コラム Column

持続的な地域社会をつくる「ヘルスケア×決済」TISの目指す健康サービス「ヘルスケアプラットフォーム」における決済とは

2021年11月10日(水)、TISは『TIS 決済DX Conference』をオンラインで開催し、「サービス×決済」が実現するさまざまなデジタルトランスフォーメーションと新たなユーザー体験についての取り組みを紹介しました。
本セッションでは「ヘルスケア×決済」をテーマに、TISのヘルスケアサービス「ヘルスケアプラットフォーム」がどのようなサービスを提供し、決済と掛け合わせることでどのような社会の実現を目指しているかについて、TIS株式会社 DXビジネスユニット ヘルスケアサービスユニット エグゼクティブフェローの吉田 博人が解説しています。

吉田博人の写真


TIS株式会社

DXビジネスユニット ヘルスケアサービスユニット エグゼクティブフェロー
吉田 博人

1. 現状と課題

高齢化

高齢化社会の到来により、日本は大きな社会構造の変化を迎えています。1962年には65歳以上の高齢者1人を9.1人の現役世代で支えていました。しかし年々、高齢者1人を支える人数は減り、2050年には1.3人の現役世代で支えることになると予想されています。
超高齢化社会に対応するためには、生涯現役、つまり高齢者も含め健康で長く活躍できる環境を作る必要があります。TISは「ヘルスケアプラットフォーム」を通してその一翼を担っていきたいと考えています。

2. 「医療」「健康」情報を活用するための「ヘルスケアプラットフォーム」とは

「ヘルスケアプラットフォーム」は、「製薬会社向けデータ解析支援」「保険会社向け診療項目データベース事業」「病院向け情報システム(HIS)事業」を展開するTISインテックグループが新たに立ち上げたヘルスケア領域のサービスです。

あらゆるライフステージで健康を支えるデジタルプラットフォーム

例えば健康な時、病気の予防など病気になる前、病気の時、健康のために行動変容を起したとき、介護が必要になった時など、ライフステージのあらゆる場面で生活者の健やかな生活を支えます。

<「ヘルスケアプラットフォーム」の利用ステージ>

ヘルスケアプラットフォーム

金融業界で培った「情報をセキュアに預かり、流通させる」技術力を活かした安心・安全なプラットフォーム

産まれる前からのさまざまな医療情報、日々の健康情報、要介護になってからの情報などはデータ形式もバラバラの状態で分散し、基礎となるヘルスケア情報は活用できる状況にありません。そうしたヘルスケア情報・医療情報を統合するのがヘルスケアプラットフォームです。

●各種検診情報と電子カルテなどの医療情報などの医療情報
●介護情報
●体重、血圧、食事、運動といった健康情報

<ヘルスケアプラットフォーム概念図>

プラットフォーム概念図

医療情報と健康情報を一元化し、セキュアに管理するとともに、生活者がPHR(※1)の利用(共有)範囲をコントロールすることで、生活者中心の健康的な生活を支援します。

(※1)PHR:Personal Health Record(パーソナルヘルスレコード) 個人の健康・医療・介護に関する情報のこと

「ヘルスケアプラットフォーム」 3つのサービス

①医療情報の連携(ヘルスケアパスポート)
生活者同意のもと、家族や医療従事者が双方向でコンパクトな情報連携を実現します。

②健康情報の連携(ヘルスケア リファレンス アーキテクチャ)
健康情報の標準化・統合により健康情報連携を活性化するため、マイクロソフト社と連携しながら企業のヘルスケアサービスの構築を支援します。

③ヘルスケアへの活用(各種ヘルスケアサービス)
各種健康増進サービスと連携しています。
●健康マーケティングDXサービス[ASTARI]
●健康維持・増進サポートサービス[ケアチョイス]
●健康年齢評価サービス[パーソナルスコア]
●栄養管理サービス ※他社サービス

 
<ヘルスケアプラットフォームで展開されるサービス>

3つのサービス

ヘルスケア情報でつながる社会

ヘルスケア情報と地域社会がつながることで、「医療と社会の7つのテーマ」を実現します。

①患者とつながる医療
患者と医師が情報共有し、共に健康を目指せる医療の実現。

②ワンチーム医療
病院、診療所、薬局、介護、地域のさまざまな医療機関の情報が連携され、一つの病院で治療を受けているような地域医療連携の実現。

③遠隔地への医療
遠隔地への医療、遠隔診療と連携した、バーチャル診療の実現。

④病気にならない街
病気を予測して予防する、病気にならない社会の実現。

⑤健康の”お守り”
医療情報の共有で、急病、災害時にも適切な処置の実現。

⑥街ぐるみの共生
医療、介護、社会が連携した、豊かな老後を過ごせる街ぐるみの共生。

⑦医療情報の拡がり
生活者起点でヘルスケア情報が行政や企業と連携された、さまざまなサービスの提供。

3. 継続性の高い地域医療連携を実現する「ヘルスケアパスポート」とは?

「ヘルスケアパスポート」は病院、診療所、検査会社、薬局、それぞれの医療機関で発生したカルテ、レセプト、検査結果などの詳細な情報を、生活者からの同意をベースに蓄積し、共有するためのサービスです。
生活者が日々の生活の状態もスマホから入力することで、生活者に情報共有を承諾された医療従事者や生活者の家族は、生活者の健康状態をより正確に把握できます。

 <ヘルスケアプラットフォームのサービス概要>

ヘルスケアプラットフォームサービス概要

「ヘルスケアパスポート」 3つの特徴

①小さく始めて徐々に拡大が可能
②運用負担の大幅な軽減(生活者からの同意取得の電子化)
③サービス利用型による低コストの実現

「ヘルスケアパスポート」とこれまでの地域医療連携の違い

「ヘルスケアパスポート」と従来の地域医療連携の大きな違いは、医療従事者と利用者がつながる統合型のサービスのため、生活者も自分の健康を時系列で確認できることです。その結果、健康意識が高まり、生活者本人の行動変容の促進につながります。

<従来の地域医療連携システムとの違い>
従来のサービスとの比較図

●クラウド型のサービスにより、初期費用や運用コストの負担を大きく回避
●プラットフォーム共有型サービスのため、短期間での導入が可能
●すでに医療機関が利用している、ベストプラクティスを最初から導入
●同意取得が端末から電子的に管理されることにより、事務手続きが削減
●医療機関ごとに細かくオプトインを管理
●利用規模に応じたサービス課金型で、スモールスタートが可能
※病院単位から、1次医療圏、3次医療圏まで、さまざまな範囲で導入が可能

「ヘルスケアパスポート」は千葉大学医学部附属病院様の医療監修を受けて開発されました。TISの最新のデジタル技術によるプラットフォームの構築と、千葉大学医学部附属病院様がこれまで培った地域医療情報基盤の実績・医療分野の知見の提供を受けて協業しています。

「ヘルスケアパスポート」の機能について

ヘルスケアデータの共有は以下3つの機能で実現され、それぞれ医療関係者、生活者両方にメリットを創出します。

1.医療従事者向けWebサイト

医療従事者は、Webで患者の過去の医療情報に加え、在宅の状態がよくわかるようになり、患者像を瞬時に捉えた、効率的かつ正確な診察処方などができるようになります。

●患者基本情報(アレルギー、既往歴情報など)
●医療機関の診察、処方などの各種情報共有、時系列表示
●温度板に患者入力のバイタル情報表示
●患者、家族へのメッセージ発信

<診療の流れに沿って患者の状況を把握>
基本情報画面

2.生活者向けスマホアプリ

生活者向けスマホアプリは、医療情報の「開示先」と「開示の同意」のコントロールができます。医療機関から検査結果や処方情報などを自動で取得して表示し、自身のバイタル情報の入力もスマートフォンで行えます。

●情報開示の同意、開示先施設のコントロール
●検査結果、処方情報の自動取得、生活メモのタイムライン表示
●バイタル情報の入力(アップルヘルスケア自動連携)
●医療機関、家族からのメッセージの受信

<施設外にいても生活者が医療と情報でつながります>
アプリ

3.KIOSK端末(スマートフォンを持たない方に)

スマートフォンを持たない生活者でも、医療機関にあるKIOSK端末で登録することで、ヘルスケアパスポートをお使いいただけます。

●KIOSK端末への登録で医療情報と連携が可能

□ヘルスケアパスポートで共有される情報

ヘルスケアパスポートで共有される情報の内容

「生活者起点」でつながる、さまざまなサービス

「ヘルスケアパスポート」は、生活者を起点にマイナポータルや、決済・教育・移動のプラットフォームなどとも連携しながら、ヘルスケアにとどまらない利便性を提供していきます。

<オープンAPIで様々なサービスと連携(今後の展開イメージ)>

オープンAPIで様々なサービスと連携

4. ヘルスケア×決済がつくる持続的な地域社会

これまでヘルスケアについてお話してきましたが、そこに決済を掛け合わせることで実現したい社会を2つご紹介します。

1.医療機関内での決済DXを実現

医療機関に向けフリクションレスな精算、後払いを実現します。
●生活者の精算の手間と待ち時間による3密状態を解消
●医療事務の方々の回収の手間と漏れを軽減
●医療情報と連携した保険請求の自動化

2.日々の健康増進でのDXを実現

ヘルスケアサービスでの購買をもとに、生活者に適切なサービス提案を行います。
●ポイントやクーポンなどによる健康増進継続の動機づけ
●健康サービス企業との連携
●ヘルスケアマーケティングDXサービス[ASTARI]

<オープンAPIでさまざまなサービスと連携>

イメージ図

5.まとめ

ヘルスケアパスポートは地域医療連携だけではなく、さまざまな健康サービスを利用しながら生活者の日々の健康づくりを支え、それが日常生活における行動変容につながると考えています。医療機関サービス提供企業と協力しながら、末永く健康的に送れる社会の実現に向けて皆様と共にサービスを進めていきたいと考えています。

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