コラム Column

札幌市におけるスマートシティの取り組みについて

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こんにちは、畑です。

いきなりですが、「デジタル田園都市国家構想(通称:デジ田)」という言葉を聞いたことはありますか?これは、政府がデジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題の解決、魅力向上のブレイクスルーを実現し、地方活性化を加速することを掲げ取り組んでいるものの一つです。

(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/about/index.htmlより一部抜粋)

札幌市ではデジ田の取り組みが「新・さっぽろモデル (https://www.city.sapporo.jp/kikaku/ictplan/degitaldenentoshi/shin-sapporomodel.html) 」としてサービスが開始され、「作りこむフェーズ」から「使わせるフェーズ」へと政府からの期待を受けながら進行中です。今回は、本格的な取り組みがスタートした札幌市におけるスマートシティについてご紹介します。

1.取り組みの背景

札幌市のデジ田の取り組みは、他の自治体とは異なり、「地域コミュニティ」にフォーカスしています。これは、全国デジ田取り組み案件の中でも他に類を見ないアプローチです。
全国で既に顕在化している課題となっている、高齢化が進む郊外と人口が集中する都市部との分断を回避するため、デジタルとアナログを駆使し「地域コミュニティの在り方」を考え、両地域をデジタルで繋いでいくことを目指しています。この取り組みを進めていく体制として、札幌市は任意団体である札幌市スマートシティ推進協議会(https://www.city.sapporo.jp/kikaku/ictplan/degitaldenentoshi/association.html)を立ち上げました。

さまざまな課題が山積する厚別区もみじ台/青葉エリアでは、特に高齢化が進んでいます。この団地住宅地(郊外)におけるシニア層のアクティブ化を狙った取り組みを皮切りに、駅前再開発エリア(都市部)への展開に向けて先行モデルを構築し、最終的には札幌市内全10区へ横展開を図っていくことを目指しています。

一方で、駅前再開発エリアと呼ばれる新さっぽろでは、日々デジタル化が進み、もみじ台/青葉エリアとのコミュニティが分断されてしまうことが懸念されています。将来的に見えない壁やサービス格差が起きる可能性もありますが、双方のエリアを考慮したデジタル技術を活用することで、これら2拠点を結び、交流を促進する仕掛けづくりを進めています。

この全体取り組みイメージは【図1】に記載しています日常生活の導線上に「集い」、「会話」ができる「コミュティ」などのしかけを5つのサービス群(Ⅰ.生活支援サービス、Ⅱ.健康増進サービス、Ⅲ.コミュニティ活性化サービス、Ⅳ.周遊レコメンドサービス、Ⅴ.SDGs貢献サービス)に分けて展開しています。

また、一般的に言われているCRMのCustomer(顧客)をCitizen (市民)に変え、Citizen Relationship Managementとして定義し、各サービスの利用状況などのデータ収集・分析を行い、新・さっぽろ版CRMとして活用していきます。

【図1】「データ連携基盤」と「タブレット」で「繋ぐ」支援の輪~コミュニティ・地域・行政支援と「繋ぐ」
img-「データ連携基盤」と「タブレット」で「繋ぐ」支援の輪
(参照元:札幌市HPhttps://www.city.sapporo.jp/kikaku/ictplan/degitaldenentoshi/r6kikaku.html )

2.新・さっぽろモデルへの期待(乱立するアプリ)

札幌市スマートシティ推進協議会の活動は今年で2年目を迎えType2として国より採択【図2】を受けて継続されています。

【図2】デジタル実装タイプType2/3の採択先
img-図2デジタル実装タイプの採択先
(参照元:https://www.chisou.go.jp/sousei/about/mirai/pdf/01_r5kouhyoushiryou.pdf p27)

デジタルを活用して「コミュニティを活性化」していくうえで、TISが着目した点は、行政および民間が提供している各種サービスアプリと、どのように向き合っていくべきか?でした。ゼロからサービスを設計し、アプリを開発していく方法ではスピードやコストが合いません。また民間が先行投資して既に顧客獲得しているサービスアプリのユーザーを新たに囲い込むことは厳しいと判断し、行政や民間各社が既に提供しているアプリを「共通ID(さっぽろスマートID)」に紐づける方式を採用しました。

まずは、行政主導のアプリを中心として民間の既存サービスを紐づけ、官民データ連携に必要な仕組みをデジ田にて構築し、「官民データプラットフォーム」の実践を開始しました。重要なのは利用者の「利便性」の確保です。複数存在する、各種アプリID/パスワード管理の負担を軽減させるため、さっぽろスマートIDに紐づけ、シングルサインオン(SSO)の仕組みを導入しました。これによりユーザーは一度の認証で、複数のwebサービスやアプリケーションなどにログインすることができるようになります。

また、今回の取り組みに賛同する企業の提供するアプリと紐づけ、利用者のデータを共有します。これにより、1社だけでは分析が難しくなってきた需要予測など、共有化されたデータを利活用することで可能となり、既存サービスの改善や新規事業の創出を官民一体で進める体制が整いました。今後データがより集積されEBPM(Evidence Based Policy Making:エビデンスに基づく政策立案)などに活用されていくことが期待されています。

3.TISの支援内容について

札幌市ではスマートシティ推進事業の着手にあたり、地域課題の抽出・具体的な事業計画の策定に課題を抱えていたため、会津若松市他での推進実績のあるTISが、調査から事業計画策定・推進まで、一貫支援しました。TISの札幌市における取り組み内容の詳細は以下の(1)~(4)です。※詳細は以下URL先をご参照ください。

TIS、札幌市のスマートシティ推進事業を支援  https://www.tis.co.jp/news/2023/tis_news/20240313_1.html

(1)まちづくり成果指標の設計、中期計画策定支援
(2)地域コミュニティサービスの企画/運営支援
2024年2月に開始した「新・さっぽろモデル」では、「札幌市スマートシティ推進協議会」のメンバー
である各事業者より、以下のサービスを提供。

  • ID連携基盤
  • 地域情報の提供
  • 食品ロスの削減支援
  • 健康管理の促進
  • 屋内農園の設置
  • 近隣施設までの交通案内
  • (札Naviの機能提供:https://sapporo4mobility.com/business/

(3)「札幌市スマートシティ推進協議会」の立ち上げ・運営
(4)広報や販促施策の企画・実施によるユーザー獲得支援

また、TISでも「新・さっぽろモデル」に以下のサービスを実装、提供しています。

  • 「マイナンバーカード本人確認サービス」の提供
  • 利用登録時などにマイナンバーカードをかざすだけで簡易に本人確認手続きができます。
    ▼詳細は、以下URL先をご参照ください。
    https://www.tis.jp/service_solution/mynumber_auth/

  • データ連携による付加価値の創出
  • 「新・さっぽろモデル」で提供している各連携サービスの利用データを集約し、利用者の行動量や利用傾向などを把握することで正確にデータを利活用。さらに、「新・さっぽろモデル」のサービス開発においては、全体に関わる「さっぽろスマートID」を利用したサービス間連携などの設計を担当し、全体PMOとして円滑な開発推進を支援。

4.今後の展開について(データ利活用)

さっぽろスマートIDに紐づいたサービスから、収集可能なデータを集積し、分析・活用していくことに期待が高まっています。定量的な判断材料としての「データ」が活用されることで、定性的・属人的な施策判断から、より明確で客観的な判断基準が明らかにされていくことになります。

また、人口減少により、供給が需要に合わせることがより求められ、1事業者では判断できない時代に突入し、行政の政策判断、民間の需要判断などに「データ」が必要不可欠です。民間1社が独占することなく公平・中立性を維持しながらEBPMの実践が求められています。【図3】にあるとおり、現在は縦割りの組織にて予算が割当られ、各種施策が実行されています。デジタルを活用した施策やアプリ提供など、多くのケースはID/パスワードはバラバラで利用者側は複数のID/パスワード管理が求められ利便性を失っている状態です。

今後は、組織と予算割当は現状のままと仮定し、共通ID(さっぽろスマートID)に紐づけることにより、利用者の利便性向上に加え、データによる各種施策判断ができるよう、官民データプラットフォームのIDP(Identify Provider:ユーザーの認証情報を保存管理)の運営も引き続き機能拡充して行きたいと思います。

【図3】共通ID(さっぽろスマートID)の必要性とEBPMへの活用
img-図3共通ID(さっぽろスマートID)の必要性とEBPMへの活用

また、TISはデジタルやシステムの機能提供だけではなく、人財育成支援にも積極的に取り組んでおり、北海道プログラミングコンテストを応援しています。機会がありましたら、こちらのコンテスト概要についてもコラムを通してご案内したいと考えています。

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