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お金?それとも・・・Web3(Web3.0)が浸透した社会で価値交換する仕組みとは(後半)

こんにちは、伊藤 淳です。
『Web3が当たり前になった社会では価値交換する仕組みがどうなっていくのか?』を、テーマに前半・後半の2部に分けて配信しており、今回はその後半になります。
実際に具体例を話ながら世の中の変化についてお話していきます。

前半:Web3について
後半:Web3の具体例を交えながらどのように世の中が変わっているのかについて

目次

Web3とは?
●ブロックチェーンとは?
●中央集権型サービスがやっている事
●Web3で創られる新しい信頼のカタチ

今回はこちら
●Web3はオープンな村社会?
●Web3よって変わる価値交換のやりとり
●経済資本と社会関係資本
●Web3×TIS
●最後に

●Web3はオープンな村社会?

村

少し話は逸れますが、私が移住した埼玉県のとある山間地域は、人口8000人ほどの小さな地域で、人と人との繋がりが強く、初めて会う人でも自分の知っている誰かの知り合いなんてことは良くあることです。
もし初めて会うその人が、自分が信頼できる人と共通の知り合いであれば、お互いの警戒心も薄れ、打ち解けるのにそれほど時間は掛からないでしょう。
日本の村社会は、良くも悪くも顔の見える範囲の小さなコミュニティがあり、相互信頼の上で成り立っています。そのコミュニティの中では、育てた野菜や採ってきた山菜のお裾分けをしたり、無料で土地が借りられて畑をしたり、気軽に作業を頼んだり頼まれたりしています。そしてこれがWeb3の目指す理想の社会に近い可能性を秘めており、IT化が出遅れている日本の地方が最新のインターネットの到達地点のヒントになる、と考えたらなかなか面白いですよね。

日本の地方では、昔からこのような人の繋がりによる自律分散型の信頼の形が作られているのです。しかし一度も訪れたことのない地域に移り住んだ場合、そこでは人のつながりが希薄なので、また長い時間をかけて信頼関係をゼロから作る必要があります。もしこの時にWeb3が浸透していたのなら、今住んでいる地域で得た信頼を他の地域にも持ち運べ、住み始めて数日しか経っていないのに10年くらい住んだかのような感覚で地域に溶け込める事も可能になるかもしれません。もしそれが実現できたとしたら日本中に自分のふるさとができるようなもので、人の移動が活性化され、関係人口の増加へと繋がり、地方に対する人びとの関わりがより活発化することでしょう。

Web3はフィジカルな場所の制約がない、デジタルを介したオープンな村社会と言えるかもしれません。

●Web3よって変わる価値交換のやりとり

バランス

さて、中央集権に依存しない自律分散型のWeb3が浸透した社会が来たとして、価値交換はどのようになっていくのでしょうか?価値を得た対価としてのお金(法定通貨)が消えることは無く、キャッシュレス決済やデジタル通貨が当たり前になっているでしょう。しかしながら、お金(法定通貨)そのものは、日本銀行によって発行された中央集権的な通貨であり、Web3との相性が必ずしも良いとは言えません。

例)
・地元の農家のAさん
(地域の色々な人たちに農業の知識を教え、農機具などを貸し出ししている人。小学4年生の子供がいて、プログラミングの授業の成績が伸び悩んでいる)
・地方から移住してきたばかりのフリーランスプログラマーBさん
(趣味で畑を借りて野菜を育てる未経験者、農機具ももっていない)

■Web3ではない場合
・BさんはAさんを紹介してもらい、農機具を借りて野菜作りの知識をレクチャーしてもらって5,000円をAさんに支払う
・AさんはBさんに子供のプログラミングの家庭教師をお願いし、5,000円をBさんに支払う。

このケースは、お金を対価として支払う普通の価値交換のやりとりですが、お互いに5,000円をただ渡し合っただけで収支はプラマイゼロとなり、単にお互いの知識を交換したにすぎません。

■Web3の場合
・AさんもBさんも実際に会ったことはないが、Web3の情報からお互いのことを知っていた。よってBさんはAさんに農業の知識を教えてもらい、農機具も借りることができた。またBさんの依頼を受けた際にAさんは子供にプログラミングを教えて欲しい旨を相談し、お互いお金のやり取りをせずにお互いがWin-Winの関係で終わることができた。

このようにWeb3では、自分の情報をオープンにすることで信頼関係を築きやすくし、お金を介さずブツブツ交換ならぬコトコト交換ができてしまう世界観が誕生します。

●経済資本と社会関係資本

協力

前述した、農家のAさんと、プログラマーのBさんの2つのケースで、価値交換の対価をお金で行うケースと、お金のやりとりなしで自分の能力を交換し合うケースを紹介しました。どちらも結果的に無償でお互いのニーズを満たせたので、同じ事と思われるかもしれませんが、信頼関係の形が異なってきます。

お金を対価にしたケースでは、二人はビジネスライクな関係となります。例えばBさんが再びAさんから農機具を借りるときは、やはりお金を払うことになるでしょう。(必ずそうなるとは言えませんが・・・。)一方でお金を介さないケースは、気軽に農機具を借りやすいでしょうし、農業に関する相談もしやすい関係性となります。
移住したIT会社のBさんにとって、どちらが地域で暮らしやすくなるかと考えると、お金を介さない関係性のほうが良さそうですよね。

このAさんと、Bさんは自分の能力を無償で提供しつづけなきゃいけないのか?と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。Web3の信用情報はAさんとBさんとの活動だけでなく、他の人とのあらゆる活動の履歴を内包しています。それを新たに別の人から見た時にどう見られるのか?が重要になってきます。ひょっとしたら、Aさんの知り合いの誰かがITサービスの開発者を探していて、Aさんと良好な関わりがあるからと、Bさんに仕事を依頼するようになるかもしれません。

このように、Web3が浸透した社会では、自分の情報を使って人との関わり(社会関係資本)を広げ、信用情報を構築したり、信用情報からつながったチャンスを掴み自らの能力を活かしてお金(経済資本)を稼いだり、ユーザーが自ら考えてバランスを取りながら活動を記録して行くことになります。

●Web3×TIS

これまでのプラットフォームによる統合型サービスでは、定型的なデータによってユーザーセグメントを定め、一定量のマスをターゲットとしたサービスが提供されてきました。これからは、セグメントだけではなくOne to Oneマーケティングによる、個々に特化したサービス提供が主流になってきます。その為には、従来サービスにあるような定型的なデータはもちろん、今までになかったような個々の特性を示す非定型的なデータが必要になります。定型的や非定型的、更には静的や動的など、ありとあらゆるデータの組み合わせにより、個人の情報をしっかり守りながら各々のニーズを引き出せる技術としてWeb3への期待が高まってきています。

TISは、セキュリティーレベルの高い金融系システムの開発力や、NFT、ブロックチェーンへの取り組み、情報銀行などデータ活用基盤の取り組みなどの強みを活かし、新しい社会を創造するWeb3に力を入れていきます。

●最後に

Web3が浸透した社会での価値交換の仕組み、なんとなくイメージが湧きましたか?Web3の社会では、中央集権的なプラットフォームに依存せず、自分の活動情報を自分で管理することが可能にあります。また、お金(経済資本)のやり取りだけでなく、デジタル・トラスト・グリッドによって人と人とのつながり(社会関係資本)を情報化することで信頼を得られやすくし、自分の生活をより豊かにしていくことができるようになります。その社会に住む人びとは、単なる価値を受け取るだけの消費者ではなく、Web3により能力を活かせるフィールドやチャンスが与えられ、自分の好きなことで能力を活かしつつ価値を生み出すクリエイターとして提供側になることができるようになります。これまでは企業や行政のチカラによって解決されてきた社会課題や地域を盛り上げる取り組みは、 個人がWeb3を活用しながら課題解決や想いの実現ができる世の中になっていると思うとワクワクしますよね!あなたなら、Web3にどんな情報を記録して、どんな未来を創っていきますか?

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