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お金?それとも・・・Web3(Web3.0)が浸透した社会で価値交換する仕組みとは(前半)

こちらのコラムにアクセスして頂き、ありがとうございます。
TISで新設されたDXクリエイティブデザイン部でクリエイティブ・ディレクターを担当している伊藤 淳です。

前回は「お金だけじゃない?インセンティブデザインとは」というコラムをアップさせて頂き、多くの方々から反響を頂き、とても励みになっています。ありがとうございます。

今回は、『Web3が当たり前になった社会では価値交換する仕組みがどうなっていくのか?』を、テーマに前半・後半の2部に分けてお話していきます。

前半:Web3について
後半:Web3の具体例を交えながらどのように世の中が変わっているのかについて

目次
今回はこちら
●Web3とは?
●ブロックチェーンとは?
●中央集権型サービスがやっている事
●Web3で創られる新しい信頼のカタチ


●Web3はオープンな村社会?
●Web3よって変わる価値交換のやりとり
●経済資本と社会関係資本
●Web3×TIS
●最後に

●Web3とは?

web3

最近、Web3という言葉を耳にする機会が増えてきていますが、それは何か?と聞かれてもよく分からない方も多いのではないでしょうか。まずはWeb3について、簡単に説明します。
Web3という言葉の通り、前世代のWeb1とWeb2も存在しており、それぞれ以下のように大まかな定義づけがされています。

・Web1:
発信元から閲覧者に向けて情報が一方向に流れていたインターネット時代。HTMLというWEBページを作成するための言語によって作られたテキストメインのWebサイトなどが主体。発信者と受信者のやり取りはできませんでした。

・Web2:
ユーザー自らが情報を作成して発信元となり、ユーザー間で双方向に流れるインターネット時代。TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSや、YouTubeのような動画配信サイトなどの中央集権的なサービスを媒介にして情報の交換が可能になった。

・Web3:
中央集権に依存しないブロックチェーンを基盤とした自律分散型のインターネット時代。ビットコインやイーサリアム、NFTなど、無形デジタルデータに価値を与えることが可能になった。
Web3の定義にでてくる「自律分散型」とはどういうことか?どんなメリットがあるのか?という説明の前に、Web3の仕組みの根幹となるブロックチェーンについても簡単に説明します。

●ブロックチェーンとは?

blockchain

ブロックチェーンと聞くと、まずイメージするのが仮想通貨(暗号通貨)のビットコインという方は多いと思います。
この仮想通貨のシステムは、どこかの誰かが管理しているという概念は存在しません。これこそがブロックチェーン最大の特徴です。

例えばAさんが、とても綺麗な石を手に持っていて、これを権利書なしでAさんの所有物であると証明するとしましょう。Aさんは綺麗な石が自分の物である事を証明するために自分の家族を証人とし、その家族が間違いなく「Aさんの物だ」と主張しています。さてこの状態で、Aさんは綺麗な石を所有している証明になるのでしょうか?これだけでは身近な一部の人間だけが証人となっているため、Aさんの物であることを証明することは難しいですよね。
それでは次に、Aさんの住む町の住民に証人になってもらったらどうでしょうか。Aさんは町の権力者で住民が全員口裏合わせをしている可能性もゼロではありません。では、たまたま通りかかった人や、全く関係ない地域の人、地球の裏側にいる人など誰に聞いても「Aさんの物だ」と主張したらどうでしょうか?流石にAさんの所有物であると認めざるを得ません。これがブロックチェーンです。実際には台帳に書き込まれたデータが、ブロックチェーンのネットワーク上にあり、世界中のどの端末に入っていても同じ内容となっており、分散台帳とも呼ばれています。詳しくは、もっと複雑ですが、ここでは割愛します。

仮想通貨は、世界中に分散しているデジタルデータの台帳に、どのPC端末から確認しても「この通貨はどこの誰が所有しています」と記録されているため、データの改ざんは困難になり、安全に仮想通貨の保有や送金が可能になっているのです。
このブロックチェーンを活用して発行された仮想通貨などの暗号資産は、総称して「トークン」と呼ばれています。最近ではデジタルアートや、ゲーム内のアイテム、キャラクターのイラスト、音楽などをトークン化し、無形資産に有限な所有権を付与するNFT(Non-Fungible Token)=非代替性トークンが話題になっています。今後はNFTによって個人データなどの無形資産だけでなく、有形資産などの所有権の証明への活用にも期待が高まってきています。

「関連記事:トークンエコノミーとは?代替通貨が経済圏を構成するメリットや事例をご紹介

●中央集権型サービスがやっている事

プラットフォーマー関連図

WEB2の中央集権型のインターネットサービスの代表例として、ライドシェアやフードデリバリーのUber、個人所有物件を宿泊施設として貸し出しできるAirbnbのプラットフォーム型サービスを挙げてみましょう。
UberやAirbnbなどのプラットフォーマーは、自動車や宿泊施設を所有していません。自動車を所有し車を運転して稼ぎたいユーザーや、自分の管理物件を貸出して稼ぎたいユーザーなどのピア生産者と、お金を払って少しでも安い運賃で移動したいユーザーや、少しでも安く特別な場所で宿泊したいユーザーなどのピア消費者がおり、ピア生産者とピア消費者をマッチングする役割を持っています。そして対価交換としてユーザー間にお金のやりとりが発生することでプラットフォーマーは、そのコミッション(手数料)から収入を得るビジネスを展開しています。
さらには、ただ単にピア生産者とピア消費者を繋げているだけではありません。ユーザー同士が評価し合う事で蓄積する信用情報を保有し提供しています。この評価による信用情報が見えるので、ユーザーが安心してサービスを使う事ができるようになります。

このように、中央集権型サービスでは、プラットフォーマーがサービスの仕組みやデータを一元管理することが特徴です。しかし、残念ながらそこには問題があり、プラットフォーマーが得たユーザーの評価データは、プラットフォーマーが管理しており、基本的にこの評価データを他のサービスに使うことはできません。努力して高い信用を得られるようになったのに、他のサービスを利用するときはゼロから信用を作っていく必要があるのです。本来は自分の努力によって得られる信用データは、自分で管理し用途を選べることが望ましいのですが、中央集権型サービスは自分のデータ全てをプラットフォーマーに委ねるというデメリットが生じてしまいます。自分が持つべき自分のデータは、自らが管理し用途を決めることができる。このような期待が自律分散型のWeb3に寄せられています。

●Web3で創られる新しい信頼のカタチ

デジタル資本主義関連図
参考元:デジタル資本主義 東洋経済新報社(2018)

自律分散型とは、言葉の通り一人ひとりが自律性を持ち自由に物事に対して、分散的かつ俊敏に動くことができる形態を意味しています。Web3がもたらす自律分散型で、個人による自分のデータ管理が当たり前になると、どんな社会になっていくのでしょうか?
まず、中央集権型のサービスが個人の信用データなどを所有しなくなります。その代わりユーザーは、日常の活動情報を分散台帳に記録していくことになります。活動情報とは、冒頭で挙げたようなシェアリングサービスの評価はもちろん、学校や講習などでの学習の記録・成績、ボランティアなどの社会貢献活動実績、仕事などのアウトプット、趣味で身につけた特技、あらゆる取引履歴など、多岐に渡ることが想定されます。
もちろん個人のデータ全てを記録するわけではありませんが、自分の生活がより豊かになるために、どのようデータを記録し続けると自分にとってプラスになるのか、個人で取捨選択する必要があります。
自律分散型のWeb3が当たり前になった社会では、個人対個人の活動記録を広げる事が自分の信用情報の大きさとなります。このような仕組みをデジタル・トラスト・グリッドと呼び、個人間の結びつきによる大きな信頼基盤となっています。

このデジタル・トラスト・グリッドによって、中央集権型のプラットフォームを介せず、個人と個人に限らず、企業と個人、行政と個人が信頼し合う上でシェアリングエコノミーや、ビジネスなどの取引、地域活動などを行ったりすることが可能になります。またこれだけにとどまらず、もしかしたら就職や進学などが有利になるような影響が出てくるかもしれません。

以上が簡単ではありますが、Web3についての説明になります。
後半は具体例を出しながら世の中の変化についてお話していきますので楽しみにしていてください。

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