コラム Column

「デジタル×地方創生」の取組みについて

こんにちは、畑です。

今回で第五回目のコラム執筆となります。今回はコロナ禍で目指すべきDXの将来の姿と、またTISの「デジタル×地方創生」の取り組みについて、私が研修講師を担当させていただきました「教員の民間企業研修(※1)」向けにお話した内容から、一部抜粋のうえご紹介します。

 現在、各自治体にDX専担組織を設置した上で、規制改革を必要としたスーパーシティ公募申請や、行政のDX化含めたスマートシティ化への取組みなどが、本格的にはじまっています。
地域社会にとっては、人口や労働人口減少などの非常に深刻な課題があり、アナログとデジタルを融合・活用したスピーディーな対応が求められていることは言うまでもありません。
しかし、こうした環境下にありながら、実際地方自治体や地域にお住まいの方と、政府が中央・首都圏のメンバー中心に進めている内容には、さまざまなギャップがあります。
特に、地域・地方の人材不足の状態は、政府主導の動きが求める課題に対する解決策の提示や対応スピードについて行けないのが現実だと思います。本コラムでは地方自治体の置かれている現状やその課題を紐解き、将来に向けてどうアプローチしていけばいいかをTISの取り組みを交えてご紹介します。

 読者の皆さまのDXの取り組み検討の一助になれば幸いです。

※1 一般財団法人 経済広報センター主催「教員の民間企業研修」2021年8月18日向け研修用資料より抜粋。この研修は、教員歴10年目の方に民間企業の研修を受けて頂き、企業活動の考え方、企業の環境問題への取り組みなどについて理解を深め、今後の学校運営などに活かしてもらうことを目的としています。
↓この研修取組みの概要などは以下URL先をご覧ください
https://www.kkc.or.jp/education/kyouin/index.html

 

 

●わくわく、どきどきがないと、学びも・ビジネスも成り立たない

学びもビジネスもそうですが、「わくわく」「どきどき」がないと自ら積極的に取り組んで行く気持ちや興味が沸かないと思います。

「半歩先の未来とは?」どんな姿か想像してみてください。

新たな社会Society5.0(創造社会)は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」

と定義されています。(内閣府「Society 5.0」より)この新たな社会に向かうためはDXによって明るい社会を創りあげていく視点が重要です。

これは、今まで人がやっていた仕事が全てデジタルや機械に置き換わるということではありません。デジタルやテクノロジーを使って経営や事業の在り方を変革する、生活や働き方を変革する、と言うことです。

●高齢化、労働人口減少を「テクノロジー」や「DX」にて補完、変革が必要

人口が減少していく中で、もはや人間だけの力だけでは生産能力などを維持・カバーすることが難しくなってきています。人手で補えない部分をテクノロジーなど活用し、今までにないビジネスモデルなどへ変革させる必要があります。

世界の人口は緩やかに増加傾向にあるものの、日本の人口は世界と比べて減少し続けている状態が

※図1<世界と日本の人口の推移>を見ていただければ分かると思います。

参照元:https://www.asahi.com/articles/ASM6J7JHXM6JUHBI018.html

※図2<出生数、死亡数の推移>を見ると、日本は2007年ごろから出生数と死亡数が逆転しており、以降人口は減少し続けています。

これは他国からはマーケット規模が縮小しているとも見られてしまい、獲得競争、例えばワクチンや半導体の購入等において不利な状況が続く事が予想されます。

※図2<出生数、死亡数の推移>
引用元:公益財団法人ニッポンドットコム(https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00747/)
より

人口が減少したことにはさまざまな要因が考えられますが、この状況を憂うだけでは未来は変わりません。

政府も少子高齢化に歯止めをかけるため、本格的に「子ども庁」創設など検討を行い、子育てや未来を担う子どもたちに対して専担組織を設置し、推進して行く取組みが開始されています。

●人口減少による生活利便性が低下し、さらなる人口減少へ

人口減少により行政の税収が減ることで社会インフラの維持提供が難しくなるという事が、今後各所で起きることが予想されます。また、生活関連サービスを提供運営している民間企業も立ち行かなくなり、撤退・縮小することで、さらなる税収の減少が加速する可能性があります。

よく耳にしますが「インバウンドや観光で街を活性化することで人口増加を狙う」など、人口増加を目標に掲げた施策がありますが、これは日本全体の人口減少から考えると、かなり高い目標であり現実的ではありません。人口が減っても行政や生活関連サービスの提供が可能なサービス設計をして行くことが必要であり、デジタルの活用や今までにない新しい課題解決アイディアを考えていくことが今出来ることだと考えています。

<人口減少と生活利便性・地域の魅力低下イメージ>

 

皆様ご存じの通り日本の地方行政は「市町村」を供給単位としてサービス提供や、予算・計画などが考えられています。しかし生活関連サービス施設の立地状況を見てみると、医療・介護など一定の人口規模でないと立地が困難な生活関連サービスがあり、人口の少ない地域ではこうしたサービスの確保が困難な地域も出てくることが予想されます。

また、今後は高齢者の各サービス施設までの移動手段の確保も深刻な問題になります。地方では移動手段が限られる事はもちろん、都市部でも、商業施設のみならず公共公益施設や病院などの郊外移転により中心市街地が衰退し始めています。これは自家用車の免許を返納した高齢者にとって深刻な状況と言えます。

以下の表の通り医療・介護等の生活サービス産業のインフラ維持のためには1万人以上の人口規模が必要ですが、それを下回る地域ではインフラ維持が困難となり「限界インフラ」として深刻な状況に陥っています。

●TIS、十勝スーパーシティ連携協議会の取組み

現状の課題と取り組みの全体像

ここで、北海道十勝エリアでの取組みをご紹介します。
十勝エリアはまさに「限界インフラ」として悲鳴をあげはじめており、TISはその課題解決への取組みを行っています。 十勝は皆さんもご存知の乳製品や農業で有名な場所で、最近ではドローンなどのテクノロジーを活用したアグリテック(アグリカルチャー+テクノロジーの造語)のような取組みも始まっています。また、広大な土地があり日照条件の有利性からメガソーラー基地や、最近ではロケットの発射場所として将来の宇宙飛行の基地としても注目されているところです。
帯広市をはじめ19の市町村が存在する十勝エリアで、医療・介護等の広域連携を基本とした「医療・介護の崩壊」を抑止するため、現役の医師が中心となりテクノロジーとアナログを駆使した「十勝スーパーシティ連携協議会(略称CTSC)」を立ち上げ、私たちTISは事務局を担当しています。

地方は「車社会」と言われるように、移動手段は自家用車に依存しています。
通勤・通学で移動手段に「電車」を使っている地域はごく一部で、ほとんどの場所では「車」や「バス」が日常の移動手段となっています。また、自宅玄関先からすぐ車に乗って目的地まで向かうことが出来るため、1日の平均歩数が極端に少なく、東京で公共交通機関を利用して生活している人と比較して健康面でのリスクが高いと言われています。
この協議会、CTSCでは「自家用車依存型を低減」することで、健康が促進されその結果、医療費等の「社会保障費の抑制」が図れることを目指しています。
同時に公共交通機関などを利用することでCO2の削減にも寄与し、環境問題を身近に感じながら取組める仕組みを検討中です。

<CTSC全体取組イメージ>

「地域ブランディング」の向上と「仲間づくり」に注力

住民にこの地域に住み続けたいと思ってもらうための評価軸がいくつかありますが、「仕事」×「教育」×「医療」がそれぞれ充実していることが非常に重要なファクターであり、これらを満たすための取組みを継続的に展開して行くことが大切です。
 そのためには広域的に連携し、各地域がお互いに機能を補完し合う枠組みをつくる必要があります。
これらを進めて行くには「仲間づくり」が大切で、協議会内にスペシャリストを含めた部会を設置し、テーマごとに協議を重ねています。同時に、十勝エリア管内の各市町村との連携が実現出来るよう各団体や行政へ働きかけをしています。
 真の問題解決に向けて、ただ単純な仕組みのデジタル化だけではなく、アナログとデジタルの融合「人間中心の社会」に向けたデザイン思考やサービス設計が非常に重要な要素と考えております。

<CTSCのメインテーマと各部会>

次世代を担う子どもたちのために私たちが出来ること

 アナログとデジタルの融合を目指した人間中心の社会構築を目指すうえでも一番重要な要素は
何といっても「人材」の確保であり、人材の「育成」にあります。
日本のIT・デジタル人材不足は、社会課題としてコロナ禍でより顕在化されました。
今まではIT産業分野だけに必要な人材がいればよかったのですが、これからはITを導入する側のDX化に対応できるITデジタル人材が必要です。この人材不足が社会問題に発展する可能性もあり、どのように人材を確保して行くべきかこの協議会でも議論されています。
今までの学生への教育は詰込み型で、「学んだことをきちんと理解をしているか(知識・技能)」 の評価が大きなウエイトを占めていました。これからは知識や技能を習得するだけではなく、 それをもとに「自分で考え、表現・判断し、 実際の社会で役立てる」ことが求められます。従来の、学んだことを理解するだけの教育だと、社会に出た後の現実の社会に対応することが出来ません。 以下の図のように実社会と教育現場の距離や格差を埋めて行く必要があります。

<CTSCの教育部会取組みイメージ>

今の子どもたち、若者たちが10~20年後には今の日本を担う世代となります。我々含め、今の大人の世代がしっかりと、責任をもって次世代にバトンタッチできるよう、大人の責任を果たして行くことがより一層必要と感じています。「次世代を担う子どもたちのために、未来は子どもそのもの」を合言葉に、学び足し続けることで、自分自身をアップデートし、地域の街づくりに引き続き貢献出来ればと考えています。

今後の取組みにもぜひご期待ください。

※この記事が参考になった!面白かった! と思った方は是非「シェア」ボタンを押してください。