コラム Column

離脱させないサービス連携で経済圏を拡大~『スーパーアプリ』という選択肢と可能性~

総務省が公表している「令和3年 情報通信白書」によると、情報通信機器の世帯保有率について、モバイル端末では9割を超え、中でもスマートフォンは8割以上の世帯で保有されています。今や我々の生活に欠かせないスマートフォンですが、企業に取っては「アプリ」を通したユーザーへの価値提供が必須の事業またはマーケティング施策となっているでしょう。一方、乱立するアプリの中で、自社アプリをダウンロードさせ利用を促進することは極めて困難です。

このコラムでは、アプリ激戦時代における新たなプラットフォーム「スーパーアプリ」について、その動向や有用性、ビジネスへのインパクトをご紹介します。

●新たなプラットフォーム「スーパーアプリ」とは

スーパーアプリ

スーパーアプリとは、一つのスマホアプリの中に多様な機能をもつ複数のWidget(=ミニアプリ)を統合し活用できるアプリ、いわばプラットフォームを指します。Widgetが「子」なら、スーパーアプリが「親」という立ち位置です。

通常、日常生活で使用する決済・チャット・電話・漫画/ゲームなどはそれぞれのアプリを立ち上げる必要がありますが、スーパーアプリはそれら機能が1つのアプリに集約されているため、ユーザーの利便性が高くシームレスな利用を促進できます。

スーパーアプリ時代の夜明け〜日本の動向〜

国内でのスーパーアプリ開発はすでに始まっています。メッセンジャーアプリのLINE、キャッシュレス決済のPayPay、通信回線というインフラを強みとしたd払い(NTTドコモ)、au PAY(KDDI)などの通信事業者。

彼らはスーパーアプリ戦略を公表・実施し、中でもLINEはLINEゲーム・マンガ・MUSICなどの自社Widgetのほか、「LINE for Business」として多数の飲食店・美容・小売向けのサービスを展開し、Widgetの事例を増やしています。

スーパーアプリのポテンシャル

▶競合:市場の動き

スーパーアプリがすでに先行する中国では、2大プラットフォーマーがモバイルアプリの顧客接点を掌握しています。そのため、ネイティブアプリから、Widget上でのユーザーの可処分時間獲得競争へシフトしています。日本でもQR決済事業者・通信キャリアを中心にWidget搭載が始まり、今後も顧客の囲い込みに向けこの流れは継続するとみられます。しかし、中国や海外と異なるのは、従前からクレジットカードやポイントカードを場所やお得度に応じて使い分ける習慣があるため、様々な事業者でスーパーアプリが広がった場合も、ユーザは自分にあったものを使うと推察されます。

▶市場:オフラインビジネスのオンライン化

オンラインを前提にオフラインを再構成する」「オンラインがオフラインを覆う」世界観を前提にしたサービスのありようが求められています。デジタルネイティブ向けのオンラインサービスの拡充はもちろん、アフターコロナにおいて、オフラインビジネス(店舗、医療機関、学校、自治体サービスなど)のデジタル化が急速に進む可能性が高いです。

▶自社:顧客基盤というアセットの価値最大化

ユーザーは利用シーンや年齢、コミュニティ等の属性に応じ、別々のサービス(=別々のID)を使い分けています。
顧客基盤というアセット(=ID)をもっているプラットフォーマーにおいては、ユーザーの利用シーンに応じて自社が選ばれるように顧客体験を向上することが必須です。顧客体験の向上のためには、自社サービスに加えて、親和性の有る他社サービスを組み合わせて、経済圏の価値を高めることが必要です。

他のプラットフォーマーとの顧客獲得競争はすでに始まっており、オンラインを前提としてオフラインビジネスを変革し、他社サービスも組み合わせてユーザーに選ばれるプラットフォーム(経済圏)を確立していくことが必要とされています。

●スーパーアプリのメリットと課題

打合せ

■スーパーアプリの事業者メリット

1. ユーザー囲い込み
複数の機能をもつスーパーアプリでは、ニーズの異なるターゲットユーザーでも包括的に囲い込みできます。Widgetの数が多いほど、カバーできるサービスが増え、他社アプリ・サービスへの流入を防いだ安定的な収益が見込めます。

2. ユーザーの継続的な利用
フラー株式会社が調査した「モバイルマーケット白書 2020」によると、日本人が所有する平均スマホアプリ数は103.4個、実際に使用するアプリ数は38.5個です。飽和状態にあるアプリ業界では、ダウンロードはされても継続的な利用に課題があります。一方、スーパーアプリはすでに日常生活に根付いたものであり、機能が増えるほどユーザーの継続利用を促進させます。

3.複数のアプリをシームレスに活用
上記のように独立した複数のアプリは、ユーザーの継続的な利用に課題があります。一方、スーパーアプリ上からのWidget利用はシームレス(ID/Passの再入力なく自動ログイン)に利用できるため、単純なWebリンクと異なりユーザーのUXを担保した形で利用を促進させます。

4. 多彩な事業展開とコストの削減
「スーパーアプリの提供サービス=Widgetの数」とも捉えられます。Widget別にさらなる事業の拡張が見込めるでしょう。またWidgetはネイティブアプリではないため、iOS・Android 2つのOSを考慮せずに開発でき、コストを約半額に抑えながら新領域へ進出可能です。

5.データ活用
アプリの集約はデータの集約を意味します。ユーザーの行動・購買データを活用することで、サービスや商品のレコメンド・プロモーション、また品質改善や新規機能の開発に貢献します。サービス/事業者ライン別にデータを分断せずに連携することで、外部パートナーのエコシステムへの取り込みを進め、専門サービスアプリに対し優位性を確立できるでしょう。

■スーパーアプリ参⼊の課題

1. 基盤となるアプリの認知度、利用度
スーパーアプリの前提条件として、「すでに多くのユーザーに利用されている」「利用頻度が高い」点が挙げられます。ゼロからの開発でこれらの条件を達成することは難しく、スーパーアプリへの参入はハードルが高いと言えます。一方、すでにアプリ・サービス認知があり、顧客との繋がりが多い企業にとっては、プラットフォーム化の可能性があるでしょう。

2. 多彩なサービス展開とパートナーとの関係値
ユーザーの生活基盤となるメインの機能はもちろん、多様なWidget機能が使えて初めてスーパーアプリが成り立ちます。Widgetに紐づくサービスを自社で開発できれば問題ないですが、一企業での成功は難しいでしょう。また外部パートナーとの連携も、必要なWidget機能の数だけ求められ、関係構築と拡充は困難です。

これらの課題を解決する成功の鍵は「Widget」の獲得といえます。

●TIS 「Widget 配信プラットフォームサービス」

Widget配信プラットフォームサービス

Widget配信プラットフォームサービスは、スーパーアプリに欠かせない多種多様な外部のサービスをWidget(ミニアプリ)としてスピーディ&ローコストな接続を実現します。このサービスをご利用頂く事により、モバイルを通じて新たな体験をユーザーに与え、既存アプリの価値を向上させます。

・サービス3つの特徴
1. Widgetとの接続、審査、問い合わせなどの業務/システム運用をTISが全て代行
2. SDKを取り込むだけの簡単開発。ミニアプリの追加は配信基盤の制御ですぐに利用可能
3. ユーザー利用シーンを想定したUX-Widget(ミニアプリ)を活用してミニアプリの利用率アップ

スーパーアプリを使⽤したビジネスの成⻑⽀援、課題を解決

成功要因と課題

【量】
■重要成功要因
・ユーザーは多種多様なニーズをもち、パーソナライズされた体験を求めている。
・自社サービスだけで実現するのは困難なため、他社サービスを早く・多く集めることが重要

■課題
・多くの他社サービスを自社ですべて開拓できるか
・数十、数百のアプリを自社で開発できるか

【質】
■重要成功要因
2つの仕組みづくりが求められる
・ユーザのおカネを扱うにふさわしい安全なエコシステムを運営する仕組み
・顧客の利用動機を維持・向上するために顧客体験を常に改善する仕組み

■課題
・外部で開発されたWidgetの安全性をどのように担保するか
・イネーブラーに対してどのように改善点の洗い出し、具体策の提言を行うか

●サービス活用のメリット

ミニアプリ説明図

既存顧客に新たな価値を展開
自社だけでは提供できない外部サービスをつなぐことでユーザーの新たなニーズにこたえることができます。
各事業者とのマーケティング施策がデジタルに行えます。

新たな送客ビジネスの創出
既存の収益に加え、Widget(ミニアプリ)事業者に対して、
オンラインでの送客等の収益が見込めます。

自社アプリの価値向上
ユーザーが自社のスーパーアプリから様々な機能・サービスを利用できることによりアプリの滞在時間の向上、アプリの訪問頻度を増加できます。

エンドユーザーの⽣活を スーパーアプリが彩ります

スーパーアプリ

●変化の激しい時代に「スピード」で差をつける(まとめ)

スマートフォンの普及により、ユーザーとのタッチポイントはPCよりもモバイルファーストでの創出が重要となっています。また昨今のコロナ禍においては、巣篭もり需要から各種アプリへのニーズが高まっています。企業のデジタル活用も進む中、今後アプリを通じたサービス展開がより煩雑化・激戦化するでしょう。すべての企業・サービスがプラットフォームになり得る今、スーパーアプリの活用は企業にとって大きな武器となります。競合他社に負けない、従来よりもスピード感のある開発と実施のためにも、スーパーアプリ事業者にとって、Widgetの選択肢増加や接続は必要不可欠です。

TISの「Widget 配信プラットフォームサービス」は、企業様のスーパーアプリ参入を迅速かつ安全に一括ご支援いたします。自社アプリに関して課題をお持ちの方、Widget 配信プラットフォームサービスに興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

TISの「Widget 配信プラットフォームサービス」については、以下をご参照ください。


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