Alipay(アリペイ)は、中国を中心に10億人以上のユーザーと接点を持てるポテンシャルを持ったモバイル決済サービスです。近年増え続ける中国人観光客を取り込みたい店舗にとって、Alipayの導入は欠かせません。
そこで本記事は、Alipayの特徴や決済方法、料金体系、導入メリット、導入方法を解説します。Alipayの導入を検討するためにお役立て下さい。
1 Alipay(アリペイ)とは?
1-1 利用ユーザー数
1-2 Alipayのスゴさ
1-3 Alipayでの決済方法
2 Alipay導入にかかる費用
2-1 初期費用
2-2 決済手数料
2-3 振込手数料
3 Alipay導入のメリット
3-1 外国人観光客を集客できる
3-2 決済処理を効率化できる
3-3 為替変動リスクがない
3-4 越境ECの売り上げ向上につながる
4 Alipayの導入方法
5 まとめ
1 Alipay(アリペイ)とは?
Alipay(アリペイ)は、中国の阿里巴巴集团(アリババグループ)が提供するモバイル決済サービスです。元々はECプラットフォーム「タオバオ」や「アリババ」での決済手段として発展し、現在では中国全土の多くの実店舗でも利用されています。
1-1 利用ユーザー数
Alipay(アリペイ)は10億人以上の個人ユーザーと8,000万以上の契約企業を持っています(※1)。特に中国国内では圧倒的に普及しており、モバイル決済市場で5割程度のシェアを獲得しています。最大の競合は、中国のSNS「WeChat」を運営するテンセントが提供する「WeChatPay(ウィーチャットペイ)」です。Alipayは中国国内を中心に広がり、世界中で幅広く利用されています。特に、インド、タイ、シンガポールなどのアジア圏で多くの利用者を獲得している状況です。
一方で、Alipayを利用する日本人はほとんどいません。日本国内では、PayPay、楽天ペイ、d払いなどのユーザーが多く、MMD研究所の調査によれば、Alipayは上位10サービスにも入っていないのが現状です(※2)。
※1アリペイ、日本での加盟店舗数が30万を突破、 アジア10億人のモバイル決済ユーザーの訪日を促進 | アリババ株式会社
Alipay+ | Connecting Global Brands with Mobile Consumers
※2MMD研究所「QRコード決済のシェアは「PayPay」、総合満足度は「楽天ペイ」QRコード決済メイン利用は上位4サービスで93.2%を占める」
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1-2 Alipayのスゴさ
Alipayの決済が注目される理由は、世界最大級の利用者の多さです。ビジネスにおけるポテンシャルの高さが、Alipayを導入する大きな理由となっています。先述したように、Alipayユーザーは10億人以上に上ります。日本国内の店舗経営者は、Alipay導入によって中国人観光客を取り込む効果を見込めるでしょう。中国では、Alipayが日常の支払い手段として、商品・サービスのカテゴリーを問わず広く利用されています。中国国内と同じ決済環境を自店舗に備えれば、集客および消費意欲の促進が可能です。また、インターネットの普及に伴い、中国人が日本のEC店舗から商品を購入する量も増えています。越境ECを行う店舗経営者にとっても、Alipayは重要な決済手段です。
1-3 Alipayでの決済方法
Alipayを店舗内で利用する場合は、QRコード決済を利用します。QRコード決済には、店舗側がQRコードを読み取る方法と、店舗側がQRコードを見せる方法の2種類があります。
1-3-1 店舗側がQRを読み取るストアスキャン方式
店舗側がQRコードを読み取る「ストアスキャン方式」は、消費者がAlipayアプリでQRコードを提示し、店舗側がPOS端末や専用アプリを使ってスキャンする方法です。ストアスキャン方式はユーザスキャン方式と異なり、消費者が金額を入力することがないため、会計のミスや手間が発生せず、利便性が高いことがメリットです。一方で初期費用がかかることが多いです。既存のPOS端末と連動するには、多くの場合システム改修が必要になり、費用がかさみます。読み取り用の専用端末やタブレットを導入する場合は機器の費用が発生しますが、POSの改修に比べ低コストで導入が可能です。
1-3-2 店舗側がQRを見せるユーザスキャン方式
店舗側がQRコードを提示する「ユーザスキャン方式」は、店舗側が固定のQRコードを掲示し、消費者がそれをスマートフォンでスキャンして金額を手入力し、決済する方法です。QRコードは、タブレット画面に表示するか、印刷したステッカーを店頭に掲示する形式が一般的です。ユーザスキャン方式は、コストを抑えて導入できることがメリットです。一方で消費者側での決済金額の入力が必要であるため、金額誤りなどの会計ミスや手間が発生しやすくなります。また、複数のQRコード決済を導入する場合、レジ周りにステッカーを多く掲示する必要があります。そのため、レジ周りのスペースを圧迫してしまうデメリットもあります。
2 Alipay導入にかかる費用
Alipayの導入にあたっては、初期コストやランニングコストを見積もる必要があります。ここではAlipayと直接契約する場合の初期費用、決済手数料、振込手数料を解説します。
2-1 初期費用
Alipayの初期費用は無料です。決済用アカウントの開設や初期手数料などは一切かかりません。
また、他の決済サービスではシステム保守や利用に関する定期的な費用がかかることがありますが、Alipayではこれらの費用が無料です。このため、コストを抑えながらQRコード決済を導入したい店舗に向いています。ただし、専用の決済端末や決済用のタブレットやスマートフォンを導入する場合、端末購入費やレンタル代が別途発生する点に注意しておきましょう。
2-2 決済手数料
Alipayの決済手数料は、取引ごとに1.5~3.5%かかります。この手数料は、ビジネスの規模や業種によって異なるため、導入前に確認が必要です。Alipayの決済手数料は、他のQRコード決済と比較して低価格になる場合があります。例えば、楽天ペイの決済手数料は2.95~3.24%、au Payは2.6%、PayPayは1.6~1.98%です。近年では、QRコード決済やクレジットカード決済を一元的に管理できるマルチ決済システムを導入する店舗も増えてきました。この場合、Alipayの決済手数料に加えて、決済代行会社(代理店)に支払う手数料がかかります。
2-3 振込手数料
店舗の売り上げを自社口座に振り込む手数料は、振り込みごとに発生します。法人の場合、取引条件や契約内容によって変わるため、契約前に問い合わせておくと良いでしょう。
一方、個人ユーザーとしてAlipayを利用する場合は、2万元(為替レートが1元=16円の場合、32万円)以内であれば、振込手数料は無料です。2万元を超えた分は振込額の0.1%の手数料が発生します。Alipayでは、月1回または月2回の入金が選べる設定となっています。入金の詳細なタイミングについては問い合わせて下さい。振込手数料を抑えたい場合は、月1回を選んだほうがお得です。
3 Alipay導入のメリット
ここでは、Alipay導入のメリットを店舗側の視点で解説します。
3-1 外国人観光客を集客できる
Alipayの導入によって、中国人観光客を集客しやすくなります。中国人観光客はモバイル決済を利用することが一般的であり、Alipayは特に重要な決済手段です。日本での現金の持ち合わせが少ない場合でも、慣れた決済方法で購入できる環境を整えることで、売り上げ向上が期待できます。さらに、「Alipay+」を利用すると、中国だけでなく、韓国や東南アジアの主要なモバイル決済サービス(Kakao PayやTrueMoneyなど)も導入できます。広範囲の外国人観光客を集客して売り上げ向上を図りたい場合は、選択肢の一つとなるでしょう。
3-2 決済処理を効率化できる
Alipayを導入することで、現金の受け渡しが不要になり、キャッシュレスでの迅速な決済が可能です。これにより、会計時のミスやレジでの待ち時間が削減されます。結果として、回転率や顧客満足度の向上を期待できるでしょう。既に、日本の主要なコンビニエンスストアやドラッグストア、観光地の百貨店などはAlipayを導入しており、決済業務を効率化しています。
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3-3 為替変動リスクがない
Alipayの決済では、日本の店舗が日本円で売り上げを計上し、そのまま日本円での入金が行われるため、為替変動リスクがありません。消費者側は商品・サービスの価格をその時点のレートで人民元に換算した金額で決済を行い、店舗側は日本円価格での売り上げ金を受け取ります。そのため、売り上げが入金されるまでのタイムラグによる為替変動の影響を受けません。
一方、クレジットカードやペイメントゲートウェイ(デジタル決済を安全に処理するためのシステム)を使用して、外国通貨で決済を行うような場合は、為替レートの変動によって損失を被る可能性があります。為替変動リスクをなくしたい店舗は、Alipayの導入が有効です。
3-4 越境ECの売り上げ向上につながる
インターネットを通じて国境を越えて商品やサービスを購入する越境ECでもAlipay導入が有効です。この場合、先述したQRコード決済ではなく、Alipayのオンライン決済サービスを利用します。2021年に経済産業省が発表した「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」(※3)によれば、中国の消費者が日本からの越境ECで購入した金額は、2兆1,382億円と巨額に上ります。このうち、中国の越境EC市場における決済方法の43%がAlipayであり、高いシェアを占めています。したがって、中国人を対象にした越境EC店舗経営においては、Alipayの導入が非常に重要です。
※3経済産業省「令和3年度電子商取引に関する市場調査報告書」
4 Alipayの導入方法
実店舗にAlipayを導入する場合は、「ユーザスキャン方式」「ストアスキャン方式」のいずれかを選んで申し込みます。ECサイトの場合は、オンライン決済を申し込みます。Alipayを単独で導入する際の申し込み先は、Alipay認定代理店です。Alipayを含めた複数のQRコード決済をまとめて導入する際は、マルチ決済サービスを提供している決済代行会社に申し込みます。
基本的な流れは、以下の5ステップで進めます。
1.お問い合わせ
Alipay認定代理店または決済代行会社に連絡を取り、導入に関する詳細な相談を行います。店舗やECサイトの規模に応じたプランや手数料の確認ができます。
2.見積もり書と申込書の送付
利用を申し込むと、見積もり書と申込書が届きます。見積もり書に記述された決済手数料や振込手数料などを確認して下さい。これらの費用は、店舗の規模や取り扱う商品に応じて異なる場合があります。
3.書類提出
申込書の記入と共に、事業者の登録証明書、銀行口座情報、店舗やECサイトの詳細情報を提出します。オンライン事業者は運営サイトの情報も必要です。
4.審査
提出された書類をもとに、加盟店としての審査が行われます。審査では、事業の安全性や信用情報が確認されます。通常、数日~2週間程度で完了します。
5.導入・サービス開始
審査通過後、約10営業日以内にサービスを開始できます。実店舗ではQRコードが提供されます。また、ECサイトではAPIなどを用いた決済システムが設定され、専用フォームでの決済や決済代行会社のシステムとの連携などが可能になります。
このようにAlipayの導入は、通常、1ヶ月ほどで完了します。
5 まとめ
Alipayは訪日中国人の集客や、越境ECの売り上げ向上に効果的なキャッシュレス決済です。Alipayの導入によって、膨大な数のユーザーにリーチできるようになります。
TISでは、Alipayを含む各種のQRコード決済を一元管理できる加盟店向けQR決済ゲートウェイサービスを提供しています。キャッシュレスの導入や決済手数料、集客力アップなどの課題をお持ちの場合は、ぜひご相談下さい。
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