信速度が制限されることがあります。つまり、スマホの容量と通信速度という2つのハードルが立ちはだかることになります。

対してミニアプリの場合、そもそもインストールする必要がなく、スマホの容量もほとんど消費しません。このことから、ミニアプリであればユーザーにサービスを利用してもらいやすいと言えます。

●ミニアプリ化でビジネス拡大を狙おう

このように、ネイティブアプリやWebサイトでサービスを提供している事業者にとって、新たなビジネス戦略としてミニアプリ化はメリットが大きいことがわかります。コスト面で有利となることが多く、かつユーザーとの接点をより豊富に創出することができるうえに、ユーザー・事業者の双方に利便性があることも見逃せません。
スーパーアプリ黎明期の日本では、今後、ミニアプリ市場は大きく成長すると見られています。ミニアプリ提供を考える事業者は、現在、Webベースのサービスを展開しているのであれば、大きな負荷なく参画でき、ビジネスチャンスを拡大できる状況と言えます。

ミニアプリ市場への参入をTISが支援

この状況に対応するためにスタートしたのが、TISの決済ソリューションWidget配信プラットフォームサービスです。複数のスーパーアプリ事業者とミニアプリ事業者をつなぐプラットフォームで、ミニアプリをWidgetとして、事業者は一つの商材で複数のスーパーアプリに参画できるサービスになっています。
ミニアプリを作る構想段階からTISがコンサルティングを行い、実際に制作する段階ではUI・UXガイドなどを用意して手厚くサポートしながらミニアプリの成功をあと押しします。

現在展開されているビジネスとミニアプリとの相性をしたい、または新規にミニアプリ事業を開始したいといった際には、ぜひTISにお問い合わせください。

▼ミニアプリについて、さらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムで具体的な事例を交えて解説しています。

ミニアプリの活用事例を5つ紹介!国内外のミニアプリの動向も解説

※この記事が参考になった!面白かった! と思った方は是非「シェア」ボタンを押してください。