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コラム

決済オーソリ基盤はどこまでクラウド化できるのか?決済事業者調査で見えた刷新ニーズとクラウド受容のリアル
決済オーソリ基盤はどこまでクラウド化できるのか?決済事業者調査で見えた刷新ニーズとクラウド受容のリアル
INDEX

キャッシュレス化の進展や取引量の増加に伴い、決済インフラにはこれまで以上の拡張性や可用性が求められています。


一方で、レガシー基盤のEOS/EOLや運用負荷、人材不足といった課題も深刻化しており、オーソリ周辺システム(以下、オーソリ周辺)の刷新やクラウド活用を検討する企業が増えています。


そこで今回は、決済関連事業者・金融機関を対象に調査を実施し、現状の課題や刷新ニーズ、クラウド受容の実態を分析しました。

■ 調査概要

  • 調査期間:2026年4月15日~4月23日 
  • 調査方法:インターネット調査(Fastaskを使用)
  • 調査対象:全国20歳~69歳、決済関連事業者・金融機関に従事し、オーソリゼーションシステムまたは決済システムの企画・運用業務に携わる方
  • 回答数:130


図1:調査対象者の会社区分(n=130, 単一回答)

 回答者の所属先は、「クレジットカード会社」が48.5%と最も多く、次いで「銀行・金融機関」が31.5%となりました。両者を合わせると全体の8割を占めており、本調査では、オーソリ周辺と関わりの深い決済関連事業者・金融機関からの回答が中心となっています。このことから、本調査結果は、決済オーソリ領域における現行基盤の課題や、刷新・モダナイズに向けた検討状況を把握するうえで、実務に携わる担当者からの回答が中心となっていることが分かります。

1. オーソリ基盤の刷新検討が進展、6割が具体的な検討フェーズへ

現行基盤はハイブリッド構成が最多、完全クラウド化には慎重

グラフ

図2:現在のオーソリ周辺システムの基盤構成に最も近いものを選択してください(n=128, 単一回答)

 現在のオーソリ周辺の基盤構成は、「レガシー+クラウドのハイブリッド」が38.3%で最も多く、続いて「クラウド基盤(IaaS)中心」が24.2%、「レガシー基盤(オンプレミス/NonStop等)中心」が18.8%となりました。

クラウド基盤中心の構成も一定割合存在するものの、レガシー環境と組み合わせたハイブリッド構成が多数を占めており、完全なクラウド化には慎重な傾向がうかがえる結果となりました。

最も多い課題は「技術者確保」、EOS/EOL対応や運用コストも高水準

グラフ

図3:現行基盤における課題について当てはまるものをすべて選択してください(n=128, 複数回答)

 現行基盤の課題としては、「技術者確保が難しい」が43.0%で最多となり、「EOS/EOL対応が頻繁に発生している」が39.8%、「保守・運用コストが高い」が37.5%と続きました。

技術者確保の難しさに加え、EOS/EOL対応や保守・運用コストも上位に挙がっており、レガシー基盤の維持にともなう人員確保と運用・コスト負荷が、課題として認識されていることが分かります。

約6割が刷新を具体的に検討、計画進行層も一定数存在

グラフ

図4:オーソリ周辺システムの刷新の検討状況を教えてください(n=128, 単一回答)

 刷新の検討状況については、「すでに検討・計画が進行している」が27.3%、「1~2年以内に検討開始予定」が36.7%となりました。

両者を合わせると64.0%となり、オーソリ周辺の刷新について、具体的な検討を進めている、または近い将来に検討を予定している企業が一定数存在することがうかがえます。


2. 刷新の主目的は「可用性/性能向上」、一方で「セキュリティ/規制対応」が大きな課題

安定稼働を前提に、コストとセキュリティの両立を志向

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図5:オーソリ周辺システムの刷新を検討する主目的を教えてください(n=111, 複数回答)

 オーソリ周辺の刷新における主目的では、「可用性/性能向上」が51.4%で最多となり、「保守・運用コスト削減」が42.3%、「セキュリティ/規制対応」が41.4%と続きました。

この結果から、オーソリ周辺の刷新では、安定稼働や性能向上を重視する傾向が見られる一方で、保守・運用コストの削減やセキュリティ・規制対応も重要な検討要素として挙がっていることがうかがえます。

また、新サービス展開のスピード向上や内製化を目的として挙げた回答も16.2%見られ、刷新を運用面の改善だけでなく、将来の事業展開を見据えた検討テーマとして捉える企業もあると考えられます。

意思決定を阻むのは、セキュリティや停止懸念などの「リスク」

グラフ

図6:オーソリ周辺システムの刷新を進めるうえで最大の障壁は何ですか(n=111, 単一回答)

 一方で、刷新の最大の障壁としては「セキュリティ/規制対応への懸念」が38.7%で最多となり、「可用性/停止リスクへの不安」が21.6%、「投資対効果が見えない」が18.9%と続きました。

注目すべきは、上位3項目はいずれも、セキュリティ、サービス停止、投資対効果といった不確実性や懸念に関する項目であり、「技術的実現性への不安」は7.2%にとどまった点です。

そのためオーソリ周辺のシステム刷新を検討する際には、セキュリティや規制対応、高い可用性を維持できる構成であることに加え、移行時のリスクや運用負荷への配慮が重要な検討要素であることがうかがえます。

3. クラウド受容は約7割、重視されるのは「実績」と「段階的移行」

オーソリ周辺のクラウド活用、条件付き含め約7割が検討可能

グラフ

図7:オーソリ周辺をクラウド(AWS等)で稼働させることへの考えを教えてください(n=128, 単一回答)

 重要な決済インフラであるオーソリ周辺をクラウドで稼働させることについて、「条件付きで受け入れ可能」が46.1%、「問題なく受け入れられる」が21.9%となり、合計68.0%が受容可能と回答しました。

また、「懸念はあるが検討余地はある」が21.9%となっており、約9割が何らかの形で検討の可能性を残していることがうかがえます。一方で、「現時点では受け入れられない」は4.7%にとどまりました。

この結果から、オーソリ周辺のクラウド化については是非の段階ではなく、条件や前提を踏まえて検討する企業が多いことがうかがえます。

クラウド化のカギは「規制・監査対応の実績」と「段階的な移行」

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図8:クラウド化を検討できる条件として、あてはまるものをすべて選択してください(n=115, 複数回答)

 クラウド化を検討できる条件としては、「規制・監査対応の実績」が52.2%で最も多く、「段階的な移行が可能」が47.8%、「可用性保証」が40.0%と続きました。

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図9:クラウド化(または外部マネージド活用)を実行する上での必須条件(Must)を教えてください(n=128, 複数回答)

 さらに、クラウド化を実行するうえでの必須条件としては、「規制・監査対応の実績」が51.6%、「金融/決済レベルの可用性保証」が50.0%とほぼ同水準で並んでいます。

これらの結果から、クラウド化の検討においては、規制対応や可用性といった非機能要件が前提条件として重視されていることが分かります。
また、段階的な移行を挙げる回答も多く、既存環境との連携や移行リスクへの配慮も重要な検討要素となっていることがうかがえます。

オーソリ周辺システムのクラウド化においては、規制・監査対応の実績や高い可用性に加え、既存環境との連携や段階的な移行を重視する傾向が見られます。

グラフ

図10:クラウドで稼働するオーソリシステムが、十分な信頼性・可用性・セキュリティを備えた形でサービス提供された場合、利用をどの程度検討対象にしたいと考えますか(n=128, 単一回答)

なお、十分な信頼性・可用性・セキュリティを備えたクラウド稼働のオーソリシステムが提供された場合の検討度合いについては、「積極的に検討したい」が23.4%、「条件次第では検討対象になり得る」が43.8%となり、肯定的な回答は合計67.2%に達しました。

また、「情報収集レベルで関心がある」も18.8%を占めました。

この結果から、信頼性や可用性、セキュリティに関する要件が満たされることを前提として、クラウド活用を前向きに検討する意向が見られます。


4. オーソリ周辺の年間コストは1億円以上が中心、刷新投資も高水準

オーソリ周辺には年間1億円以上のIT投資が約7割

グラフ

図12:オーソリ周辺にかかる年間ITコスト(概算)を教えてください(n=128, 単一回答)

 オーソリ周辺にかかる年間ITコストについては、「1億円~5億円未満」が32.8%で最も多く、続いて「5億円~10億円未満」が20.3%、「10億円以上」が19.5%となりました。「1億円以上」と回答した企業は合計72.6%となっています。

この結果から、オーソリ周辺に対して一定規模以上のIT投資が行われている企業が多いことが分かります。

今後の刷新・モダナイズでは、5億円以上の追加投資を見込む企業が過半数

グラフ

図13:今後3年以内に見込む「刷新・モダナイズ関連の追加投資(概算)」レンジを教えてください(n=106, 単一回答)

今後3年以内に見込む刷新・モダナイズ関連の追加投資については、「10億円以上」が32.1%で最も多く、「5億円~10億円未満」が23.6%で続きました。5億円以上の追加投資を見込む企業は合計55.7%となっています。

この結果から、オーソリ周辺の刷新・モダナイズに向けて、多くの決済関連事業者が一定規模以上の追加投資を計画していることが分かります。一方で、投資額には企業ごとの差も見られることから、各社の事業方針や既存環境の状況に応じて検討が進められているものと考えられます。


5. 刷新・モダナイズの焦点は接続・連携機能、提供形態はSIer・海外系サービスが上位に

刷新対象は接続・連携領域から、段階的なモダナイズが進む可能性

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図14:機能区分ごとに、今後3年以内の「刷新・モダナイズ」予定を教えてください(n=128, 単一回答)

 機能区分ごとの刷新予定では、3年以内の検討・実施の合計は「国際ブランド接続機能(VISA/AMEX等)」が71.9%、「周辺連携機能」が69.6%と高水準でした。接続・連携機能における刷新ニーズが特に高いことから、接続仕様変更への対応力や、複数システムとの連携を前提とした柔軟性・拡張性が重視されている可能性がうかがえます。


利用・検討経験では国内大手SIerや海外系サービスが上位

グラフ

図11:現在利用している、または直近3年で検討経験のある「オーソリ周辺」関連の提供形態を教えてください(n=128, 単一回答)

 利用・検討経験のある提供形態としては、「国内大手SIer/ベンダーの提供サービス」が48.4%、「海外系プラットフォーム/サービス」が40.6%となりました。一方で、「自社内製(自社開発・自社運用)」は14.8%でした。

また、「スタートアップ系サービス」についても24.2%となっており、国内大手SIerや海外系サービス以外の選択肢についても一定の検討経験があることが分かります。

この結果から、オーソリ周辺の刷新・運用においては、自社内製だけでなく、スタートアップ等の新たな選択肢を含め、多様な提供形態が比較・検討されていることがうかがえます。


6. まとめ:オーソリ基盤の刷新を進めるうえで重要になる「設計」と「段階的移行」

今回の調査から見えてきたのは、オーソリ周辺のクラウド化に対して一律に否定的というわけではなく、「規制・監査対応の実績」「高可用性の保証」「段階的移行」が満たされることを前提に、検討対象として捉える企業が増えているという実態です。


オーソリ基盤のクラウド化は、可否を議論するフェーズから、どのような条件で実現するかを検討するフェーズへ移行しつつあると言えます。
もっとも、刷新を検討するうえではセキュリティ・規制対応への懸念が依然として大きな障壁となっています。


この結果から、オーソリ周辺の刷新・モダナイズで求められているのは、クラウド活用の可否だけでなく、規制対応、可用性、移行リスクをどのように設計するかであることがうかがえます。決済システムのモダナイズを次の事業成長につなげるためには、単なるシステムの置き換えではなく、将来の拡張性を見据えたアーキテクチャ設計が重要です。

加えて、高度なセキュリティ・規制対応の整備や、既存環境との連携を考慮した段階的な移行シナリオの策定も求められます。特にオーソリ周辺システムでは、高い可用性と安定性が前提となるため、現行課題や投資規模、刷新対象機能などを整理したうえで検討を進めることが重要です。

本コラムで紹介したデータは、調査結果の一部です。
調査資料では、回答者の属性や企業規模、各設問の詳細な内訳、クラウド化の条件、機能区分ごとの刷新・モダナイズ予定などを、グラフとともに掲載しています。
自社のオーソリ基盤の刷新・クラウド活用を検討されている方は、ぜひ下記よりダウンロードのうえ、比較検討材料としてご活用ください。


【無料ダウンロード】調査資料(ホワイトペーパー)のダウンロードはこちら 

『決済事業者におけるオーソリ周辺システム実態調査 2026 ―決済オーソリ基盤はどこまでクラウド化できるのか―』

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