以前のコラム「Embedded Finance(エンベデベッド金融)の今と未来~なぜ注目されているのかその真相に迫る~」 の中でFinTech企業の躍進や規制緩和によって金融事業者だけではなく、非金融事業者も金融製品を扱えるようになったお話をしました。
今回は自社サービスに金融機能を組み込んで提供することに関して深堀していきます。金融機能を組み込む活用方法の1つとして、独自Pay(自社Pay)があります。独自Payを導入することで、サービスに一貫性が生まれ、消費者の利便性の向上と、消費者の囲い込みが期待できます。サービスの一貫性とはどういうことか? 独自Payがなぜそれを解決できるのか?について、事例もあわせてご紹介します。
今すぐ無料ダウンロード1.市場の多様なニーズを把握
・異なる消費者行動への対応
・新しい販売方法・市場への対応
・サステナビリティの促進
・well-being(ウェルビーイング)を追求
・デジタル化の促進
2.自社サービスに独自Payを導入するメリット
3.自社サービスに独自Payを導入する際の課題
・専門家の配置の必要性
4.独自Payを導入している企業事例
メルカリ
Uber
Shopify
無印良品
ユニクロ
業務スーパー
5.独自Payを導入することでの効果
6.行動可視化サービス「キャクシル」とは?
1.市場の多様なニーズを把握
消費者のニーズは、急速に変化し多様化しています。企業が競争力を高め、持続可能な成長を達成し続けていくためには、世の中の動向・現状を把握し対応していく必要があります。
・異なる消費者行動への対応
世代によって消費者の価値観には大きな違いがあります。「X世代」といわれる1960~1979年生まれの世代は、高級品やブランド品などを購入し、社会的ステータスを得るような消費嗜好でしたが、徐々に「モノ消費」から「コト消費」へと移行し、旅行や教室といった体験や学びに対して人生の投資に繋がる消費へと移行していきました。1996〜2012年生まれの「Z世代」は、徹底的なリサーチを行なう、所有にこだわらないといった消費行動の特性があります。世代によって消費に対する行動・意識の違いに対応していく必要があります。
・新しい販売方法・市場への対応
コロナ禍が後押ししてオンライン購入が拡大している一方で、購入前に手に取れないといった不安を抱く消費者もいます。オンライン販売などの新しい戦略に加えて、消費者のニーズに対応しなければなりません。たとえば、洋服のショップサイトであれば、スマートフォンを使って体の採寸ができる(※1)、過去に実店舗で購入した商品履歴が見られる(※2)など、消費者の不安を取り除き、購買意欲の向上のための工夫が求められています。
※1:アパレルなどが採用している代表的なものにBodygramがある。スマートフォンで体を撮影するだけで3Dの等身大を作成することが可能。
※2:ニトリ、ドットエスティなど実店舗で購入したものを見ることができる。レビューを記載し、質問に答えることでポイントを獲得できるなど履歴を見ること以外にも活用されている。
・サステナビリティの促進
サステナビリティに対する意識向上の風潮が高まっています。環境に配慮している、社会問題に取り組んでいるなど、企業のサステナビリティに対しても消費者は関心を持ち、購買意欲につながっている動向がみられます。特に10〜20代の世代では、サステナブル意識が高い傾向にあります。(参照元:https://www.nomura.co.jp/el_borde/real80s/0053/)
・well-being(ウェルビーイング)を追求
健康意識の向上や、病気予防に対する意識も高まっています。働き方改革によって長時間労働の是正や、さらにはコロナ禍のリモートワークの普及などによって、生活や仕事の進め方などが急速に変化したこともあり、食生活の見直しや定期的な運動をする方が増えています。心身ともに健康であることが幸せであるwell-beingに対する意識変化を、企業としてうまく取り入れて消費者に提供していく必要があります。
・デジタル化の促進
企業が急速に変化する時代に対応し収益につなげるには、デジタル化の促進が重要視され取り入れるべきといわれています。生産や販売などの業務にどのようにデジタルを取り入れるのか検討し、コスト面やセキュリティ面といった懸念点など、課題を解決していかなければなりません。最近では現金のみの取り扱い店舗が昔と比べて大分少なくなってきたように感じます。今ではスマホ決済だけで買い物をする人が増え、お財布を持ち歩かない人もみうけられます。自社のアプリに自由な形で決済機能を組み込む企業が増えてきているのも納得できます。
2.自社サービスに独自Payを導入するメリット
従来の買い物の流れは、商品が欲しいだけの消費者にとっては非常に煩雑で画一的です。例えば、商品やサービスを探す→レジに行く→割引チケットを出す→代金を支払う→ポイントカードを提示する→商品を受け取るとなど、それぞれの場面で消費者が行動する必要がありました。しかし、この一連の流れは組込型金融を活用することで、消費者は一度に体験できるようになり、ヘルスケア領域、在宅、小売り、交通など生活するさまざまなシーンで便利になっていきます。
たとえば、
●お買い物のシーンでは、スマホ上のアプリを提示するだけで支払いとポイントチャージが同時に行える
●車に通信システムを搭載することで、運転情報や走行距離のデータが収集でき、自動車保険料をドライバーによって変動させることが可能
などが挙げられます。
これまでは切り離されていた他のサービスとの一体化が可能になり、消費者にとって、支払いを意識することのないシームレスな世界で新しい体験ができます。つまり、組込型金融がより実現しやすいのが、独自Payであり、パーソナライズされたサービスの提供と顧客体験の向上が狙えるようになるのです。
3.自社サービスに独自Payを導入する際の
自社サービスに組込型金融を活用して独自Payを導入する際には、まずはユースケースの構築が重要です。どのように金融機能を組み込めば、顧客体験の向上が狙えるのか、消費者目線で分かりやすく構築していく必要がありますが、その際に課題となる点があります。
・専門家の配置の必要性
自社での開発を行なうには、テクノロジーや金融に関する専門的な知識を有したスタッフを配置する必要があります。現在の日本は働く人口低下が問題となっており、とくにテクノロジーに適した人材が不足しています。各企業においては人材確保や育成が課題となっています。
4.独自Payを導入している企業事例
独自Payを導入している企業の事例をご紹介します。
・メルカリ
メルカリは、商品の出品や購入が可能なフリマアプリです。メルカリには、決済サービス「メルペイ」があり、メルカリでの売上金などの残高で買い物もできます。
決済サービスだけではなく、メルペイスマートマネーサービスを利用すれば、買い物代金を翌月にまとめて支払いできる後払いサービスや、購入代金を月々に分けて定額支払いするサービスもあります。決済に加えて融資機能も備わっています。
・Uber
Uberはスマホでタクシーを配車できるアプリです。Uberに決済機能「Paypal」や「Apple Pay」が連携されており、ユーザーはアプリにクレジットカードなどの情報を事前登録しておくことで、キャッシュレスで支払いまで自動で行なえ、乗降時のやりとりがスムーズになります。
・Shopify
Shopifyは本格的なオンラインショップを簡単に開設し、運用できるクラウドサービスです。
「Shopify Balance」という銀行口座を開設できる機能が備わっており、新たに銀行口座の開設や既存の銀行口座の登録をする必要がありません。Shopifyのサービス内で、ショップ運営で必要となる入金や支払いを完結できます。
・無印良品
生活用品などの販売を行なっている無印良品は、無印良品のアプリ「MUJI passport」に、オンライン決済サービス「MUJI passport Pay」を2020年11月30日より連携し提供しています。
従来の方法では、アプリを提示し、支払いは別の方法で行なう必要がありました。既存のアプリにクレジットカード情報を登録しておけば、オンライン決済サービスを利用でき、アプリの提示でポイントの付与から支払いまでが可能となっています。
・ユニクロ
衣料品販売を行っているユニクロは、独自の決済サービス「UNIQLO Pay」を2021年1月より提供しています。既存のアプリにクレジットカードか銀行口座の情報を登録しておけば、アプリの提示で支払いまで可能となります。
・業務スーパー
業務スーパーの公式アプリ「Gyomuca」は、独自の電子マネー機能が搭載されています。店舗の入金機から現金をチャージする方法で、クレジットカードや銀行口座の連携はありません。
チャージ額の0.5%分のポイントが付与され、ポイントはお買い物の支払い時に利用が可能です。
【独自Payを導入している企業事例一覧】
5.独自Payを導入することによる効果
独自Payを組み込むことによって、消費者にとっての利便性は増し、顧客体験は向上していくでしょう。
【顧客体験の向上の一例】
●アプリを提示するだけでポイント付与とキャッシュレス決済が同時に行なえる
●商品販売での収益で別の商品の購入ができる
●顧客の行動履歴を活用し融資枠を設け、後払いや定額払いに対応
上記の例では、顧客の消費行動をうまく活用し、顧客を囲い込み、リピーターになってもらう・ファンになってもらうという、サイクルが誕生しています。
企業にとっては、独自Payを導入することで、サービス提供の幅が広がり多様なニーズに応えられるようになります。
多様なニーズに応えるためには、消費者の行動を可視化し把握することが大切です。さらに消費者をグループ分けしてラベリングし、ラベリングごとに分析を行えば、最適なアプローチが可能になります。消費者は最適なサービスを受けられるようになるため、満足度があがりファンになってくれるという顧客生涯価値の最大化を図るサイクルが成立します。
ニーズに応えるための新たなビジネスが生まれ、企業は競争力を高め、持続可能な成長を達成し続けるでしょう。
6.行動可視化サービス「キャクシル」とは?
独自Payの導入事例でも分かるように、消費者に便利に利用してもらい囲い込むには、金融機能を組み込むだけが解決策ではありません。消費者のニーズを把握し分析することや、消費者の行動履歴データが重要なポイントとなります。
消費者の行動を可視化できるサービス「キャクシル」 (TIS、ラベリングされた顧客行動データを活用し、効果的なマーケティングを実現する顧客行動可視化サービス「キャクシル」を提供開始) は、独自Pay導入はもちろん、スマホアプリと連携することで、顧客行動のデータを取得できるサービスです。顧客のニーズを把握して応えられるよう、取得したデータを分析し、新たなビジネスモデルの立案や展開をすることで企業の収益に繋げていくツールです。企業戦略の一助となってくれるでしょう。
行動可視化サービス「キャクシル」についての詳しい資料はこちらからダウンロード頂けます。
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